2014年4月26日(土)



日清紡HD、前期純利益90億円に上方修正 子会社好調で

 日清紡ホールディングス(3105)は25日、2014年3月期の連結純利益が前の期比40%増の90億円になったようだと発表した。
(日本経済新聞 2014/4/25 16:15)
ttp://www.nikkei.com/markets/kigyo/gyoseki.aspx?g=DGXNASFL250XZ_25042014000000

 


日清紡HD、14年3月期純利益40%増 防災無線好調

 日清紡ホールディングスは25日、2014年3月期の連結純利益が前の期比40%増の90億円になったようだと発表した。
従来見通しは1%増の65億円。復興需要の高まりを追い風に、官公庁向けに防災無線システムの販売が伸びた。
工場移転など構造改革に伴う特別損失が想定を下回ったのも寄与した。
売上高は10%増の4940億円と、従来見込みを40億円上回った。不動産の分譲事業が好調に推移した。
(日本経済新聞 2014/4/26 0:33)
ttp://www.nikkei.com/markets/kigyo/gyoseki.aspx?g=DGXNZO7043380025042014DTD000

 


日清紡ホールディングス、前期経常を22%上方修正

 日清紡HD <3105> が4月25日大引け後(16:00)に業績修正を発表。
14年3月期の連結経常利益を従来予想の180億円→220億円(前の期は176億円)に22.2%上方修正し、
増益率が1.8%増→24.4%増に拡大する見通しとなった。
 会社側が発表した上方修正後の通期計画に基づいて、当社が試算した10-3月期(下期)の連結経常利益も
従来予想の144億円→184億円(前年同期は127億円)に27.6%増額し、増益率が13.1%増→44.3%増に拡大する見通しとなった。
(株探ニュース 2014年04月25日16時00分)
ttp://kabutan.jp/news/?b=k201404250206

 



【コメント】
日清紡ホールディングス株式会社 IRニュース
ttps://www.nisshinbo.co.jp/ir/news/

(キャプチャー画像)



「平成26年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」が発表された2日後に、「業績予想の修正に関するお知らせ」が発表されています。

これはいい題材になるな、
と思ったのですが、残念ながら違う会社だったようです。
正確には、「平成26年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」を発表したのは連結子会社の新日本無線株式会社、
「業績予想の修正に関するお知らせ」を発表したのは親会社である日清紡ホールディングス株式会社でした。
日清紡ホールディングス株式会社自身が決算短信を発表した後、「業績予想の修正に関するお知らせ」を発表したわけではありませんでした。

ただ、「決算短信」を発表した後、「業績予想の修正に関するお知らせ」もしくは「決算短信の修正に関するお知らせ」を発表することは、
規則上・法令上あり得ることだと思います。
むしろ、(「決算短信」は会計監査を受けていないわけですから)「決算短信」の内容に誤りがあった場合は、
速やかに「業績予想の修正に関するお知らせ」もしくは「決算短信の修正に関するお知らせ」を発表する義務があると思います。

「決算短信」の数値が正しいという保証はどこにもありません。
率直に言えば、「決算短信」の位置付けが不明であるわけです。
「業績予想の修正」が指す「業績」とは厳密にはどれのことなのか。
決算短信のことなのか、それとも、有価証券報告書のことなのか。
前者なら、「決算短信の修正に関するお知らせ」を発表する必要があるでしょう。
後者なら、(決算短信発表後も)「業績予想の修正に関するお知らせ」を発表する必要があるでしょう。
もしこのあたりのことが規則上・法令上明確ではない(何を指すのか明確に定められていない)のだとしたら、
規則や法令自体が「決算短信の数値には誤りがない(=有価証券報告書の数値と同じである)」ことを前提としていると言わねばなりません。
会計監査とは何なのか、改めて問い直す必要があるでしょう。
また、「決算短信は会計監査が完了し次第発表する」ということが大切だと思います。
実務上は、今よりも発表時期を3〜4週間遅らせ、5月下旬から6月上旬にかけて決算短信を発表していくようにすべきだと思います。

