2014年5月23日(金)



2014年5月16日(金)日本経済新聞
ロンドンの銀値決め 117年の歴史に幕 代替指標は今後協議
(記事)





2014年5月23日(金)日本経済新聞
銀価格の下げ続く 供給過剰 金との差67倍に拡大 白金などに資金流出
ロンドン指標8月終了 商社など対応急ぐ
(記事)




【コメント】
どこまで本当かは知りませんが。

 

 


2014年5月23日(金)日本経済新聞
東レ、CBで1000億円調達 ユーロ円建て 炭素繊維など成長投資 初の自社株買いにも充当
(記事)




2014年5月22日
東レ株式会社
2019年満期ユーロ円建取得条項付転換社債型新株予約権付社債及び
2021年満期ユーロ円建取得条項付転換社債型新株予約権付社債の発行に関するお知らせ
ttp://www.toray.co.jp/news/manage/nr140522c.html

 

2014年5月23日
東レ株式会社
2019年満期ユーロ円建取得条項付転換社債型新株予約権付社債及び
2021年満期ユーロ円建取得条項付転換社債型新株予約権付社債の発行条件等の決定に関するお知らせ
ttp://www.toray.co.jp/news/manage/nr140523.html

 



【コメント】
負債で資金を調達して自社株買いを行うことは間違いであることは言うまでもありませんが、
転換社債を発行して資金を調達して自社株買いを行うことは矛盾とすら言っていいでしょう。
自社株買いを行って株式数を減らしたのに、転換社債の株式への転換で再び株式数を増やしてどうするのでしょうか。
転換社債型新株予約権付社債の問題点については既に書きつくしているような気がしますので、
今日は転換社債型新株予約権付社債を所与のものとして書きます。


資金の出し手からすると、引き受けた証券は現金として返ってくる(通常の償還)のか、普通株式として返ってくる(株式への転換)のか、
あらかじめ明確にしておきたいという思いはあるでしょう。
資金の出し手にも今現在のそして償還期日の資金運用上の都合というものがあるでしょうから、
「返ってくるのは現金でも株式でもどちらでもよい。」と言う寛大な資金の出し手はいないはずです。
「返済は現金になるか株式になるか、どちらになるか分かりません。」というのが、資金の出し手にとっては一番困るわけです。
そうしますと、会社が社債を発行するとなりますと、通常の普通社債か、転換価額が十分に低い転換社債か、のどちらかになると思います。
引き受けた証券は現金として返って欲しいと考える資金の出し手は通常の普通社債を引き受けるでしょう。
逆に、引き受けた証券は株式として返って欲しいと考える資金の出し手は転換価額が十分に低い転換社債を引き受けるでしょう。
ここでいう”十分に低い”とは、「必ず株式に転換されると言える程転換価額が非常に低い」という意味です。
引き受けた証券は株式として返って欲しいと考える資金の出し手にとっては、引き受けた証券が現金で償還されることは困るわけです。
必ず株式で返ってきてもらわねばなければなりません。
もちろん、引き受け時に計算したであろう最低株式数を超えていなければならないのは当然ですが、
返ってくる株式数が増加する分には資金の出し手としては問題ないわけです。
そうしますと、ここでいう”十分に低い”には、「必ず株式に転換されることを保証するため転換価額をさらに切り下げる条件が付いてる」
という意味も含まれようかと思います。
よく”転換価額修正条項付”と言ったりしますが、その条項の背景がこれになろうかと思います。

 



既存株主は自分の保有議決権と直接的に関係があることですから株式数はできる限り増えて欲しくないと考えている一方、
この資金の出し手はどれだけ株式数が増加することになろうとも全額分株式で返済してもらいたいと考えている、
ここでは、既存株主と資金の出し手との利益が衝突しているのです。
既存株主としては、全額現金で返済したいが、それが無理なら、仮に株価が「転換価額>株価」という水準なら、
「株価×発行時計算した転換株式数+差額(不足分は現金)」という、株式と現金の組み合わせで返済したいと考えるわけです。
ただ、資金の出し手としては、株式と現金の組み合わせで返済されることが一番困るわけです。
資金の出し手としては、返済手段はどちらかにして欲しい(事前に明確しておきたい)と考えるところでしょう。

このたびの東レの転換社債は、発行後の一株当たり利益の希薄化を抑制する効果を期待して、「時価を上回る転換価額」の設定をしており、
資金の出し手からすると、現金で返ってくるのかそれとも株式で返ってくるのか事前には全く分からない条件となっています。
株式で返ってきて欲しいと考える資金の出し手にとっては、この時点でこの転換社債を引き受けることは不可能な気がします。
また、転換制限条項(株価が転換価額の一定水準を一定期間上回らない限り、投資家が新株予約権を行使できない条項)まで付いています。
ここまで厳しい条件が付いているとなりますと、資金の出し手としては、現金で返ってくる可能性が極めて高いであろう、
という考えを持つような気がします。
株式で返ってきて欲しいと考える資金の出し手にとっては、この転換社債を引き受けることはいよいよ不可能だと思います。
さらに、「取得条項(額面現金決済型)」も付いています。
この条項は簡単に言うと、会社が自己の裁量により当該転換社債を償還できる条項なのですが、
株価が高い水準で推移した場合、当該転換社債の価値自体が大きいものになりますから、
その増加分(転換社債の時価−額面金額)は株式を交付する、という条項です。
額面金額は現金で、価値の増加分は株式で、という返済方法です。
いずれにせよ、資金の出し手にとっては都合のよいものではないでしょう。
ついでに言いますと、この「取得条項(額面現金決済型)」は、株価の上昇状況次第では、
会社が交付することになる株式数は何株になるか事前には全く分かりません。
既存株主は転換社債発行時点でその後発行することになる株式数を制限したい(発行する株式数を明確にしたい)と考えるでしょう。
発行する株式数は事前には分からない(どれだけも増加し得る)という点では、
既存株主にとっては、この「取得条項(額面現金決済型)」は「下限がない転換価額修正条項」と同じ問題をはらんでいると思います。

