2014年3月8日(土)
2013年12月17日(火)日本経済新聞
三菱商、280億円調達 豪ドル建て社債、きょう発行
(記事)
2013年12月19日(木)日本経済新聞
日電産、500億円 普通社債発行
(記事)
2013年11月9日(土)日本経済新聞
住友鉱、経常益44%増 4〜9月
(記事)
【コメント】
4ヶ月も前の記事になりますが。
既に3ヵ月以上が過ぎ、1四半期が終わってしまいましたが。
記事に、
>赤字基調だった持ち分法適用の海外子会社を対象から外したことも利益を押し上げ、
とあったのが気になりました。
記事に該当する決算短信及び補足説明資料はこちらです↓。
2013年11月8日
住友金属鉱山株式会社
平成26年3月期
第2四半期決算短信〔日本基準〕(連結)
ttp://www.smm.co.jp/uploaded_files/20131108-1.pdf
2013年11月8日
住友金属鉱山株式会社
2014年3月期第2四半期決算
補足説明資料
ttp://www.smm.co.jp/ir/financial/teleconference/pdf/131108_telephone.pdf
ちなみに、直近(第3四半期)の決算短信及び補足説明資料はこちらです↓。
2014年2月7日
住友金属鉱山株式会社
平成26年3月期
第3四半期決算短信〔日本基準〕(連結)
ttp://www.smm.co.jp/uploaded_files/20140207.pdf
2014年2月7日
住友金属鉱山株式会社
2014年3月期第3四半期決算
補足説明資料
ttp://www.smm.co.jp/ir/financial/teleconference/pdf/140207_telephone.pdf
それで、4ヶ月も前も記事を今なぜ紹介しているのかと言えば、実は深い意味は全くなく、
毎日それなりに書くべきことがあったので、今まで書く時間がなかったというだけです。
赤字基調だった持ち分法適用の海外子会社を対象から外したという点に関しては、
決算短信にも補足説明資料にもあまり説明はありませんでした。
補足説明資料にはこれだけがありました↓。
持分法投資利益
(7/18ページ)
持分法適用の有無の影響度(発生する連結決算の数字の差異等)について何かコメントできればとずっと思っていたのですが、
これだけですと何ともコメントのしようがないな、と思いました。
自分でも肩透かしをくらった感じになってしまったのですが、何か他に題材等があれば、その時にコメントできればと思います。
2013年2月8日(金)日本経済新聞
住友不、30%増益 4〜12月最終503億円 劣後ローン一括返済
(記事)
【コメント】
1年以上前の記事になりますが、劣後ローンを新たに発行し、以前発行した劣後ローンを返済する、
という点が気になりましたので紹介します。
>08年2月に新株予約権付き永久劣後ローンで三井住友銀行などから調達した1200億円を今月末に一括で返済すると発表した。
>返済のため新たに同行などから劣後ローンで600億円を借り入れる。
2013年2月7日
住友不動産株式会社
補足説明資料(ファクトシート)
ttp://www.sumitomo-rd.co.jp/ir/settlement/files/1302_0003/8830FACT_SHEETS_Dec.2012.pdf
2013年2月7日
住友不動産株式会社
四半期営業情報
ttp://www.sumitomo-rd.co.jp/ir/data/files/shihanki/shihanki.pdf
2013年2月7日
住友不動産株式会社
永久劣後ローンの一括返済並びに行使価額修正条項付新株予約権の消滅と返済オプション付劣後ローンによる資金調達に関するお知らせ
ttp://www.sumitomo-rd.co.jp/news/files/1302_0002/8830_IR_Release_Feb.2013.pdf
この「劣後ローンとは負債なのか資本なのか」という点については、次のような記載がありました。
1.資金調達の目的および背景
(2/4ページ)
>資本性評価を得られる見込みで、その場合の資本性認定額は150
億円(※)となります。
>(※)総調達額600 億円×資本性25%=150 億円
「どの程度資本の性質があるのか」などという指標が負債にあるそうです。
負債に資本性などありません。
負債は100%負債です。