 



ここまで書いて、日清紡ホールディングス株式会社の過去のプレスリリースを見ていましたら、なんと既に実例がありました。
連結子会社の新日本無線株式会社において、
まさに、「決算短信」を発表した2日後に「業績予想の修正に関するお知らせ」を発表しています。


2013年4月24日
新日本無線株式会社
平成25年3月期決算短信〔日本基準〕(連結)
ttp://www.njr.co.jp/ir/pdf/13ke01.pdf

2013年4月26日
新日本無線株式会社
業績予想の修正に関するお知らせ
ttp://www.jrc.co.jp/jp/whatsnew/20130426/images/6751_130426.pdf


どちらも、同じ「平成25年3月期(2013年3月期)の決算・業績」に関する発表です。
「決算短信の修正に関するお知らせ」とは表現していないところを見ると、
「業績予想の修正」が指す「業績」とは、決算短信ではなく、厳密には「有価証券報告書」の方を指すということなのでしょう。

「決算短信なんか最初からいらんかったんや。」と言うと言い過ぎでしょうか。
そして、「決算短信は理論上は用をなさない(useless)のであれば、業績予想や業績予想の修正も同様に理論上用をなさない。」
と言うと論理の飛躍があるでしょうか。
決算短信は、「予想」というような表現をしていないだけ、業績予想よりも性質が悪いかもしれません。
今後は、「未決算短信」とでも呼んだらどうでしょうか。
もしくは、決算短信は(様々な訳語がありますが)英語で「a short financial result」と言います。
今後は、「a short-of-assurance financial result」(非保証決算)とでも呼んだらどうでしょうか。
「監査役か会計監査人に来てもらっていいですか。」、私だったらそう言うでしょう。

 



2014年4月25日に「業績予想の修正に関するお知らせ」を発表する以前にも、
日清紡ホールディングス株式会社は2回も「業績予想の修正に関するお知らせ」を発表しています。
@2013年3月期の決算短信記載の業績予想、A2013年10月30日の修正、B2014年3月27日の修正、C2014年4月25日の修正、
そして、2014年5月に2014年3月期の決算短信発表です。
確定した財務諸表を開示する有価証券報告書では、また違った”業績”かもしれません。

 

2013年10月30日
日清紡ホールディングス株式会社
業績予想の修正に関するお知らせ
ttps://www.nisshinbo.co.jp/news/pdf/1052_1_ja.pdf


2014年3月27日
日清紡ホールディングス株式会社
業績予想の修正に関するお知らせ
ttps://www.nisshinbo.co.jp/news/pdf/1109_1_ja.pdf


2014年4月25日
日清紡ホールディングス株式会社
業績予想の修正に関するお知らせ
ttps://www.nisshinbo.co.jp/news/pdf/1118_1_ja.pdf

 


「日々新たに、又日に新たなり」という言葉があります。
こんなに「業績予想の修正」を繰り返すのなら、日清紡ホールディングス株式会社は
社名を「日新呆ホールディングス株式会社」に変更してはどうでしょうか。

 

 



昨日、「利息というのは元本に付く」と書きました。
では、「その元本の返済が不可能になった場合」はどのように考えるべきなのだろうかと思いました。
利息は元本から生じます。
ここでは元本とは、「下にある、基礎をなす、源」というような意味にとらえればよいのではないかと思います。
辞書には、元本(principal)とは「基本財産」という意味だと載っています。
その元本が返済されないという状況下では、利息はどのように考えるべきなのだろうかと思いました。
参考までに、「金融商品に関する会計基準」を見てみました。

 

企業会計基準第10号「金融商品に関する会計基準」(最終改正平成20 年3 月10 日)
結論の背景
X.貸倒見積高の算定
「第91項〜第95項」

 



