2013年11月7日(木)
>ただ、条文は詳しくは見ていませんが、会社法には違法配当が行われた場合の取り扱いについては記述されていない気がします。
>株主は会社にお金を会社に返すようにとは定められていないと思います。
>法律上は株主は違法に受け取った配当を会社に返還する義務はない
と書いてしまいましたが、どうやらこれは間違っていたようです。
会社法には、違法配当が行われた場合の取り扱いについて条文が定められています。
インターネット上の解説記事を総合しますと、「違法配当が行われた場合の法律関係」は簡単にまとめますと次のようになります。
○仮に違法な配当の支払いがなされた場合には、会社は株主に対してその返還を請求できる(会社法462条1項)。
○会社債権者は直接株主に対して違法分配額を自己の債権額の範囲内で支払うように請求できる(会社法463条2項)。
○違法配当議案を提出した取締役(取締役会で議案の提出に賛成した者も含まれる)は、
違法に配当された額について連帯して弁済する責任を負う(会社法462条1項)。
ただし、その職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明したときは、支払う義務を免れます(同条2項)。
なお、取締役が責任を履行した場合であっても、悪意の株主に対してしか求償できないとされている(会社法463条1項)。
一言でまとめるならば、以下のようになります。
会社法の定めに従い、会社は、違法配当額について、株主に返還を求めることができます。
違法配当を行った取締役(取締役会で議案の提出に賛成した取締役も含まれます)に対しても弁済を求めることができます。
インターネット上にはこのような解説図もありました↓。
「あなたの会社が違法配当を行なった場合、次の関係が起こります」
この図を見ますと、会社も債権者も株主に対し受け取った違法配当を返還するよう請求できる、と読めます。
しかしそれは間違いだと思います。
条文としては会社法にその旨定めてあるようですが、これは法概念上おかしいと思います。
その理由は「株主総会議案をチェック・承認する法的責任は第一義的には会社にあるから」だと思います。
会社は株主のものですし、株主総会議案も本来は全て株主が作成しなければならないのです。
ただ株主は日々の経営については取締役に委任しているわけですから、通常は株主総会議案の作成も取締役に委任しているわけです。
株主は株主総会議案の内容が適法か否かのチェックまで含め取締役に委任しており、
取締役によるチェック(取締役会決議)を受けた上で、株主総会議案は株主総会に提出されるわけです。
仮に配当が違法であったのだとすると、それは会社に第一義的に法的責任があることになるわけです。
非上場企業の場合、株主=取締役であることが非常に多いわけですが、
仮に受け取った違法配当を返還するよう会社債権者から請求された場合は、
その人は株主としてではなく、取締役として責任を追及されることになります。
会社は株主に対し、「不当利得だから返還せよ」という主張する権利はないと思います。
旧商法や現会社法における条文解釈は分かりませんが、
少なくとも法概念上は、会社債権者は株主に対し、違法配当分を直接自分に支払うよう請求はできない、と思います。
会社債権者と会社とは関係があり、株主と会社とも関係がありますが、会社債権者と株主とは直接的には何ら関係がないのですから。
違法配当がなされた場合、会社債権者は「取締役に対する」損害賠償責任追及で対応しましょう。
他にも、インターネット上で検索してみますと、
「株主は受け取った違法配当を返還すべきか否か」については極端に意見・解釈が分かれているようです。
会社法コラム
違法な剰余金配当の効力の行方?!