そして資本は100%資本です。
負債が資本に転換する(100%負債の証券が100%資本の証券に転換する)というのならまだ分かりますが、
負債なのだが一定度資本の性質がある、などと考えるのは完全に意味不明です。
負債と資本は本当に完全に正反対の性質を持つ、そう表現しても差し支えないかと思います。
2013年11月19日
フィデアホールディングス株式会社
第三者割当による転換社債型新株予約権付社債の発行条件等の決定に関するお知らせ
ttp://www.fidea.co.jp/newsrelease/2013/201311193/index.pdf
2013年11月19日
フィデアホールディングス株式会社
第三者割当による転換社債型新株予約権付社債の発行に関するお知らせ
ttp://www.fidea.co.jp/newsrelease/2013/201311192/index.pdf
2013年11月19日
フィデアホールディングス株式会社
DB
信託株式会社によるフィデアホールディングス株式会社(証券コード8713)新株予約権付社債の買付けの決定に関するお知らせ
ttp://www.fidea.co.jp/newsrelease/2013/201311191/index.pdf
【コメント】
記事には、
>社債の償還期限は5年程度が一般的だが、2年3カ月と短くすることで早期転換を促す。
と書いてあります。
問題点は2つあるかと思います。
一つは、自己資本額を増加させたいという考えがあるのなら、転換社債ではなくはじめから新株式を発行すべきである、という点です。
極端な話、株価が思ったように上昇せず、転換社債が株式に転換されなかったらどうするのか、ということになるわけです。
仮に、転換社債が株式に転換されなかったとしても経営上特段問題はないのだとすると、
それならはじめから転換社債など発行すべきではなかった、という理屈になるはずです。
「株式に転換されるか転換されないか分からない有価証券」を発行してどうするのでしょうか。
二つ目は、転換社債そのものとは少し離れる話になりますが、借り入れにせよ社債発行にせよ、
負債の返済期限・償還期限はそもそも会社の資金需要に応じて設定すべきことである、という点です。
まず、「このような設備投資・有形固定資産の取得を行いたい」という、金額まで含めた資金の使途があるわけです。
そして、負債による現金調達をするに当たり、利益計画及び返済計画を作成せねばならないわけです。
もちろん、いくら設備投資・有形固定資産の取得を計画しても、十分な利益見通しは立たないというようなことであれば、
借り入れや設備投資自体を取りやめるという判断も時にあるとは思います。
ここでは十分な利益見通しは立ったとします。
そこで、借り入れ総額と返済期限を決めていかねばならないわけですが、教科書的な説明になりますが、
概ね有形固定資産の耐用年数と借入金の返済年数とを合わせるわけです。
例えば、有形固定資産の耐用年数は5年間で定額法で減価償却をしていく計画(設備投資計画・利益計画)ならば、
借入金の返済年数も5年間とし毎年元本の5分の1ずつを返済していく、というような返済計画にするわけです。
要するに、借入金の返済期限は、会社の利益見通しに基づき会社の資金需要に応じて設定すべきことであるわけです。
決して、今後の株価見込みに基づいて決定すべきことではないのです。
また、仮に転換社債を所与のものと考えても、確かに株価が上昇すれば株式への転換は進むかもしれませんが、
いくら償還期限を短くしても株式の早期転換には全くつながらないでしょう。
例えば、償還期限を1日と設定すれば、株式への転換は進むでしょうか。
株価が低いままなら、100年経っても株式への転換は行われないままでしょう。
いずれにせよ、負債の返済期限・償還期限はそもそも会社の資金需要に応じて設定すべきことである、という点だけは理解すべきでしょう。
2014年3月6日(木)日本経済新聞
アルプスCB300億円 11年ぶり発行
(記事)
2014年3月5日
アルプス電気株式会社
2019年満期ユーロ円建取得条項付転換社債型新株予約権付社債の発行に関するお知らせ
ttp://www.alps.com/pdf/ir/disclosure/20140305_info.pdf
2014年3月5日
アルプス電気株式会社
2019年満期ユーロ円建取得条項付転換社債型新株予約権付社債の発行条件等の決定に関するお知らせ
