2013年7月17日(水)



2013年7月17日(水)日本経済新聞
東証・大証、株の統合市場始動 新取引所 世界に挑む デリバティブ拡充へ
任天堂や村田製作所 「大証銘柄」売買伸びる
(記事)



 


2013年7月17日(水)日本経済新聞
株式相場表を変更しました 東証・大証の市場統合で
(記事)



 


2013年7月17日(水)日本経済新聞
関連数表を変更 東証・大証の市場統合
(記事)



 


2013年7月16日(火)日本経済新聞
東証・大証現物株 きょう市場統合
(記事)

 

 


2013年7月17日(水)日本経済新聞 会社研究
日本マクドナルドホールディングス
「食」争奪 背水の高額品
(記事)

 

 

2013年7月17日(水)日本経済新聞 公告
発行価格等の決定に関するお知らせ
株式会社スリー・ディー・マトリックス
発行価格等の決定に関するお知らせ
共立印刷株式会社
処分価格等の決定に関するお知らせ
飯野海運株式会社
売出価格等の決定に関するお知らせ
エヌ・デーソフトウェア株式会社
(記事)

 

 


2013年7月13日(土)日本経済新聞 公告
第71期決算公告
株式会社ロッテホールディングス
第7期決算公告
株式会社ロッテ
(記事)

 

 

2013年7月12日(金)日本経済新聞 公告
第7期決算公告
イオントップバリュ株式会社
第28期決算公告
パインブリッジ・インベストメンツ株式会社
地方自治法第二百六十三条の二第二項の規定により平成二十四年度経営状況について、次のとおり公表します。
公益社団法人全国公営住宅火災共済機構
開発事業資金借入先公募
一般社団法人 日本航空機エンジン協会
投資主総会及び基準日設定公告
(記事)

 


 



2013年7月16日(火)日本経済新聞 公告
一、(現物取引資格の取得)
左記の会社は、平成二十五年七月十六日付で、当取引所の現物取引資格を取得しました。

(株)アイネット証券、岡安証券(株)、三京証券(株)、ばんせい証券(株)、ひびき証券(株)
以上
平成二十五年七月十六日
株式会社東京証券取引所
(記事)






【コメント】
2013年7月16日(火)になって東京証券取引所における現物取引資格を取得した、というのは、
東京証券取引所と大阪証券取引所との市場統合が理由なのだとは思います。
ただ、このことは逆に言えば、今まではこれらの証券会社は、東京証券取引所における現物取引資格は保有していなかった、
すなわち、今まではこれらの証券会社は、東京証券取引所に上場している株式を取り扱っていなかった、ということになります。
要するに、今まではこれらの証券会社は、大阪証券取引所に上場している株式しか取り扱っていなかった、ということになります。
しかし、そんなバカな話はないでしょう。
今どき、大阪証券取引所に上場している株式しか取り扱っていない証券会社で誰が株式を買うというのでしょうか。
これら5つの証券会社は、大阪を地場とする、戦前からあるような、地元密着の小規模な証券会社なのだと思います。
率直に言えば、大阪証券取引所に上場している株式を取り扱うことを専業としていた地場証券会社なのだと思います。
戦前そして株式の売買をコンピューター上で電子データの形で行うようになるまでは、
証券会社と言えば、各地方地方の証券取引所を専門とする、このような小規模〜中規模の地場証券会社ばかりだったのだと思います。
1968年1月以後、証券会社は免許制へ移行された(そして1974年9月の相場報道システム稼働開始も関係しているでしょう)ようなのですが、
このころから全国各地に支店を持ついわゆる大手証券会社が業容を拡大していって今の形になったのだと思います。
そして、時を同じくして、小規模〜中規模の地場証券会社は姿を消していったのだと思います。
そういったことを考えていきますと、2013年7月16日(火)になって東京証券取引所における現物取引資格を取得したこれら5つの証券会社は、
実際には現在では証券業は一切行っていないのだと思います。
このたび現物取引資格を取得したのは事実だとしても、今後も東京証券取引所に上場している株式を取り扱うことは結局しないのだと思います。
各証券会社の社長さんは「おやじの代まではうちも証券業やってたんですがね」と言って、今は喫茶店でマスターでもしているのかもしれません。

 

 

 



2013年7月13日(土)日本経済新聞
けいざいじん
キッコーマン社長 堀切 功章氏 (61)
逆境下、粘り強く「たれ」育成
(記事)




2013年3月26日
キッコーマン株式会社
代表取締役の異動に関するお知らせ
ttp://www.kikkoman.co.jp/library/ir/library/disclosure/pdf/20130326.pdf

 