ttp://openweb.chukyo-u.ac.jp/~ikeno-c/law-labo/company-law/comment/cp-005.pdf
旧商法では「違法配当はそもそも無効」という解釈で一致していたわけですが、
現会社法では「違法配当は有効」という意味不明な解釈まであるようです。
完全に日本語が矛盾していると言いますか。
「違法配当は有効」であるならば、それはそもそも法的な不当利得でも法的な会社財産を危うくする行為でも何でもないわけでして、
株主は返還する義務があるかないか以前の話になってしまうような気がします。
「違法配当は有効なら、その配当はそもそも適法であった」、で終わりでしょう。
「違法配当は有効」などと言い出すなら、そもそも分配限度額(配当可能限度額)という配当制限の概念すら危うくするものだと思います。
「違法配当は有効」という言葉は、分配限度額(配当可能限度額)という配当制限はない、と言っていることと同じでしょう。
>仮に株式会社雪国まいたけが配当を100百万円分しか支払わなかったのだとしたら、
>それは株式会社雪国まいたけにとって債務不履行です。
と書きましたが、
それは「株主総会で決議したことは会社は必ず実行しなければならない」という意味であって、
「違法な配当決議も有効である」という意味では決してありません。
会社が配当支払いに関するその株主総会決議が違法であることに気付いたならば、
そもそもその株主総会決議自体が無効ですから、もちろん会社は配当を一切支払わなくてもよいわけです(一切支払ってはいけない)。
ただ、実際の株主総会決議前に配当支払いに関するその株主総会議案を会社としては承認しています(取締役会決議を取っている)から、
株主総会決議後実際の配当の支払いまでの間に会社がその配当決議が違法であることに気付くことはあり得ないわけです。
実際には、配当を支払った後に、その配当支払いは違法であった、と気付くわけです。
株主は受け取った違法配当を返還すべきか否かの議論は、
どうしても「会社が違法配当を支払った後」の議論が中心にならざるを得ないわけです。
そういったことを踏まえた上で、私が昨日言いたかったのは、
あくまで適法の範囲内で株主総会で配当決議を行った場合は、会社は株主総会の決議内容に従って配当を支払うだけであって、
1株当たり配当額や配当総額を会社が勝手に変更するのは債務不履行だ、ということなのです。
というわけで、訂正が長くなりました。
会社法には確かに条文という形で違法配当の返還請求に関して一定の定めはあります。
しかし、株式会社制度における概念としては、むしろ私が昨日書いた内容の方が合っているように思えます。
法概念としては私が書いていることの方がむしろ正しいとは思いますが、
法律実務上は定説や判例が優先されますので、詳しい法手続きに関しては法律の専門家にお尋ね下さい。
2013年11月7日(木)日本経済新聞 公告
発行価格等の決定に関するお知らせ
ケネディクス不動産投資法人
売出価格等の決定に関するお知らせ
株式会社明光ネットワークジャパン
株式移転につき通知公告
株式会社ウエスコ
(記事)
2013年11月6日
ケネディクス不動産投資法人
新投資口発行及び投資口売出しに係る価格等の決定に関するお知らせ
ttp://www.kdx-reit.com/cms/whats/20131106_171017kyVA.pdf
2013年11月6日
ケネディクス不動産投資法人
発行価格等の決定に関するお知らせ(金融商品取引法第15条第5項に基づく公表文)
ttp://www.kdx-reit.com/cms/whats/20131106_172847Dh5B.pdf
2013年11月6日
株式会社明光ネットワークジャパン
売出価格等の決定に関するお知らせ
ttp://www.meikonet.co.jp/pdf/download/type/news/id/378/field/pdf1
2013年11月6日
株式会社明光ネットワークジャパン
売出価格等の決定に関するお知らせ(金融商品取引法第15条第5項に基づく公表文)
ttp://www.meikonet.co.jp/pdf/download/type/news/id/379/field/pdf1
2013年10月10日
株式会社ウエスコ
第44回招集通知
ttp://www.wesco.co.jp/ir/pg_siryou/data3/i1381396809/f1
2013年10月22日
株式会社ウエスコ
「第44
回定時株主総会招集ご通知」の一部修正に関するお知らせ
ttp://www.wesco.co.jp/ir/pg_siryou/data3/i1382425930/f1