ttp://www.alps.com/pdf/ir/disclosure/20140305b_info.pdf
「2019年満期ユーロ円建取得条項付転換社債型新株予約権付社債の発行に関するお知らせ」
新株予約権の行使に際して出資される財産の内容及びその価額
(4〜5/15ページ)
>各本新株予約権の行使に際しては、当該本新株予約権に係る本社債を出資するものとし、当該本社債の価額は、その額面金額と同額とする。
新株予約権の行使に際しては、「社債の額面金額を出資する」(社債を現物出資する)という形です。
この条件は、転換社債型新株予約権付社債でよくある条件であり、ある意味当たり前と言えば当たり前なのだと思います。
ただ、では逆に、「社債は現物出資するがその価額は社債の額面金額とは異なる」という場合があるのかだろうか、とふと思いました。
単純に考えれば、債権者・債務者側とも、デット・エクイティ・スワップの実行時における会計処理と似たような様な会計処理方法に
なるのだろうか、と思ったのですが。
転換社債型新株予約権付社債の条件は任意に設定できるのだとは思います。
例えば、このたびの転換価額1,802円のうち、社債で現物出資できるのは半分の901円まで、
残りの901円は現金で追加的に払い込みをしなければ新株予約権の行使はできない、というような条件も考えられるように思いました。
まあこの場合でも、出資される財産の価額は「本社債の額面金額と同額」には変わりないかとは思いますが。
ちなみに、社債の払込金額は額面金額よりも大きいようです(差額は言わばマイナスの金利もしくは債権放棄前提分の社債と言えるかと)↓。
本社債に利息は付さないとのことですので、社債の引き受け手にとってはなかなか厳しい条件だなと思いました。
2.社債の払込金額
(4/15ページ)
2014年3月7日
日本ハム株式会社
2014年3月7日自己株式立会外買付取引(ToSTNeT-3)による自己株式の買付けに関するお知らせ
ttp://www.nipponham.co.jp/ir/library/financial/pdf/2014/20140307_1.pdf
2014年3月7日
日本ハム株式会社
自己株式取得に係る事項の決定に関するお知らせ(会社法第459
条第1項の規定による定款の定めに基づく自己株式の取得)
ttp://www.nipponham.co.jp/ir/library/financial/pdf/2014/20140307_2.pdf
2014年3月7日
日本ハム株式会社
Wessex Limited
による日本ハム株式会社(証券コード2282)転換社債型新株予約権付社債の買付けに関するお知らせ
ttp://www.nipponham.co.jp/ir/library/financial/pdf/2014/20140307_3.pdf
2014年3月7日
日本ハム株式会社
「第三者割当による2018年満期ユーロ円建転換社債型 新株予約権付社債の発行に関するお知らせ」
に関する補足資料
ttp://www.nipponham.co.jp/ir/library/financial/pdf/2014/20140307_4.pdf
2014年3月7日
日本ハム株式会社
第三者割当による2018年満期ユーロ円建転換社債型新株予約権付社債の発行に関するお知らせ
ttp://www.nipponham.co.jp/ir/library/financial/pdf/2014/20140307_5.pdf
【コメント】
負債の割合を増やし、株主資本を圧縮する取り組みをリキャピタリゼーション(Recapitalization)と呼ぶようです。
リキャピタリゼーションを略してリキャップ(Recap)と呼ぶようです。
一般論としては、わざわざ負債の割合を増加させてまで自社株買いを行うというのは根本的におかしいと言わざるを得ないかと思います。
仮に自社株買いを行うとしても、その原資は利益剰余金(相手方勘定科目はそもそも現金)である、というだけのことであって、
たとえ借り入れによって手許現金がその分増加するとしても、負債を原資に自社株買いを行うことは決してできないわけです。
負債調達によって自社株買いを行うことは、実は会計理論上「不可能」と言ってもいいと思います。
利益剰余金の相手方勘定科目はそもそも現金です(会計理論上、当期純利益は基本的には全て現金でなければならない)。
