2014年5月24日(土)
2014年5月24日(土)日本経済新聞
■ユナイテッド・アーバン投資法人 分配金2800円に上方修正
(記事)
分配金
ttp://www.united-reit.co.jp/ja_cms/ir/dividend.html
投資主総会について
ttp://www.united-reit.co.jp/ir/index4.html
>投信法又は規約により定められている本投資法人に関する一定の事項(規約変更、執行役員・監督役員の選任等)は、
>投資主の皆様によって構成される投資主総会で決定されます。
>本投資法人の投資主総会は、東京都内を開催場所として原則として2年に1回開催されます。
【コメント】
分配金についての記載を読みますと、ユナイテッド・アーバン投資法人は半年に一回分配金を支払っているようです。
簡単に言えば、ユナイテッド・アーバン投資法人は「1事業年度は6ヶ月間」と規約(株式会社でいう定款)で定めてるようです。
「1事業年度とは1年間である」と私は書きました。
2年間も会社を放置しておく株主などいないと私は書きました。
ではその反対に、「1事業年度とは1年未満(例えば6ヶ月間としましょう)である」と考えるのはどうでしょうか。
これなら出資者は半年毎に会社に対して業績を尋ねることができますし、細かい単位で適切な配当金を受け取ることもできます。
ユナイテッド・アーバン投資法人の場合は、投資主総会は2年に1回開催されいるようですが、
まずその点はおかしいとは思います。
1事業年度毎に業績を把握し、配当金の決定や経営陣の選任を行っていくことが必要だと思います。
なぜなら、ある時期の出資者は経営陣を選任する権利があるのにある時期の出資者はその権利がないことを意味するからです。
基準日の株主というのは、配当を受け取る権利と同時に経営陣を選任する権利があると考えなければならないのだと思います。
株主にとって、配当を受け取る権利というのは極めて大切な権利であるわけですが、
配当を受け取る権利や配当を受け取ることが何か会社や経営とは独立して存在するわけではありません。
経営状況や経営環境全体を総合的に勘案した上で、配当の金額を決定し、また、経営陣を選任するわけです。
ある事業年度の経営が思わしくなく無配となった場合、株主としては経営陣の交代を考えるでしょう。
ところが、配当だけは無配になったが同じ経営陣が引き続き経営を行うでは、株主の意思を適切に反映できないわけです。
「配当の決定と経営陣の選任」は1セットである、と言っていいと思います。
会社が配当を支払うたびに株主は経営陣を選任しなければならない、と言っていいと思います。
投資法人でも臨時投資主総会は招集できるのだとは思いますが、わざわざ臨時に召集するということではなく、
会社運営の大原則として定時投資主総会を1事業年度毎に開催すべきなのだと思います。
1事業年度=1配当支払い=1投資主総会=1経営陣の選任
という図式が会社の概念として成り立っているのだと思います。
次に、では例えばユナイテッド・アーバン投資法人では事業年度に合わせ、半年毎に投資主総会を開催し、
半年毎に経営陣の選任を行えばよいのか、という話になろうかと思います。
会社運営の概念としては確かに基本的にはそれでよい(投資主の意思は適切に会社に反映される)とは思います。
ただ、何事にも「1年で1サイクル」という常識的な前提がやはりあろうかと思います。
特に業績という観点では季節性が大きい場合があると思います。
1年間のうち、ある半年間は業績が好調(夏であればビール等、冬であれば燃料等)だが、
もう一方の半年間は業績が不調(前例の正反対のケースを考えてみればよいでしょう)ということはあると思います。
この2つの事業年度に関し同じ判断基準でもって経営陣を評価するのは明らかに間違いと言えるでしょう。
全く同じ様に経営していても、前者は業績がよく、後者は業績が悪いのですから。
もちろんそういった季節性まで加味して経営陣を評価するということもできなくはないのでしょうが、
はじめから業績に差が生じると分かっている状況下で別の経営陣を選任するというのはそれぞれの経営陣にとって条件は平等ではない、
ということになるでしょう。
条件が平等である状況下で、それぞれの経営陣を評価するのが一番よいでしょう。
そのためには、経営陣の就任期間は「1年間」とすることが必要なのです。
「1年で1サイクル」という常識的な前提がやはり非常に大切なのだと思います。
