2014年5月19日(月)
[18日 ロイター] -
米通信大手AT&Tは、米衛星テレビ放送最大手ディレクTVを485億ドルで買収する。
18日に発表された買収合意によると、AT&Tは、株式と現金の組み合わせによりディレクTV株を1株当たり95ドルで買収する。
16日終値86.18ドルから10%のプレミアムとなる。
このうち、現金が28.5ドル相当、AT&T株式が66.5ドル相当となる。
AT&Tは買収に充てる現金について、手持ちの現金のほか、資産売却、準備中の資金調達などを利用するとしている。
買収総額は、ディレクTVの負債も含めると671億ドル。
アナリストらは、ユーザー当たりの平均売上高でライバル通信企業との競争が激化しているものの、
今回の買収合意でAT&Tの配当が支援されそうだと指摘する。
マッコーリーのアナリスト、ケビン・スミゼン氏は「これは財務工作だ」と指摘。
「AT&Tの比較的高いバリュエーションと低金利の恩恵を利用して買収を行うことでフリーキャッシュフローが拡大し、
複数年にわたって配当が保証される」と解説した。
当局の承認を促すため、AT&Tは富豪カルロス・スリム氏が率いるメキシコの通信大手アメリカ・モビルの株式約8%を売却する。
ディレクTVは米国で2000万の加入件数を抱えるほか、中南米で約1800万件の顧客を持つ。
AT&Tは、買収完了後3年目までに年間16億ドルのコスト削減効果が期待できるとしている。
<AT&Tに違約金発生せず>
また、AT&TによるディレクTV買収について、当局が買収を認めなかった場合でもリバース・ブレークアップ・フィーと呼ばれる
買い手側の違約金が発生しないことで両社が合意したことが分かった。事情に詳しい関係筋が明らかにした。
一方、匿名を希望したこの関係筋によると、ディレクTVが自社の都合で身売り合意を破棄すれば、
AT&Tに対して14億ドルのブレークアップ・フィー(被買収企業側の違約金)を支払うことになるという。
<懐疑的な見方も>
AT&Tのランドール・ステファンソン最高経営責任者(CEO)は声明で「これはビデオ・エンタテインメント業界を再定義するほか、
新たなバンドルを提供し、モバイル機器やテレビ、ラップトップ、自動車、飛行機など
複数のスクリーンで顧客にコンテンツを提供することが可能な企業を生むユニークな機会だ」と指摘。
「同時に、われわれの株主とって、即時かつ長期的な価値を生み出すことになる」と述べた。
ただ、一部のアナリストや投資家の中では、米衛星テレビ加入者が頭打ちとなる中、成長鈍化に直面しているAT&Tが
ディレクTVを買収することに懐疑的な見方も出ている。インターネットをベースとしたテレビサービスが成長しており、
衛星テレビ放送の需要は向こう数年でさらに鈍化する可能性もある。
AT&Tは、買収完了後4年以内に、農村部を中心に1500万件のブロードバンド顧客を新規に獲得できるとの見通しを示している。
ディレクTVの筆頭株主は、著名投資家ウォーレン・バフェット氏が率いる投資会社バークシャー・ハザウェイ。
ディレクTVの財務アドバイザーは、ゴールドマン・サックス、バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチが務めた。
一方、社内にM&A(合併・買収)チームを抱えるAT&Tもラザードから助言を受けた。
(ロイター 2014年
05月 19日 10:16
JST)
ttp://jp.reuters.com/article/technologyNews/idJPKBN0DY0PS20140519?sp=true
米AT&Tが衛星放送のディレクTV買収で合意−約4.9兆円
5月18日(ブルームバーグ):米携帯電話サービス2位のAT&T
は米国最大の有料衛星放送事業者ディレクTVを
485億ドル(約4兆9200億円)で買収することで合意した。これにより米国内と中南米の映像サービス契約者3800万人余りを獲得、
規模を拡大するケーブルテレビ(CATV)運営事業者との競争で有利に戦うための態勢を整える。
両社の18日の発表資料によると、AT&TはディレクTV1株当たり95ドルを支払う。
これはディレクTVの16日の終値に10%上乗せした水準。内訳は現金28.50ドルと66.50ドル相当の株式。
負債継承分を含めた買収額は671億ドルとなる。