債権を、
@経営状態に重大な問題が生じていない債務者に対する債権(一般債権)、
A経営破綻の状態には至っていないが、債務の弁済に重大な問題が生じているか又は生じる可能性の高い債務者に対する債権(貸倒懸念債権)、
B経営破綻又は実質的に経営破綻に陥っている債務者に対する債権(破産更生債権等)、
の3つに区分して考えます。


分かりづらいのは、「A貸倒懸念債権」だと思います。
この貸倒懸念債権というのは、実は私にもよく分かりません。
「貸倒懸念債権は一般債権と破産更生債権等の中間に位置する債権」、という考え方ですが、
究極的なことを言えば、「債権は弁済されるか弁済されないか」しかないわけです。
「貸し倒れが生じる懸念がある状態」というのは、究極的にはないと言えるかと思います。

例えば、親会社が子会社に資金を貸し付けているとします。
親会社は当然子会社の財務状況を詳細に把握しているわけです。
この時、親会社は、子会社の財務状況(資金繰り)を分析して、
「このまま推移すれば、今月末の債務の弁済は何とか可能だが来月末の債務の弁済は不可能だ。」と、前もって分かるわけです。
このような場合の子会社に対する債権を「貸倒懸念債権」と表現できなくはないとは思います。
ただ、実務上は、「このまま推移すれば、今月末の債務の弁済は何とか可能だが来月末の債務の弁済は不可能だ。」と分かった時点で、
その債権のことは破産更生債権と呼ばねばならないと思います。
なぜなら、その債権は「全額は弁済されるわけではないと分かっているから」です。
「その債権は全額は弁済されない」、これは懸念ではありません。
将来の事実(今後発生すると分かっている事柄)です。
だから、その債権は(現時点で既に)破産更生債権なのです。
通常は、親会社から子会社への貸付のように、債務者の財務状況を債権者が詳細に把握するということは不可能です。
ですから、親子会社間よりもさらに「将来貸し倒れが生じる懸念」というのは債権者側に伝わらないのです。
つまりなおのこと、貸倒懸念債権に定義されるような債権の状態というのは実務上生じづらい(債権者には分からない)わけです。
債権者に分かるのは、「決済期日に弁済がなされなかった」という事実だけでしょう。
会計基準上の文言を使えば、「債務の弁済に重大な問題が生じる可能性が高い」ということ自体が債権者には分かりませんし、
仮に債務の弁済可能性について詳細に把握できるのなら、その債権は「全額弁済されるか破産更生債権か」も正確に分かるはずです。
すなわち、債権には、一般債権か破産更生債権かしかなく、貸倒懸念債権というのはそもそもないのです。

 



第95項には、「未収利息の計上」についても記載があります。

>貸倒引当金の対象となる債権には未収利息が含まれるが、
>契約上の利息支払日を相当期間経過しても利息の支払が行われていない状態にある場合や、
>それ以外でも債務者が実質的に経営破綻の状態にあると認められる場合には、
>未収利息を収益として認識することは適当でないと考えられることから、このような状態に至った場合には、
>すでに計上している未収利息を取り消すとともに、それ以後の期間に係る未収利息は計上してはならない

