2014年3月14日(金)



2014年3月14日(金)日本経済新聞
1株を3株に大塚商会が分割
(記事)





2014年3月13日
株式会社大塚商会
株式分割、定款一部変更、及び配当予想の修正に関するお知らせ
ttp://www.otsuka-shokai.co.jp/corporate/ir/media/kaiji20140313bunkatsu.pdf

 



【コメント】
株式分割のことよりも、こちらの方が気になりました↓。


2014年3月6日
株式会社大塚商会
第53回定時株主総会招集ご通知
ttp://www.otsuka-shokai.co.jp/corporate/ir/media/53_syousyu.pdf

第53回定時株主総会
3. 目的事項
決議事項
議案
(2/48ページ)



何と、役員の選任の決議を全く取っていません。
株式会社大塚商会は、第53回定時株主総会が終結した後は、取締役も代表取締役もなしで会社運営を行っていくつもりなのでしょう。
東京都千代田区飯田橋の株式会社大塚商会本社ビルに伺っても、実は誰もいないのかもしれません。
これがほんとの「オーツカ・哨戒」ならぬ、「ノーマンズ・ランド」(誰もいない家屋)。
いまいち決まりませんでした。
取締役の任期は原則2年間となっていますので、何かそのことが関係しているのだろうかと思いましたので、
1年前の定時株主総会招集ご通知を見てみました。


2013年3月5日
株式会社大塚商会
第52回定時株主総会招集ご通知
ttp://www.otsuka-shokai.co.jp/corporate/ir/media/52_syousyu.pdf


第2号議案で取締役は選任しているようですが、監査役の選任は行っていないようです(監査役の任期は一応原則として4年間ですが)。
また、会計監査人(任期は1年間のみ)の選任は今年も昨年も全く行っていないようです。

 



コンプライアンスについてはこんくらいにし、スキャンした「4. 召集にあたっての決議事項」には表決について根源的な事が書かれています。

>議決権行使書面において、議案に賛否の意思表示がない場合は、賛成の意思表示をされたものとして取り扱わせていただきます。

と書いてあります。
上場企業においては、株主総会において全く議決権を行使しない個人株主が非常に多いため、
議決権行使に関してこのような取り扱いを行うことがほとんどです(ひょっとしたら全ての上場企業がそうかもしれません)。
この取り扱いは、悪意を持って解釈すれば、会社側が提出した議案が反対されることなく簡単に賛成されたものとするための方便
という見方もできますが、より公平な目で見れば、このような取り扱いをしないと上場企業では株主総会がそもそも定足数に達しない、
という事態に陥るからだと思います。
本来であるならば、株主は会社に対して出資をしているわけですから、株主が株主総会で議決権を行使しないということが想定上あり得ない
わけなのですが、上場企業の場合は、単に株価の上昇だけが目的で株式を購入しているだけで出資をしているという意識が
極めて希薄である個人株主等が多いため、株主総会で議決権が行使されないわけです。
したがって、現実への対応ということで、窮余の一策としてこのような取り扱いを行っているわけです。
ただ、「議案に賛否の意思表示がない場合は賛成の意思表示をされたものとして取り扱う」というのは、
「表決とは何か」という根源的なことを考えますと、やはり大きな問題があると言わざるを得ないでしょう。
その理由は極めて単純であり、その「議案に賛否の意思表示をしなかった株主」は「賛成の意思表示」をしていないからです。
「賛成の意思表示」をしていない株主がなぜ「賛成の意思表示」をしたことになるのか、という極めて単純かつ根源的な考え方があるわけです。
その株主が本当に議案に賛成なら、株主総会の場ではじめから「賛成の意思表示」をするはずだ、という理屈があるわけです。
その株主は少なくともその議案に賛成ではなかった、だから、「賛成の意思表示」をしなかったのだ、という理屈があるわけです。
議案に賛否の意思表示がないことを会社が勝手に賛成にするのは議決権を根本的に否定していることになるわけです。
では、その株主はその議案に反対なのかというと、「反対だ」とも言っていないわけです。
議案に賛否の意思表示がないことを会社が勝手に反対にするのも議決権を根本的に否定していることになるわけです。
では要するに何かと言うと、何のことはなくて、「白票」というだけなのです。
「白票だ」、だから、その議案に対する賛否の集計において、その分は総議決権の個数から引いて計算するというだけなのです。
「(様々な個人的・社会的理由により)賛成もできず、反対もできず、私には決めることはできません。
私以外の皆さんで、どうか決めて下さい。私はその皆さんの意思決定に従います。」
その株主はそう言っただけなのです。
勝手に賛成にするのも間違いですし、勝手に反対にするのも間違いなのです。

 



株主にとって議決権の行使は概念的には義務のようなもの(株主は会社の所有者である以上、意思決定をする義務がある)だとは思いますが、
様々な理由により賛成票も反対票も投じられないという場面もあろうかと思います。
その場合は、「議案に賛否の意思表示をしなかった」という意思表示を尊重し、その分は賛否の集計の際引き算して計算するわけです。
こういったことを考えますと、表決におけるいわゆる「定足数」の考え方自体が間違いである、という点に行き着くかと思います。
定足数の定めは不必要なのです。
表決というものは全て定足数に達しているものだ、と考えなければならないのです。
定足数に達していない表決などないのです。

