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2014年6月8日(日)



2014年6月8日(日)日本経済新聞
楽天、初の公募社債 300億円、設備投資に充当
(記事)

 



【コメント】
楽天が「東北楽天ゴールデンイーグルスボンド」という名称の普通社債を発行するようです。
個人投資家向け(公募)に販売するそうです。
この社債は、楽天グループの楽天証券でも取り扱うそうです。
証券会社は、証券の発行者に対しても投資家に対しても中立でなければならない(証券会社はそのどちらとも利害関係があってはならない)、
というのが証券市場における基本的考え方かと思います。
親会社が発行する社債を子会社の証券会社が販売するというのは、中立性の観点からは問題があるかもしれません。
なぜなら、楽天証券が親会社が発行する社債ばかりを投資家に勧める結果、他の会社が十分な資金調達をできなくなる恐れが出てくるからです。
証券会社は、どの証券でも特段に勧める立場にあってはならないわけです。
証券会社は、どの証券でも公平に中立に勧めなければならないのです。





それから、楽天は社債発行で得た資金を販売促進の費用に使うと書かれています。
もし本当にそうなら、社債の償還期限は1年以内でなければならないでしょう。
なぜなら、販売促進の費用は発生した期中に回収しなければならないからです。
これは、設備投資の際、負債の借入期間と有形固定資産の減価償却期間とは一致させなければ資金の調達・運用のバランスが崩れる、
という財務上のバランスと同じです。
ただ、販売促進の費用の回収は売上高ということになろうかと思います(正確には売上高以外では販売促進の費用は回収できない)ので、
煎じ詰めれば、「社債発行で得た資金を販売促進の費用に使うことはできない」と言わねばならないと思います。
端的に言えば、販売促進の費用に使った後、社債はどうやって償還するのか、という話になるわけです。
社債の償還原資は煎じ詰めれば売上高しかありません。
まあ、販売促進の効果が現れるまでに数年かかるので、販売促進の費用を発生した期中に回収し切れない(次の期以降に回収可能)としても、
売上高により回収可能になるまでのつなぎの資金として社債を発行する、と見ることもできるかもしれませんが。
ただ、それは、販売促進の費用を発生した期中に回収し切れなかったので結果としてつなぎ資金として資金を借り入れた、
という流れになるだけのことであり、はじめからつなぎ資金として資金を借り入れることを計画するのは経営上何か違うと感じます。
それは結局のところ、販売促進の費用の回収可能性というような部分の話になるのだと思います。
販売促進の効果が現れるまでに数年かかるということも、確かにあると言えばあるとは思います。
しかしそれは根拠として弱いと言いますか、販売促進の効果が現れる可能性はどれくらいあるのか、という話になるわけです。
仮に、販売促進の効果が結局現れなかったらどうするのか(売上高が増加しなかった場合社債はどう償還するのか)という話になるわけです。
一般に、つなぎ資金を借り入れるという場合には根拠があります。
それは貸借対照表です。
売上債権と仕入債務との決済までの間にライムラグがある、だからそのタイムラグを埋めるためにつなぎの資金を借り入れるのです。
売上債権は現に実現しています。
決済の期日は決まっているのです。
だから、つなぎの資金を借り入れることができるのです。
まだ実現してもいない将来の売上高を根拠につなぎの資金を借り入れるというのは、経営上行うべきではないと思います。
確かに、設備投資(有形固定資産の取得)を実行する際も、まだ実現していない将来の売上高を根拠に投資や借り入れを行っている、
という部分もないわけではないかもしれませんが、そこは十分に売上見通しを行い保守的に利益計画を吟味していただくこととして、
いわゆるつなぎ資金の借り入れに関しては、基本的には以上のようなことが言えるのではないかと思います。

 



さて、楽天証券株式会社については、次のようなプレスリリースがありました。


2014年4月28日
楽天株式会社
連結子会社(楽天証券株式会社)の決算について
ttp://corp.rakuten.co.jp/news/press/pdf/20140428_J.pdf


>なお、当社グループは、国際会計基準に基づく四半期決算報告を行っておりますが、
>添付の楽天証券の決算は日本基準に基づいており、国際会計基準とは異なる会計処理を行う取引があることをご承知おきください。

