2013年12月2日(月)



中国当局、裏口上場候補にIPO要件クリアを義務付け=新華社

【北京】中国証券監督管理委員会(CSRC)は11月30日、裏口上場を目指している企業に対し、
新規株式公開(IPO)と同じ要件を満たすことを即日付で義務付けた。国営の新華社通信が同日伝えた。
 CSRCはまた、裏口上場候補が新興企業向け市場「創業板(ChiNext)」に上場しているダミー会社を買収して、
同市場に上場することを禁じた。創業板には350社以上の成長企業が上場している。
 裏口上場の要件はIP …
(ウォール・ストリート・ジャーナル 2013年 12月 02日 12:26 JST)
ttp://jp.wsj.com/article/SB10001424052702304125104579232970361348000.html


 



【コメント】
この記事は、私が昨日紹介した英語の The Wall Street Journal の記事と関連する内容だと思います。
記事には”裏口上場”や”上場しているダミー会社を買収して”といった言葉が使われていますが、
組織再編手続きに沿ってより正確に言えば、これは「上場企業が非上場企業を吸収合併する場合」の話をしていると思えばいいと思います。
また結局のところ、「上場企業が非上場企業を自社株式を対価に株式交換する場合」もこれに含まれるのだと思います。
要するに、非上場企業の株式を保有している人がその株式を対価に上場企業株式を取得することを禁じているものだ、と思えばいいと思います。
このたびの要件とは、第一義的には「上場企業が非上場企業を吸収合併する場合」の義務付けであろうとは思います。
私は常々、上場企業が非上場企業と合併する場合は、その非上場企業も上場のための審査を受けるべきだ、
なぜなら、その上場企業の財務諸表に審査を受けていない資産負債(結果売上高や費用も)が載ってくることになるからだ、
と書いていますが、中国当局がこのたび義務付けようとしていることも理由は目的は私と全く同じだと思います。
また、上場審査を受けていない非上場企業との合併や株式交換がなぜ問題かと言えば、先ほど書きましたように、
非上場企業の株式を保有している人がその株式を対価に上場企業株式を取得することが問題となるからです。
なぜなら、その非上場企業株式の価値・価額・簿価(対価性)が十分に審査されていないまま、
その株式を対価に上場企業が新たに新株式を発行することになるからです。
非上場企業株式を対価に上場企業を手に入れた人は、すぐさま株式市場でその株式を売却することでしょう。
その人が不当な利益を得たことも問題ですし、その上場企業の資産負債の内容が不透明であることも問題ですし、
十分な対価がないままに発行された株式を買うことになるのは最終的には市場の投資家であるわけですから、
株式市場の健全性の点からも問題があるわけです。
投資家保護の観点から、上場企業が非上場企業と合併や株式交換を行う場合はその非上場企業は上場審査を受けなさい、
と中国当局は言っているわけです。
上場企業の財務諸表に上場審査を受けていない資産負債が載ってくること自体も問題ですし、
それに関連してその非上場企業株式の価値・価額・簿価(対価性)が審査されないまま
上場企業が新株式を発行することも問題であるわけです。
上場企業が非上場企業と合併や株式交換を行う場合はその非上場企業は上場審査を受けるべきである、
との考えは当然ではないかと思います。
また、現実的な手順を考えますと、その非上場企業に対する上場審査が完了して初めて、その合併や株式交換の実施は認められるべきでしょう。
なぜなら、その非上場企業に対する上場審査の結果上場は認められないとの結論になった場合、その上場企業は上場廃止になるからです。
上場企業が非上場企業と合併や株式交換を行う場合は、その非上場企業に対する上場審査が完了することを実施の前提条件とすべきでしょう。
その株式を広く社会一般で売買させている以上、上場企業にとって組織再編には大きな困難が伴うのは投資家保護の観点から当然である
と考えねばならず、このたびの中国当局による上場審査の義務付けは極めてまっとうであると私は思います。

 

 


