2013年10月31日(木)
ただ、一つ腑に落ちないのは、富士通フロンテック株式会社はなぜ2014年3月期第2四半期に子会社株式の減損処理を行ったのか、です。
連結子会社
Fujitsu Frontech North America, Inc.
は非上場企業ですから、市場株価があるわけではありません。
子会社株式を減損するかしないか(減損の兆候)は、子会社の簿価(株主資本額)や経営状況を見て総合的に判断するほかありません。
富士通フロンテック株式会社が連結子会社である
Fujitsu Frontech North America, Inc. 株式を減損処理した理由は、
Fujitsu Frontech North
America, Inc.
が経営不振(赤字続き)であり、簿価も小さくなっており、経営の状況や簿価に回復の見込みはない、
と判断したからだと思います。
そのこと自体はよいと思うのですが、そのような状況なのであれば、この子会社株式減損損失を翌四半期首に戻し入れることはできない、
のではないだろうか、と思うわけです。
もしこの子会社株式減損損失を翌四半期首に戻し入れるのならば、全く同じ子会社株式減損損失を翌四半期末に再び計上しなけばならないはずです。
そして、四半期洗い替え法を適用する結果、この子会社株式減損損失を翌々四半期首に再び戻し入れることになり、
そしてまたまた全く同じ子会社株式減損損失を翌々四半期末(=2014年3月期(通期、1年間))にまた再び計上しなけばならないはずです。
なぜなら、市場株価とは異なり、子会社の簿価(株主資本額)や経営状況は短期間のうちに改善することは決してなく、
2014年3月期第2四半期末に減損処理をしなけばならないような子会社の簿価や経営状況であるならば、
2014年3月期第3四半期末や2014年3月期末においても、減損処理をしなけばならないような子会社の簿価や経営状況であるはずだからです。
上場株式であれば、第2四半期末時点には市場株価が低迷していたが第3四半期や通期末には株価が回復した、と言うことがあり得、
したがって、税務処理との関連も含め四半期切り放し法よりも「四半期洗い替え法」が適当である、という場面が考えられます。
しかし、株式の評価基準を会社の簿価や経営状況に求めざるを得ない非上場株式の場合は、上記の理由により、
四半期末の有価証券の評価方法としては「四半期切り放し法」を適用する以外考えられない、ということになろうかと思います。
私の最初の疑問を正確に言い直せば、
富士通フロンテック株式会社はなぜ2014年3月期第2四半期末に子会社株式の減損処理を行ったのか、ではなく、
富士通フロンテック株式会社はなぜ2014年3月期第3四半期首に子会社株式の減損損失を戻し入れたのか、となると思います。
ただ、「四半期洗い替え法」を適用している場合は、言わば自動的に翌四半期首に減損損失を戻し入れる処理をしなければならないわけです。
そのことを踏まえると、私の最初の疑問をさらに正確に言い直せば、
富士通フロンテック株式会社はなぜ四半期末の有価証券の評価方法として「四半期洗い替え法」を適用したのか、となると思います。
もちろん、会計処理の方針として、四半期末の有価証券の評価方法として「四半期洗い替え法」を適用することを会社が選択するのは自由です。
税務処理との関連も含めそちらの方が適当な場面も確かにあるでしょう。
しかし、このたびの富士通フロンテック株式会社の事例を踏まえれば、翌四半期首の戻し入れが決算の数値を無意味に歪めてしまう弊害もあるわけです。
さらに、上場株式の四半期末の減損処理に関しても、そもそも株価の回復の見込みはないから減損処理を行ったわけなのですから、
翌四半期首に減損損失を戻し入れるということ自体が完全に矛盾している、といえるわけです。
そういったことを考えますと、税務処理との差異が生じてしまうことは理解できるものの、上場株式であろうが非上場株式であろうが、
四半期末の有価証券の評価方法としては「四半期切り放し法」を適用する以外考えられない、ということになろうかと思います。