2013年11月13日(水)
日立製作所は13日、上場子会社の日立メディコにTOB(株式公開買い付け)を実施し、完全子会社にすると発表した。
日立本体との連携を強めて医療機器の販売を国内外で加速。
医療分野で先行する米ゼネラル・エレクトリック(GE)や独シーメンスに対抗する体制を整える。
日立製作所の日立メディコへの出資比率は現在、61.7%。今月14日から12月19日まで1株1800円で普通株式を買い付ける。
取得総額は約266億円の見通し。TOB成立後、日立メディコは東証1部を上場廃止になる見通しだ。
日立製作所本体には医療関連事業として医薬品製造プラント部門などがある。2013年3月期のグループの医療関連売上高は
前期比4%減の3180億円。日本円換算で1兆円規模で事業展開するGEやドイツのシーメンス、オランダのフィリップスに比べて出遅れている。
日立製作所は10月1日にヘルスケア事業戦略本部を設置。中西宏明社長が本部長を兼ねた。
メディコの完全子会社化でエックス線診断システムや超音波診断装置などの販路を海外に広げる。
日立は本体を中心にグループ会社を一体運営する組織再編を徐々に進めている。
少数株主の意向に左右されず、安定した経営につなげるため、09年から10年にかけて日立マクセルなど上場していた子会社5社を完全子会社化。
メディコが上場廃止になることで日立の上場子会社は日立建機、日立金属、日立物流など9社となる。
(日本経済新聞 2013/11/13
19:15)
ttp://www.nikkei.com/markets/kigyo/ma.aspx?g=DGXNASDD130LL_13112013TJ0000
2013年11月13日
株式会社日立製作所
当社子会社である株式会社日立メディコ(証券コード6910)の株式に対する公開買付けの開始に関するお知らせ
ttp://www.hitachi.co.jp/New/cnews/month/2013/11/f_1113.pdf
2013年11月13日
株式会社日立メディコ
支配株主である株式会社日立製作所による当社株式に対する公開買付けに関する賛同意見表明及び応募推奨に関するお知らせ
ttp://www.hitachi-medical.co.jp/aboutus/news/news/pdf/news20131113.pdf
2013年11月13日
株式会社日立メディコ
剰余金の配当に関するお知らせ
ttp://www.hitachi-medical.co.jp/aboutus/news/news/pdf/news20131113_2.pdf
「日立製作所株価のここ1年間の値動き」
「日立メディコ株価のここ1年間の値動き」
例えば、このたび、日立製作所は、株式会社日立メディコを完全子会社化することを目的として、
日立メディコの全ての社外株式を取得していく方針です。
株式会社日立メディコの発行済株式総数は39,540,000株、日立製作所が保有する日立メディコ株式の数は24,396,400株
(ただし、日立製作所の100%子会社である株式会社日立アーバンインベストメントが保有する日立メディコ株式の数は15,000株)、
日立メディコが保有する日立メディコ株式(自己株式)の数は391,265株、
したがって、このたび日立製作所が取得していく予定である日立メディコ株式数は14,752,335株となります。
これはこのたびの(不必要な)株式公開買付における買付予定数と(ある意味当たり前ですが)同じ株式数となります。
ここで、日立製作所は、日立メディコ株式を1株1,800円であると評価しています。
つまり、日立製作所は、日立メディコ株式を取得していくに際し、全ての場面において1株1,800円で取得していくことを決定しています。
日立メディコ株主の立場から言えば、日立製作所がどのような株式取得手法を採るにせよ、
日立メディコ株主は1株当たり1,800円と同等の価値を持つ対価を受け取ることになるわけです。
また、ここでは日立製作所株式1株の価値は、今日の終値である「688円」であるとしましょう。
さてここで、株式会社日立製作所は日立メディコ株式の全てを自社株式を対価として株式交換により取得していく計画であったとします。
ところが、株式会社日立製作所の大株主から会社側へ強い要請がありまして、
自分が保有している議決権割合をキープしたいから、できる限り株式は発行しないようにして欲しいと、そういう要請がありました。
具体的には、日立メディコ株式を取得するに際し発行する自社株は30,000,000株未満に抑えるよう指示を受けました。
30,000,000株以上発行したらお前クビだぞと言われました。
こういう場合どうすればいいかと言うと、
日立メディコ株式1株に対し「日立製作所株式2株、現金424円」を割り当て交付する
という株式交換を実施すればよいわけです。
こうすれば、発行することになる日立製作所株式は合計14,752,335株×2=29,504,670株になり、
30.000.000株未満に抑えることができ、大株主様の意向を踏まえることができます。
また、日立メディコ株主の立場からすると、株式交換により受け取ることになる対価の価値は、
日立メディコ株式1株当たり、「日立製作所株式2株、現金424円」=688円×2+424円=1,376円+424円=1,800円、となり、
日立メディコ株主は1株当たり1,800円と同等の価値を持つ対価を受け取ることになるわけです。
これで、株式会社日立製作所は日立メディコ株式の全てを取得することができましたし、
大株主様の意向も踏まえることができましたし、