と書いてあります。
楽天株式会社が国際会計基準に基づいて連結財務諸表を作成するというのなら、
まず楽天株式会社自身が個別財務諸表を国際会計基準に基づいて作成し、
さらに連結子会社の楽天証券株式会社の個別財務諸表も国際会計基準に基づいて作成して、
それらを合算する必要があります。
日本基準と国際会計基準とでは異なる会計処理を行う取引があるわけですから、
当然のことながら、日本基準に基づいた個別財務諸表と国際会計基準に基づいた個別財務諸表は異なります。
するとここで疑問に思うわけです。
個別財務諸表が異なるので当然連結財務諸表も異なるわけだが(だから前期と当期の連結財務諸表間の整合性や連続性が問題になる)、
それなら、連結調整勘定(のれん)の価額そのものも異なるはずなのでは、と。
前期(平成25年12月期)までの連結調整勘定の価額は日本基準に基づいた連結調整勘定の価額だったわけです。
国際会計基準に基づいた個別財務諸表で支配を獲得していたら、また別の連結調整勘定の価額になっていたはずです。
支配獲得時の連結調整勘定の価額が異なるとなりますと、
当期(適用初年度)や前期の連結財務諸表を修正・開示すれば済むというレベルではないでしょう。
全ての会社の設立時にまでさかのぼるべきだというと無理があるかもしれませんが、
少なくとも支配獲得時にまでさかのぼらないと国際会計基準に基づいた連結財務諸表とはとても言えないでしょう。
支配獲得時の連結調整勘定の価額が異なりますので、連結調整勘定の未償却残高や償却済みの価額との整合性がとても取れないと思います。
この不整合・非連続性は、”国際会計基準ではのれんの規則的な償却は行わない”という問題をはるかに超えた問題と言えるでしょう。

 



この問題点については、以前ソフトバンクからプレスリリースが発表されていました↓。


2013年4月8日
ソフトバンク株式会社
国際会計基準(IFRS)の任意適用により予想される影響に関するお知らせ
ttp://www.softbank.jp/corp/news/press/sb/2013/20130408_02/


日本基準と国際会計基準との主な変更点が記載されています。
ここに、

>3. のれんの規則的な償却の停止
>日本基準でののれんの未償却残高(IFRSへの移行日現在の残高)をそのまま引き継ぎます。

と記載されています。
しかし、そもそも支配獲得時の連結調整勘定の価額が異なるわけですから、日本基準でのれんの未償却残高を引き継げるはずがないのです。
国際会計基準に基づいて支配獲得を行っていたら、また別の連結調整勘定だったはずですから。
IFRS 第1号の免除規定を適用すると、日本基準でののれんの未償却残高を国際会計基準に基づいた連結財務諸表に引き継げるようですが、
連結会計上、根本的にのれんを引き継ぐというようなことはできないのではないでしょうか。
より技術的な話をすると、適用する会計基準を変更すると、連結精算表上の開始仕訳から始まる一連の流れの連続性が完全に断ち切られる、
ということになると思います。
何か減損テストの応用バージョンのようなイメージになりますが、支配獲得時にまでさかのぼり国際会計基準で連結財務諸表を作成し、
連結調整勘定の価額をIFRSへの移行日現在の残高まで一気に償却する、というようなことはできるかもしれません。
しかし、それはあくまで連結調整勘定の価額が同じであるというだけであり、
連結会計上は理論的には、日本基準でののれんの残高と国際会計基準でののれんの残高とには、整合性や連続性やつながりはないでしょう。
楽天株式会社の場合は、連結調整勘定を発生したその期に全額を一括償却するという会計処理を行ってきています。
そのため、国際会計基準適用により連結調整勘定を規則的に償却しないということが一見問題にならないように感じるかもしれませんが、
支配獲得時の連結調整勘定の価額が異なることには変わりありませんので、結局、連結調整勘定の償却額が問題になるわけです。
すなわち、連結調整勘定の償却額による連結利益剰余金の減少額(連結貸借対照表上の価額)が間違っていることになるのです。
これは、IFRS 第1号の免除規定の適用云々ではどうしようもない問題点でしょう。

 


適用する会計基準を変更すると、本来は個別財務諸表は(理論上は会社設立時にまでさかのぼって)作り直さないといけないわけですが、
連結会計上も支配獲得時にまでさかのぼって根本的に連結財務諸表を作り直さなければならないわけです。


