2014年2月9日(日)



三菱ケミカルHD、ヘルスケアで新会社−社長に田辺三菱の加賀邦明氏

 三菱ケミカルホールディングスは6日、グループ内のヘルスケア事業を統括する中核会社「生命科学インスティテュート」を
4月1日付で新設すると発表した。中国メーカーの生産増強で基礎化学品の採算が悪化する中、
中核新社の設立で次の成長基盤となるヘルスケア事業の基盤強化につなげる。
 資本金は30億円。社長には田辺三菱製薬の加賀邦明専務(62)が就く。臨床検査や創薬支援を手がける三菱化学メディエンス、
医薬品原薬を担うAPIコーポレーション、医薬用カプセル製造のクオリカプス、簡易健診を運営する健康ライフコンパスを傘下に収める。
三菱化学メディエンスは4月1日付でLSIメディエンスに社名変更する。
 健康情報サービスの活用による健康維持、再生医療や在宅医療、創薬支援を対象に傘下4社の相乗効果を生み出す。
他社との積極的な協業も進めて20年度に売上高5000億円(13年度見通し比4倍)、営業利益500億円超を目指す。
(日刊工業新聞 掲載日 2014年02月07日)
ttp://www.nikkan.co.jp/news/nkx0820140207cbbe.html

 



2014年2月6日
株式会社三菱ケミカルホールディングス
株式会社生命科学インスティテュートの発足について 
ttp://www.mitsubishichem-hd.co.jp/ir/pdf/20140206-1.pdf

 


2014年2月6日
株式会社三菱ケミカルホールディングス
完全子会社(三菱化学株式会社)の当社株式を用いた簡易株式交換による連結子会社の完全子会社化に関するお知らせ 
ttp://www.mitsubishichem-hd.co.jp/ir/pdf/20140206-2.pdf

 


2014年2月6日
株式会社三菱ケミカルホールディングス
役員人事異動等について
ttp://www.mitsubishichem-hd.co.jp/news_release/2014/20140206-3.html

 


2014年2月6日
三菱化学メディエンス株式会社
社名変更および本社移転のお知らせ
ttp://www.medience.co.jp/topics/release140206.pdf

 



【コメント】
三菱化学株式会社が子会社である三菱化学メディエンス株式会社を株式交換により完全子会社化する、という事例ですが、
その際、完全子会社(三菱化学メディエンス株式会社)株主には完全親会社(三菱化学株式会社)株式を割当て交付するのではなく、
グループ最上位の持株会社である三菱ケミカルホールディングス株式を割当て交付する、という手法を用いるようです。
これは、株式会社三菱ケミカルホールディングスとしては今後とも三菱化学株式会社を完全子会社のままにしておきたい
という思惑があるからでしょう。
株式交換の対価として三菱化学メディエンス株主に三菱化学株式を割当て交付してしまうと、
三菱化学株式会社は株式会社三菱ケミカルホールディングスの完全子会社ではなくなってしまいます。
そこで株式交換の対価は三菱ケミカルホールディングス株式とする、という手法を用いるようです。
ただ一つ気になるのは、三菱化学メディエンス株式会社は既に三菱化学株式会社の完全子会社なのではないだろうか、という点です。
三菱化学メディエンス株式会社のサイトを見ても株主構成については全く分かりませんでしたが、少なくとも上場はしていないため、
株主は全て三菱ケミカルグループ内に留まっている(率直に言えば株主は三菱化学株式会社一社のみ)ではないだろうか、と思いました。

三菱化学メディエンス株式会社 会社概要
ttp://www.medience.co.jp/profile/index.html


そう思いながらプレスリリースを読んでいますと、やはり三菱化学メディエンス株式の99.45%は三菱化学株式会社が所有しているようです。
残り0.55%は自己株式とのことです。
つまり、三菱化学メディエンス株式会社は既に三菱化学株式会社の完全子会社であるわけです。
このことを考えますと、株式交換というのは一体何のことなのか、全く意味が分からないというのが率直な感想です。

 



