2014年7月7日(月)
2014年7月2日
宝印刷株式会社
剰余金の配当に関するお知らせ
ttp://contents.xj-storage.jp/xcontents/79210/efba209f/bdea/42eb/a173/852659f4fa19/140120140702006874.pdf
2014年7月2日
株式会社東芝
個人投資家向け普通社債の発行について
ttp://www.toshiba.co.jp/about/ir/jp/news/20140702.pdf
社債・格付情報
ttp://www.toshiba.co.jp/about/ir/jp/stock/bond.htm
【コメント】
昨日のコメントの追加になりますが。
昨日、負債を交換する場合はその前後で債権者が同じか異なるかは債務者にとって根本的に異なる、と書きました。
この点についてなのですが、東芝は「個人向け」社債を発行するようです。
個人投資家は、法人投資家や金融機関に比べて、「次も東芝の社債を買う」という投資行動を相対的に取らないと思います。
法人投資家や金融機関の場合も「次も同じ会社の社債を買う」とは限らないわけですが、個人投資家の場合は特にそうなりそうだと思います。
大まかに言えば、社債の場合は負債の交換前後で債権者が変わることが想定され、
銀行(メインバンク)からの借入金の場合は負債の交換前後で債権者は変わらないと考えられると思います。
もちろん、経営上は、負債を交換すること主眼に置くのではなく、期日までに十分なお金を稼ぎ負債をきちんと弁済する、
つまり、借入金の借り換えや償還のための社債再発行はしない、ということをあくまで第一目標とすべきですが。
ここでは、残念ながら「償還のため社債を再び発行せざるを得なくなった」場合のことを、プレスリリースを題材にして考えてみましょう。
「個人投資家向け普通社債の発行について」
第60回無担保社債(社債間限定同順位特約付)
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このたび東芝が発行する予定となっている社債の償還期日は「2018年7月25日」となっています。
つまり、東芝は、2018年7月25日に「必ず」、
(第60回無担保社債) 300億円 / (現金) 300億円 ・・・@
の仕訳を切らなければならない(切れなければならない)わけです。
もしこの@の仕訳を切れない場合は、債務不履行です。
(現金) 300億円 / (第7X回無担保社債) 300億円 ・・・A
の仕訳を切らなければならない(切れなければならない)わけです。
もちろん、その時社債の引き受け手がいなければ、このAの仕訳は切りたくても切れないわけですが。
昨日のコメントで、
>この場合の仕訳ですが、次のようになります。
>
>(現金) xxx / (新社債) xxx
>(旧社債) xxx / (現金) xxx
>
>償還日現在において過去に発行した社債を償還するための手許現金がない場合は、
>
>(旧社債) xxx / (現金) xxx
>(現金) xxx / (新社債) xxx
>
>という仕訳も間違いということになるでしょう。
と書きましたが、今日の東芝に即して言えば、仕訳の順番は必ず「仕訳A→仕訳@」の順番であるわけです。
仕訳@を先に切ることなどできません。
もし仕訳@を先に切ることができるのならば、東芝は仕訳Aそのものを切る必要がないはずです。
なぜなら、仕訳@を切ることができた時点で、東芝は償還期日までに十分なお金を稼ぐことができた、ということを意味するからです。
ここでは「償還のため社債を再び発行せざるを得なくなった」場合のことを考えています。
このことを一般化して言えば、
十分な現金がない場合は、どんなに遅くとも満期日までに償還できるだけの資金を調達し終えていなければならないのです。
また、銀行(メインバンク)からの借入金とは異なり、社債の場合は債権者は負債の交換前後で変わることが想定される、すなわち、
第60回無担保社債の購入者と第7X回無担保社債の購入者は異なるであろうことが想定されますので、東芝が、
(第60回無担保社債) 300億円 / (第7X回無担保社債) 300億円 ・・・B
の仕訳を切ることはまずあり得ないでしょう。
大まかに言えば、債権者の数が多ければ多いほど実際に会社から現金が出入りする(現金勘定が現に出てくる仕訳を切る)ことになり、
債権者の数が少なければ少ないほど会社から実際には現金は出入りしない(仕訳Bのように仕訳に現金勘定は出てこない)ことになる、
と言えるでしょう。
銀行(メインバンク)からの借入金の場合は債権者というのは1人です。
一方、個人向け社債の場合は債権者の数は非常に多いでしょう。
