2013年11月19日(火)



2013年11月19日(火)日本経済新聞
CATV2社、来春合併 KDDI系、シェア5割超
(記事)



 

2013年11月19日
株式会社ジュピターテレコム
ジャパンケーブルネット株式会社
KDDI株式会社
住友商事株式会社
J:COMとJCNの経営統合について
ttp://www.sumitomocorp.co.jp/news/detail/id=27415
ttp://www.jcom.co.jp/var/rev0/0011/8786/20131118131722.pdf
ttp://www.kddi.com/corporate/news_release/pdf/20131119a.pdf

 


2013年11月19日
KDDI株式会社
ジャパンケーブルネット株式会社(当社連結子会社)株式の株式会社ジュピターテレコム(当社連結子会社)への譲渡に関するお知らせ
ttp://www.kddi.com/corporate/news_release/pdf/20131119.pdf


 



【コメント】
KDDI株式会社と住友商事株式会社が50%ずつ議決権を持つ形で経営を行っているケーブルTV首位の株式会社ジュピターテレコムと、
2位のジャパンケーブルネット株式会社が合併をするようです。
KDDI株式会社の保有議決権割合は50%のみですが、株式会社ジュピターテレコムはKDDI株式会社の連結子会社となっています。
また、ジャパンケーブルネット株式会社はKDDI株式会社の完全子会社となっています。
この大まかな流れを図にしますとこうなります↓。

 

「ジャパンケーブルネット株式の譲渡と、株式会社ジュピターテレコムとジャパンケーブルネット株式会社の合併の流れ」



まず、株式会社ジュピターテレコムがジャパンケーブルネット株式の全てをKDDI株式会社から取得し、
次に、株式会社ジュピターテレコムが完全子会社となったジャパンケーブルネット株式会社と合併する、
という流れになっています。
理屈の上では、株式会社ジュピターテレコムはジャパンケーブルネット株式会社をいきなり吸収合併することもできます。
しかしその場合、存続会社である株式会社ジュピターテレコムは消滅会社であるジャパンケーブルネット株式会社の株主に対し、
すなわちKDDI株式会社に対し、合併の対価として自社株式を割り当て交付せねばなりません。
するとどうなるのかと言えば、KDDI株式会社が保有する株式会社ジュピターテレコムの議決権割合が増加するわけですから、
株式会社ジュピターテレコムの議決権をKDDI株式会社と住友商事株式会社で50%ずつ保有する形が崩れてしまうわけです。
KDDI株式会社と住友商事株式会社の保有議決権割合がどれくらいずつになるのかは分かりませんが、
KDDI株式会社は過半数、住友商事株式会社は50%未満になるのだけは確かです。
KDDI株式会社は現時点で株式会社ジュピターテレコムの親会社ですから、今よりも何割か保有議決権割合が増加しても、
KDDI株式会社、住友商事株式会社双方の連結決算にはそれほど大きな影響はありません。
しかし、KDDI株式会社と住友商事株式会社は、「両社で50%ずつ議決権を持つ形で経営を行っている」ということ自体に意味を見出している
のでしょうから、保有議決権割合を今のまま保ちたい、という思いは強いのだと思います。
したがって、KDDI株式会社が保有する株式会社ジュピターテレコムの議決権割合をみだりに増加させないために、
このような二段階の流れを取っているのだと思います。
気になる点があるとすれば、
株式会社ジュピターテレコムがジャパンケーブルネット株式の全てをKDDI株式会社から取得するのは2013年12月2日、
株式会社ジュピターテレコムが完全子会社となったジャパンケーブルネット株式会社と合併するのは2014年4月1日(目標)
となっている点です。
株式の譲渡も合併も同じ2014年4月1日付である方がむしろ自然であるようにも思いますが。
4ヶ月ほどズレていますが、その理由までは分かりません。

 