 


最後に、プレスリリース(2014年5月22日付け)の

>転換価値から本社債の額面金額相当額を差し引いた額(正の数値である場合に限る。)を1株当たり平均VWAPで除して得られる数

の”1株当たり平均VWAPで除して得られる数”は、「最終日転換価額で除して得られる数」の間違いではないかと思いました。
1株当たり平均VWAPで割り算してしまっては価値の増加分を株式数に反映したことにならないのではないかと思いました。
大まかに言えば、1株当たり平均VWAPをかけ算しそして1株当たり平均VWAPで割り算していますから、
1株当たり平均VWAPで割り算してしまっては意味がないのではないかと思いました。

ただ、この点に関しては2つ見方があるということなのかもしれないなとも思いました。
「1株当たり平均VWAPで割り算する」場合は、価値の増加分(分子)を時価、資金の出し手が受け取る株式(分母)についても時価、
というふうに見ているということだと思います。
これですと、資金の出し手は価値の増加分をそのまま時価で受け取っていることになりますから、
時価という観点ではむしろ整合性は取れていることになります。
一方、私が書きましたように「最終日転換価額で割り算する」場合は、
価値の増加分(分子)を新たな簿価(言わば額面金額がその時の時価に変わった)と見ていることになろうかと思います。
転換社債の簿価は大きくはなった、しかし、受け取るべき株式数はあくまで「簿価÷転換価額」だ、と私は見ているのだと思います。
転換社債が株式に転換される時の計算式は「額面金額÷転換価額」でしょう。
通常であれば額面金額が変わるということはあり得ない(額面金額分を償還して取引は終了)わけですが、
この「取得条項(額面現金決済型)」の場合は、敢えて額面金額に価値の増加分を反映させて考えようとしています。
それは言わば額面金額自体が増加するという概念に近いわけです。
一方で、転換社債には株価で転換するなどという考え方はなく、あくまで転換価額で転換するという考え方であるわけです。
転換価額は新株予約権でいうところの権利行使価額でしょう。
権利行使価額は株価ではないでしょう。
そうであるならば、価値の増加分を算出した上で、交付する株式数算出は「最終日転換価額で割り算する」べきだと思いました。
もちろん、「1株当たり平均VWAPで割り算する」場合でも、価値の増加分はそのまま時価で資金の出し手に交付していることになりますので、
何ら問題ないと思います(それどころか、その時の時価に関する整合性の観点ではむしろ望ましいと思います)。
また、額面金額を評価し直すというような通常とは異なる評価方法のようなことを行っていますので、
その増加分に関しては転換価額で考えるべきではないというのも確かだと思います。
時価という観点では「1株当たり平均VWAPで割り算する」に分があり、
権利行使価額という観点では「最終日転換価額で割り算する」に分がある、と言ったところでしょうか。

 


上の方で、

>発行する株式数は事前には分からない(どれだけも増加し得る)という点では、
>既存株主にとっては、この「取得条項(額面現金決済型)」は「下限がない転換価額修正条項」と同じ問題をはらんでいると思います。

と書きましたが、この結論も分母をどちらに取るかで2つに分かれることになります。


「1株当たり平均VWAPで割り算する」場合は、交付することになる株式数は、

(額面金額÷最終日転換価額×1株当たり平均VWAP−額面金額)÷1株当たり平均VWAP
=額面金額÷最終日転換価額−額面金額÷1株当たり平均VWAP
=ある定数C−額面金額/1株当たり平均VWAP

となりますから、株価が上昇すれば上昇するほど交付することになる株式数は確かに増加するものの、
その上限は上記「ある一定数C」で抑えられることになります。
なぜなら、「額面金額/1株当たり平均VWAP→0 (1株当たり平均VWAP→∞)」だ
(1株当たり平均VWAPが無限大に近づくとき、額面金額/1株当たり平均VWAPは0に収束する)からです。




一方、「最終日転換価額で割り算する」場合は、交付することになる株式数は、

(額面金額÷最終日転換価額×1株当たり平均VWAP−額面金額)÷最終日転換価額
=額面金額÷最終日転換価額÷最終日転換価額×1株当たり平均VWAP−額面金額÷最終日転換価額
=ある定数C'×1株当たり平均VWAP−ある定数C''

となりますから、株価が上昇すれば上昇するほど交付することになる株式数は限りなく増加することになります。
この場合、交付することになる株式数に上限はないのです。
なぜなら、「ある定数C'×1株当たり平均VWAP→∞ (1株当たり平均VWAP→∞)」だ
(1株当たり平均VWAPが無限大に近づくとき、ある定数C'×1株当たり平均VWAPは無限大に発散する)からです。


以上をまとめますと、
「1株当たり平均VWAPで割り算する」場合は、発行する株式数は事前に分かる(最大交付株式数はある定数C)、
「最終日転換価額で割り算する」場合は、発行する株式数は事前には分からない(どれだけも増加し得る)、
となります。
興味深い結論になりますが、「1株当たり平均VWAPで割り算する」場合、株価が無限大に上昇しますと、資金の出し手はトータルでは、
額面金額の合計2倍分の返済を受けられることになります(額面金額の現金償還+額面金額分の株式による財産交付)。