2014年7月27日(日)
2014年7月14日
日本ロジスティクスファンド投資法人
賃貸借予約契約の締結に関するお知らせ(八千代物流センター再開発事業)
ttp://8967.jp/site/file/tmp-QeDAd.pdf
1. テナント(賃貸借予約契約)の概要
(1/2ページ)
>中途解約:賃貸借期間中に本契約を解約することはできません。
と書かれています。
民法上、賃貸借契約に「賃貸借期間中に本契約を解約することはできない」と定めることは果たして法的に有効なのだろうかと思いました。
もちろん、「賃貸借期間中に本契約を解約することはできない」と定めには両当事者は合意しているとしますが。
まず民法の定めについて書きますと、賃貸借の存続期間は、民法上20年を超えることができないとされています。
これより長い期間を契約で定めても、20年となります。
これは、所有権に対する制約があまりに長期間となることを防ぐためとされています(反対に、最短期間については民法上制限はない)。
この考え方を押し広げて考えてみると、お互いの賃貸借に関する制約があまりに強過ぎることになることを防ぐため、
法理的には、賃貸借契約に「賃貸借期間中に本契約を解約することはできない」と定めても、
通常の賃貸借契約通り、賃貸人および賃借人はいつでも解約の申入れをすることができる、という考え方に行き着きそうな気がします。
つまり、「賃貸借期間中に本契約を解約することはできない」と定めること自体が民法上法的に無効である(定めていないことと同じ)、
ということになりそうな気がします。
全条文を読んだわけではありませんが、民法上はこの点については特段の規定はないようです。
民法理的には、賃貸借契約は賃貸借期間中に当然に解約することができる、ということなのだと思います。
ただ、以上私が書きましたことはややトリッキーなところがあります。
それは、賃貸借契約は賃貸借期間中に当然に解約することができるのは、賃貸借契約に「期間の定めがない場合」であるということです。
賃貸借契約に期間の定めがなければ、当該契約は賃貸借期間中に当然に解約することができるのです。
逆から言えば、賃貸借契約に期間の定めがある場合は、賃貸借契約は賃貸借期間中に当然に解約することができない、となります。
話が極端に正反対になっているように思うかもしれません。
この理由は、賃貸借契約を締結すると、両当事者に権利と義務が発生するからだ、と説明できます。
賃貸人の権利は、賃料請求権です。
賃貸人の義務は、主に、目的物を使用収益させる義務です。
賃借人の権利は、目的物を使用収益する権利です。
賃借人の義務は、主に、賃料を支払う義務や目的物返還義務(契約終了時)です。
つまり、賃貸借契約に期間の定めがある場合、一方から他方へ解約の申入れをしても、
他方は賃貸借契約に定めた権利を盾にその解約の申入れを拒むことができるのです。
借りている方は借りているなりの理由があって借りているわけです。
賃借人は「この期間は目的物を使用収益する」という権利を契約締結により獲得したのに、
その中途で賃貸人からの解約の申入れにより突如その権利を失う、というのは、一体何のための契約であり権利か、という話になるわけです。
賃貸借契約に期間の定めがある場合は、賃貸借契約は賃貸借期間中に当然に解約することができない、となるわけです。
もちろん、両当事者が解約に合意すれば解約は自由ですが。
要するに、賃貸借契約に期間の定めがある場合は、賃貸借期間中に他方から強制的に権利を奪われることはない、
ということ言いたいわけです。
>中途解約:賃貸借期間中に本契約を解約することはできません。
との文言は不必要、ということになります。
この文言・定めは、なくても「賃貸借期間中に本契約を解約することはできない」という意味に当然になります。
なぜなら、当該賃貸借契約には、契約期間として「引渡日から10年間」との定めあるからです。
仮にこの文言・定めがないとしても、「引渡日から10年間」は、賃貸人の方から賃借人に対し貸している建物を返せと言っても、
賃借人は「目的物を使用収益する権利」でもってその請求を正当に拒否することができるのです。
逆に、仮にこの文言・定めがないとしても、「引渡日から10年間」は、賃借人の方から賃貸人に対し借りている建物を返したいと言っても、
賃貸人は「賃料請求権」でもってその請求を正当に拒否することができるのです。
賃貸人の意思に反し、賃借人の方から賃貸人に対し借りている建物を強制的に返すことは、
賃貸人から強制的に権利を奪うことになるのです。
賃貸人には「期間の最後まで賃料を受け取る権利」がある以上、賃借人にはやはり「期間の最後まで賃料を支払う義務」があるのです。
以上が、民法における賃貸借契約の原則的規定及び法理的な考え方になります。
民法上、賃貸借の目的物には特に限定はありません。
どんな目的物であれ、借りる契約には全て、基本的には民法の賃貸借の規定が適用されます。
ただ、特に賃貸アパートや土地や建物の賃貸借の場合には、民法の特別法である借地借家法が適用されます。
借地借家法は賃貸権ではなく特に「賃借権」について定めてあり、民法の原則規定に比べ、賃借人が厚く保護されています。
ですから、先ほどの日本ロジスティクスファンド投資法人の賃貸借契約のように、
賃貸アパートや土地や建物の賃貸借に限っては、
賃借人の方から賃貸人に対し借りている部屋・建物等を返したいと言えば、賃貸借期間(2年間が多いかと思いますが)の中途であっても、
賃貸人は「賃料請求権」をもってしてもその請求を拒否することができず、当該賃貸借契約は適法に解約となるわけです。
この場合の適法の「法」とは民法ではなく借地借家法です。
確かに、賃貸借期間の中途での解約申入れは当然に民法違反かもしれませんが、賃貸アパートや土地や建物の賃貸借に限っては、
民法ではなく借地借家法が優先して適用されますので、当該賃貸借契約は適法に解約となるのです。
それでは、特に賃貸人が賃借人を縛るため、賃貸アパートや土地や建物の賃貸借契約において、
「中途解約:賃貸借期間中に本契約を解約することはできません。」と定めることはどうなのかと言えば、
借地借家法の厳密な規定は私には分かりませんが、法の「賃借人を厚く保護する」という趣旨だけから判断すると、
おそらく借地借家法違反になると思います。
逆に、賃借人(ここでは株式会社日立物流)が当地において今後10年間は安定した一般貨物自動車運送業を営んでいきたいと考えており、
賃貸アパートや土地や建物の賃貸借契約において、
「中途解約:賃貸借期間中に本契約を解約することはできません。」と定めることはどうなのかと言えば、
借地借家法の厳密な規定は私には分かりませんが、法の「賃借人を厚く保護する」という趣旨だけから判断すると、
当然に借地借家法上適法であると思います。
この場合は民法の場合の考え方と同じ様に、「中途解約:賃貸借期間中に本契約を解約することはできません。」と明文で定めなくても、
借地借家法上、当然に賃貸借契約は賃貸人の申入れによっては「賃貸借期間中に当該契約を解約することはできない」となると思います。
賃貸借契約の中途解約に関する民法と借地借家法の違いを簡単にまとめれば次のようになると思います。
「賃貸借期間の中途での解約申入れは認められるのか否か」