よく、「内部留保に相当する現金が社内にあるわけではない」と言ったり、
「利益剰余金は現金ではなく他の資産勘定の形となっている」と言ったりしますが、
それは「当期純利益で稼ぎ出した現金を他の形で使うことを会社が意思決定した結果」というに過ぎないのです。
当期純利益を計上した(利益剰余金が増加した)のに、現金は会社に入ってきていないということがあるとすれば、
それは会計処理のミスか架空(循環)取引か何かです。
自社株買いは、利益剰余金を原資にすることがそもそも必要ですし、さらに、利益剰余金を原資にすればそれで十分だ、と言えます。
「利益剰余金を原資にすること」は「自社株買い」の「必要十分条件」なのです。
ただ、利益剰余金に相当する手許現金がない場合は、自社株買いや配当以外の使途を会社が意思決定した、というだけなのです。
それなのに、負債により現金を調達して自社株買いを行ってしまうと、その会社の意思決定を会社自身が否定していることになるわけです。
負債により現金を調達して自社株買いを行うことは自己矛盾とすら表現してよいと思います。
「転換社債を発行して自社株買いをすることは債権者にとって一方的に有利なこと(PDFファイル)」
「転換社債を発行して自社株買いをすることは債権者にとって一方的に有利なこと(キャプチャー画像)」
他の全て条件が全く同じなら、資本金の額は多ければ多いほど債権者にとって有利であり、そして、
利益剰余金の額は少なければ少ないほど債権者にとって有利、となります。
単純に「@CB発行前」と「B自社株買い後」のみを比較すると、負債により現金を調達して自社株買いを行うことは、
まず債権者にとって不利(会社財産は同じで負債の金額のみが増加しているから)であることは明らかかと思いますが、
同時に(自社株買いに応じなかった残りの)株主にとっても不利、ということが言えるように思います。
なぜなら、負債が増加したことにより会社の倒産可能性は高まったからです。
負債により現金を調達して自社株買いを行うことは、債権者にとっても株主にとっても不利なことなのです。
この点からも、経営陣や社長などが株主や債権者の意向を無視し暴走するということでもない限り、
やはり、負債により現金を調達して自社株買いを行うことは会社はしないのではないか、と思われます。
また、この点は、自社株買いそのものの問題点にも通じるものがあるかと思います。
さらに、「@CB発行前」と「CCBを株式に転換後」を比較すると分かるのですが、CBを株式に転換すると途端に債権者に有利になるわけです。
この状況は新株式を発行して(増資をして)自社株買いを行った場合と全く同じです。
転換社債発行により現金を調達して自社株買いを行うことも新株式を発行して(増資をして)自社株買いを行うことも、
債権者を一方的に利するだけなのですから、株主は絶対に認めないでしょう。
また、「CBを株式に転換すると途端に債権者に有利になる」ということがいみじくも示唆しているように、
転換した途端に特徴・性質・法的地位が完全に変わってしまう有価証券を引き受ける投資家はこの世に一人もいないわけです。
債権者は債権者であり、株主は株主です。
債権者が株主になることはあり得ず、また、株主が債権者になることもあり得ないのです。
究極的なことを言えば、会社は資本再構成(リキャピタリゼーション(Recapitalization))は会計理論上はできないことなのです。
負債は返済するしかありませんし、利益剰余金は配当をするしかありません。
負債を資本に変えることもできませんし、資本を負債に変えることもできません。
資本金を利益剰余金とすることもできませんし、利益剰余金を資本金とすることもできません。
資本金は資本金、利益剰余金は利益剰余金、負債は負債、
説明になっていないと感じるかもしれませんが、実はこれ以上は本質的に説明のしようがないのです。
会計理論上は、会社は資本の構成を変えることなど1円たりともできないのです。
リキャップ(Recap)と聞いて次の造語を考え付きました。
単なる自社株買い(既に手許にある現金を使った自社株買い)であれば、株主が認める場合はある(無償取得や低廉取得など)と思います。
しかし、この種の資本再構成は株主が絶対に認めない、ということを「Recap」を使い表現してみました。
リキャップ
Recap
Relatively Elevate Creditors to Advantageous Position
債権者を相対的に優位な地位に高めること