2013年6月25日
キッコーマン株式会社
投資単位の引下げに関する考え方及び方針について
ttp://www.kikkoman.co.jp/library/ir/library/disclosure/pdf/20130625_2.pdf

 


 

【コメント】
株式を100株単位で売買していること自体に全く根拠がありません。
株式の売買単位は根本的に1株単位に決まっています。
八百屋では、大根やにんじんやきゅうりは10本単位で買うことになっている、とでも言うのでしょうか。
株式の流動性を高めるための施策の一つとして、投資単位の引下げを行う(=株式分割のみを行う)ことにはまだ意味があると思いますが、
株式の売買単位を100株にするということには全く意味がありません。
議決権も「100株で1議決権だ」などと言う、証券取引所はバカではないのかという気がします。

 

 

 


2013年7月17日(水)日本経済新聞
■ファンコミュニケーションズ 今期純利益3割増
(記事)



2013年7月16日
株式会社ファンコミュニケーションズ
平成25年12月期配当予想の修正に関するお知らせ
ttp://www.fancs.com/wp-content/uploads/20130716-3.pdf

 

配当予想修正
(1/1ページ)

 



【コメント】
記事の最後には、

>株式分割を考慮すると実質7.5円の増配となる。

と書かれていますが、これはどういう計算式になるか分かりますか。


平成25年1月1日付で普通株式1株につき100株、平成25年5月1日付で普通株式1株につき2株の株式分割を行っていますから、
一連株式分割全てを踏まえれば、前期末2012年12月31日に比べ、株式数は200倍に増えている計算になります。
前期末2012年12月31日時点の1株が現在の200株です。
ここで、期末配当金の前期実績(平成24年12月期)は当該株式分割前の金額で1株当たり2,900円だったわけですが、
当該株式分割を考慮すると、期末配当金の前期実績(平成24年12月期)は1株当たり「14.5円」であったわけです。
このたび、株式会社ファンコミュニケーションズは1株当たりの期末配当金を今回「22円」へと修正予想しました。
つまり、前期末14.5円から当期末(予想)22円へと配当金額が増加しましたから、
当期末配当金(予想)は前期末に比べ、22円−14.5円=「7.5円」の増配、となるわけです。

 

 


気になる点が2つあります。

一つ目は、短期間のうちに2回も大規模な株式分割を行っていることです。
1株を100株へ株式分割したかと思うと、その4ヵ月後にも1株を2株へ株式分割しています。
株式分割自体は貸借対照表や企業の実態には影響は与えないとは言え、無意味に株価に影響を与えかねないとは言えると思います。
証券取引所のITシステム上は単純に株式分割数に比例して機械的に株価を下げるだけなのですが、
投資家の心理的要因と言いますか、企業の業績とは無関係の思惑などが株価には織り込まれる形で株価日々変動しているわけです。
基本的には、「株式の根本的な単位=1株=1議決権=株式の売買単位」、というのが株式の意味だと思います。
現在の株式市場のように、100株単位で株式を売買していること自体が根本的におかしいわけです。
理屈を言えば、株式分割を行わないといけない状況と言うのは根本的にないはずなのです。

 

 


二つ目は、あまり本質的な話ではありませんが、配当予想発表や配当予想の修正が早過ぎるように思います。
証券取引所からの要請や適時開示のアピールその他あるのだとは思いますが、
1度目の配当予想発表が5月8日、このたびの配当予想の修正が7月16日です。
前回発表の時点で期末日まで残り8ヶ月弱、このたびの修正の時点で期末日まで6ヶ月弱もあるわけです。
配当金額というのは、単純な当期純利益額のみから計算していくのではなく、
手許現金量と繰越利益剰余金額そして来期以降の将来見通しをも十分に織り込んで決定していくべきものです。
8ヵ月後や6ヵ月後の当期純利益の金額だけなら過去の実績を踏まえ何となく大体このくらいの金額になりそうだ、
というのは分かるものなのかもしれませんが、
やはり将来見通しまで考えていくと、8ヵ月も前から配当金額まで予想するのは間違いな気がします。
現在のように、株価と言うのは将来の配当金額その他将来の業績を織り込んでいく形で価格が形成されていくものだ、と考えていくのなら、
適正な株価形成に資するために会社が配当予想を発表することにも一定の意味はあると思います。
しかし、例えば戦前の株式市場のように、簿価で株式を売買することにしている場合は、
株式と言うのは予想も何も「まさに今現在の簿価で」買うだけだったわけです。
会社発表の配当予想というものには何の意味もなかったわけです。
会社の業績(当期純利益額や株主資本額)が期末日に決まる、そして株主総会決議を経て配当金額が決まる、
当期純利益の分株主資本額が増加し、配当支払いの分株主資本額が減少し、結果新しい株価が決まる、
その新しい株価で株式市場で株式が売買される、
それだけのことであったわけです。
株式の価値と言うのは根本的に簿価が表すわけですから、株価に予想を織り込むのは実は根本的におかしい、という考え方はあるわけです。
戦前は今と異なり、インターネットもテレビもない時代です。
業績予想のようなものは当時上場企業から発表されていたのかどうかは知りませんが、配当予想は発表されていなかったと推測します。
なぜなら、配当がいくらであろうが、どちらにせよ配当支払いの分株主資本額が減少した形で株価は一意に決まるだけだからです。
これは簿価によって価格が決まるから期中は株価が変化しないという意味ではなく、株式の需給関係(株式への人気)の話です。
業績予想によって買いが集まることはあっても、配当予想によって株式への需給に変化が生じることはなかったと思います。
戦前は、(仮に会社が発表していたとしても)配当予想は株価(株式への人気・需給関係)には全く無関係であったわけです。

