2014年8月27日(水)



2014年8月27日(水)日本経済新聞
個人向け社債 邦ガス100億円 償還資金に充当
(記事)





2014年8月26日
東邦瓦斯株式会社
東邦瓦斯株式会社第39回無担保社債(個人投資家向け)の発行について
ttp://www.tohogas.co.jp/corporate-n/press/__icsFiles/afieldfile/2014/08/26/press_20140826.pdf

 


【コメント】
>10. 資金の使途 社債償還資金

とのことです。
社債の条件や募集方法や資金の使途については書かれていますが、償還方法については記載がないようです。
私の方で「償還方法」について記載しておきました。


修正:東邦瓦斯株式会社第39回無担保社債(個人投資家向け)の発行について
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15. 償還方法 社債償還を使途とした社債発行による


社債償還のために社債発行を繰り返すのでしょう。

 



ところで、東邦瓦斯株式会社の決算短信を見ていてあることをふと思いました。


2014年7月31日
東邦瓦斯株式会社
平成27年3月期 第1四半期決算短信〔日本基準〕(連結)
ttp://www.tohogas.co.jp/corporate-n/press/__icsFiles/afieldfile/2014/07/31/press_140731-02.pdf

貸借対照表
(8/12ページ)



鉄道会社や電力会社やガス会社など、いわゆる大規模な設備産業と呼ばれる企業の貸借対照表は、流動性配列法には従っていません。
通常は、流動資産と流動負債が貸借対照表の上の方に、固定資産と固定負債と資本の部が貸借対照表の下の方に記載されるのですが、
鉄道会社や電力会社やガス会社などの貸借対照表では、固定資産や固定負債が貸借対照表の上に記載れています。
このことは一般に、それらの会社では設備そのもののが事業の中心を成しており、
事業運営の観点そして価額の点で固定資産の方が流動資産よりも重要性が高いから、と説明されます。
この説明は一見筋が通っていそうですが、改めて貸借対照表を見てみますと、あまり説明になっていないことに気付きました。
なぜなら、流動資産の各勘定科目や固定資産の各勘定科目は、結局流動性配列法に従っているからです。
マクロな視点で見れば一見流動性配列法には従っていないのですが、ミクロな視点で見ると結局流動性配列法に従っているのです。
また、貸方に目を移しますと、例えば資本金は絶対に現金として回収されることはないわけですから、
流動性配列法に従わないのなら、一番上に表示されないといけないわけです。
流動性とは、現金として回収することがどれほど容易か、という意味ですが、これは資産に関して表現したものであり、
貸方で言えば、流動性とは、どれだけ早期に現金で決済していかねばならないか、という意味になるのです。
ここでの容易と早期は同じような意味です。
流動性とは、どれだけ現金に近いか、という意味です。
例えば支払手形は今後、貸借対照表日に非常に近い期日に決済していかねばなりません。
ですから、支払手形が負債の部の一番上に表示されているわけです。

 



しかるに、資本金はどうでしょうか。
会社が資本金を誰かに弁済・決済しなければならない、などということがあり得るでしょうか。
株式会社の制度からして、そんなことは絶対に起こり得ないでしょう。
弁済や決済という観点から言えば、株式会社において最も現金から遠い勘定科目が資本金である、と言っていいでしょう。
したがって、流動性配列法に従った場合、貸方の一番下に表示されるべきなのが資本金であるわけです。
「会社が当期に計上した利益はその全額を株主に配当金として支払う」という商法制度の場合、
配当支払い後の資本の部には常に資本金しかないわけですから、一番下が資本金というのは何か辻褄が合うものを感じるかと思います。
内部留保ということを考え出すと、説明がつかない部分が出てくるかもしれませんが。
利益剰余金はその後社外流出する可能性があるわけです。
少なくとも、資本金よりは現金にはるかに近いでしょう。
流動性配列法に従うなら、利益剰余金を資本金の上に表示しないといけない、ということになるかもしれません。
ただ、そもそもなぜ流動性配列法に従った表示を行うのかと言えば、債権者の取引判断に資するためなのだと思います。
債権者にとって、債権の弁済の引き当ては会社財産しかありません。
どの勘定科目がどれだけ現金に近く、そしてそれはどれくらいの価額か、という情報は、債権者にとって極めて重要であるわけです。
会社は今後債務を当然現金で弁済していかねばならないわけですから、債権者のため現金に近い順に表示するというのは合理的でしょう。
「債権者にとって重要な順に表示する」というのが流動性配列法である、と言っていいのかもしれません。
そうしますと、資本金と利益剰余金、債権者にとってどちらがより重要かと言うと、やはり資本金の方でしょう。
利益剰余金は株主に帰属していますが、資本金は弁済の引き当てという観点では債権者に帰属しているわけですから。
したがって、資本の部に関しては、資本金が上、利益剰余金が下、という表示になっているのだと思います。
しかし同時に、利益剰余金は全額が株主に帰属していますので確かにその社外流出に対し債権者は一切物が言えないわけですが、
会社財産が社外流出すればするほど、債権者にとっては会社倒産時に弁済に充てるべき財産が減少してしまうことは確かであるわけです。
会社倒産時のことだけで言えば、会社倒産時には、利益剰余金は多ければ多いほど債権者にとっては有利(弁済額が多くなる)であり、
少なければ少ないほど債権者にとって不利(弁済額が少なくなる)であるわけです。
そういう意味では、利益剰余金の多少が債権者の利益を左右するわけです。
将来の会社財産の社外流出の可能性という観点から言えば、
平時はむしろ利益剰余金は少ない方が債権者にとって有利(それ以上会社財産は社外流出しないから)である一方、
会社倒産時のことを考えれば、利益剰余金は多い方が債権者にとって有利(弁済に充てるべき会社財産がそれだけ多くなるから)、
となるわけです。
債権者にとって利益剰余金は多い方が有利なのかそれとも少ない方が有利なのかは、一言では言えない部分があるわけですが、
利益剰余金の多少が債権者の取引判断に重要な影響を及ぼすだけのは確かでしょう。
「債権者にとって重要な順に表示する」というのが流動性配列法であるのなら、
流動性配列法に従った貸借対照表では、資本金と利益剰余金とではどちらが上でどちらが下かは、答えは出ないかもしれません。