今回の買収によりAT&Tは現在の米携帯・固定電話、高速インターネットサービスに加え、衛星放送事業を獲得する。
CATV運営事業者最大手のコムキャスト
による同業のタイム・ワーナー・ケーブル(TWC)買収計画など有料放送業界の再編が
加速する中で、AT&Tのランドール・スティーブンソン最高経営責任者(CEO)は今回の合意を通じ事業拡大を狙っている。
同CEOは発表資料で、ディレクTVは衛星テレビで一流のブランドと急速に成長する中南米事業を有しており、
当社にとって最良の選択肢だと指摘した。
ブロードバンド強化
合意は両社の取締役会で承認済みで、当局の審査とディレクTVの株主
の承認を経て、1年以内の買収完了を予定している。
AT&Tは規制当局の承認を得やすくするため、
メキシコの携帯電話サービス会社アメリカ・モビル
の保有株8%の売却を計画していることを明らかにした。
米国ではインターネットで映像サービスを利用する視聴者が増え、従来型の有料テレビの顧客層が縮小している。
このため自前の電話・インターネットサービスを持たないディレクTVは、提携先が必要となっていた。
発表資料によれば、アメリカ・モビル株の売却により、AT&Tの利益は1株約5セント縮小する見通し。
AT&Tは現時点で2014年の1株利益の伸び率について、「1桁台半ば」との従来予想の下限と予想している。
両社によれば、買収完了から1年以内に1株利益とフリーキャッシュフローにプラス効果が表れ、
年間ベースで16億ドル余りのコスト削減につながる見通し。
ディレクTVの株価 は今年に入り25%上昇。16日終値は86.18ドルで、時価総額は約430億ドル。
問題は今回の買収計画を規制当局が承認するかどうか。コムキャストによるTWC買収計画は今のところ承認されていない。
10年余り前にはディレクTVと同業のディッシュ・ネットワークの合併が阻止された。
AT&Tは11年に当局の強い反対でドイツテレコムの米子会社TモバイルUS買収を断念することを余儀なくされた。
両社によれば、買収合意が規制当局から承認されなくてもAT&TはディレクTVに違約金を支払う必要はない。
(ブルームバーグ 更新日時:
2014/05/19 10:46
JST)
ttp://www.bloomberg.co.jp/news/123-N5SHD76TTDSA01.html
May 18, 2014
AT&T
AT&T to Acquire
DIRECTV
ttp://about.att.com/story/att_to_acquire_directv.html
ttp://investor.directv.com/files/doc_news/general_releases/2014/ATT%20Acquires%20DIRECTV%20News%20Release.pdf
【コメント】
プレスリリースの最初だけ訳してみます。
>AT&T and DIRECTV today announced that they have entered into a
definitive agreement
>under which AT&T will acquire DIRECTV in a
stock-and-cash transaction for $95 per share based on AT&T’s Friday closing
price.
>The agreement has been approved unanimously by the Boards of
Directors of both companies.
【参謀訳】
AT&TとディレクTVは本日、AT&Tの金曜終値ベースで1株当たり95ドルを対価に株式と現金の組み合わせた手段で、
AT&TがディレクTVを取得するという条件で最終合意に達したことをお知らせいたします。
この合意は両社取締役会により満場一致で承認されました。
昨日は「合併」という言葉を使ったのですが、各種記事やプレスリリースのこの部分だけを読んでも、
合併なのか株式取得なのかよく分からないなと思っていました。
プレスリリースを読み進めていますと、このどちらなのかはっきりしました。
>DIRECTV will continue to be headquartered in El Segundo, California,
after the deal closes.