経営陣の選任に関してだけでなく配当に関しても本質部分は同じであり、
業績がよい半年間に多額の配当を受け取ることは、他方の業績が悪い半年間のことを全く考慮していないことになるわけです。
季節性の影響が全くない業績を見て、配当も経営陣も決定すべきでしょう。
中間配当だ四半期期配当だという議論はありますが、会社は半年や1年ではなく永続していくことが前提であるといったことを踏まえますと、
会社のそもそもの概念に照らせば、「配当支払いは1年に1回」ということが1つの大きな原則であるのだと思います。
もちろん、臨時株主総会を招集し、改めて配当支払いの株主総会決議を取り会社が配当を支払うことは、
概念的にも法理的にも間違ってはいないとは思うのですが。
ただ、会計的には、厳密に言うと配当の原資がやはり問題になると思います。
配当の後払いととらえ、通常の配当を支払った後の利益剰余金を原資と考えてもよいとは思うのですが、
厳密に言えば、その「通常の配当を支払った後の利益剰余金」の帰属関係が問題になると思います。
株主の「基準日」の話になってこようかと思いますが、その利益剰余金は(配当支払い後である)6月下旬に確定したと言えるかと思います。
その利益剰余金をその後の株主が配当の原資としてよいのか、という議論はあると思います。
その後の株主が配当支払いについて決議を取るならば、基準日付けの新たな利益剰余金が必要になってくるわけです。
要するに、基準日付けの財務諸表が必要ではないか(基準日付けの貸借対照表を基に配当を支払う必要がある)、ということになるわけです。
では、基準日付けの財務諸表を作成すればよいではないか、その基準日付けの貸借対照表を基に配当を支払えばよいではないか、
という話になってくるわけですが、そこで問題になるのは法人税等の取り扱いだと思います。
すなわち、会社は法人税等の支払いまで済んでいる当期純利益を原資に配当を行ってよいわけです。
ところが、事業年度途中では厳密には法人税等の支払い(税額計算)は当然のことながら済んでいないわけです。
非常に高い精度で益金や損金は算出できるとは思うのですが、それらに基づいた法人税額というのは、
税法から見ればやはり擬似的な決算に過ぎないわけです。
税法から見れば、その財務諸表は確定した決算では決してあり得ず、法人税等の支払いが済んでもいない”擬似当期純利益”を基に
会社は配当を支払おうとしている、と見えるわけです。
そういったことを考えますと、基準日付けの財務諸表を作成しても、それを配当の原資とすることが税法的観点からやはりできないのです。
通常の配当を支払った後の利益剰余金を原資とすることもできず、また、
基準日付けの財務諸表を作成しその利益剰余金を原資とすることもできない、ということになろうかと思います。
株式会社の概念からだけではなく、税法の基本的考え方からも、「会社の配当支払いは1年に1回だけ」という結論になるのだと思います。
株主が1人だけであるなど、株主は全く変わらない状況下であっても、
「いつの基準日の株主に配当を支払うのか(利益剰余金の帰属関係)」という点を厳密に考えますと、
「法人税等を支払った後の利益剰余金」というのが非常に重要なポイントになってくるわけです。
つまり、3月31日の時点と株主は全く同じではないか、というのは全く理由になっていないわけです。
たとえ全く同じであっても、それはたまたま顔ぶれ(株主名簿記載の名前)が同じであるというだけであって、
3月31日時点の株主と臨時株主総会基準日の株主とは帰属関係において概念的・法理的には別の株主と考えるのです。
3月31日の時点と株主は全く同じであればよいというより、同じであることは関係がないと言わなければならないと思います。
株主が同じだとしても、(配当支払い後である)6月下旬に確定した利益剰余金との整合性も問題になると思います。
株主が同じだとしても、その6月下旬を基準日とすることもできないわけです(ここで確定するのは利益剰余金のみですので)。
会計理論上の整合性の観点からも、「会社の配当支払いは1年に1回だけ」という結論になるのだと思います。
以上のことを踏まえますと、「1事業年度=1配当支払い=1投資主総会=1経営陣の選任」であり、1事業年度=1年間、
という結論になろうかと思います。
1事業年度を半年間や2年間にすることは、以上書きました様々な理由・背景・制約により、理論的に不可能という結論になると思います。