ブラジルのOGX、社債保有者に追加出資を要請=関係筋

 【サンパウロ】ブラジルの石油・ガス会社OGXペトロレオ・エ・ガス(OGXPY, OGXP3.BR)は今年7-9月期(第3四半期)決算で、
中南米の上場企業としては最大の赤字を計上した。こうした中、即座の破産を回避するために社債保有者に追加出資を要請している。
 OGXはかつてブラジルの資産家エイケ・バチスタ氏の旗艦企業だった。7-9月期決算は、
主にマレーシア国営エネルギー会社ペトロリアム・ナショナル( …
(ウォール・ストリート・ジャーナル 2013年 11月 29日 16:34 JST)
ttp://jp.wsj.com/article/SB10001424052702304471504579227280264551604.html

 



【コメント】
会社が”社債保有者に追加出資を要請”したということで、元の英文が気になりました。
「原文(英文)」をクリックしますとこうありました↓。


Brazil's OGX Asks for More Help

SAO PAULO - After posting a nearly $1 billion third-quarter loss, OGX Petroleo e Gas Participacoes SA wants to persuade
creditors to put up more money as the Brazilian oil and natural-gas company strives to avoid outright failure.


 

翻訳はそもそも原文を訳していない部分があるようですが、やや意訳になりますが一応この「原文(英文)」の正しい訳はこうでしょうか↓。

 


【参謀訳】
ブラジルのOGXはさらなる資金援助を求めた

サンパウロ発 ― 第3四半期に約10億ドルの損失を計上したのを受け、ブラジルの石油・ガス会社OGXペトロレオ・エ・ガスは、
直近決済日の債務不履行を何とか避けんがために、さらなる資金提供を求めて債権者を説得したいと考えている。

 



「persuade+目+to do」で「人を説きつけて(説得し、納得させ、勧めて)〜させる」という形ですが、
persuade の前に want to があり、日本語に訳しづらかったので、上のように訳出を少し変えてみました。
put up は辞書には「資金を提供する」とありましたので、そのまま使いました。
「put up」で、何か「会社に債務があるままにしておく」、すなわち、”債務の決済期日を遅らせる”(いわゆるリスケ)といったことを
債権者にお願いしている、という意味なのだろうかとも考えましたが、後に単に more money とありますので、これは考え過ぎだと思います。
as は原因・理由を表す接続詞ですが、ここでは動詞が strive ですので、敢えて目的の意味であるかように意訳しました。
strive to で「〜しようと努力する(戦う、抗争する)」という意味ですが、ここでは「何とか〜しようする」と訳しました。
outright は、率直な(に)、徹底的な(に)、という意味(それぞれ形容詞、副詞)が辞書には載っています。
outright には、すぐさま、即座に、という意味もありますが、これは副詞のみのようです。
outright を形容詞と解釈するなら failure にかかりますし、副詞と解釈するなら avoid にかかるでしょう。
ウォール・ストリート・ジャーナルの翻訳記事は形容詞と解釈し、「即座の破産」と訳しています。
副詞と解釈し、「破産を即座に回避するために」とも訳せるかもしれません。
ただ、wants to とありますので、まだ説得を開始していないところを見ると、
「破産を即座に回避するために」と訳すのはおかしいかもしれません。
もしくは説得は開始しているが資金提供はまだという場合も考えられますが、これは文脈次第で両方あり得るのだと思います。
failure だけで、支払い不能、債務不履行、破産、という意味があります。
債務不履行や破産に完全も不完全もない(例えば1円でも支払額が不足しているならそれは債務不履行)と思いますので、
この outright は時期的なことを言っているのだと思います。
ここでは、「直近決済日の債務不履行」と訳しました。
この outright は”即座の”という意味合いだとは思いますが、企業にとって、いつ”即座に”債務不履行を起こすのかと言えば、
企業は債務の決済日に債務不履行を起こすわけですから、ここでは「直近決済日の」と訳しました。
「間近に迫った」という訳でもいいかもしれません。