このたび発表となった組織再編としては以上で終わりなのですが、
株式会社ジュピターテレコムがジャパンケーブルネット株式会社をいきなり吸収合併する場合のことを少し考えてみましょう。
グループ全体で見ますとこれは連結子会社同士の合併になります。
合併の対価はここでは存続会社株式であるとします(合併の対価が現金の場合は、いきなり合併しても50:50の保有議決権割合は変わりません)。
すると、KDDI株式会社の仕訳は次のようになります。

(ジュピターテレコム株式) xxx / (ジャパンケーブルネット株式) xxx

これは合併により対価の割り当て交付を受けたために、ジャパンケーブルネット株式がジュピターテレコム株式に変わった、というだけです。
消滅会社は文字通り消滅していますから法的には完全に違う株式なのですが、経営上は商号変更が行われただけ、と言ってもいいでしょう。
合併により、存続会社に出資が継続していると考えますから、株式の価額も変わらないわけです。

ここで、プレスリリースによりますと、ジャパンケーブルネット株式の譲渡価額は「105,000百万円」とのことです。
ジャパンケーブルネット株式会社は非上場企業ですから、この譲渡価額はおそらくジャパンケーブルネット株式会社の簿価に基づいた価額であり、
KDDI株式会社が保有しているジャパンケーブルネット株式の価額と同じではありません。
この「105,000百万円」は、ジャパンケーブルネット株式会社の簿価と完全にイコールかどうかは分かりませんが、
「105,000百万円」が少なくともこの取引における公正な価額であることだけは確かであるわけです。
するとどういうことが言えるかと言うと、今後KDDI株式会社が保有することになるジュピターテレコム株式の価額(このたび取得分のみ)は、
「105,000百万円」でなければならないのではないだろうか、と思うわけです。
KDDI株式会社からすると、受け取ることになる合併の対価の種類は現金か存続会社株式か、という違いに過ぎないわけです。
対価の価額は対価の種類に関わらず、全く同じでなければならないわけです。
そうしますと、現金を対価にジャパンケーブルネット株式を手放した時は例えば売却益が計上され、
存続会社株式を対価にジャパンケーブルネット株式を手放した時は全く損益が計上されない、
というのは少し整合性に欠ける面があるように思いました。
上手く言えませんが、現金による決済とは異なりますので、合併に際し存続会社株式を対価に受け取った場合と言うのは、
含み益を抱えた形で存続会社株式を受け取った、と考えないといけないのかもしれません。

 



そして、株式会社ジュピターテレコムとしては、合併に際して、
とにかく「105,000百万円」分の価額の新株式の発行をした(株主資本、資本金が増加した)、ということになりますので、
この場合、合併の対価としてKDDI株式会社が受け取ったジュピターテレコム株式が抱えている含み益は、
連結上「負ののれん」ということになると思います。
正確なところはまた後日改めて書きたいと思うのですが、
このたびのKDDI株式会社の事例で対価が株式と考えた場合は、これは親会社から子会社への追加出資(つまり内部取引)になりますので、
連結上は追加出資していることにならない(追加出資分は相殺消去される)わけですが、
例えば、合併の対価を受け取ったら存続会社が新たに連結子会社になる(規模の小さな企業が規模の大きな企業を合併するなど)、
という場合があるかと思いますが、そのような場合、
存続会社は多く価額の新株式の発行を行って(株主資本、資本金が非常に多く増加させて)対価である株式の割り当て交付を行ったのに、
親会社単体上の存続会社株式の価額は小さいままであるわけですから、
親会社の投資勘定と子会社の資本勘定との間に大きな差異が生じることになります。
したがって、支配獲得日(=結果として合併の効力発生日ということになるでしょうか)における連結修正消去仕訳では、
その差額分は「負ののれん」ということになるのだと思います。
単体上の含み益が連結上は「負ののれん」になる、ということになろうかと思います。


正確にはまだ伝え切れていない部分もあるのですが、とりあえず今日はこれで終わります。