さて、このたびの一連の組織再編主目的についてなのですが、プレスリリースによると、
三菱ケミカルグループのヘルスケアに関する総合的なソリューションを提供し、KAITEKI社会の実現を目指す
ヘルスケア関連事業を行う事業会社を新たに設け、その傘下に当社グループのヘルスケア関連事業を集約し、基盤強化・拡大を図ること、
とのことです。
このたびの一連の組織再編を図に描きますと、次のようになります。

「ヘルスケアに関する総合的なソリューションを提供するための KAITEKI 社会実現戦略」



ただ、プレスリリース「株式会社生命科学インスティテュートの発足について」を読むと、
ヘルスケア関連事業の生命科学インスティテュートへの移管・統合にはグループ内における資本関係の変動も伴うようです。

5. 生命科学インスティチュートの体制(予定)
(3/5ページ)


ここで言う”体制”の意味にもよるのでしょうが、この図を見ると、
各社が株式会社生命科学インスティテュートの子会社になるような形なのだろうかと思います。
現在各社は三菱化学株式会社の子会社という位置付けなのだと思いますが、
現金を対価とした事業譲渡以外による移管・統合を実施していくということなのだろうかと思います。
株式会社生命科学インスティテュートが三菱化学株式会社から各社の株式を取得するといったこともある移管・統合になるのでしょうか。
プレスリリースにも、株式会社生命科学インスティテュートの”傘下”との文言がありますが。
ヘルスケア関連事業の集約・移管・統合とは、具体的にどのような手法なのかは気になるところです。

 


このたびの一連の組織再編としては実はこれで終わりなのですが、
株式交換(実は既に完全子会社になっていますから実際には実施しませんが)についても記載がありますので、
株式交換を実施するものと想定し、少しだけ頭の体操をしてみましょう。

プレスリリースには、三菱化学メディエンスは自己株式(0.55%)を株式交換の前に消却すると書かれていますが、
0.55%は第三者が所有しているものとしましょう(この第三者に対価として三菱ケミカルホールディングス株式を割当て交付する)。
そして、三菱化学は、本株式交換に際して交付する三菱ケミカルホールディングス株式を、
三菱ケミカルホールディングスから相対取得することとしましょう。
株式交換比率は、三菱化学メディエンス1株に対し三菱ケミカルホールディングス株式3株を割当て交付するものとします。
第三者所有の三菱化学メディエンス株式の株式数は121,342株(2206万2109株×0.55%)とします。
すると、本株式交換により交付する三菱ケミカルホールディングス株式の株式数は364,026株(121,342株×3)となります。
端数の処理等が少しややこしいのですが、ここでは三菱ケミカルホールディングス株式の公正な価額は「467円」だとします。
この理由は、三菱ケミカルホールディングスは三菱化学に対し、実務上、
「端株は渡せない」なおかつ「端数となる価額の株式は渡せない」からです。
渡す株式数は整数ですし、なおかつ、渡す株式の1株の価額も整数でなければ、現実には渡せないのです。
端株というのは実際にはありませんし、なおかつ、小数点未満の金額は実務上相手には渡せない、というのが理由になります。
プレスリリースに記載された、三菱ケミカルホールディングス株式の評価額「467.389円」(小数点以下第4位切上げ)という数字は、
数値計算上は確かに正しいのだと思いますが、いざ新たに発行し株式を渡すとなると、現実には端数部分というのは渡せないわけです。
また、この端数部分が原因で、本株式交換により交付する株式数「360,558株」にも若干の差異が生じてしまっているのだと思います。
私が計算した「364,026株」とプレスリリース記載の「360,558株」との差異「3,468株」は、言わば端数部分の集合体なのだと思います。
この部分は「端数×端数」で整数になっているだけなのだと思います。
実際には、1株当たりの発行価額も整数、発行し相手に渡す株式数も整数(1株1株を渡すと考える)、としなければならないので、
実際の計算の上では私が書きましたように、まず端数は整数に丸めて、「整数×整数」の形にしなければならないと思います。
この論点をもっと簡単に言えば、仮に1株当たりの発行価額を「467.389円」と考えると、仕訳を切れないわけです。
なぜなら、金額の単位に端数部分はないからです(払い込みの金額が端数であることはあり得ない。譲渡の価額(金額)に端数はない。)。
ですから、1株当たりの発行価額は整数に丸めるしかありません。
そして、株式交換の対価として使用するために、
三菱ケミカルホールディングスから三菱化学へ三菱ケミカルホールディングス株式を渡す必要がありますから、
株式交換実施に先立ち、三菱ケミカルホールディングスと三菱化学は相互に第三者割当増資を実施します。
(その他の諸条件や財務数値はプレスリリース記載のものを適宜参照するものとします。)