日本ハム株式会社に関しては、次のようなプレスリリースもありました。
2014年1月31日
日本ハム株式会社
豪州連結子会社の増資、特別利益及び特別損失の計上(個別)に関するお知らせ
ttp://www.nipponham.co.jp/ir/library/financial/pdf/2014/20140131.pdf
「追加出資後も株式の評価額はゼロのまま」であるような出資を行っている点はおかしいような気がしますが、
純粋に金融支援のみが目的と割り切っているとすれば、あり得ない追加出資とまでは言えないと思います。
「追加出資後も株式の評価額はゼロのまま」ということは、
追加出資後も会社倒産の危険性は極めて高いままであることを認識した上での出資ということを意味しようかと思います。
本来であれば、そのような状況下では追加出資は行わないはずです。
なぜなら、以前の出資分と貸付金が全額返ってこない方がまだましだからです。
今ここで追加出資をしてそして会社が倒産してしまいますと、その追加出資の分までさらに損失額が拡大してしまいます。
経済合理性に従えば、そのまま倒産させた方が有利、という判断になろうかと思います。
しかしこの場合は、食肉の仕入販売等を行っている海外の連結子会社ということで、
経営上の理由により絶対に倒産させるわけにはいかないのでしょう。
そうしますと、会社倒産を避けるためだけの純粋に金融支援のみが目的の追加出資ということがあり得るのだと思います。
論点としては他にいくつかあるかと思います。
例えばそれならいっそのことその子会社に寄付をしたらどうか、という考えもあると思います。
しかし、直接的に現金を寄付をしたり貸付金を放棄したりすると、連結子会社の方で寄付金を受け取ったと見なされ、課税されてしまいます。
実質的には寄付のようなものだとしても、出資という形を取れば課税されることはありませんので、その分税務上有利であるわけです。
また、このような出資という形の寄付を行えるのは、その子会社が完全子会社だからです。
他に株主がいる場合は、他の株主を利する部分が出てくるので、そのような寄付(追加出資)というのはやや行いづらくなると思います。
全株主が持株比率に応じて同じ割合ずつ追加出資する(株主割当増資を行う)のであれば、そのような寄付(追加出資)に不公平はありませんが。
それから、このたびの追加出資によって債務超過は解消されたのですが、資本金を取り崩して累積損を解消することはしないようです。
この連結子会社は累積損を抱えたまま事業を行っていくわけです。
オーストラリアでも日本と同じ様に(本当は会計理論上間違っているのですが)資本金を取り崩して累積損の解消に充てることは
会社法上はできるのだとは思いますが、それはしないようです。
そうしますと、例えば日本ハム株式会社は当該豪州連結子会社から配当は全く受け取れません。
ただ、日本ハム株式会社としてはそのことは十分承知の上でのことだと思います。
受取配当金目的で追加出資をするわけではないからです。
債務超過解消後も、内部留保を充実させる(当期純利益計上による累積損の減少も内部留保の充実)ことを最優先とするつもりなのでしょう。
>当社はオーストラリア日本ハム鰍ノ対する貸付金に対して貸倒引当金を計上しておりますが、
>当該貸倒引当金のうち当社が引き受ける増資相当額について、貸倒引当金戻入額7,150百万円を特別利益に計上する見込みです。
と書いてあります。
私は最初、貸付金及び貸倒引当金の金額は7,150百万円(つまり、貸付金の全額について貸倒引当金を計上済み)なのだろう、と思いました。
ところが、プレスリリースの記載内容を踏まえますと、貸倒引当金の金額は7,150百万円以上であり、
貸付金の金額も7,150百万円以上(最低でも貸倒引当金の金額と同じか倒産可能性が低い場合はより大きい)、ということになります。
「貸倒引当金は貸付金に対しどれくらいの割合積まなければならないか」については明確な基準はないと思います。
例えば債務者が債務超過であり、弁済されるとしても本当に極僅かだという場合であれば、
貸付金額に対してその全額を貸倒引当金として計上するべきと言えるでしょう。
また、例えば債務者は債務不履行を確かに起こしそうだが、その場合も一定額以上の弁済は見込めそうだ、という場合であれば、
ある程度の割合のみを貸倒引当金として計上するべきと言えるでしょう。
