2014年6月9日(金)



2014年6月5日(木)日本経済新聞
IHI、社債200億円 月内にも
(記事)



 

【コメント】
昨日の楽天が社債を発行するという記事を紹介しましたが、今日正式にプレスリリースが発表されたようです。


2014年6月9日
楽天株式会社
無担保社債の発行に関するお知らせ
ttp://corp.rakuten.co.jp/news/press/pdf/20140609_J.pdf


利率は、仮条件の「年0.20%〜年0.60%」ということで、まだ正式決定ではないようです。
利率は平成26年6月13日に決定予定とのことです。
申込期間は平成26年6月16日からの予定とのことですので、引き受け手にとっても問題はないとは思いますが、
見方によっては「年0.20%〜年0.60%」という条件には随分差があるようにも感じます。
差はわずか年0.40%しかないと見るべきなのか、それとも、最大予定利率は最小予定利率の3倍もあると見るべきなのか。
利息を支払うことそして利息を受け取ることだけを考えると、差はわずか年0.40%しかない(どちらも大差ない)
という見方になると思います。
しかし、理論上利率はリスクの大きさによって決まるということを考えると、利率に3倍もの差があるというのは、
発行者は同じなのにリスクの大きさにそんなに差が生じることがあり得るのか、という話になると思います。
むしろ逆にと言いますか当たり前と言うべきかもしれませんが、発行者が同じならリスクの大きさも当然同じのはずではないでしょうか。
同一の発行者にリスクの大きさが2通り(以上)あるのでしょうか。
今後利率がいくらに正式決定されるにしても、発表されている予定利率に3倍もの開きがあるというのは、
理論上はおかしいように思いました。

 



それから、このたびの社債は「個人投資家を主たる販売先」 としているようです。
このことに関連して、プレスリリースの最後には、

>なお、機関投資家を販売先とする当社無担保社債についても、発行を検討しております。

と書かれています。
簡単に言いますと、「個人投資家を主たる販売先」とする社債と「機関投資家を販売先」とする社債の2つがある、ということになります。
社債に関する具体的な記載はありませんが、上場企業である楽天株式会社が発行する社債ということで、国債と同じ様に、
これらの社債も購入後売却しようと思えば比較的容易に売却できる擬似的な市場があるのだと思います。
市場の投資家も、社債発行後に社債市場で楽天株式会社の社債を購入できるのだと思います。
簡単に言うと、社債をその後売買できる社債市場があり、市場で売買できる社債のことを”上場している”と表現したりするのだと思います。
社債は上場している、それなのに、販売先を誰かが決めてよいのか、という議論はあろうかと思います。
社債が上場しているのなら、その販売先は市場でなければならないのではないか、という議論はあろうかと思います。
この論点を一般化して言えば次のようになると思います↓。

「上場している証券と非上場の証券とは、概念・特徴が正反対であると考えなければならない。」


ここでは論点を一般化して、株式と社債をまとめて「証券」と表現しています。
話を分かりやすくするためにやや極端に証券を特徴付けているわけですが、
上場している証券と非上場の証券とは概念上このように両極端の性質を持っていることだけは確かです。
法制度も、この両極端な性質を踏まえた上で証券取引規制を整備していくことが重要であるわけです。
条文が先なのではありません。
証券の性質が先なのです。
この論点をこのたびの社債に即して言えば、発行者である楽天株式会社と引受会社である証券会社も含め、
誰も社債の販売先を選んではならない、ということになります。
概念上の話になるかもしれませんが、発行者である楽天株式会社は市場に対して社債の引き受け手を募り(いわゆる公募)、
社債を購入したいと思う投資家はその旨証券会社へ伝え、証券会社はその購入希望を楽天株式会社へ取り次ぐだけ、
という流れになろうかと思います。
もちろん実際には、証券会社が社債を便宜上保有するであったり投資家へ社債の購入を勧誘する、といったことになろうかとは思いますが。
ここで言いたいのは、上場か非上場かが両極端なのであって、株式と社債は証券という点では同じだ、という点なのです。
法制度整備上も、株式か社債かで分けるのではなく、上場か非上場かで分けないといけないわけです。
そしておそらく現にそう整備されているかと思います。
上場している場合は、株式も社債も、販売先も売買相手も価格も誰も一切選べない(市場取引のみ)、というのが理論上の結論だと思います。