2013年7月21日(日)



2013年2月15日(金)日本経済新聞
■御園座 事業再生ADRを申請
(記事)



 

2013年7月10日(水)日本経済新聞
名古屋御園座の増資 31億円の引受先確保 トヨタ自動車など
(記事)



 

2013年7月10日
株式会社御園座
第三者割当による株式の募集の発行条件の決定時期の延期に関するお知らせ
ttp://www.misonoza.co.jp/images/130710-daisansya.pdf

 

 

有価証券報告書 ‐ 第123期(平成24年4月1日 ‐ 平成25年3月31日)
(EDINETと同じPDFファイル)


 


2013年6月28日
株式会社御園座
株主総会における定款一部変更の議案及び第三者割当による株式募集の議案の承認可決に関するお知らせ
ttp://www.misonoza.co.jp/images/20130628kabunushi.pdf

 

 

2013年5月28日
株式会社御園座
第三者割当による株式の募集に関する株主総会付議のお知らせ
ttp://www.misonoza.co.jp/images/20130528daisan.pdf

 

 

2013年5月28日
株式会社御園座
定款の一部変更に関するお知らせ
ttp://www.misonoza.co.jp/images/20130528teikan.pdf

 

 

平成25年5月15日
株式会社御園座
債務超過に係る上場廃止の猶予期間の延長に関するお知らせ
ttp://www.misonoza.co.jp/images/130515yuuyokikanencyo.pdf

 

 


2013年3月18日
株式会社御園座
「事業再生計画」策定に関するお知らせ
ttp://www.misonoza.co.jp/images/01saiken.pdf

 

 

2013年3月18日
株式会社御園座
御園座 事業再生計画
ttp://www.misonoza.co.jp/images/02saikenkohyo.pdf

 

 

2013年3月18日
株式会社御園座
第三者割当により発行される株式募集に関するお知らせ
ttp://www.misonoza.co.jp/images/04daisansya.pdf



 



御園座、「引受先は想定以上」 増資実施延期を正式表明

 経営再建中の御園座は10日、8月中旬に予定していた第三者割当増資の実施が遅れると正式発表した。
想定よりも増資の引受先が多く集まり、事務手続きに時間がかかっているためと説明している。
最長で4カ月遅れる可能性があるが、御園座会館(名古屋市中区)の建て替えを柱とする再建計画には影響しない。
 同日記者会見した長谷川栄胤社長は引受先について、「企業と個人を合わせ100をかなり上回る。想定以上」と述べた。
金額面でも目標の34億円に対し「かなり近いところまできた」という。
 大株主でもある長谷川社長は、自身の引き受けにも「検討している」と明言した。
多くの引受先が確保できたことについては「地元経済界のお力添えやご理解がある」と謝意を示した。
 御園座は増資実施の前提となる引受先や株数の最終的な決定時期を「7月から11月前半」としている。当初は7月中旬の予定だった。
多くの非上場企業や個人が引受先に名を連ね、「必要書類の取りまとめ作業が遅れている」としている。
 同社は2014年3月末までに債務超過(13年3月末時点で16億円)を解消しないと、名古屋証券取引所を上場廃止になる。
増資実施は最も遅い場合でも12月上旬になる見込みで、上場廃止の回避には支障がない。
(日本経済新聞 2013/7/10 23:30)
ttp://www.nikkei.com/article/DGXNZO57208190Q3A710C1L91000/

 

 


「株式会社御園座 ここ1年間の値動き」



 

「株式会社御園座 ここ1週間の値動き」




一方簿価は↓。


有価証券報告書
「提出会社の経営指標等」
(3/110ページ)


 



【コメント】
2013年7月10日(水)の日本経済新聞の記事よりますと、
債務超過に陥っている御園座は、事業再生ADRを活用する中で、
地元企業を中心に増資予定を満たす金額の第三者割当増資の引受先を確保した、と書いてあります。
ところが、同日付の御園座からのプレスリリースには、
本件第三者割当に関する募集事項及び割当先の決定や実施時期を延期することを決定した、と書かれています。
その理由についてなのですが、プレスリリースには驚くべきことに、

>第三者割当のお引受けをご依頼したところ、当社の想定を上回る多数の皆様より賛同が得られ、
>その結果、お引受けの前提となる各種手続きを実行するため、発行条件の決定までに更なる時間的猶予を要する状況となりました。

と書いてあります。
御園座はどれだけ恵まれているのでしょうか、もとい、御園座はどれだけ地元の方々から愛されているのでしょうか。
このような場合、「経営再建は断念することにいたしました」ということも現実には多いようにも思いますが。
いやはや、支援が集まり過ぎて条件を改めて見直さなくてならなくなった、とは幸せな企業ではないかと思います。
ただ、そこまで地元の方々からのご支援があるのなら、はじめから経営不振にもならないような気がしますが。
地元の方々は、資本取引なら支援したいが損益取引は支援したくない、というわけでもないと思いますが。
会社設立時や事業拡大時には資本取引が大切ですが、経常的には損益取引の方が大切です。
地元企業を支援したいと言うのなら、経営悪化時に第三者割当て増資を引き受けるのではなく、
常日頃から劇場等を利用するような形で御園座を応援するほうが本質的だと思います。