 

 



また、よく考えてみると、戦前は、業績予想も実は行われていなかったのだと思います。
というのは、実際の業績がそのまま株価(簿価)の増減額になるわけですから、株式の需給に与えるインパクトが大き過ぎるからです。
1株当たりの当期純利益額が100円なら、株価(簿価)もそのまま100円増加するわけです。
それを予想と言う形で発表してしまうと、まさに来期の株価(簿価)を会社が発表していることになるわけです。
その予想は当たるのかもしれませんし外れるのかもしれませんが、そのどちらにせよ、
業績予想が株式市場に与える影響の大きさは、現代のそれとは比較にならないほど大きなものになるのは確かでしょう。
皮肉なことに、現代の株式市場では、実際の業績の金額と株価の変動額とが無関係であることが、
業績予想が外れる(もしくは当たる場合でもインパクトは結局同じですが)場合の悪影響に対して、
株式市場にとっての一種のバッファー(緩衝材)になっている感じがします。
会社が1株当たりの当期純利益額は100円になる見込みだと業績予想を発表した、
それは来期の株価は現在より正確に100円だけ増加する見込みであることを意味するわけですが、会社が業績予想を行うことは、
当期純利益額により株価が一意に決まるだけに、今風に言うと一種のインサイダー取引のようなイメージになってしまうと思います。
もしくは、会社が業績予想を行うことは、「会社が発表した業績予想は果たして当たるのかそれとも外れるのか?」という、
現代の株式市場の賭博性以上に、まさに宝くじやギャンブルの意味合いを持つことになると思います。
なぜなら、現代の会社発表の業績予想は将来の株価を一意に決めるものはではありませんが、
戦前の会社発表の業績予想は来期の株価を一意に決めるものだからです。
市場株価で売買するから株式市場がただのギャンブルの場所になってしまうわけで、
そもそもの話をすれば、簿価で株式を売買する場合は株式市場には決して賭博性はないわけです。
それなのに、業績予想を発表することは簿価で株式を売買する場合にも業績予想に対する賭博性が出てきてしまいます。
当期末や来期以降の業績のことは誰にも分からない、ただ今現在の株主資本額の金額はこれです、
だから株式市場おける株式の価格はこの金額というだけです、
というのが戦前の株式市場における株式の売買です。
そういったことを考えていきますと、戦前の株式市場のように、簿価で株式を売買することにしている場合は、
会社が発表する業績予想というのはなかったのだと思います。
会社は会社外部の人よりも業績に関するはるかに多くの情報を持っているわけでして、それは単なる予想ではすまないわけです。
簿価で株式を売買する場合は、それは予想ではなく、来期の株価の決定でしょう。
戦前、会社が業績予想を発表することは来期の株価をあらかじめ公表することに等しかったと思います。
ですから、戦前は会社が業績予想を発表するなどということは決してなかったのではないか、と思います。
期末日以降、実際の決算が確定し、会社は確定した決算を発表する、それに従い新しい株価が淡々と決まる、それだけだったと思います。

今日書いたことは、タイムマシンに乗って戦前まで行って当時の人々に聞いて知ったわけではありません。
現代の非上場企業の株式の価値はどうやって決まるかを考えたら推測できたことです。

 

 

 



2013年7月17日(水)日本経済新聞
三菱自、今期復配10円超に 配当性向30〜40%
(記事)


 


【コメント】
記事には、

>三菱自は約3800億円の優先株を発行しているが、経営再建に一定のメドが付いたとして今期中に処理する方針を表明している。

と書いてありますが、経営再建が全く達成されていないから資本金及び資本準備金を取り崩すハメになったのですが。
優先株式を償還する原資はそもそも、当期純利益を積み重ねて計上していく繰越利益剰余金であるべきなのです。
そして当期純利益を毎期毎期計上していっているというのがまさに経営再建が達成されたということの意味でしょう。
資本金及び資本準備金を取り崩している時点で、経営再建は全く達成されていないわけです。