債務の弁済率というのは倒産してみないと正確には分からないという面はあるでしょうから、
事前に明確に債務の弁済率(弁済額)を算出することはできないとは思いますが、
倒産の可能性や過去の倒産事例や会社財産の状況を総合的に考え、
できる限り合理的に貸倒損失額を見積り貸倒引当金として計上する必要があるわけです。
ここで、債務者である当該豪州連結子会社の場合はと言いますと、追加出資前は債務超過であり、
以前からの出資額(子会社株式)も既に全額評価損済みであり、なおかつ、追加出資後も株式評価額はゼロのまま、という状態です。
貸付金が弁済されるとしても、ほとんどゼロである、と判断されるでしょう。
そうしますと、貸倒引当金を計上するとしたら、貸付金額の全額を計上するはずだ、と考えるのが自然だと思いました。
ただ、残念ながら私の推論は間違っており、実際には貸付金額の一定額のみを貸倒引当金として計上していたようです。
貸倒引当金の金額は貸付金額の全額ではなく一定額のみということですが、日本ハム株式会社に合理的な判断根拠が
あってのことだと思いますので、たとえ全額ではないとしてももちろんそれはそれで何の問題もないとは思います。
ただ、私がおかしいと思うのは、貸倒引当金戻入額が追加出資額と同じ7,150百万円である、という点なのです。
これは間違いだと思います。
なぜなら、追加出資額が7,150百万円であることは貸付債権の弁済額が7,150百万円だけ増加することを意味しないからです。
なぜなら、債務者である当該豪州連結子会社の債務は当該貸付債権(借入金)のみではないからです。
会社に新たに7,150百万円が払い込まれても、(会社倒産の際は)それは平等に全債権者のものです。
増加現金7,150百万円は日本ハム株式会社(債権者)のみに帰属するわけではないのです。
7,150百万円のうち、いくらが日本ハム株式会社(債権者)に帰属する金額になるのかは分かりません。
まず単純に、他の債権者の債務の金額(負債総額)によるでしょう。
また、先取特権や担保物権の状況にもよるでしょう。
貸付債権には先取特権はありませんから、先取特権を考慮すれば、
7,150百万円のうち、日本ハム株式会社(債権者)に帰属する金額はゼロかもしれません。
先取特権(や担保物権)も含め、「債権者平等の原則」であるわけです。
当該豪州連結子会社には他に債務はないということはまず考えられませんので、
7,150百万円のうち、日本ハム株式会社(債権者)に帰属する金額は非常に少ないのだけは確かでしょう。
もしこの考えが正しいとすると、追加出資を行っても貸倒引当金戻入益の計上は認められない、ということになると思います。
また、別の考え方として、日本ハム株式会社は追加出資と同時に当該貸付金の返済を受けた、ということも考えられるかと思います。
そうだとすると、貸付金が無事弁済されたのだから、貸付金の返済と貸倒引当金の取り崩し(戻入益)という会計処理を行うことになります。
この考え方ですと、貸付金及び貸倒引当金の金額は7,150百万円(つまり、貸付金の全額について貸倒引当金を計上済み)、となるわけです。
「追加出資と同時に返済した貸付金」の他にも貸付金がある(そしてその貸付金に対しても一定額貸倒引当金を計上している)だけだ、
とも推論できると言えば推論できますが、
もしそうだとすると、今度は逆に、貸倒引当金戻入額は7,150百万円以上になってくるはずです。
なぜなら、「追加出資と同時に返済した貸付金」以外の貸付金は、追加出資の結果、無事全額弁済されることになったはずだからです。
追加出資の目的は、債務超過の解消と言えば債務超過の解消なのでしょうが、より本質的には、
「債務の弁済を可能にすること」のはずだっただからです。
債務超過のみが解消しても追加出資の意味はありません。
会社の倒産を避けるためには、債務超過の解消のみならず、既存の全債務の弁済を行うことができるようになることが必要です。
また、「追加出資と同時に返済した貸付金」以外の貸付金に対しては貸倒引当金は全く計上していなかった、ということもあり得ません。
なぜなら、会社倒産の際は、「追加出資と同時に返済した貸付金」と「追加出資と同時に返済した貸付金」以外の貸付金との
弁済率(弁済可能性)は全く同じですから、一方にのみ貸倒引当金を計上していた、などということがあるはずがないからです。
というわけで、他の可能性を潰していけば、貸付金及び貸倒引当金の金額は7,150百万円でないと理屈に合わないな、と思いました。