2014年5月7日(水)



2014年4月22日(火)日本経済新聞
ストックオプション 自社株で報酬 株高が役員・社員潤す 昨年度の行使 7年ぶり高水準
(記事)




2014年4月22日(火)日本経済新聞
きょうのことば
ストックオプション 自社株値上がりで差益
(記事)




2014年4月22日(火)日本経済新聞
東ガス、今期も自社株買い 300億円超、全額消却 個人株主の取り込み狙う
(記事)




2014年3月28日(金)日本経済新聞
強い企業へ自社株活用 M&Aや社員報酬 上場企業、16兆円規模に
きょうのことば
金庫株 株式交換でのM&A、海外では主流
(記事)

 



【コメント】
昨日、新株予約権の問題点について書いたわけですが、議論の都合上今日はとりあえず新株予約権を所与のものとしましょう。
また、自己株式の取得(自社株買い)も本当は非常に問題が大きいのですが、
議論の都合上今日はとりあえず自己株式の取得(自社株買い)も所与のものとします。
(ここでは、新株予約権を「stock purchase right」、自己株式を「self-owned stock」と訳しました。)


昨日の事例における新株予約権は、既存株主と一定規模以上の法人投資家を対象に割当てられたものでしたが、
今日紹介しています2014年4月22日の記事は、従業員や役員を対象に割当てられたものになります。
昨日も書きましたように、既存株主や法人投資家に対して新株予約権を割当てる場合は
必ずしも新株予約権者が株式売却益を得ることを目的にはしていないわけです。
新株予約権者は権利を行使して株式を取得し、そのまま引き続き大株主として経営に参画するという場面も当然あるわけです。
一方、従業員や役員に対して新株予約権を割当てる場合は
明らかに新株予約権者が株式売却益を得ることを目的にしていると言えるでしょう。
なぜなら、記事の見出しにもありますように、この場合は現金報酬の代替手段として新株予約権を割当てているからです。
もちろん、従業員に経営意識を持たせるであったり、会社の業績向上に向け従業員の働く意欲を引き出すであったり、
士気を向上させ予算の必達へ従業員を促す、といった効果を狙い、権利行使価額を敢えて高めに設定するという場合もあります。
ただ、業績と株価との連動性がそもそも非常に低く、
従業員や役員がいくら株価を上げようと努力してもマクロ経済的要因の影響力が極めて強いため、そういった効果は非常に弱いのです。
そうであるならば、従業員や役員に新株予約権を割当てるならば、その目的を忠実に踏まえ、権利行使価額は「1円」とすべきでしょう。
「誰に対して(≒何を目的に)新株予約権を割当てるか」で、権利行使価額は極めて大きく変わってくると言えると思います。

 



それで、今日紹介しています2014年4月22日の記事についてなのですが、現金報酬の代替手段として新株予約権を割当てているということで、
従業員と役員は新株予約権の行使(新株式の取得)と同時に株式市場で株式を売却するわけです。
もちろん株式はそのまま保有し続けてもよいわけですが、
会社としても本人としても新株予約権はあくまで現金報酬の代替手段に過ぎないという思いがあるわけですから、
一般論としては権利行使と同時に株式は売却するものと考えてよいかと思います。
そして、今日紹介しています2014年3月28日の記事にもありますように、
上場企業は株主への利益還元の一手段として自社株買いを行うことも多いわけです。
この文脈での株主への利益還元には、社外株式数を減らす(=1株当たりの利益額を増加させる)ということも主目的として当然含まれます。
新株予約権の割当て・権利行使とのつながりで言えば、既存株主や法人投資家の場合は株式を保有し続ける(ことが多い)わけですが、
従業員や役員であれば、新株予約権の行使(新株式の取得)と同時に株式市場で株式を売却するわけです。
従業員や役員への新株予約権割当て(そして権利行使)の結果、社外株式(流通株式)が増加するわけです。
会社としては、自社株買いにより増加した株式数を減らそうとするわけです。
するとどうなるか。
この時の自社株買いの価額は基本的には株価であることを考えれば、結局、大まかに言えば、
会社は「従業員と役員へ発行した株式数×株価」の現金流出を余儀なくされるわけです。
この「従業員と役員へ発行した株式数×株価」は事実上従業員と役員が受け取った現金報酬の合計額と同じです。
つまり、会社ははじめから従業員と役員に対し同額だけ現金報酬を支払ったことと現金負担額は同じになるわけです。
自社株買いにより、発行済み株式総数(社外株式数)も全く同じになります(こちらは目的通りですが)。
従業員への現金報酬ということであれば損金算入されますが、自社株買いであれば損金算入されません。
税務上も自社株買いの方が明らかに不利でしょう。
利益剰余金の減少額は税効果の分、従業員への現金報酬の方が少なくて済みます。
自社株買いの場合は直接的に全額分利益剰余金は減少します。
利益剰余金の減少額が少ないということは、手許現金の減少額が少ない、ということになります。

 


同様に、実は役員報酬も従業員への報酬と同じ様に損金算入する方が会社にとっては税務上有利ではあるわけです。
現行の法人税法の定めでは役員報酬は現に損金算入可能です。
しかし、従業員への給与等(従業員の雇用は経営陣への委任事項)とは異なり、役員の選任は株主総会の専決事項(決議事項)なのですから、
概念的には、役員報酬は株主総会の決議事項(利益剰余金の分配、利益処分)です(株主は役員報酬決定までは経営陣に委任していない)。
つまり、役員報酬は損金算入されないという考え方が正しいのです。

以上の議論をまとめますと、次の図のようになります↓。

「現金報酬よりも現金流出額が多いループ」



ところで、なぜ税効果の分、従業員への現金報酬の方が手許現金(利益剰余金)の減少額が少なくて済むのか分からない人はこちら↓。

「魔法は使えないかもしんないけど・・・。でも、税効果の説明だったらできるっ。」




奇妙なループが生じてるということで、手塚治虫作の『宇宙からのSOS』という漫画を思い出しました。
科学的に考察すればおかしなところはあると思いますが(大き目の図書館でも読めると思います)。
光以上の速度で飛んでも時間の流れが逆転するわけではない(と思われる)点や、
SOSの信号音を発信している地点に到達してもロケットも人間も何もなかった点(まさに自分自身がそこにいるはず)など、
仮に相対性理論が正しいと想定してもそうはならない(理論上も時間の流れが逆転するとは言っていない)と感じる点がいくつもありました。
まあ、魔法でも使えない限り、光の速度で飛ぶことなどできませんから、思考実験に過ぎませんが。

「(最後のページ)」


「(信号音発信点に着いたシーン)」