2014年6月22日(日)
>取締役の就任や配当支払いに限らず、株主総会で決議した事柄は全て、
>法理的には正式に決議が取られたと同時に正式に法的効力を発生させねばならない、と考えなければならないと思います。
と書きました。
この「正式に決議が取られたと同時に正式に法的効力を発生させねばならない」という点について、
非常に理解の助けとなる事例がちょうど三菱商事株式会社の株主総会であったようですので紹介します。
三菱商事株式会社
平成25年度定時株主総会
ttp://www.mitsubishicorp.com/jp/ja/ir/adr/sh_meeting/
招集通知/株主総会参考書類(議案の内容)
ttp://www.mitsubishicorp.com/jp/ja/ir/adr/sh_meeting/pdf/shoshu_2014/p02.pdf
(参考公告)
2014年6月21日(土)日本経済新聞 公告
役員の就任
株式会社テレビ東京ホールディングス
(記事)
株主総会における決議事項(決議結果)として、
「第1号議案 剰余金の処分の件」、「第2号議案 定款一部変更の件」、「第3号議案
取締役14名選任の件」、
「第4号議案 監査役1名選任の件」、「第5号議案
取締役賞与支給の件」、
の計5つの議案が載っているかと思います。
ここでの議論で重要なのは「第2号議案
定款一部変更の件」です。
当該「定款一部変更」は、株主総会の最中(決議が取られたと同時)に効力を発生すると考えねばならないでしょう。
定款が決議と同時に正式に変更になった、それを受けて、新たな取締役を選任する、という流れになろうかと思います。
例えば、当該株主総会「終結」と同時にではないわけです。
当該株主総会の「最中」に定款の一部変更が効力を発生するわけです。
なぜこの点を強調する必要があるのかと言えば、例えば次期事業年度より取締役の定員を増やす計画であるとします。
三菱商事株式会社で言えば、取締役の定員を現在の14名から例えば20名にこれから増やす計画であるとします。
この時、当該株主総会において、取締役の定員を20名とする旨、定款の一部変更を実施しなければならないわけです。
当該株主総会の「最中」に目的の定款の一部変更が効力を発生しないと、当該株主総会で20名の取締役を選任できないわけです。
当該株主総会の「最中」に目的の定款の一部変更が効力を発生しないと、当該株主総会では現行通り14名の取締役しか選任できないわけです。
当該株主総会の「最中」に目的の定款の一部変更が効力を発生しないと、6名の取締役の選任は無効となるでしょう。
この論点は、例えば、次のように考えてみるとそのおかしさが分かるでしょう。
当該定時株主総会でまず20名の取締役の選任しておいて、
その後改めて臨時株主総会を招集し、取締役の定員を20名とする旨、定款の一部変更を決議する、と。
臨時株主総会により取締役の定員を20名とする旨、定款の一部変更を実施した、
増加した6名は先の定時株主総会で既に選任している、だからその6名の取締役がそのまま就任する、
と考えてみると、何かおかしいなと思うでしょう。
20名の取締役を選任するのならば、先に定款変更が必要なのではないか、と。
この考え方は当該定時株主総会の最中に関しても言えることなのです。
このたびの三菱商事株式会社では、取締役の定員を増加させる定款変更ではなかったのですが、
取締役及び執行役員に関する規定を変更するという定款変更ですので、
やはり、新しい定款に基づいた上で新たな取締役を選任していく、という法理の流れが必要になってくると思います。
定款変更の効力発生は後からでもよい、ではないのです。
そういうわけで、「正式に定款変更の決議が取られたと同時に正式に定款変更の法的効力を発生させねばならない」と言っているわけです。
それで、「第1号議案 剰余金の処分の件」、「第2号議案 定款一部変更の件」、「第3号議案 取締役14名選任の件」、
「第4号議案
監査役1名選任の件」、「第5号議案
取締役賞与支給の件」、
というふうに、第1号議案から第5号議案まであるのですが、
取締役及び執行役員に関する規定を変更するという定款変更を実施しますので、少なくとも、
「定款一部変更の件」→「取締役14名選任の件」→「監査役1名選任の件」の順番に決議を取っていかねばなりません。
「定款一部変更の件」の決議を役員選任の決議の後に取ることは法理上は間違いです。
また、繰越利益剰余金の分配に関しては、会社法上明文の規定はないものの、選任・委任の重要性に鑑み、
株主への配当よりも役員報酬の方が優先されるべきという法概念上の考え方はあろうかと思います。
株主への配当は最後の最後、という考え方はあろうかと思います。
このたびの三菱商事株式会社の事例に即して言えば、
まず、平成25年度(平成25年度4月1日から平成26年3月31日まで)末における取締役に報酬を支払い、
次に、取締役及び執行役員に関する規定を変更するのなら先に変更し(定款の一部変更を決議・変更実施)、そして新たな取締役を選任し、
新たな取締役の下での今後の会社運営や経営環境を十分に斟酌した上で最後に株主への配当額を決定する、
という流れが必要であろうと思います。
そうしますと、株主総会における決議事項(決議を取る順番)は、
「第1号議案
取締役賞与支給の件」
「第2号議案 定款一部変更の件」
「第3号議案 取締役14名選任の件」
「第4号議案
監査役1名選任の件」
「第5号議案 剰余金の処分の件」
という順番に決議を取っていかねばならないと思います。
2014年6月21日(土)日本経済新聞
改正会社法が成立 社外取締役 選任促す 複数化が今後の焦点
(記事)
【コメント】
多重株主代表訴訟制度の新設、監査等委員会設置会社制度の新設、社外取締役の要件厳格化、
の3つを主なポイントして、会社法が改正されたようです(2015年4月施行予定とのことです)。
どれも個人的には不必要な改正であるように思えますが。
個人的には、法改正や現行の条文ではなく、「そもそもの法理」が極めて重要であると思います。
会社法改正を受けてというわけでもありませんが、今日は、取締役の「会社に対する」損賠賠償責任を題材に、
商法理の基本概念として、株主、株式会社、取締役、債権者の4者の関係を図に書いてみました。
ポイントは、
株主ではなく「債権者」を中心に商法理を見ると4者の関係がすっきりする。
「民法ではどう考えるか」を下敷きにすると4者間の商法理がすっきりする。
の2点です。
会社法と聞くと、このたびの改正のように、どうしても株主を中心に会社法を見がちです。
しかし、「債権者」を中心に会社法を見ると、なぜそのような定めになっているのかが理解しやすいと思います。
そもそも商法制は債権者保護が目的である、という理解が大切だと思います。
それから、会社法は民法の特則を定めたもの、という見方も大切です。
民法の法理や原則規定を下敷きにすると、会社法ではなぜそのような定めになっているのかが理解しやすいと思います。
「債権者は、誰に対して、そして、どの法律を根拠に損害賠償を請求できるのか?」