このことは、経営的な視点から見れば、社債に比べ銀行借り入れは非常に融通が利く、という言い方ができると思います。
銀行借り入れの場合はただ1人の債権者と交渉すればそれで済みます。
しかし、社債の場合ははるかに大勢の債権者と交渉せねばならないわけですから。
さらに、東芝の社債には「社債間限定同順位特約付」という条件が付いています。
会社倒産時には、会社の債務のうち担保が付いている債務と先取特権が付いている債務を除いて、全債務は平等に取り扱われます。
金融債権には特段の区別はありませんので、会社が発行している全社債は自動的に同順位となるのではないかと思います。
わざわざ「社債間限定同順位特約付」などという必要はないのではないかと思います。
ただ、「社債間に限って弁済に順位を付ける特約」というのは考えられると思います。
会社倒産時には、第8X回無担保社債よりも第7X回無担保社債の方を優先して弁済する、というふうに、
弁済に関して社債を順位付けすることは法的に認められる(適法な債権者平等の原則の修正、契約自由の原則の範囲内のこと)と思います。
ただ、注意が必要なのは、会社倒産時には、第7X回無担保社債よりも第8X回無担保社債の方を優先して弁済する、
という条件は付けられないのではないかと思います。
つまり、後に発行した負債は先に発行した負債に劣後する、という条件しか付けられないのではないかと思います。
なぜなら、後に発行した負債が先に発行した負債に優先すると、債権者の利益を害することになるからです。
債権者は、「この条件であれば会社と取引をしたい。この条件であれば弁済を受けられるであろう。」と判断して商取引を行ったわけです。
ところが、後に発行した負債が先に発行した負債に優先すると、取引の条件そのものが変わってしまうことに等しくなるわけです。
後に発行した負債が先に発行した負債に劣後する分には先の債権者の利益は害されませんが、
後に発行した負債が先に発行した負債に優先すると、取引の前提(会社の財務状況等も含め)が異なる、ということになるわけです。
誰だって倒産を前提には取引は行いません。
社債の弁済は全て同順位だと言われれば、先の債権者はまだ納得もするでしょう。
しかし、社債の弁済はあなたのは後だと言われれば、先の債権者は絶対に納得しないでしょう。
民法で定義された先取特権とは異なりますが、同じ種類の債務であるならば、先に発行した負債は後に発行した負債に劣後しない、という、
言わば先の債権者が優先であるというような必然的法理があるのだと思います。
民法で定義された厳密な「先取特権」とは区別しなければなりませんが、この権利のことは自然な一種の既得権だと表現できるでしょう。
民法上そして商法上(会社法上)は明文の規定はないかもしれませんが、
後に発行した負債が先に発行した負債に優先する条件を付ける場合は、先の債権者全員の同意が必要、という論理の流れになると思います。
なぜなら、先の債権者は全員平等だからです。
株主総会とは異なり、多数決のような考え方はそこにはないわけです。
取引毎に債権が発生し、当然その弁済を受けることを前提に債権者は取引を行ったわけです。
大口の取引先もいれば小規模な取引先もいることでしょう。
その取引の一つ一つが会社には必要だったわけです。
金額の大きさではその重要度は決して計れず、金額は小さいが経営上必要不可欠な仕入れというものはどの会社にもあるでしょう。
債権の金額の大きさで意思決定を行えるものではないわけです。
商取引は皆平等なのです。
株式とは異なり、債権額というのは権利の大きさを表すものではありません。
ただ、会社倒産時には他に弁済額を平等に割当てる方法がありませんので、
仕方なくそして債権者は皆平等だからこそ、按分比例により残余財産を各債権者の弁済に充てる、というだけです。
債権者には意思決定権はありません。
良しも悪しくも、債権者は債務の弁済を受けるだけなのです。
会社倒産時には債権者集会が開催されると言われますが、それはおそらく債権者が残余財産額や弁済額の確認を行うだけの場なのでしょう。
決して、何かの意思決定を行う場ではないと思います。
持株数に応じて平等な取り扱いを受けるのが株主平等です。
持株数が多ければ多いほど、株主の権利の大きさは大きいのです。
しかし、債権者は債権額によらず皆平等と考えるのが債権者平等です。
債権額が多くても少なくても、債権者の権利の大きさは同じなのです。
1株当たりの権利の大きさが平等であることを株主平等と呼ぶように、
1商取引当たりの権利の大きさが平等であることを債権者平等と表現してもよいと思います。
株主平等と債権者平等とでは、意味や権利のとらえ方が大きく異なります。
その理由の根源は煎じ詰めれば議決権の有無に行き着くのだと思います。