2013年10月30日(水)



2013年10月26日(土)日本経済新聞
雑誌の消費税率 4月以降は8% 3月末までに発売でも
(記事)


 


【コメント】
何気ない記事ですが、「そもそも消費税とは何か」という消費税の本質を考えるのにいい記事だと思います。
消費税と言うのは、簡単に言えば、物品を最終消費者が購入した時に購入したという行為に対して課税するものです。
一般消費者の立場に立ってもっと簡単に言えば、「何かを買った、だからそれに対して税を払った」、というのが消費税なのです。
逆に言えば、物を全く買わなければ消費税は一切かからないわけです。
この点、所得に対して課税される所得税や物を保有しているだけで課税される固定資産税とは、性質が異なるわけです。
ここで重要なのは、消費税と言うのはあくまで「物を購入したという行為」に課税される点です。
つまり、課税のタイミングは「物を購入した時」であるわけです。
物を購入したと同時に課税される、だから物の代金を支払う時に消費税も一緒に支払うわけです。
お店は消費者から預った消費税を後日税務当局に納税するわけですが、それは税務当局への納税が後日というだけであって、
課税のタイミングはあくまで「物を購入した時」であるわけです。

ここで記事に戻りますと、来年4月1日から消費税が5%から8%へ引き上げられるとのことですが、雑誌や新聞に対する消費税率はどうでしょうか。
雑誌の発売日が3月末が4月1日かで適用される消費税率が変わるべきなのか同じであるべきなのかという議論になりますが、
消費税とは物品を最終消費者が購入した時に購入したという行為に対して課税するものであるという点を考えれば、
雑誌の発売日が3月末であろうが4月1日であろうが、適用される税率はとにかく最終消費者が購入した日が3月末が4月1日以降かのみで判断する
というのが理論上は正しいと思います。
書店のレジのITシステムのことは詳しくは分かりません(商品毎に適用する税率は任意に変えられるのではないだろうかとは思いますが)。
しかし、消費税(消費税に限らずこの世の税は全てそうですが)の対象や税率は政府がある意味任意に決めることですから、
発売日が3月末までの雑誌に限り4月以降も税率を5%にする特例を設けようと思えば、それはそれで税実務上可能なことだろうとは思います。
ただ、特例ではなく、消費税の基本的な考え方に基づくなら、雑誌に関しても4月以降は消費税率は当然8%が適用されることになるわけです。
理由は極めて単純であり、最終消費者がその物品を購入したのは4月1日以降だから、となります。
発売日は何ら関係ないわけです。

 


それから、記事には、

>新聞は引き続き特例の対象になる。3月31日付の新聞は4月に入ってから買っても、5%の税率しかかからない。

と書かれています。
これは政府がそう決めただけと言えばそれだけのことだと思います。
雑誌同様、消費税の基本的な考え方に基づくなら、新聞に関しても、
3月31日以前の日付の新聞であろうとも、4月以降の販売には消費税率は当然8%が適用される、という考え方になると思います。
まあこれは税理論とは異なる話ですが、新聞は一部の価格が10円単位になっているかと思いますので、
消費者としては新聞の税率がいくらかはほとんど意識することはないとは思います。
仮に今後新聞価格が値上げされるとしても10円単位でしょうから、5%から8%へ消費税が引き上げられたということとは関係がない、
ということになると思います。
その辺りの新聞の価格設定(10円単位であること)に関しては一定の政策的配慮はあるのでしょう。


最後に、そもそも全ての物品は様々な工程や流通過程を経て合計何日もかけて消費者に届くわけです。
消費税を負担するのは最終消費者のみですが、納税するのは原材料から始まる各流通段階の各事業者であるわけです。
小売店のみが消費税を納税するわけではありません。
そうすると、各流通段階の(事業者同士の販売にかかる)税率は当然全て同じでないといけないということになろうかと思いますが、
物品が流通段階で3月31日から4月1日へと日付がまたいでしまう場合(適用される税率が流通段階で変わってしまう場合)、
各流通段階にある原材料や部品や半製品や商品などの事業者間の販売にかかる消費税はどうなるのでしょうか。
厳密に言えば、4月1日以降に最終消費者に販売される分には、3月31日以前であっても事業者間の販売では8%を適用するようにしないと、
最終消費者が負担する消費税率と整合性が取れないことになると思います。
小売店は3月31日に消費税5%で商品を卸売業者から仕入れた、しかし、その商品を小売店は4月1日には消費税8%で最終消費者に販売するわけです。
差額の3%分はどうなるのでしょうか。
実務上は各流通段階のことまでは煩雑過ぎて把握しきれないでしょうから、
単純に、小売店は4月1日以降販売分に関しては仕入時期に関わらず全商品に対し消費税を8%と設定し、後日納税することになると思います。
ただ厳密に言えば、それは消費税8%という前提で卸売業者から仕入れるからこそ小売段階の消費税8%で整合性が取れるわけです。
小売店は、商品を消費税5%で仕入れた分(3月31日以前に仕入れた分)に関しては、実務上は差額の3%分は得をする形になると思います。
それ以前の各流通段階の全事業者は、はじめから消費税は全く負担しませんから、税率引き上げの損益というのは全くありませんが。
もしくは、小売店も損得は一切なく、単純に「仮受消費税−仮払消費税」のみで納税するだけかもしれませんが(こちらが正しいと思います)。
いずれにせよ、消費税率引き上げに伴い、短期間だけではありますが税理論上は整合性が取れない部分が若干生じるのだけは確かでしょう。