何気なく書かれていますが、よく読むと「あれ?」と思うところがあるかと思います。
まず一行目からおかしいなと思います。
「未収利息は貸倒引当金の対象である」というのは何かおかしい気がします。
確かに、未収利息は「まだ利息を受け取っていない金額」を表すわけですが、その利息の利払い日はまだ到来していないわけです。
むしろ、利息の利払い日はまだ到来していないからこそ、経過勘定項目として決算日に期間損益の修正を図ったわけです。
債務者からすると、利息の利払い日はまだ到来していないのに、債務不履行だと言われても困るわけです。
つまり、債務者からすると、利息の利払い日はまだ到来していないから利息を支払っていないだけのことであって、
未払利息は本当の意味での(法的な意味での)「利息が未払いだ」という意味ではないわけです。
こういった点から考えていくと、債権者から見た場合、未収利息に貸倒引当金を設定するのは何か違う気がするわけです。
仮に、本当の意味で(法的な意味で)「利息が未払い」になった場合、それはまさに即債務不履行を意味します。
貸倒引当金の設定以前の話ではないかと思います。
債務者からすると、利息は遅れて支払ってよいものではなく、支払期日に必ず支払わなければならないものです。
債権者からすると、未収利息は金銭債権ではありません。
ただの経過勘定項目です。
ですから、「未収利息は貸倒引当金の対象である」という考え方は間違いであるわけです。
「契約上の利息支払日を経過しても利息の支払が行われていない状態」、それはまさに経営破綻(倒産)です。
この場合の正しい会計処理は、未収利息が計上されている場合は、債権の回収可能性(債務者の財務状況)によらず、
まず未収利息は自動的に全額取り崩すことになります。
なぜなら、未収利息はそもそも金銭債権ではなくただの経過勘定項目だからです。
そもそも利息の利払い日も到来していないわけですし、未収利息を回収するという考え方はないわけです。
「正常な状態であれば利息の利払い日に未収利息勘定は取り崩すではないか」と思われるかもしれませんが、
それは前期末日に経過勘定項目として未収利息勘定を計上したからこそ、利息の受け取りの結果逆仕訳を切るだけのことであって、
本当の意味で「未払い分であった利息を回収した」とは異なるわけです。
ですから、未収利息は自動的に全額取り崩すことになるわけです。

 



以上の議論から、ある一つのことに気付くかと思います。
それは、「未収利息の計上は、収益の前倒し計上の側面があり、保守主義の原則に反する場面がある」ということです。
未収利息の計上は単なる収益の前倒し計上に過ぎなかった、
だから、債務者の倒産時には未収利息は自動的に全額取り崩すことになるわけです。
適正な期間損益計算のために経過勘定項目を計上したのは分かりますが、少なくとも保守主義の原則の観点には適わないでしょう。
ただ、会計理論上、債権者は「将来債務者は弁済をしないだろう」と考えてはいないわけです。
債権者は「将来債務者は弁済をするはずだ」と判断したからこそ、債権を持つに至ったわけです。
そうすると、この場合、債権者は「債権の回収は可能である」ということを前提に会計処理を行っていかないと、
それはそれで前提と処理の整合性が取れないわけです。
債権者は「債権の回収は可能である」と判断している、だから、その債権に貸倒引当金は設定しなかったわけですし、
だから、(利息の支払も当然行われるという前提なので)未収利息を計上した、という流れがあるわけです。
つまり、会計理論上、未収利息の計上は(収益の前倒し計上の側面はないわけではないが)必ずしも時期尚早な利益計上とは言えないわけです。
「債権の回収は可能である」ということを前提にするならば、むしろ、前提と処理の整合性は取れているでしょう。
逆に言えば、「債権の回収は可能ではない」ということが分かった場合は、
会計基準の文言通り、「それ以後の期間に係る未収利息は計上してはならない」ということになるでしょうし、
また、一定額の貸倒引当金(もしくは貸倒損失や債権減損損失等)を計上する必要が出てくるでしょう。
どこまで保守主義の原則に重きを置くべきであり、そしてまた、どこまで費用・収益対応の原則を重視してよいのか、
この問いには絶対的な答えはないのだとは思いますが。
この両原則の折衷案としては、「未払費用や前受収益は計上するが、未収収益や前払費用は計上しない」という会計方針も考えられると思います。
まあこの折衷案が一番良いと言うつもりはありません。
会計理論上、保守主義の原則の観点と同様に、前提と処理の整合性も大切だと思います。
また、前提前提と言いますが、その前提が間違っているということも経営上あるわけです。
ですから、できる限り保守的な会計処理をすることが大切であったりもするわけです。
これらの点に関しては、どこまで行っても絶対的な答えはないのだろうな、と改めて思いました。