2013年10月28日
株式会社ウエスコ
第44回決議通知
ttp://www.wesco.co.jp/ir/pg_siryou/data3/i1382921717/f1
2013年11月6日
ウエルシアホールディングス株式会社
公募及び第三者割当による新株式発行並びに株式売出しに関するお知らせ
ttp://welcia.co.jp/pdf/0000000336.pdf
第4期(平成24年8月期) 有価証券報告書(平成23年9月1日〜平成24年8月31日)
ttp://welcia.co.jp/ir_pdf/20121130.pdf
【コメント】
イオンの持分法適用関連会社であるウエルシアホールディングス株式会社が増資を行うようなのですが、
イオン自身も増資を引き受けることにより、保有議決権割合は同じ水準を維持する(29.19%から29.18%へ)ようです。
9.募集後の大株主及び持株比率
(11/11ページ)
持分法適用関連会社や連結子会社が増資を行う場合は、親会社も一定割合増資を引き受けるようにしないと、
保有議決権割合が減少し、持分法適用関連会社や連結子会社が連結の範囲から外れてしまうことがあり得ます。
増資後の保有議決権割合を正確に計算した上で、持分法適用関連会社や連結子会社は増資を行わないといけません。
E 株式会社ツルハ、イオン株式会社との業務・資本提携について
(13/92ページ)
>当社及び当社グループの経営上の重要事項につきましては、
>独自の経営判断に基づき業務執行を図っており、イオン株式会社からの独自性は確保されております。
ウエルシアホールディングス株式会社はわざわざイオン株式会社と業務・資本提携を行っており、
イオンの持分法適用関連会社にまでなっているわけですから、
「独自の経営判断」であったり「親会社からの独自性は確保されている」というのはやはりおかしいのではないでしょうか。
「独自の経営判断を行っていて親会社からの独自性は確保されている」のなら、それはそもそも持分法適用関連会社ではないはずです。
仮にこれらの文言が一般株主や一般投資家に向けてのアピールのつもりなのだとしたら、
それは結局のところ持分法適用関連会社や連結子会社というのは上場するべきではない、という結論に行き着くのではないだろうかと思いました。
親会社は自社(の株主)の利益のために持分法適用関連会社や連結子会社を経営するわけです。
持分法適用関連会社や連結子会社の少数株主のために持分法適用関連会社や連結子会社を経営するわけではありません。
「持分法適用関連会社や連結子会社の少数株主」と「親会社」との間には一定の思惑の違いは生じ得るものだと思います。
2013年11月7日(木)日本経済新聞
足利HD、最大300億円調達 上場時に公募増資
(記事)
それから、足利銀行の上場とは関係ない話になりますが。
この世の全ての銀行は各国内完結の貸し出しを行っているわけですから、銀行が海外融資を行うことはそもそもありません。
ただ仮に銀行が海外融資を行うことを考えてみますと、国内への融資のみを行う場合に比べ海外への融資を行う場合は
自己資本比率が高くないといけないということに根拠はあるのでしょうか。
国内への融資だろうが海外への融資だろうが、行っていること自体は全く同じです。
国内に比べ海外への融資の方がリスクが高いということは全くないわけです。
海外でも日本と全く同じ様に銀行は貸し出しを行っているわけですから。
海外への貸し出しがリスクが高いのなら、国内への貸し出しもリスクが高いはずです。
逆に、国内への貸し出しはリスクが低いのなら、海外への貸し出しもリスクは低いはずです。
そうしますと、銀行への自己資本比率規制が、国内への融資のみを行う場合と海外への融資を行う場合とで異なる(後者が厳しい基準である)、
ということには理論的には根拠は全くないように思います。
アシックス/アシックス商事をTOB、完全子会社化目指す
アシックスは11月6日、連結子会社であるアシックス商事に対し、株式公開買い付け(TOB)を行い、完全子会社にすると発表した。
買い付け予定数には上限、下限を設定せず、応募株式のすべてを買い付ける。
アシックスは現在、アシックス商事の株式を間接保有分も含めて52.69%持っている。
TOBですべての株式を取得できなかった場合は、両社間で株式交換を実施し、アシックスがアシックス商事を完全子会社化する。
アシックス商事は上場廃止となる見込み。
アシックス商事は、このTOBに賛同している。
TOBの期間は11月7日〜12月18日。買い付け価格は2500円。8月6日〜11月5日までの過去3か月間における同社株の普通取引終値の平均は1768円。
