2013年9月16日(月)
2013年9月16日(月)日本経済新聞
中国、鉄鉱石先物上場へ 現物渡しで世界初
(記事)
【コメント】
私には中国語は分かりませんが、大連商品取引所のサイトには以下のプレスリリースがありました↓。
英語では相当するプレスリリースは見当たりませんでした。
また、日付も2013年9月12日付なのか2013年9月13日付なのか2013年9月14日付なのかよく分かりませんでした。
大連商品交易所
ttp://www.dce.com.cn/portal/info?cid=1325230891100&iid=1379062822100&type=CMS.PHOTO_NEWS
記事によりますと、これは先物取引ですが現物引き渡しを原則としているようです(それを”先物取引”と呼ぶのかどうかは知りませんが)。
これでは鉄鉱石の現物をどうやって相手に渡すのかという問題が真っ先に頭に浮かびます。
また、そもそもどうやって鉄鉱石の現物を手に入れればよいのかも分かりません。
そういったことを考えますと、鉄鉱石先物取引を上場させると言っても、
そもそも市場に参加者(投資家)はいないのではないか、という気がします。
上場しても全く取引は行われないのではないかとしか思えない先物商品だと思います。
これで終わるの何ですので、英語の記事を紹介して目に止まった部分のみ訳してみます。
>Iron ore futures will foster a pricing system for the product based
on actual supply demand conditions and
>reduce price volatility in the
global commodity market.
【参謀訳】
鉄鉱石の先物取引は、実需給の状況に基づいた製品のための価格決定システムの発展に資することになりますし、
世界的な商品市場における価格変動幅を小さくすることにつながります。
これなど話は正反対でしょう。
先物取引は通常、現物の引き渡しは行いませんから、実需給は全く関係がないわけです。
したがって、上場している各先物商品の価格の変動は、実際の需給の状況とは完全に無関係に常に激しいのです。
一般的な話をすると、商品の価格変動幅を小さくしたいのなら、市場取引などやめるべきなのです。
特定の仕入元・販売先の間のみで定型的に取引を行っていけば、価格は変動しない(実需給に基づいた価格変動のみ起こる)わけです。
大まかに言うと、取引の参加者が少なければ少ないほど価格は安定し、取引の参加者が多ければ多いほど価格は変動する、
というようなことが言える気がします。
まして、現物の引き渡しは行わない先物取引ですと、実需給すら関係がないわけですから、
実物の価格ではなく「その先物商品の市場価格は今後上がるのか下がるのか」のみで先物商品価格が極端に日々変動することになります。
逆に言えば、実物は全く関係がないわけですから、例えば鉄鉱石の実際の需要家(製鉄会社など)にとっては、
鉄鉱石の先物商品の価格がどれだけ上昇しようが下落しようが全く関係がない(実物の価格は一定)、ということになるわけですが。
いずれにせよ、鉄鉱石の先物商品が上場することになっても実需給に基づいた価格形成にはつながりません。
ただ、先物商品の価格の方が逆に実物の商品価格に影響を与える、というようなことがあるのかどうかは分かりません。
あるのだとしたら、鉄鉱石の先物取引により鉄鉱石(実物)の価格変動幅は大きくなることになりますが。
実物の価格と言うのは会計で言う簿価のようなもので、思惑のみでは動かないものであるというようなイメージが私の中にはありますが、
先物取引にはそれほど詳しくありませんので、先物取引についてはこれで終わります。
「鉄鉱石 上場」で検索していますと、次のような記事もありました。
これは鉄鉱石の上場でもなければ商品取引所の株式の上場でもなく、「鉄鉱石採掘会社」の株式の上場です。
直接的にはこのたびの鉄鉱石先物の上場とは関係ありませんが、記事の紹介だけします。
