2014年8月12日(火)



2014年8月12日(火)日本経済新聞
GLP、313億円調達 増資など
(記事)


 

2014年8月11日
GLP投資法人
平成27年2月期の運用状況の予想の修正及び平成27年8月期の運用状況の予想について
ttp://www.glpjreit.com/site/file/tmp-8xd4Q.pdf

 


【コメント】
記事に、

>1口当たり分配金(利益超過分配金含む)を2241円と従来予想から101円引き上げることも発表した。

とありました。
端的に言えば、

1口当たり分配金 (円)(利益超過分配金を含む) =1口当たり分配金 (円)(利益超過分配金は含まない) + 1口当たり利益超過分配金(円)

という関係(計算式)になっているようです。
以下、より一般化して、株式会社に即して書きます。
配当金総額が当期純利益額を超えているということで、配当性向が100%超となる配当支払い、ということになると思います。
さて、わざわざ”利益超過分配金”という言われ方をされますと、
何か間違った配当をしているかのような印象を受けてしまいますが、経営的・財務的には特段間違った配当支払いということはありません。
財務的には利益剰余金は全額が株主に帰属しています。
当期に稼いだ純利益であろうが前期以前までに稼いできた純利益であろうが、全てが株主に帰属しています。
財務的には、当期に稼いだ純利益と前期以前までに稼いできた純利益とに区別は一切ありません。
当期純利益額を超えるような配当支払いを当期に行ったとしても、財務的には何ら問題ありません。
もちろん、当期純利益額を超えるような配当支払いを当期に行っても、債権者の利益を害したことにはなりません。
なぜなら、利益剰余金は全額が株主に帰属しているからです。
考えられる論点としては、経営上それだけの現金を社外流出させても事業運営に支障はきたさないか、という点のみです。
この問いには財務諸表からだけでは答えは出せません。
定量的な計算ではなく、定性的な判断が求められるでしょう。
仮に、会社としては十分な将来見通しを持っており、今後十分に当期純利益を計上していける見込みであるというのなら、
当期純利益額を超えるような配当支払いを当期に行ったとしても、経営的にも何ら問題ありません。
今後十分に当期純利益を計上していける見込みであるからこそ、当期純利益額を超えるような配当支払いを当期に行ったのだと聞けば、
債権者は逆に安心することでしょう。
なぜなら、今後十分に当期純利益を計上していける見込みであるということは、
債権者が所有している債権は必ず弁済されるということだからです。
会社は当期純利益を計上した=会社の手許現金は増加した、という財務上の関連性があります。
基本的には、債権者には利益剰余金の分配方法に関する株主の意思決定に影響を及ぼすことはできません。

 



こちらのプレスリリースも気になりました↓。

 

2014年8月11日
GLP投資法人
GLP投資法人が採用する革新的な取組み - J-REIT初の取組みを複数採用 -
ttp://www.glpjreit.com/site/file/tmp-rUBzU.pdf

利害関係人取引に対する厳格なガバナンス体制
(1/1ページ)

「利害関係人取引に対する厳格なガバナンス体制」を構築するため、以下の新しい権利を外部委員に付与するそうです。

>コンプライアンス委員会・投資委員会の外部委員による利害関係人取引に対する拒否権
>外部委員選任における投資法人役員会への拒否権

投資法人として何らかの意思決定を行うに際して、独立した人物の意見を会社に取り入れ経営に反映するため、
外部委員に対し拒否権を付与することにしたようです。
投資法人には執行役員と監督役員がいるようなのですが、会社の運営事項に関しては役員会で決議していく流れとなっているようです。
拒否権というのは、おそらく、役員会で決議された業務内容に対して外部委員が何らかの理由により差し止めを行いたい場合は、
外部委員が拒否権を発動する、というようなことことなのだと思います。
独立した人物の意見を取り入れるため役員会がそのようなガバナンス体制を構築することは問題ないと思います。
ただ、この外部役員は誰が選任するのだろうかとは思います。
外部委員というのは会社の機関というわけではないのなら、役員会で外部委員を選任することは概念的・法的にはおかしくないと思います。
あくまで役員会において独立した人物の意見を取り入れたい、という位置付けなのでしょう。
法的には、ここでの外部役員は会社の機関ではなく、単なるアドバイザー的存在ということになると思います。

 


ただ、この拒否権というのが、役員会での決議内容に対しての拒否権ではなく、
投資主総会での決議内容に対しての拒否権であるなると話は大きく異なってきます。
話をより一般化するために、通常の株式会社に即して考えてみましょう。

株主総会で「ある人物に株主総会決議を拒否できる権利を付与すること」を決議するとします。
この決議は有効か否か。

端的に言えば、株主総会決議に基づき拒否権を特定の人物に付与するわけです。
より実務的に言えば、定款を変更し黄金株を発行しある人物に付与することは是か非か、と表現してもよいと思います。
株主総会決議を取っている意思決定です。
株主の意思に基づいていますから、何の問題もないと感じるかもしれません。

しかし、これは株式会社(投資法人でも考え方は全く同じだと思います)の概念に反することだと言わねばなりません。
結論を一言で言えば、
「株主というのは実ははじめから拒否権を持っている」
となります。
全ての株主は拒否する権利を均等に持っています。
そしてまた、全ての株主は承認する権利を均等に持っています。
ある特定の誰かが拒否する権利を排他的に持っているわけではありません。
株主は皆、株主総会議案を承認する権利と拒否する権利の両方を平等に持っています。
株主総会議案を承認する権利と拒否する権利の両方を皆が平等に持っていることが、まさに「株主平等」なのではないでしょうか。
株主の意思を一方的に捻じ曲げてしまう拒否権(より実務的には黄金株)は、株主平等の原則に反するわけです。

 


拒否権と呼ばれる権利が株式会社の概念上認められない理由が理解しづらいなら、
拒否権の正反対の概念である「承認権」という権利を試しに考えてみたらどうでしょうか。
承認権とは、その権利を持っている人物が議案を承認すれば他の株主が反対しようとも必ず議案は可決されるという権利です。
こう聞くと一瞬でそれはおかしいと分かるでしょう。
承認権の議決権割合は100%と言っているようなものでしょう。
承認権がおかしいのならば、拒否権もおかしいのではないでしょうか。

仮に、拒否権に類する権利を持ちたければ、株式会社の概念に照らし、また、株主平等の原則に鑑み、株式を所有するしかありません。
特別決議を排他的に拒否する権利を持ちたければ、3分の1超の株式を持つしかありません。
また、普通決議を排他的に拒否する権利を持ちたければ、2分の1以上の株式を持つしかありません。
逆に、承認権に類する権利を持ちたければ、株式会社の概念に照らし、また、株主平等の原則に鑑み、株式を所有するしかありません。
特別決議を排他的に承認する権利を持ちたければ、3分の2以上の株式を持つしかありません。
また、普通決議を排他的に承認する権利を持ちたければ、2分の1超の株式を持つしかありません。
一定数以上の株式を所有すること、これが排他的に権利を持つということです。
もちろん、ある特定人物が一定数以上の株式を所有することを通じて排他的な権利を持つことは、株主平等の原則には反しません。
なぜなら、そのような持株比率になった状況下においても、従来と変わることなく、
株主は皆、株主総会議案を承認する権利と拒否する権利の両方を均等に持っているからです。
最初に書いた結論を少しだけ訂正しましょう。
「株主というのは実ははじめから拒否権と承認権の両方を持っている」
と。
拒否権と承認権、これを議決権と呼ぶのです。