 



また、このことに関連して、「4. 召集にあたっての決議事項」には、「議決権の不統一行使」について記載があります。
株主は議決権を複数所有している場合、「議決権の不統一行使」をすることができます。
株主の意思は一つであることを考えれば、一見、「議決権の不統一行使」はおかしいと感じるかもしれませんが、
考え方としては「議決権の不統一行使」はおかしくありません。
理由は2つあります。

1つ目は、ある一人の株主は表面上の代表者のような形になっているだけであり、実際には複数の人物の意思をその株主が代表しているだけ、
というような状況が想定されるからです。
ある一人の株主が他の複数の人物から「株主であることを委任されている」、という状況は想定されるでしょう。
本来は、その一人一人が株主であるべきだとは思います。
株主名簿上の株主のみが真の株主、というのが本来的な考え方だとは思います。
例えば株主総会の基準日の設定のことを考えますと、株主名簿上のある株主の背後に複数の別の人物がいる、ということですと、
株主総会で議決権を行使する株主が確定できない、というようなことも考えられるように思います。
しかし、株主総会の基準日の設定では、「どの株主が合計何議決権、株主総会で行使できるか」を株主名簿上の各株主に関して
確定させていくことを意味しており、「その株主が株主総会で行使できる合計議決権数」さえ正しければ、
会社と株主間の関係には何ら問題はないと言えるわけで、
後は株主名簿上のその株主と委任を行った人物との間の問題に過ぎない(だから会社は関係がない)、と考えるべきなのだと思います。
株式会社制度というのは、そもそもできる限り多くの資金を多くの出資者から集めることを前提・特長としているわけです。
そんな中、「資金は出してもよいが、株主名簿に直接的に自分の名前が載るは嫌だ」という出資者からも資金を集められるように、
実際の資金の出し手とは異なる株主名簿上の表面上の株主も株式会社制度上認めることにしたのでしょう。
実際の資金の出し手とは異なる株主名簿上の表面上の株主が機能するためには、「議決権の不統一行使」を認める他ないわけです。
「実際の資金の出し手」と「株主名簿上の表面上の株主」との間でトラブルが生じた(例えば委任した通り議決権を行使しなかった)としても、
それはその両者間の問題に過ぎないわけであって、会社としては確定した合計議決権数の集計のみを行えばよい、となるでしょう。
「資金は俺が出すから表面上お前が代わりに株主になってくれ」という当事者間の契約に関しては会社は口を出せませんし、
その事自体を会社は知ることもできないわけですから、「議決権の不統一行使」を禁止する理由は乏しいのだと思います。

 


それから理由の2つ目ですが。
これはどちらかというと、「議決権の不統一行使」が認められる理論的背景と言うべきなのかもしれません。
「議決権の不統一行使」が認められる理論的背景、すなわち、なぜ理論上「議決権の不統一行使」ということが可能なのかと言いいますと、
1議決権1議決権が独立しているからです。
例えば合計10議決権所有している株主がいるとします。
この場合、「10議決権」で1セットなのではありません。
「1議決権」で1セットなのです。
この株主は「1議決権」を10セット所有しているのです。
「10議決権」を1セット所有しているわけではないのです。
議決権というものは1議決権1議決権が独立している、だから、「議決権の不統一行使」が理論上可能なのです。

「議決権の不統一行使」が理論上可能でも、法律上「議決権の不統一行使」を禁止する、ということも考えられるとは思います。
しかし、「資金は俺が出すから表面上お前が代わりに株主になってくれ」という当事者間の契約自体は何らおかしくないのであれば、
ある一人の株主が「資金は俺が出すから表面上お前が代わりに株主になってくれ」と複数の人物から依頼されることも法理上おかしくない、
ということになると思います。
また、株式会社制度というのは、そもそもできる限り多くの資金を多くの出資者から集めることを前提・特長としているわけです。
1議決権1議決権は独立しているという点、株式会社制度のそもそもの趣旨、代わりに株主になること自体は法理上も契約上もおかしくはない、
といった点を踏まえますと、「議決権の不統一行使」は商法理論上正しい、という結論になると思います。


なお、「議決権の不統一行使」と「議決権の代理行使」は本質的に異なります。
「議決権の不統一行使」は、あくまで一人の(株主名簿上の)株主が賛否を分けてその所有する議決権を行使することです。
「議決権の代理行使」は、「全く株主ではない人物」が本来の(株主名簿上の)株主から依頼を受けて代わりに議決権を行使することです。
代理人が複数の(株主名簿上の)株主から依頼を受けた場合は結果として賛否を分けて議決権を行使する形になりますが、
それはあくまで依頼を行った各株主毎に依頼通り議決権を行使しているだけであり、
一人の株主名簿上の株主が賛否を分けてその所有する議決権を行使する「議決権の不統一行使」とは本質的に異なることです。
株主は株主ですが、代理人自身は株主ではないのです。