2013年8月19日(月)



2013年8月19日(月)日本経済新聞 公告
新設分割公告
紅栄株式会社
第67期決算公告
紅栄株式会社
(記事)


 


新設分割公告を見た限りではこのような組織再編のようです↓。


「組織再編図」


 


【コメント】
ベニーカントリー倶楽部、札幌芙蓉カントリー倶楽部、加賀芙蓉カントリー倶楽部、三田カントリー27の
合計4つのゴルフ場を運営している紅栄株式会社が、
内2つのゴルフ場(加賀芙蓉カントリー倶楽部、三田カントリー27)を新会社へ新設分割する、という公告です。
紅栄株式会社は丸紅不動産株式会社の完全子会社であり、また、
丸紅不動産株式会社は丸紅株式会社の完全子会社という資本関係になっています。
紅栄株式会社は丸紅株式会社の完全孫会社という関係です。
紅栄株式会社は、1976年(昭和51年)12月に丸紅不動産株式会社からゴルフ事業部門を移管して設立された会社のようです。
このたびの組織再編と全く同じ形だと思いますので、
丸紅不動産株式会社はこれら4つのゴルフ場に係るゴルフ場事業に関する権利義務を新設した紅栄株式会社に対して
新設分割により承継させた、ということなのでしょう。
ただ当時の旧商法では会社分割に関しては法整備がなされていなかったので、
この権利義務の承継のことは新設分割とは呼んでいなかったでしょう(法律上会社分割という言葉自体なかったと言っていいと思います)。
おそらく、丸紅不動産株式会社は紅栄株式会社を現金出資にて平常通り設立し、この紅栄株式会社に対し
改めてこれら4つのゴルフ場に係るゴルフ場に関する権利義務(資産負債)を営業譲渡(現会社法でいう事業譲渡)したのだと思います。
両者は全く同じ取引と言っていいのですが、法律用語としては、丸紅不動産株式会社が行ったゴルフ場の承継は現金を使った営業譲渡、
このたび紅栄株式会社が行ったゴルフ場の承継は(現金を使わない)会社分割、という違いはあると思います。


 



ここで一つ疑問に思うことなのですが、会社分割により各種権利義務等を承継させる場合は現金はいらないわけですが、
営業譲渡(現会社法でいう事業譲渡)の場合は新設した完全親子会社間であっても理屈の上ではやはり現に現金が必要なのです。
ただ、受け皿会社を現金出資で設立し、その瞬間に各種権利義務等を承継させ対価となる現金を親会社がすぐ受け取るわけですから、
実際には受け皿会社となる子会社が出資された現金を保有することはない(設立の一瞬だけ保有)と言っていいわけです。
すると親会社としてはこのような場合、はじめから現金はいらないのではないか、という思いは当然あると思います。
また、そのような親会社の考えを汲んで、会社分割と言う制度が旧商法(そして現会社法)に導入されたのだと思います。
何が言いたいかと言うと、例えば丸紅不動産株式会社が紅栄株式会社へゴルフ場を承継させた時、
現金を使わないで承継させるようなことは当時できたのだろうか、ということです。
と言っても答えは簡単で、多分できなかったと思います。
ゴルフ場の資産だけを現物出資で先に会社設立し承継させ、負債を会社設立後承継させる、ということはやはりできなかったと思います。
ゴルフ場の資産だけを現物出資により会社設立し承継させる、だけならできたわけですが、
負債を会社設立後承継させるということができなかったと思います。
やはり当時であれば営業譲渡という手法にならざるを得ず、結果現金が必要だったのだと思います。
丸紅不動産株式会社にとって紅栄株式会社(4つのゴルフ場)は規模がはるかに小さな会社ですから、
出資のための現金は手許現金で簡単に賄えたと思います(どちらにせよすぐに返ってくるわけですし)。
しかし、非常に大規模な権利義務(資産負債)の承継(営業譲渡)となりますと、
受け皿会社設立のための(=承継のための)手許現金が不足するというケースもあったと思います。
そのような場合は、受け皿会社設立のための現金は、超短期の銀行借り入れで賄うしかなかったのだろうと思います。
まさに借りてすぐ返す形になりますが(銀行→親会社→子会社(受け皿会社)→親会社→銀行、という現金の流れになります)。
当時そう呼んでいたかどうかは分かりませんが、これも一種の「ブリッジローン」でしょうか。
それとも、長期の借入金に借り換えはしませんから、ブリッジとはやはり呼ばないかもしれません。
まあ何にせよ、まさに借りてすぐ返す銀行借り入れを行う必要があったのだけは確かでしょう。
支払利息はいくらだったのでしょうか。
丸一日、いや、半日、いや、3時間も借りない形かと思いますが。
それとも、各種書類の手続き上のことを踏まえますと、実務上は数日くらいは借りる形になるでしょうか。
実務上の手続きのことまで考えると具体的に何時間・何日くらい余裕を見ればみればよいのかは分かりませんが、超短期にはなるでしょう。
私は今まで、一番借り入れ期間が短い金利は、「無担保コールレート・オーバーナイト(翌日)物」と呼ばれる金利だと思っていました。
しかしどうやらそれを上回る超短期の金利が実はあったようです。
その金利のことを朝三暮四ならぬ、「朝九暮三(ちょうきゅうぼさん)」と呼ぶことにしましょう。
言葉の由来は、「朝九時に銀行から借り入れて(会社設立、承継をその日の内に経て)夕方の三時には返す」です。
この借り入れの銀行からのキャッチフレーズは「いつか誰かと朝帰りッ」(次はもう少し長い期間借りて下さいねという意味)です。
まあ最後は少し冗談になってしまいましたが、会社分割の制度が整備されこの辺りの承継が簡単になったのだけは確かなのだと思います。