ソフトバンクのサイトに、次のようなページがありました↓。

孫正義@masason「やりましょう」進捗状況
ttp://do.softbank.jp/

「キャプチャー1」

「キャプチャー2」



「支配獲得時にまでさかのぼって国際会計基準を適用した連結財務諸表の作成」

という案件を誰か提案してみてはいかがでしょうか。
孫正義社長には是非、「やりましょう。」と言っていただきたいものです。


もちろん、適用する会計基準を変更してしまうと、異なってくるのは連結調整勘定の価額だけではありません。
連結財務諸表作成の一連の流れを踏まえれば、
「個別財務諸表が異なる、だから、連結財務諸表も異なる。」
という因果関係があるわけです。
連結調整勘定の価額が異なってくるのは個別財務諸表が異なってくることのあくまで一結果に過ぎず、結局のところ、
「1. 端末販売インセンティブの取扱い」、「2. 一部の流動化債権の連結貸借対照表への計上」、
「4. 一部の持分法適用関連会社の連結」、「5. SFJ Capital Limited発行の2,000億円の優先出資証券を有利子負債とする会計処理」、
全てが支配獲得時にまでさかのぼらないと正確な連結財務諸表とは言えないわけです。
どれも、当期の連結修正消去仕訳だけで済む話ではない、と言えばいいでしょうか。
日本基準から国際会計基準への変更で問題となる差異とは、連結財務諸表が異なることではなく、
根源的・究極的には、「個別財務諸表が異なることだ。」と言わねばならないのでしょう。
国際会計基準を適用して開示するのは連結財務諸表の方のみですから、個別財務諸表は国際会計基準は関係ないかのように思ってしまいますが、
むしろ話は正反対であり、問題の根源は「個別財務諸表が異なること」という点に行き着くのだと思います。

 



ソフトバンクと言えば、次のような記事がありました。
先ほどの連結上の「2. 一部の流動化債権の連結貸借対照表への計上」と関連があると思います。


2014年6月5日(木)日本経済新聞
ソフトバンク今期 売掛債権3800億円売却 財務悪化抑え資金捻出
(記事)



「端末メーカー~携帯通信会社~契約者」間の正確な代金支払い方法は分かりませんが、
携帯通信会社は端末メーカーから端末機を仕入れ(買い切る)、
携帯通信会社は契約者へその端末機を割賦販売する(代金回収は通話通信料金と一緒に行うなど)、
という流れなのであれば、
携帯通信会社の貸借対照表には、一定額の棚卸資産(端末機在庫)、支払い期間が数ヶ月の買掛金(取引先端末メーカーに対する)、
そして、回収期間が24ヶ月間の売掛金(契約者に対する)、が計上されることになると思います。
買掛金と売掛金の決済までの期間が著しく異なりますので、資金繰りは常に非常に厳しい状態にあると言えるでしょう。
さらに、一定額の棚卸資産(端末機在庫)はまだ現金化(契約者への販売)のメド(現金化できる期日)すら立っていないわけです。
一定額は棚卸資産に現金が化けている上、現金収入(売掛金の回収)よりも現金支出(買掛金の支払い)が常に先に来る形ですから、
資金は極めて厳しい状態が常に続いていると思います。
営業活動によるキャッシュフローは、この取引形態であれば、売上高が伸びれば伸びるほどどんどんマイナスになると思います。
なぜなら、売上高が伸びれば伸びるほど売掛金がどんどん増加するからです。
しかも、この取引形態の場合、同じ理由により、流動比率だけでなく当座比率ですら100%をはるかに大きく超えることになります。
貸借対照表だけを見ると、財務状況を勘違いしてしまう(当座比率が100%をはるかに超えているなら資金繰りに問題はない等)と思います。
記事によりますと、ソフトバンクは2015年3月期にこの売掛金を機関投資家等に売却し事業のための資金を得ていく見通しとのことです。
ソフトバンクは売掛金をできる限り早く回収したいと思っている理由がよく分かるのではないかと思います。
財務状況を誤認させかねないため、割賦販売における売上高の計上が間違っているのではないかと思われるかもしれません。
確かに、保守的に会計処理を行っていこうとすれば、割賦販売の収益認識は、販売基準ではなく回収基準によるべきだと思います。
しかし割賦販売の場合、販売基準であろうが回収基準であろうが、「割賦売掛金」自体は販売実現時に全額が計上されます。
これは、「割賦売掛金」は割賦販売実現により会社が持つ債権の金額を表すわけですから、むしろ自然な会計処理です。
したがって、割賦売掛金勘定がこの場合著しく大きくなってしまうのは、ある意味致し方ないことなのです。
貸借対照表だけでは財務状況を誤認させかねないのは確かですので、回収期間に関する詳細な注記が望まれるのではないかと思います。