 



以上のようなことを考えていきますと、貸借対照表の表示方法には実は流動性配列法しかないのではないか、という気がするわけです。
「流動性配列法の逆というのはない」、ということではないでしょうか。
仮に流動性配列法の反対の配列法に従った貸借対照表というものを考えてみますと、
それはただ単に、流動性配列法に従った貸借対照表を下から順に表示していっただけ、ということになる気がします。
そのような貸借対照表は本質的にほとんど意味はないでしょう。
貸借対照表を見る側からすると、結局流動性配列法と同じ様な表示をしていることになりますし(頭の中で逆にすれば同じことでしょう)、
また、債権者の立場に立ってみれば、弁済という観点ではまさに、重要ではない順に並んでいる、ということになります。
債権の回収を行う者の立場からすれば、現金に近い順に表示をして欲しいと思うのは当然ではないでしょうか。
率直に言えば、表示場所だけ変えても意味はない、ということになると思います。
そういうわけで、貸借対照表の表示方法には本質的に流動性配列法しかないのだと思います。
端的に言えば、現在の鉄道会社や電力会社やガス会社などの貸借対照表の表示方法は間違いであろうと思います。
直接的には”固定性配列法”なる言葉はないようですが、敢えてこの言葉を使えば、
”固定性配列法”に従った貸借対照表は実は後から出てきたと言いますか、本来は”固定性配列法”などないと言いますか、
全ての会社の貸借対照表は元来そして当然に流動性配列法に従っていた(従わねばならない)のだと思います。
例えば戦前の鉄道会社や電力会社の貸借対照表は流動性配列法に従った貸借対照表になっていたのではないかと思います。
当時の社長に聞けばこう答えるかもしれません。
「債権者の利便性に配慮した会社債務弁済のためだ。」
と。

 

 


2014年8月27日(水)日本経済新聞
■日本プロロジスリート投資法人 分配金174億円増の3874円
(記事)



2014年8月26日
日本プロロジスリート投資法人
資産運用会社の運用に関する基本方針の一部変更に関するお知らせ
ttp://www.prologis-reit.co.jp/site/file/tmp-mnHqZ.pdf

利益超過分配
<利益超過分配の貸借対照表におけるイメージ図>
(4/5ページ)


(注1)
(5/5ページ)

 



【コメント】
分配金を支払いつつ増資をするというのは、やはり財務的に見れば矛盾でしょう。
資金が必要だから増資をするわけです。
資金が必要なら、分配金を支払わなければよいのではないか、と思うわけですが。

「会社が当期に計上した利益はその全額を株主に配当金として支払う」という商法制度というのは、
株式と呼ばれる証券を本当に債券の一種とみなして理論を組み立てていったのだなと思います。
配当金はまさに利息と同じ様な位置付けのものとみなして理論を組み立てたのでしょう。
また、「会社が当期に計上した利益はその全額を株主に配当金として支払う」と法で定めた理由は、
配当金の支払額に恣意性が生じないようにする趣旨があったのかもしれないなとも思いました。
「利益は全額支払う」、ある意味これほど恣意性がない支払い方法もないわけです。
借入金に対して契約時の利息を支払うようように、
資本金に対しては利益を計上した場合は出資の対価として配当金を言わば義務として支払う、
と考えれば筋は通っているようにも思います。
ただ、個人的には、株式を純粋に金銭債権や債券であると見なしたりそれらと同一視することはできないと思います。
なぜなら、配当金は確定債権ではないからです。
金銭債権や債券は単なる一証券です。
予め約束した通りの金額を支払うということができますし支払うべきでしょう。
しかし、株式会社は言わば生き物でしょう。
支払う金額に関する約束など、できようはずがないのではないでしょうか。
また、そもそも配当金額は株主が決定する事柄です。
内部留保が株主の利益に反するということは法理的にはないのではないでしょうか。
利益は毎期全額を支払ってしまった方が、その後株式譲渡自由の原則は相対的に担保されやすいということはあろうかとは思いますが。

最後に一言だけ書きますと、投資法人では、規約に定めれば、投資口の払い戻しが認められるようです。
払戻しの是非については、最後は法人の性質によることだとは思いますが。
出資とは、債権者の利益のために使われるよう、出資者が自身のお金を会社に投じることです。
法人に債権者がいる場合は、出資の払戻しは法理論的には認められないのではないでしょうか。

ところで、日本プロロジスリート投資法人の貸借対照表を見てみましたら、流動性配列法に従っていました。
不動産(有形固定資産)が事業の中心中の中心のはずですから、流動性配列法ではない方が現代的ということではないかと思いましたが、
投資法人は基本に忠実な財務諸表を作成しているということでしょう。