2014年5月25日(日)
【コメント】
コマツのサイトには社債発行に関連するプレスリリースはありませんでした。
コマツの他のプレスリリースについて見ていましたら、目に止まったプレスリリースがありましたので、
その点についてコメントします。
2014年4月25日
株式会社小松製作所
当社の使用人および当社の主要な子会社の取締役に対して株式報酬として発行する新株予約権の募集事項の決定を
当社取締役会に委任する件に関するお知らせ
ttp://www.komatsu.co.jp/CompanyInfo/press/2014042515084916421.html
第141回定時株主総会 (2010年6月23日開催)
決議ご通知
ttp://www.komatsu.co.jp/CompanyInfo/ir/shares/meeting/pdf/141convocation_j.pdf
決議事項
(2/71ページ)
株式会社小松製作所の取締役に付与することについて
→報酬等の額および内容の決定に関して株式会社小松製作所の株主総会で承認を取っている。
株式会社小松製作所の使用人および株式会社小松製作所の「子会社」の取締役に付与することについて
→募集要項(報酬等の額および内容)の決定を株式会社小松製作所の取締役会に委任するに関して
株式会社小松製作所の株主総会で承認を取っている。
簡単に言いますと、新株予約権を付与することに関して株式会社小松製作所の株主総会で承認を取っているわけですが、
承認決議の内容が異なります。
付与する相手が株式会社小松製作所の取締役の場合は、報酬等の額および内容そのものについて承認を取っています。
一方、付与する相手が株式会社小松製作所の使用人および株式会社小松製作所の「子会社」の取締役の場合は、
報酬等の額および内容の決定については取締役会に委任してくれるよう承認を取っています。
承認の取り方が、
付与する相手が株式会社小松製作所の取締役の場合は直接的、
付与する相手が株式会社小松製作所の使用人および株式会社小松製作所の「子会社」の取締役の場合は間接的、
といった感じがするかと思います。
この違いは法理的には非常に大きいのではないかと思いました。
そして、以上のような法理的なつながりに加えて、より実務的なことを鑑みると、
株式会社小松製作所の取締役の数は少ない(取締役は10名のみ、しかもそれら取締役は株主が直接的に選任した会社機関)のに対し、
付与する予定である使用人の数や子会社取締役の数は非常に多いわけです。
また、まだ付与する対象者が現時点では決まっておらず付与する対象者を経営上今後適宜決めていくということもあるでしょう。
株主総会の時点で決めてしまうことも、その度毎に細かく臨時株主総会を招集することも、実務上難しいということもあるでしょう。
そういった実務上の問題点を踏まえ、使用人および「子会社」取締役への付与に関しては取締役会に一任させてもらいたい、
と株式会社小松製作所は考えているのだと思います。
それから、会社は権利行使に伴い新株式を発行することになるわけですから、
付与する相手によらず、新株予約権発行の際は法理的には必ず株主総会決議が必要となると考えねばならないでしょう。
株式会社小松製作所の場合は権利行使価額が著しく低い新株予約権の発行であるため、このように株主総会決議を取っているわけですが、
新株式を発行することそのことが株主に影響を与えるわけですから、
法理的には、付与する対象者や権利行使価額によらず新株予約権発行の際は必ず株主総会決議が必要だと考えるべきでしょう。
同じ新株予約権付与に関する株主総会決議でも、このたびの株式会社小松製作所の株主総会決議は二種類に分けられると思います。
株式会社小松製作所の取締役に付与することについての承認決議
→新株予約権を発行することに関する承認と会社の機関への報酬に関する承認
株式会社小松製作所の使用人および株式会社小松製作所の「子会社」の取締役に付与することについての承認決議
→新株予約権を発行することに関する承認のみ
つまり、「株式会社小松製作所の取締役に付与することについての承認決議」には、
新株予約権を発行することに関する承認の他に、会社機関への報酬に関しても株主は承認を行ったという意味が決議に含まれるわけです。
逆から言えば、「株式会社小松製作所の使用人および株式会社小松製作所の「子会社」の取締役に付与することについての承認決議」には、
報酬承認の意味合いは決議には含まれない、という言い方ができると思います。
法理的なつながり(株主には使用人や子会社取締役への報酬を決める権利はない)の点からもそうですし、
あくまで取締役会への一任を承認したものに過ぎない(誰にどれだけ付与するといったことは一切決定していない)という点からもそうでしょう。
新株予約権は株式報酬として付与されること自体は株主は承知しているわけですから、
広く間接的な意味合いでは決議は報酬を承認したものだと表現してもよいかもしれませんが。
以上書きましたような解釈上の相違点を鑑みますと、
議案が敢えて2つに分かれていることには非常に深い意味があるように私には思えます。
極端に言えば、「第5号議案 新株予約権発行に関する件」といった議題で議案を1つにまとめることもできたのかもしれません。
しかしそうではなく、株式会社小松製作所は議案を敢えて2つに分けています。
「会社機関に対する報酬と会社機関ではない者に対する報酬とは法理的・法概念的に根本的に異なるのだ」という、
株式会社の成り立ちの本質部分の1つが、この2つの議案に表れているように思いました。