2013年9月15日(日)



2013年9月14日(土)日本経済新聞
新規上場株に資金流入 公開価格上回る初値 31社連続に 株高持続、成長性がカギ
(記事)




2013年9月14日(土)日本経済新聞
日本郵便、消費増税時に 封書82円/はがき51円 20年ぶり値上げ
(記事)




 

2013年9月15日(日)日本経済新聞
基準日設定につき通知公告
株式会社日本トリム
株式分割に関する基準日設定公告
株式会社免疫生物研究所
(記事)

 

 



【コメント】
既存株主(創業者やベンチャーキャピタル等)は上場によって保有している株式を売却しようとするわけですから、
新規上場時に公募価格を上回った形で初値が付かない(売買が成立しない=価格をどれだけ上げても売り手が売らない)、
などということは理屈では絶対起きないでしょう。
既存株主が株式を売りたくないのなら、そもそも上場しなければよいのですから。
また、既存株主はできるだけ高い価格で売りたいだけなのではないか、ということも考えられるわけですが、
市場に提示されている公募価格はそもそも簿価よりも著しく高い価格に設定されていますから、
既存株主は公募価格と同じ価格で株式の売却に応じても十分に利益を獲得することができます。
それ以上の価格にまで株価を吊り上げてもあまり意味がない(それならはじめから公募価格自体をさらに高く設定すればよいだけ)だけでなく、
今度は株価が高く推移しているという印象を市場に与え株式の需給にまで影響が及んでしまい、逆効果になりかねないでしょう。
株式市場では売買の雰囲気が大切なのですから、価格を吊り上げるのではなく、
公募価格前後で安定的に株式の売買が進んでいくことも、保有株式を売却する上では大切なのだと思います。
なお、公募価格の設定に関してですが、上場の手続き上は主幹事証券会社が決めることになっています。
上場する会社自身が決めるわけではありません。
ただ、考えてみると主幹事証券会社が公募価格を決めるというのはおかしいわけです。
なぜなら、株式の価値と言うのはそもそも財務諸表から決まるものだからです。
株価は「決める」ものではなく「はじめから決まっている」ものだ、というべきなのだと思います。
ただ、上場後、株式市場では市場株価は需給関係や思惑などで日々決まっていきますから、
簿価よりも高い価格で新規上場する株式を買うのは投資家の自由、というスタンスで上場は行っていかねばならないと思います。
そのための参考価格として市場に提示する価格が公募価格であり、その公募価格は「1株当たりの株主資本額」というだけで十分、
というのが理屈では正しいと思います。
実際には公募価格は主幹事証券会社が任意に決めているわけでして、
その公募価格を低く設定すれば上場後株価が上昇したかのように装うことができますし、また逆に、
その公募価格を高く設定すれば上場後株価が安定推移しているかのように装う(なおかつ簿価との差額が大きな売却益になる)ことができます。
また、新規上場時には主幹事証券会社が株式の「買取引受」を行うわけですが、
当然公募価格を高く設定すればそれだけ高い価格で初値が付くように市場を誘導することもできるわけです。
株価というのは客観的に決まらないといけないはずなのに、売り手が大きな影響を与える形で一定度価格を決めていることになってしまいます。
「買取引受」にも大きな問題があると言わざるを得ないでしょう。
煎じ詰めれば、人間が決める公募価格には根拠はありませんし、さらに言えば、
財務諸表からは離れ需給関係や思惑のみで決まる市場価格にも根拠はないわけです。


 



それから、記事には、

>新規上場銘柄への資金流入が続いている。

と書かれていますが、言葉の定義の話になりますが、これも少し違うのだと思います。
こういった場面での資金流入とは、投資家がある上場株式をたくさん買っている状態を指すのだと思います。
そして一般には、買い注文が膨らんでいる状態や株価が上昇している状態のことを指すのだと思います。
確かにそれは正しく、現在新規上場銘柄の買い注文が膨らんでいて株価が上昇している状態にはあるのだとは思います。
ただ、”資金流入”と表現するほど、投資家から株式市場へ現金が入ってきているわけではないと思います。
少なくとも株式時価総額に相当する現金が投資家から既存株主に支払われたわけではない、ことだけは確かなわけです。
既存株主(特に創業者)は保有している全ての株式を売るわけではありません(売らなければ投資家から市場へ新規に現金が入ってこない)。
初値が付きますと、初めて企業に株式時価総額が付くことになり、さもそれだけの現金が社会で大きく動いたかのように錯覚してしまいますが、
株式時価総額は「市場株価×発行済株式総数」で決まるだけであり、実際にそのような現金が上場時に世の中で動いたわけではないのです。
また、既存株主が一定数株式を売却した後は、今度は市場内の投資家間で株式の売買が始まります。
何と言いますか、売り・買いの注文や株価の上昇と、外部から市場への資金流入とは関係がない側面も出てくるわけです。
新規上場銘柄を買ったが株価が上がったのですぐ売った、さらに株価が上がっているようなので、
今後も株価が上がるかもしれないと思ったのでまた買った、ということはあると思います。
市場内での売買ですと誰から買ったのかは分からない(もちろん既存株主からだったかもしれないわけですが)わけですが、
新規上場からしばらく経つ(既存株主から市場内に株式が放出される)と、市場内での投資家間の売買が多くを占めるようになるわけです。
それは買い注文が膨らもうが株価が上昇しようが、”資金流入”とは少し意味が違ってくるのではないかと思いました。

記事には、”相場全体に資金が戻り”といった言葉や”中小型株に資金を振り向けやすくなった”という言葉がありまして、
”資金流入”といった時には「外部から株式市場へ」を指す場合と「株式市場内である銘柄から別の銘柄へ」を指す場合とがある、
ということなのかもしれません。
ただ、よほどの思い入れでもない限り、「ある企業が新規上場するので、それに合わせ自分も初めて株式投資をするようになった」、
などということはないでしょうから(要するに株式投資をしている人と言うのは職業もしくは趣味その他で普段から行っているだけでしょう)、
ある新規上場に合わせ「外部から株式市場へ」資金が流入することはほとんどないと思います。
そうすると、この記事で言っている”資金流入”とは、
「株式市場内である銘柄から別の銘柄へ」、つまりここでは、既存の上場株式から新規上場株式へ資金が流入している、
の意味だとは思います(もしくは、投資家の余剰資金から新規上場株式へ、ということもあるでしょう)。
その場合でも、その時々の株価はともかく一定数の投資家間でその株式を売買している場合は、銘柄への”資金流入”にはならない気がしました。
まあ、実際の株式の売買の様子(各売買相手の詳細)は証券取引所以外誰にも分かりませんから、今日はこれで終わりたいと思います。