2013年9月8日(日)



2013年9月8日(日)日本経済新聞 電子版セレクション
マクドナルド「難敵」に挑む 忍び寄る「老い」客足鈍る 新社長、立て直し急ぐ
(記事)





2013年9月8日(日)日本経済新聞 そこが知りたい
マツモトキヨシHD会長兼社長 松本 南海雄氏
医薬品ネット販売解禁 対応は? 店舗網強み 医療と連携へ
(記事)




2013年9月8日(日)日本経済新聞
アーカイブ 1994年9月14日
イチロー、日本で最多安打
(記事)




 

2013年9月8日(日)日本経済新聞
豪、6年ぶり政権交代 アボット氏 首相就任へ 保守連合が大勝 総選挙 日本とEPA交渉に弾み
登場
豪次期首相 トニー・アボット氏(55) 団結優先する「闘士」
(記事)

 

 



2013年9月8日(日)日本経済新聞
最低投資額、バブル期の6分の1 30万円で株主に 個人狙い株式分割
(記事)

 



【コメント】
昨日、伊藤園の優先株式について、普通株式の株式分割を行ったと想定して伊藤園は優先株式を発行した、と書きました。
昨日は過去の事例解説ということで、伊藤園はそうしました、という解説のみを単純に行ったわけですが、
実はこれは、法律面や税制面を踏まえれば伊藤園はそのような手段を取らざるを得なかった、という側面がある、苦肉の策だったわけです。
というのは、普通株式を分割しても絶対に優先株式にはならないからです。
昨日も少し書きましたように、
普通株式と第1種優先株式とでは権利内容(議決権の有無や配当の多少)が異なるわけです。
また、当然、両社の株式の価値や株価は異なっていないといけないわけです。
しかし、法律面や税制面を踏まえれば、他に方法がなかったので、実務上伊藤園や証券取引所はあのような手段を取ったというだけなのです。
本来は、普通株式の株式分割を行ったと想定して優先株式を発行するというようなことは、
法理面そして会計面を考えても、理論上は全く整合しないことをしている、と言えるわけです。
旧商法下で行われた無償増資(利益剰余金を資本金に組み入れ新株式を株主に無償で割当てる、なおかつ市場株価は切り下がらない)のように、
理論上整合しない点がいくつかあるが正しいような感じも与え実務上何となく茶を濁しているだけと言える部分があるように思いました。

また、今日改めてインターネットで検索してみますと、
伊藤園は、実際に2007年8月28日(火)付で普通株式が「1株から1.3株へ」株式分割されたものとみなし、
普通株式の株価の切り下げが行われたようです(2007年8月28日(火)付で株価が1/1.3倍へ切り下がった)。
私は昨日、2007年8月28日(火)という基準日でも何かの日でも何でもない日にいきなり株価だけが切り下がるのはおかしいと思ったので、
この日付は違うのではないだろうか?と書きました。
これもおそらく、優先株式の上場は日本で初めての事例だったので、実務上の混乱を避けるために、優先株式の上場価格の周知の意味合いも含めて、
安全性に配慮するために、証券取引所が先に株価の切り下げだけを行った、ということだと思います。
理論上は正しくはやはり、無償割当ての効力発生日である2007年9月3日(月)付で普通株式の株価の切り下げを行うべきだったと思います
(優先株式発行と同時に普通株式の株価が切り下がる(同時に優先株式も同じ価格で上場する)、ということです)。

 



普通株式とは異なる種類の株式を発行することを考えている企業が海外にもあります↓。
株式の種類が二種類以上あることの問題点に通じると思います。

 


中国・アリババ、香港上場暗雲 特殊株式巡り

 中国の電子商取引最大手、アリババ集団の香港での新規株式上場(IPO)計画に暗雲が垂れ込めている。創業者の馬雲会長ら経営陣が、
株主としての権利がその他の株主よりも大きい特殊な株式を認めるよう求めているが、香港取引所がそれを拒んでいるようだ。
時価総額約10兆円ともいわれる今年の世界最大級のIPOの行方が流動的になってきたようだ。
 香港の英字紙、サウス・チャイナ・モーニング・ポストが16日付で伝えた。アリババの株式のうち馬会長ら経営陣は10%強を持つだけで、
上場後に経営へのコントロールが弱まることを警戒している。アリババ側は上場前に、投票権を一般の株式の何倍かにする
特殊な株式を新たに設けることを検討しているもよう。
 これに対し、香港取引所は株主権の平等を定める上場規定に合致しないとの立場。同取引所の李小加最高経営責任者(CEO)も
15日の決算発表記者会見で「アリババのようないい会社が香港に上場する日がくれば歓迎したい」としつつ、
特殊な株式の容認については「今のところそうしたことは計画していない」と述べている。
 アリババの香港上場観測を巡り、株式の約37%を保有するソフトバンクの株価が大幅に上昇している。
同社の時価総額は一時8兆円台に乗せた。
(日本経済新聞 2013/8/16 11:05)
ttp://www.nikkei.com/article/DGXNASGM1601G_W3A810C1EB2000/

 

 


中国のオンライン・ショッピング・モール、アリババが上場を計画しているようです。
ただ、アリババの創業者は、

>株主としての権利がその他の株主よりも大きい特殊な株式

を事前に発行し自分達で保有しておきたい、という考えがあるようです。
しかし、証券取引所は、

>香港取引所は株主権の平等を定める上場規定

を定めており、この規定と特殊な種類株式の発行とは合致しない、ということのようです。
率直に言えば、証券取引所としては、「企業が発行する株式の種類は一種類のみ(普通株式のみ)である」
と考えているということでしょう。