【参謀訳】
ディレクTVは本経営統合完了後も、引き続きカリフォルニア州のエル・セグンドを本社とする計画です。
経営統合終了後もディレクTVには会社としての本社があるということになります。
これはディレクTVは法人としては消滅しないという意味なのでしょうから、
このたびのAT&TとディレクTVの経営統合は、両社の合併ということではなく、
「AT&TによるディレクTV株式の取得」ということになると思います。
プレスリリースには、”merger
between AT&T and DIRECTV”という文言も見られます。
merger というと日本でいう合併、acquisition
というと日本でいう株式取得を意味するのだろうと思っていたのですが、
merger
という言葉は、組織再編の場面でも合併という意味ではなく経営統合という意味で使われるということなのかもしれません。
記事のこちらの部分が気になりました。
>また、AT&TによるディレクTV買収について、当局が買収を認めなかった場合でもリバース・ブレークアップ・フィーと呼ばれる
>買い手側の違約金が発生しないことで両社が合意したことが分かった。事情に詳しい関係筋が明らかにした。
>一方、匿名を希望したこの関係筋によると、ディレクTVが自社の都合で身売り合意を破棄すれば、
>AT&Tに対して14億ドルのブレークアップ・フィー(被買収企業側の違約金)を支払うことになるという。
この場合の”ブレークアップ”(break-up)は、(経営統合の)「中止、破談」という意味でよいようです。
この点についてはプレスリリースには一切記載されていないようです。
文脈から推測すると、被取得企業が取得企業に支払うのが一般的な通常の違約金、
取得企業が被取得企業に支払うのは通常とは逆(リバース)の違約金、ということのようです。
詳しいことは分かりませんが、法的・会計的に言えば、
株式取得者はAT&T、株式を取得される(株式を売る)者はあくまで「ディレクTVの株主」です。
企業間で違約金を支払ったり受け取ったりというのは何かおかしいような気もします。
また、それ以前に、経営統合に関し企業間で違約金の取り決めを行っていること自体が何か違うようにも感じます。
企業間の通常の商取引であれば、例えば資産の売買に関し契約を履行しなかった場合について違約金の取り決めを行うのはよいと思うのですが、
経営統合を最終的に決定するのは株主である(株主は合併や株式交換の実施までは委任していない)ことや、
先ほども書きましたが株式の売買当事者はディレクTV自身ではないことを考えると、
経営統合に関し企業間で違約金の取り決めを行うのは何かずれていると感じるのです。
株式を買い取る義務を相手方に課するとしたら株式を所有している「ディレクTVの株主」自身でないと理屈が通らない気がするわけです。
ディレクTV(会社)が株主の代理として代わりにそのような義務を相手方(AT&T)に課した、という理解でもよいのかもしれませんが。
ただそう理解したとしても、違約金を受け取るのはディレクTV(会社)になるわけですが(ここがおかしいのかもしれません)。
極端なことを言えば、ディレクTV(会社)は経営統合の当事者ではない、と言えるわけです。
経営統合の当事者とは、あくまでAT&Tと「ディレクTVの株主」なのです。
敢えて経営統合に関する企業間の違約金の取り決めを所与のものとして追加で書きますと、
記事に書かれています違約金というのは、どのようなことを契機に支払われるのかもよく分かりません。
当局が買収を認めなかった場合というのは、それは誰にとってもどうしようもないことなので、
両社が合意するしない以前に、その場合に違約金の取り決めを行うことがおかしいと思います(当然に違約金は発生しない)。
どちらかが自社の都合で合意を破棄した場合は違約金が発生するというと、何となく意味は分かります。
ただ、ここでいう「自社の都合」というのは何を指すのかはよく分かりません。
株主総会で承認決議が取れなかった場合でしょうか。
しかしそれはまさに会社の最高の意思決定者である株主の意思により経営統合は行わないことにしたのですから、
それで違約金が発生するというと本末転倒な気がします。
「株主の皆様、違約金が発生してしまいますのでこのたびの議案には必ず賛成して下さい。」とでも取締役会が訴えかけるのでしょうか。
「強要する」は英語で「coerce」です。
もし取締役会がそんなことをすれば、株主から、
The
shareholders' approval was coerced.