買い付け価格はこれに40.3%のプレミアムを加えた額となる。
買い付け予定株数は348万株、買い付け代金は87億1400万円。
両社は、同日付で経営統合に関する基本合意書を締結、開発・生産体制の最適化などを進めるとしている。
具体的には、アシックスの中価格帯以下の商品の開発・生産について、アシックス商事への委託を拡大するなどとしている。
アシックスは2015年度までに連結売上高4000億円の達成を目指し、グローバル規模で持続的成長を遂げられる体制づくりに注力している。
(メーカーニュース 2013年11月6日)
ttp://makernews.biz/201311061411/
2013年11月7日(木)日本経済新聞 公告
公開買付開始公告についてのお知らせ
株式会社アシックス
(記事)
2013年11月6日
アシックス商事株式会社
期末配当予想の修正に関するお知らせ
ttp://www.asics-trading.co.jp/ir/pickup/pdf/h26_3/haitosyusei20131106.pdf
「アシックス株価のここ3ヶ月間の値動き」
「アシックス商事株価のここ3ヶ月間の値動き」
「アシックス株価のここ1年間の値動き」
【コメント】
まず結論を先に言えば、これは株式公開買付は実施する必要は全くありません。
いきなり臨時株主総会を招集し、株式交換を実施するための特別決議を両社で取るだけのことです。
なぜなら、株式会社アシックスはアシックス商事株式会社の完全親会社となる計画であり、
なおかつ、完全親会社となる株式会社アシックスは完全子会社となるアシックス商事株式会社の議決権の過半数を既に保有しているからです。
特別決議を通すためには3分の2以上の議決権が必要ですから過半数というだけでは確かに10%強議決権が不足しているわけですが、
この場合は同じグループ内の企業同士(親子会社間)の組織再編であり、
子会社であるアシックス商事株式会社も株式会社アシックスの完全子会社となることに賛同しているわけですから、
実務上は現時点でもまず間違いなく株主総会の特別決議は通ります。
株式会社アシックスは株式公開買付など実施せず、すぐに臨時株主総会を招集すべきだと思います。
私の結論としては「株式会社アシックスは株式公開買付など実施せず、すぐに臨時株主総会を招集すべき」の一言なのですが、
敢えてこのたびの株式公開買付に意味を見出すならば、
それは株式公開買付を実施すれば株式会社アシックスは株式の希薄化の程度をある範囲で調整できる、ということだと思います。
今すぐに臨時株主総会を招集し株式交換の実施のための特別決議を取ればもちろんすぐに完全子会社化は可能となるわけですが、
株式交換の対価は大きく分けると「現金」か「アシックス株式」のどちらかです。
株式会社アシックスは株式の希薄化をできる限り避けたいと思うのなら、現金を対価とした株式交換を実施すればよいでしょうし、
株式会社アシックスは現金の社外流出をできる限り避けたい(株式の希薄化には目をつぶる)と思うのなら、
「アシックス株式」を対価とした株式交換を実施すればよい、ということになります。
ただ、例えば大株主に強い意向があって大株主の保有議決権割合を一定以上に保つ必要があり、
その意味で発行できる自社株式数に限りがある、といった場合ですと、
株式会社アシックスとしては、アシックス商事株式の一定割合は現金にて取得(=株式公開買付)し、
残りのアシックス商事株式は「アシックス株式」を対価とした株式交換にて取得する、といったことは考えられます。
株式公開買付の実施により、株式会社アシックスは現金で取得するアシックス商事株式の数を任意に設定できますから、
自社株式の希薄化の程度をある範囲で調整することが可能になるわけです。
最終目標は完全子会社化でも、株式公開買付を間に挟む意味があるとすればそういったことは考えられます。
まあ実務上、対価が現金か自社株式かで取得する株式をそこまで細かく分ける必要がある場面というのが現実にあるのかどうかは知りませんが。
なお、このたびの株式会社アシックスの株式公開買付では上限は設定していない(=全株式を現金にて取得する計画)とのことですので、
それなら意味は全くないので、今すぐに臨時株主総会を招集し株式交換(現金交付式)の実施のための特別決議を取るべきだと思います。
もちろん、株式公開買付期間中にアシックス株価が、幸運なことに、思惑により上昇することも考えられます。
しかしそれは単なる運でしょう。
株式公開買付期間中にアシックス株価が上昇するのも運なら、下落するのも運になってしまうのです。
市場株価は確かに日々変動するものだとは言え、不慮の思惑にも左右されることになり、それは会社としてはできる限り避けたいところでしょう。