この点について他の記事では、フェイスブックやグーグルなどの米IT大手の上場を例に出して、
”2種の株式を発行して上場するといった、株式保有の二重構造”と書かれていました。
特殊な種類の株式を発行することは、”上場後も経営への支配力を維持できる「二重構造の株式発行」”と書かれていました。
株式の種類が二種類あることを「二重構造」と表現しているわけです。

 



なぜここまでの表現をするのか、つまり、なぜ企業が発行する株式の種類は一種類のみ(普通株式のみ)であるべきなのか、と言うと、
理由を端的に言えば、株主の会社に対する発言権というのは「議決権」という一種類のみだからだと思います。
「多くの議決権を持ちたければ多くの株式数を保有するべきだ」という株式会社制度における基本的な考え方があるわけです。
また、その特殊な種類株式の価額というのも問題になると思います。
仮に定款を変更して、会社が例えば1株で100議決権あるような株式を発行するとします。
その株式は1株いくらでしょうか。
つまり創業者は1株いくらでその株式を取得すれば(1株当たりいくら会社に払い込めば)よいでしょうか。
100議決権ありますから、1株当たりの株主資本額の100倍に設定すればよいでしょうか。
しかしそれなら単に100株式取得したことと全く同じです。
その株式には配当を受け取る権利はないのだとしたらまたその株式の公正な価額は変わってくるでしょうが、
いずれにせよその株式は1株いくらかは明確ではないでしょう。
昨日の伊藤園の普通株式と優先株式の株価の差異を見ても分かるように、
「株式の価値のうち、いくら分は議決権の分、いくら分は配当を受け取る権利分」とは全く分けられないわけです。
そもそもの話をすれば、「配当をいくら支払うか決めること」も議決権で決める(株主総会議案を議決権で決議する)ことなわけです。
特段の「配当を受け取る権利相当分」という割合などそもそもあろうはずがないのです。
配当を受け取る権利も含めて議決権でしょう。
つまり、株主の権利と言うのは、全て「議決権」に集約されるわけです。
そしてその議決権という株主の権利を表象したものが株式です。
その株式の種類が複数あると言うのは根本的におかしいわけです。
株式の種類は根本的に一種類のみのはずなのです。
議決権がない株式と言うのは、株主の権利の根源は議決権であることを考えれば、根本的に株式ではないわけです。
そして、多くの議決権のみがあり配当を受け取る権利がない株式というのもまた株式ではないわけです。
例えば配当支払いの議案に対してその特殊な株式が議決権を行使する場面を考えてみても、
「なぜ自分が受け取るわけでもない配当に関して議決権を行使するのだ?」という意見が出てくるわけです。

 



また、株式を二種類以上発行している場合は、通常の株主総会の他に、「種類株主総会」といった種類の株主総会が招集されるようですが、
株主総会が二種類以上あることもおかしいわけです。
なぜなら、会社は一つしかないのに、株主総会議案は二種類以上あることになるからです。
株式の種類が複数あることは、株主の会社に対する権利が複数あることに等しくなってしまうわけです。
会社が一つなら、会社に対する意思決定の議案も分けることはできないでしょう。
意思決定の議案が二つある場合、会社はどちらの意思決定に従えばよいのでしょうか。
仮に複数議案があってもお互い矛盾のないような議案を調整の上用意すると言うのなら、
それはそもそも意思決定の所在を分けていること自体がおかしい、ということになるのではないでしょうか。
会社はあくまで一つである以上、意思決定の所在も一つでなければならないはずです。
株主総会を二種類設置するのなら、例えば取締役会も二種類設置してはどうでしょうか。
そんなことはできないでしょう。

また、この点に関してやや会計よりの話をすると、
株主総会や株主総会議案を複数用意するのなら、資本金や利益剰余金も株式の種類毎に複数に分けないといけないでしょう。
そして当然手許現金も株式の種類ごとに複数に分ける必要があり、資産・負債も株式の種類毎に分ける必要があり・・・、
という話になってしまうわけです。
しかし会社は一つであり財務諸表も一つなのですから、資本金や利益剰余金を分けるというようなことは根本的にできないわけです。
その資本金と利益剰余金でもって会社は動いているわけですから。
煎じ詰めれば、会社の資本金と利益剰余金は分けることのできない一つのものである、ということは、
株式も分けることのできない一つのものだ、ということを意味するわけです。
株式を分けた場合、例えば、利益剰余金の利益処分権はどの株式にあるのか(どの株式の利益処分権が一番強く他のは弱いのか)、
といった問題につながっていくわけです。
仮に利益処分権は議決権の多少のみで決まると言うのなら、やはり株式の種類は一種類のみという点に行き着く気がします。


以上のことを踏まえれば、株式と言うのは普通株式という一種のみしかない、ということが分かるはずです。
仮に創業者が上場後も安定した経営権(大きな保有議決権)を維持したいというのなら、
上場前に、(1株いくらが適正なのか、有利発行になってしまうか分かりませんが)多くの(普通)株式を
今の内に買っておく(当然上場後もその株式は売却しない)、ということを行うのが一番良いと思います。