 

 


それから、2013年6月28日付けの
「株主総会における定款一部変更の議案及び第三者割当による株式募集の議案の承認可決に関するお知らせ」についてなのですが、

>会社法第199条及び第200条の規定に基づき、本件第三者割当に関し、以下のように募集事項の決定を当社取締役会に委任することとなります。

と書いてありまして、”募集株式の募集事項に必要な一切の事項については、当社取締役会の決議により決定する。”と書いてあります。
また、このたびの第三者割当増資の「C払込金額の下限」は「1株につき100円」であると決定したようなのですが、この点に関して、

>2.上記Bの方法により算出しました金額が払込金額の下限である100円を下回る場合には、
>当社取締役会は、本日の株主総会による当社取締役会への委任にかかわらず、
>当社取締役会が有する権限及び裁量の範囲内で本件第三者割当の募集事項を決定することがあります。

と書いてあります。
プレスリリース全体を通して読みますと、払込金額が1株につき100円以上であろうが100円未満であろうが、
全て取締役会決議で第三者割当増資の募集事項を決定する、という意味であるように思います。
「C払込金額の下限」は「1株につき100円」であるとわざわざ決定した理由というのは全くないように思えます。
「1株につき100円」には何の意味もないのではないでしょうか。
また、「払込金額の決定方法」についてもおかしな点がありまして、
>払込金額は、発行条件決定日の前営業日の終値(株式会社名古屋証券取引所における当社普通株式の普通取引の終値をいう。)
>又は発行条件決定日に先立つ1か月、3か月若しくは6か月における終値の平均値のうち最も低い価額を基準に、
>10%から20%の範囲でディスカウントした金額とする。
とあります。
前日終値または過去の平均値を基準にさらに10%から20%の範囲でディスカウントした金額、ということで、
払込金額に非常に幅があると言えます。


 



究極的にはこれらの何が問題かと言えば、
「第三者割当増資を行うのに1株当たりの払い込み金額が決定していない」ということだと思います。
上場企業の株価は日々変動しますから、申込期間の長さなどを考えればその時の株価と完全に同じ価格で株式を募集するということは
実務上不可能であるわけですが、それでもできる限り公正な募集とするため直近の株価を基準に募集価格は決め打ちするしかないわけです。
基本的には募集価格を完全に決定(固定)してから、株式の募集は行っていかねばならないわけです。
そうでないと株式を引き受ける方は株式をいくらで買うことになるか分からないでしょう。
引き受け手も自分の手許現金量を考えながら株式を取得していくわけですが、
価格が決まっていないことにはどれだけ株式を買うことができるか分かりません。
また、その募集価格は公正ではないからその株式は一切買わない、と判断することもあるでしょう。
いずれにせよ、「1株当たりの払い込み金額(募集価格)はいくらなのか」というのは引き受け手にとって一番大切な情報であるわけです。
その募集価格が御園座は事実上決まっていない状態なわけです。
記事やプレスリリースには、第三者割当増資の引受先は想定以上に多かった、などと書かれていますが、
「1株当たりの払い込み金額(募集価格)も分からないのに、よく応募しましたね」、と地元企業には言いたいと思います。
1株当たりの払い込み金額(募集価格)は、
「6か月における終値の平均値を20%ディスカウントした金額」だとしますと、約110円です。
ところが、「前営業日の終値」だとしますと、2013年7月19日(金)に発行条件を決定したとしますと、185円(=7月18日の終値)です。
1株当たりの払い込み金額(募集価格)は、110円になるかもしれないし185円になるかもしれないわけです。
これで株式の応募をする人は本当にいたのでしょうか。

 

 



スーパーに行ってある商品を買おうと思いました。
その商品には値札が付いていませんでした。
誰だって店員に「これいくらですか?」と聞くでしょう。
「いくらかは分からないけどとにかくレジに行って代金を払おう」と考える人はいないわけです。
想定以上に高かったら、他の店の方がはるかに安いということで、買わずに店から出て行くことだってあるわけです。
「その商品はいくらなのか?」という情報は買い手にとって一番重要な情報であるわけです。
御園座株式も全く同じです。
「御園座株式は1株いくらなのか」ははっきりしないのに、株式を引き受けようとする人は本来はいないはずです。
また、増資を行おうとする企業にとっても、「これくらいの金額資金調達しなければならない」という経営計画があるはずです。
いくらでもいいからとにかく増資をする、などという企業はないわけです。
企業の側にとっても、「1株いくらで株式の募集を行い、発行する株式数は何株であり、結果、総額これだけの金額増資を行う」
という資金計画は先に決まらないといけないわけです。
そういったことを考えますと、増資の実施を延期しなければならないくらいに株式の引受先から応募があったのは結構なことですが、
一番大切な「1株当たりの払い込み金額(募集価格)」がそもそも決まっていないというのは
増資方法に根本的に問題があるように思います。
それは法的に増資方法に問題があるという意味ではありません。
「1株当たりの払い込み金額(募集価格)が決まっていないのなら、そもそも株式の引き受け手は誰もいないはずだ、という意味です。