日立メディコの全株主に対しても平等な取り扱いを行うことができたことになるわけです。
現会社法のように、株式交換の対価は何でもよいとなりますと、以上のような株式取得方法もあるわけです。
理屈の上では、日立製作所が発行する株式数をさらに細かく設定しようと思えば、それはそれで任意に設定・決定できます。
例えば、日立メディコ株式を取得するに際し発行する自社株は20,000,000株ぴったりにしようと思えば、
日立メディコ株式1株に対し「日立製作所株式1.3557175864株、現金867.26630056円」を割り当て交付する
という株式交換を実施すればよいわけです。
こうすれば、発行することになる日立製作所株式は合計14,752,335株×1.3557175864=20,000,000株になります。
また、日立メディコ株主の立場からすると、株式交換により受け取ることになる対価の価値は、
日立メディコ株式1株当たり、
「日立製作所株式1.3557175864株、現金867.26630056円」
=688円×1.3557175864+867.26630056円
=932.733699443円+867.26630056円
=1,800円、
となり、日立メディコ株主は1株当たり1,800円と同等の価値を持つ対価を受け取ることになるわけです。
また、この議論を押し広げていきますと、「そもそも端数株式数を割り当て交付することの是非」にまで話が及ぶようにも思います。
私が上で示したように、「逆算していけばその株式数(端数)になる」というのはもちろん分かるのですが、
そもそも端数株式というのは概念的にも法的にも存在しないわけです。
端数株式を受け取ることになる株主が1人だけであれば「結果として端数株式が生じないからそれで問題がない」というだけであって、
はじめから端数株式を割り当てようとしていること自体がおかしいのではないだろうか、という気がします。
端数株式分は会社が買い取るもしくは株主が差額を会社に支払うことにより会社は1株発行し株主に割り当て交付する、というのは、
数値計算上・金銭的価値に換算すれば問題がないように感じるだけであって、
株主が端数株式を受け取っている状況そのものが概念的におかしい、という気がします。
株式を対価にしたが対価の株式に端数が生じるため端数分は現金で調整して不平等が生じないようにする、などということをするくらいなら、
対価ははじめから現金一種類のみの方がむしろ何の問題もないのではないだろうかと思います。
株式と株式を交換するとなりますと、その比率がきれいに整数倍になることなど実際にはないわけです。
かといって、株式というのはそもそも資本なのですから、現金でもって差額を調整するというような概念はそもそもないのではないか
というふうに思えますので、その比率に端数が生じることも株式の概念上おかしいと思います。
すると、株式と株式を交換する(株式を対価に株式を取得する)ということ自体に概念上おかしな点があるということになるのかもしれません。
これは本当に究極的な話になってしまうかと思いますが。
上場企業のように、発行している株式数が極めて多いと端数株式分が相対的に小さくて済むため会社は対応を取ることができただけであり、
本当は、株主による買取請求も買増請求も概念上間違いであり、株式が端数になること自体が間違いである、ということであるように思います。
「株式の対価には現金しかなかった」、そんな言葉が思い浮かびました。
というわけで、株式会社日立製作所と株式会社日立メディコの事例を題材に、
「株式を取得する時の対価とは何か」という点について考えてみました。
株式と株式を交換する、株式を対価に株式を取得する、ということは、
実は理論上厳密に言えば不可能なことである、という結論になります。
ではなぜ上場企業では、株式と株式を交換する、株式を対価に株式を取得する、といったことを行っているのかと言えば、
それは発行している株式数が極めて多いから、という理由になります。
発行している株式数が極めて多いと端数株式分の影響が相対的に小さくなるため、話をごまかせてしまうわけです。
端数株式は株主1人につき最大でも1株未満分です。
端数株式を何株分も保有している株主などいないわけです。
すると、発行している株式数が多ければ多いほど、端数株式の影響は小さくなります。
発行している株式数が少ない非上場企業では端数株式の影響は小さくはないわけです。
また、端数株式を保有している株主からの買取請求に応じるということは、
自社株買いを行うということと同じであるわけですから、資本充実の原則に反することは言うまでもありません。
さらに、資本充実の原則の論点とは別に、そもそもの話をすると、端数株式というのは概念的にも法律的にも存在しないわけですから、
端数株式が生じてしまうような株式の取り扱いをしていること自体がおかしい、と言えると思います。
そもそも株式の最小単位は1株であるわけです。
例えば増資の際、会社は新株式を1.5株発行する、などということができるでしょうか。
できないでしょう。
できないのであれば、株式と株式を交換する、株式を対価に株式を取得する、という場合にも、
端数株式は生じてはならないはずです。
現会社法の株式取得の対価の柔軟化に関しては、特に上場企業であれば実務上の一定のメリットはあるのだろうとは思います。
ただ、会計理論の面から考えていくと、厳密にはやはりおかしい点はあるように思います。
端数株式は存在しない以上、そもそも「株式の対価には現金しかない」のではないか、という点について今日は書いてみました。