この時、「株式交換契約効力発生日である平成26年3月7日(予定)」の3社の仕訳は次の通りです。

 


株式会社三菱ケミカルホールディングスの仕訳

(三菱化学株式) 170,000,142円 / (資本金) 170,000,142円


*株式会社三菱ケミカルホールディングスの、発行価額467円/株×新たに発行する株式数364,026株。
 この時三菱化学が発行する三菱化学株式は、この場合は1株だけでよいと思います(三菱化学の株式価額は問題にならない)。
 これは完全親子会社間だからこそ、1株でもよい、となります。
 まあ、相手が上場子会社であっても親会社が割りを食う分には高い価額で株式を親会社が引き受けてもよいとは思いますが。

 


三菱化学株式会社の仕訳

(三菱ケミカルホールディングス株式) 170,000,142円 / (資本金) 170,000,142円
(三菱化学メディエンス株式) 170,000,142円           (三菱ケミカルホールディングス株式) 170,000,142円


*三菱化学株式会社の、発行価額170,000,142円/株×新たに発行する株式数1株。
 株式会社三菱ケミカルホールディングスからは、1株当たり発行価額が467円の株式を、合計364,026株だけ受け取ることになります。
 そして株式交換により、三菱化学メディエンスの残りの株主(0.55%所有)に三菱ケミカルホールディングス株式を割当て交付します。
 割当てる三菱ケミカルホールディングス株式の株式数は364,026株、1株当たりの価額は三菱化学株式会社側から見れば467円/株です。
 逆に、取得する三菱化学メディエンス株式の株式数は121,342株となります。
 三菱化学株式会社は三菱化学メディエンス株式を1株1,401円と評価しています。
 1株1,401円と評価しているからこそ、三菱ケミカルホールディングス株式を364,026株も割当て交付したわけです。

 


三菱化学メディエンス株式会社の仕訳

(仕訳なし)


*この取引はあくまで株主間の(発行済みの)株式の取引に過ぎませんから、会社には何ら影響を与えません。

 


三菱化学メディエンス株式会社の残りの株主(0.55%所有)の仕訳

(三菱ケミカルホールディングス株式) xxx / (三菱化学メディエンス株式) xxx


*株式交換の対価を受け取ります。
 三菱化学メディエンス株式会社の残りの株主は、三菱化学メディエンス株式全121,342株を手放し、
 代わりに、三菱ケミカルホールディングス株式を合計364,026株だけ受け取ることになります。
 ただし、仕訳上の価額(株主所有の三菱化学メディエンス株式の帳簿価額)は分かりません。
 株式交換後も出資が三菱ケミカルホールディングス株式会社に継続しているものと見なしますから、
 三菱ケミカルホールディングス株式の帳簿価額は170,000,142円とはなりません。
 所有株式の帳簿価額の評価替えや何か評価益の計上などはないわけです。
 三菱化学メディエンス株式会社の残りの株主から見ても、対価として受け取った三菱ケミカルホールディングス株式の、
 1株当たりの価額は467円/株であることには変わりはない(変わりはないからこそ株主はその交換比率の株式交換に納得した)のですが、
 その467円/株という価額が帳簿価額よりも高い場合は、結果として含み益となる(株式交換実施時に損益を認識するわけではない)、
 ということになります。