新世界発展、鉄鉱石採掘部門の上場を計画
【香港】不動産開発大手の新世界発展とそのインフラ子会社である新創建集団の鉄鉱石採掘部門、新砿資源(ニュートン・リソーシズ)は、
7月4日の香港証券取引所への上場に先立ち新規株式公開(IPO)で3億〜3億5,000万ドルを調達する計画だ。
ダウ・ジョーンズ経済通信が31日に閲覧した条件規定書で明らかになった。
それによると、ニュートンは同日、需要を読み取るために投資家との非公式会議を開始した。
6月13日に機関投資家向けのブックビルディングを始める。
IPOでは12億株(うち83.3%が新株、16.7%が旧株)を公開する。
調達資金の約46%は2カ所の鉄鉱石鉱山の探査権・探査活動の代金に充て、約13.7%は採掘・加工能力の拡大に充てるとしている。
新世界発展と新創建集団は連名で発表した公告でニュートンのIPO計画を認めた。
両社が鉄鉱石採掘部門のスピンオフ(分離・独立)上場を目指すのはこれで3回目となる。
今回のIPOではシティグループが単独グローバル・コーディネーターを務めている。
(ウォール・ストリート・ジャーナル 2011年 5月
31日 15:46
JST)
ttp://jp.wsj.com/public/page/0_0_WJPP_7000-243868.html
「エンロン 巨大エネルギー企業の出現と崩壊 1」
「エンロン 巨大エネルギー企業の出現と崩壊 2」
この本には、「規制緩和で巨大化・瓦解」と書かれていますが、
規制緩和というだけではいきなりこのように貸借対照表が膨張することはないと思います。
売上高もいきなり急増しているわけですが、規制緩和に伴い個人や法人のエネルギーの消費が突然急増するわけではありません。
長年の付き合いがある一定の既存の取引先・お得意先がいる中で、個人や法人はエネルギーを仕入れたり販売したりしているわけでして、
短期間にエンロンだけが巨額のエネルギーを仕入れ販売できるようになるなど、絶対に考えられないことでしょう。
規制緩和だデリバティブだというより、エンロンの場合は「ただ単に壮大な架空決算を行っただけ」、というのが実態でしょう。
実はエンロンでは業務は何も行っていなかった、というのが本当のところではないでしょうか。
「架空の財務諸表を基に株式の売買が行われていた」、残念ながら上場企業の負の側面を見てしまった気がします。
スキャンしたページにはエンロンの株価の推移が載っていますが、まさにバブルと呼ばれる現象が起きたと言うことでしょう。
ただ、仮に財務諸表に嘘がない場合でも、「市場株価−簿価」の部分は常に本質的にバブルに相当すると言うべきなのではないか、
という気がします。
本質的に100円の価値を持つ株式を、120円や150円や200円や500円や1000円で売買していることになるわけですから。
財務諸表とは無関係の価格で株式を売買してよいのなら、そもそも財務諸表の開示は必要ない、というところまで話が行き着く気がします。
もしくは、名目上財務諸表の開示は必要なのだとしたら、開示する財務諸表は嘘でも構わない、というところまで話が行き着く気がします。
極端な話、エンロンは何も間違っていなかったのではないか、という気もしてくるわけです。
フェイスブック同様、エンロンもまた株式市場に対する一種のアンチテーゼだったのではないだろうか、という気がします。
これは逆のパターンに関しても言え、1株当たりの株主資本額が1000円の企業の株価が500円だったり300円だったり、ということがあります。
なぜ簿価よりも低い価格なのに誰も買わないのかと言えば、「今後も株価が上がる見込みはないから」、というのが理由だったりします。
株式市場にはもはや完全に、「今後その株価は上がるのか下がるのか」という判断しかないわけです。
実態は関係がないと言いますか、実際の業績や業績予想も全く関係がない(敢えて言うなら「株価は上がるはずだ」のみ)と言っていいわけです。
エンロンのことは実は誰も笑えないし批判もできない、というような側面は現に今でもあるような気がします。