(株主は承認を強いられた。)
と言われてしまうでしょう。
この観点からも、違約金のようなものは設定すべきではないかもしれません。
違約金の存在は株主の自由な議決権行使を明らかに阻害するものですから。
ちなみに、「coerce」の語源は、ラテン語で「一緒に閉じ込める」という意味だそうです。
「違約金がかかっているのです。承認決議を頂くまではこの会場からは一歩も出しません。」、そう取締役会は言うかもしれません。
これがほんとの「ロック・アップだ。」、とでも言うのでしょうか。
経営統合を実行できるかどうかを決定できるのはある意味当局ではありません。
経営統合を実行できるかどうかを決定できるのはあくまで株主なのです。
2014年5月19日(月)日本経済新聞
イオン、首都圏に活路 食品スーパー 統合で生き残り
(記事)
2014年5月19日
株式会社マルエツ
株式会社カスミ
イオン株式会社
丸紅株式会社
「首都圏におけるスーパーマーケット連合」の創設に関する合意(基本合意書締結)について
ttp://www.maruetsu.co.jp/corporate/newsrelease/pdf/newsrelease140519a.pdf
ttp://www.kasumi.co.jp/invest/pdf/zaimuririsu/20140519-2news.pdf
ttp://www.aeon.info/news/2014_1/pdf/140519R_2.pdf
ttp://v4.eir-parts.net/v4Contents/View.aspx?cat=tdnet&sid=1154057
ttp://www.marubeni.co.jp/news/2014/release/supermarket.pdf
【コメント】
5.イオンと丸紅による特定目的会社の設立について
(3/4ページ)
イオンと丸紅が設立するという特定目的会社はあまり意味がないのではないかと誰もが感じると思います。
区分けされた法人組織が冗長にすらりと並んでいる、という状態かと思います。
この点について考えてみました。
「ある意味、共同持株会社は大株主自身の特別目的会社である。」
概念的には、イオンや丸紅から見ると、
共同持株会社は既に特別目的会社と言えるように思えます。
なぜなら、共同持株会社が既にスーパーマーケット事業を行う3子会社株式を
整理しまとめて所有しているからです。
ある会社の株式を所有するために新たに設立する会社のことを特別目的会社と呼ぶのなら、
株式移転により設立される共同持株会社はまさに特別目的会社ではないでしょうか。
わざわざ株式を所有するためだけの会社を設立するということは、概念的には、要するに、
共同持株会社≒共同出資会社≒持株会社≒特別目的会社
と言えるのだと思います。
支配株主(大株主)が、所有している関係会社株式の所有関係をきれいに整理したいという場合、
株式移転を行うことはそのまま関係会社株式をまとめて所有する特別目的会社を設立することと同じだと言えると思います。
株式移転は英語で「share
transfer」と訳すようです。
そして、transfer
の語源はラテン語で「向こうへ運ぶ」という意味だそうです。
この場合、この英訳は言い得て妙、いえ、訳し得て妙、と言ったところでしょうか。
大株主は所有している関係会社株式を”特別目的会社”に移すことができるのですから。
ところで、マルエツ、カスミ及びMV関東各社の臨時株主総会は2014年12月の予定、共同持株会社の発足は2015年3月の予定となっています。
法理的には株主総会決議の有効期間は基準日から3ヵ月であること考えると、
基準日は2014年11月末日、株主総会日は2014年12月下旬、株式移転の効力発生日は2015年3月1日であれば問題のないスケジュールだと思います。