そうしますと、アシックス商事株式の価格についてもアシックス株式の価格についても、
「株式の取得価格を決め打ちしてすぐに決定・発表してしまうことが望ましい」ということになるわけです。
例えばこのたびの株式会社アシックスの事例で言えば、
「株式会社アシックスはアシックス商事株式会社を株式交換により完全子会社化します。そのために臨時株主総会を招集します。
株式交換比率はアシックス商事株式1株につき、アシックス株式を1.455株割当て交付します。
1.455株の算定根拠は、弊社はアシックス商事株式を1株2,500円と評価いたしておりまして、
本日の弊社株式の終値1,718円を基準にして株式交換比率を決定したいました。」
と発表すればよかったのではないかと思います。
もちろんこの場合、その後アシックス株価が下がってしまうこともあり得、その場合、株式交換比率は固定ですから、
アシックス商事株式の価格(株式会社アシックスにとっては取得価額)は1株2,500円以下に下がってしまうわけです。
しかしそれは、上場して株式の価値は市場株価であるという前提で話をしている以上、致し方ないことだと考えるべきでしょう。
完全子会社化にまつわる様々な間違った不測の思惑に左右されるよりは、株式交換比率が決まっている分、まだましだと思います。
株式交換比率が決まっている分、その後相対的にアシックス株価は思惑に左右されづらいと思います。
もしくは、大株主の強い意向などにより、株式公開買付を間に挟み、現金にて取得する株式数を細かく設定する(そしてその後株式交換)場合は、
「株式会社アシックスはアシックス商事株式会社を完全子会社化いたします。まず株式公開買付を実施し、
その後、弊社株式を対価に株式交換を実施し完全子会社化します。そのために、株式公開買付終了後、臨時株主総会を招集します。
まず、株式公開買付における買付価格はアシックス商事株式1株につき2,500円です。
次に、株式交換比率はアシックス商事株式1株につき、アシックス株式を1.455株割当て交付します。
1.455株の算定根拠は、弊社はアシックス商事株式を1株2,500円と評価いたしておりまして(したがって買付価格も1株2,500円です)、
本日の弊社株式の終値1,718円を基準にして株式交換比率を決定したいました。」
と発表すればよかったのではないかと思います。
株式交換比率まで決定・発表してしまうわけです。
このような形により、「株式の取得価格を決め打ちしてすぐに決定・発表してしまうことが望ましい」と思います。
ただ最後のケースの場合、株式公開買付に応じた株主には現金2,500円を支払っており、
株式交換にてアシックス商事株式を手放した株主にはアシックス株式を割り当て交付している、
という点が法律上問題がないかは自信がありません。
対価の種類が異なること自体はそれほど問題ないように思いますが、
対価の価額が微妙に違ってくる面はあると思います。
株式公開買付に応じなかったアシックス商事株主は、アシックス商事株式1株につき、アシックス株式を1.455株受け取ることになりますが、
「アシックス株式1.455株」の価額はいくらか、という話になるわけです。
もちろん、「アシックス株式1.455株」の価額はアシックス株価に左右されます。
「アシックス株式1.455株」が、結果として、2,500円以上の場合もあれば2,500円以下の場合もあり得ることになります。
この点が法律上問題がないかどうかは分かりません。
株主によっては株式公開買付に応じたが上限設定のため保有する全ての株式は買い取ってもらえなかった、という場面もあるでしょう。
そういった不都合な株式の売買が、「株主を平等に取り扱わなければならない」という原則に照らして問題ないのかどうか。
こういった場合、金融商品取引法等に該当する定めがあるのかどうか(取引全体ではなく法律単位で見ると問題はないようにも感じますが)。
法律論(この取引は違法か適法か)としては私には結論は出せませんが、ここでは特に、
実務上「株式の取得価格を決め打ちしてすぐに決定・発表してしまうことが望ましい」という点について考えてみました。
なお、「理論上は株式の取得価格は最後の最後まで決められない」、ということになります。
株式交換比率を株主総会で決議しても、株主総会決議日から株式交換期日(効力発生日)までの間に株価が下がったらどうするのか、
という問題には実務上はどうしても対応は不可能でしょう。
このことを踏まえると、株式会社アシックスの事例でも、株式公開買付の実施の発表と同時に株式交換比率まで決定・発表してしまう、
ということは間違いとは言い切れないという気がします。