 

 


最後に、会計面について、有価証券報告書をキャプチャーして少しだけコメントします。
「1株当たりの当期純利益」や「1株当たりの株主資本額」についてです。
2013年7月17日(水) の三菱自動車に関するコメントで、
「優先株式を発行してしまいますと、繰越利益剰余金は全面的に優先株式が支配する形でないと理屈上はおかしい」
「優先株式を発行している状況下である限り、会社が計上した当期純利益も全額優先株式の株主に帰属する」
と書きましたが、有価証券報告書の注記事項にこのことに関して指摘をしていると思われる記載がありましたので紹介します。
当期純利益や株主資本から「普通株主に帰属しない金額」を控除する、というのは要するに優先株主のことを指していると思います。

 


有価証券報告書
個別財務諸表 注記事項
「1株当たり情報」
(91/110ページ)



当期純利益が普通株主に帰属しないとすれば、
後は”当期純利益は優先株主に帰属する”という状況しか考えられないと思います。
優先株式を発行している状況下では、当期純利益の一部は優先株主に帰属する、
ということだと思います。


まず、株主に帰属する金額というのは厳密には「株主資本のみ」です。
純資産全体が株主に帰属するわけではない、というのが正しい考え方です。
ただ便宜上、ここでは純資産の額=株主資本の額と考えているのだと思います。
厳密に言えば勘定科目の性質上自動的に控除しなければならないと思いますが、
評価・換算差額等と新株予約権も株主資本に含まれているとここでは考えているようです。
その上で、ここではわざわざ「普通株式に係る期末の純資産額」と書いてあるわけですが、
これも、「優先株式に係る株主資本」というものを想定しているということだと思います。
優先株式を発行している状況下では、株主資本の一部は優先株主に帰属する、
ということだと思います。

 

 



↑上で紹介したのは個別財務諸表ですが、連結財務諸表でも同じように「1株当たり情報」が注記事項として記載されています。
連結財務諸表でも考え方は基本的には個別財務諸表と同じですが、連結財務諸表の場合は少数株主持分がさらに控除対象となっています。
ただ、これは連結財務諸表がその構成からして本質的に持っている欠点ともいえることですが、
純資産から少数株主持分を控除したとしても、連結株主資本が親会社の株主に帰属するわけではない、ということです。
例えば子会社の利益剰余金は親会社の株主に帰属するでしょうか。
しないでしょう。
子会社の利益剰余金は親会社に帰属するだけです。
親会社の株主に帰属するのは親会社単体の株主資本のみです。
では連結株主資本は誰に帰属しているのかと言えば、実は連結株主資本は誰にも帰属しておらず、連結株主資本は何も表していないのです。
連結財務諸表作成の過程でちゃんと少数株主持分を引き算していますから、これでつじつまが合っているように感じるかもしれません。
しかし実は全くつじつまは合っていないのです。
つじつまが合っているのは「親会社にとってのみ」です。
親会社の株主にとっては少数株主持分を引き算しても、全くつじつまは合っていないのです。


 


私はよく、米国基準やIFRSを例に出して、経済的単一体説を否定していますが、
日本基準が採用している親会社説も、親会社の株主と親会社の連結株主資本との関係においては実は一定の矛盾があるわけです。
親会社説において矛盾がないのは、親会社の株主にとってではなく「親会社にとってのみ」と言うべきかもしれません。
連結財務諸表において、「1株当たりの当期純利益」や「1株当たりの株主資本額」を計算することは究極的にはできないと言うべきでしょう。
「1株当たりの当期純利益」を考えてみましょう。
分子は「親会社当期純利益+子会社当期純利益」、一方分母は「親会社株式数」です。
これでつじつまが取れているでしょうか。
子会社当期純利益は親会社株式に帰属するとでもいうのでしょうか。
それとも、分母に「子会社株式数」を足し算し、分母を「親会社株式数+子会社株式数」とすれば矛盾は解決するでしょうか。
分母の「親会社株式数+子会社株式数」とは何でしょうか。
「1株当たりの株主資本額」も全く同じであり、
例えば計算式の一部である「子会社利益剰余金÷親会社株式数」は一体何を意味するのでしょうか。
支配獲得時の連結修正消去仕訳(投資と資本の相殺消去)が連結財務諸表に与える金額面のインパクトも非常に大きいと思いますし、
また、この連結上の仕訳自体は親会社の株主にはある意味何ら関係がないとも言えるわけです。
おそらく、どのような連結基礎概念を採用しても、矛盾なく連結財務諸表を作成することは不可能でしょう。
率直に言えば、個別財務諸表のみが既に親会社の株主に帰属する金額を一切の矛盾なく正確に表していると思います。
連結会計を根底から否定することになりますが、
究極的なことを言えば、財務諸表を足し算するということにはじめから無理があったのではないかと思います。

 

有価証券報告書
連結財務諸表 注記事項
「1株当たり情報」
(67/110ページ)