2014年5月30日(金)



2014年5月30日(金)日本経済新聞
オリックス社債1000億円 今期、負債の長期化進める
(記事)



 

2014年5月30日(金)日本経済新聞
トヨタが社債400億円調達へ
(記事)

 


【コメント】
昨日のコメントで一部分かりづらかった点があったかと思いますので追加で一言だけ書きます。
昨日は社債の利率はどこまで上昇し得るのかという文脈で、

>社債の利率は概念上大まかに言えば最大100%まで上昇すると言える(さすがに元本より多く返せとは言われないでしょう)でしょう。

>社債発行者の将来の償還可能性の影響度というのは、利率で言えば最大100%なのです。

と書きました。
ここが分かりづらかったかと思います。
この「100%」という数値には理論的な根拠というのは実はありません。
社債の引き受け手からすると、万が一社債発行者が債務不履行を起こし、社債の元本の償還と利息の支払いは全額はなされないとしても、
最低でも元本に相当する金額だけでも弁済を受けたいと思うのではないかと思いましたので、
元本に対する割合としては「100%」になるなと思ったわけです。
率直に言えば、実は「100%」という数値は厳密な数値というわけでは全くありません。
また、社債発行者の立場から見ても、元本よりも多くの金額を毎年利息として支払わなければならないというのは不可能なことでしょう。
債務者が毎年利息として支払えるのは、元本の数パーセントのみでしょう。
同時に、社債の引き受け手はリスクに応じた利率を発行者に要求するわけですから、
将来の社債の償還可能性が低くなれば低くなるほど、社債の利率は発行者と引き受け手との交渉の結果、どんどん上昇するでしょう。
では社債の利率はどこまで上昇し得るのかと言えば、発行者の利息負担可能な金額を想像すれば、最大でも元本の金額以下であろうと思います。
利息額が元本と同じということは、利率は「100%」ということになるでしょう。
それで、利率は最大では100%だ、と書いたわけです。
社債の引き受け手側から見ても、社債発行者側から見ても、考えられるとすれば利率は最大100%だろうかと昨日は思ったわけです。

 



法律面こと(法定利率など)は置いておくと、理論上は利率には上限はないと思います。
100%を超える利率も理論上はあり得るとは思います。
ただ、債権者も債務者も債務不履行を前提とはしていないわけですから、
利率は自ずと「債務者が支払える範囲内」に限られてくるわけです。
ここでいう「債務者が支払える利率」とは何かと言うと、
財務分析の観点からは、「ROA(資産利益率)以下の割合(率)」、ということになると思います。
企業にとっては、その事業から得られる利益率(ROA)は事業資金の調達コスト(負債利子率:i)よりも大きくなければならないわけです。
ここでは負債調達に関わる単一事業のみを考えており(その事業のみの分析を行っている)、
分母は負債調達により投下した資本額(有形固定資産等)、分子はその事業のみの営業利益額だと思って下さい。
簡単に書けば、「ROA>i」でなけれならないわけです。
仮に”ROA<i”なら、その事業は赤字です。
分子のみを比較するなら、「営業利益額>支払利息額」なら黒字、逆なら赤字だ、と言っているわけです。
そういう意味では、債権者も債務者も債務不履行を前提とはしていない(黒字経営を行っていき債務を弁済することが前提)わけですから、
負債の利率はその事業のROA未満でなければならない、という明確な基準はあろうかと思います。
もちろん事前に厳密なROAは分かりませんが、設備投資計画を立案する際、
将来をできる限り見通し、利益額や利益率といった利益計画と負債の返済計画は十分に吟味するかと思います。
その際にはやはり、「ROA>i」(営業利益額>支払利息額)でなけれならない、という点は設備投資実施を決定する上で重要かと思います。
負債の利率が100%というと、経営的にはROAが100%を超えるという意味であり、
それは設備投資を行った金額以上の利益を毎年毎年稼ぎ出すことができる、という意味になります。
そのような設備投資というのは現実にはまずあり得ないことなのだろうと思います。
そういったことを考えますと、負債の利率というのは、最大100%どころか、最大10%もいかないのだろうと思います。

また、十分な利益を稼ぎ出す見込みがあるということであれば、将来の負債の返済可能性も非常に高いということになりますので、
そのような場合、理論上は逆に負債の利率は下がるのではないだろうか、という気もします。
逆から言えば、十分な利益を稼ぎ出す見込みがない場合は、将来の負債の返済可能性も非常に低いということになりますので、
理論上は負債の利率は上がるのではないだろうか(債権者はますます貸せず、債務者はますます借りられない)、という気もします。
法律面や実務面のことは置いておくとして、理論上は、負債の利率は事業の収益性に対し、

an interest rate spiral (インタレストレイト・スパイラル) 「(悪循環・良い循環による)利率・利幅のらせん状進行過程」

の状態にあると表現できるのかもしれません。