 

それから、資本金及び資本準備金を取り崩した結果、繰越利益剰余金のマイナスは解消したのかもしれませんが、
優先株式自体は何ら減少することなく今でも存在しているわけです。
優先株式はそもそも問題が極めて多く、率直に言えば決して発行してはならないほどの悪性の株式なのですが、
議論の焦点を絞るために今日はその点は置いておくとして、
優先株式と言うのは、とにかく配当支払いやその償還が普通株式よりも優先されねばならない、権利が強い上位の株式であるわけです。
普通株式には償還の概念はなく配当支払いのみあるということを踏まえますと、配当や償還の優先度は、
「優先株式への配当支払い≒優先株式の償還>普通株式への配当支払い」
となるはずです。
つまり、優先株式が発行されている状況下では、たとえ十分な配当原資(繰越利益剰余金)があろうとも、
優先株式の株主保護の観点から、普通株式へは一切配当を行ってはならない、という考え方もあると思います。
優先株式には議決権そのものはないものの、配当支払いや償還に関しては強い権利を有しているわけです。
このことを法律よりに解釈すると、
「優先株式が持つ繰越利益剰余金に対する利益処分権は、普通株式が持つ繰越利益剰余金に対する利益処分権よりも強い」
という言い方ができると思います。


 


実務上は、普通株式と優先株式との間の配当や償還に関する権利関係は、出資者との間で取り交わした優先株式出資契約書の内容次第であり、
契約自由の原則と言いましょうか、優先株式を発行している状況下ではどのように普通株式へ配当を行っていくかは
会社と優先株式の株主との間で任意に決めてよいのだとは思いますが、
優先株式には議決権がなく銀行などとは異なり万一のための担保物権もない、といった概念上のことを考えますと、
理屈では、優先株式による出資者は、繰越利益剰余金に対しては極めて強い権利を主張してくるはずです。
会社倒産の際は会社は債権者のものになります。
しかし、会社倒産の際、会社は優先株式の株主のものにはならないのですから。
(この点もまた優先株式が持つ大きな問題点の一つでしょう。
平時には普通株主とは異なり会社に対する議決権はなく、かといって、
倒産時にも債権者とは異なり会社に対する所有権が発生するわけでもないわけです。)
そういったことを考えると、出資者との間で取り交わした優先株式出資契約書に基づく繰越利益剰余金の利益処分権は、
普通株主総会の繰越利益剰余金の利益処分権よりも、必然的に強くないと、出資者は安心して優先株式で出資ができないことになると思います。


 



このような点を踏まえますと、優先株式の償還が終わっていないのに普通株式へも配当を行っているというのは、
繰越利益剰余金を取り巻く矛盾、とすら言っていいかもしれません。
これを「普通株式と優先株式と繰越利益剰余金の三角関係」とでも呼びましょうか。
繰越利益剰余金を巡って、普通株式と優先株式が仁義なき奪い合いをしているわけです。
「繰越利益剰余金はこれから私のものになったのよ!」、
「あんた何言っているの、会社設立後、第1期目の期末日以降ずっと繰越利益剰余金は私のものだったのよ!」
という喧嘩を二人はしているわけです。
どちらがどちらの台詞かは分かると思いますが。
本来なら、繰越利益剰余金は全額普通株式に帰属するはずなのです。
それなのに、優先株式を発行してしまいますと、繰越利益剰余金は全面的に優先株式が支配する形でないと理屈上はおかしいわけです。
なぜなら、債権者にとって会社の財産のみが弁済の頼りである(=債権者に議決権はない)ように、
優先株式の株主にとっては、繰越利益剰余金のみが償還の拠り所なのですから。
実務上は優先株式への配当支払いについては、累積的や非累積的といった様々な条項が付いていたりするわけですが、
確かに実務上は契約内容次第ではあるでしょうが、理屈では、累積も何も、
優先株式への配当支払いとその償還が全額完了するまでは、普通株式への配当支払いは完全にゼロだ、という考え方が正しいと思います。
そして、優先株式を発行している状況下である限り、会社が計上した当期純利益も全額優先株式の株主に帰属する、
と考えないと理屈上はいけないのだと思います。
つまり、優先株式を発行しているのなら、普通株式への配当は一切行ってはならず、配当性向もゼロだ、ということです。


三菱自動車の事例で言えば、仮に優先株式が全額普通株式へ転換されたのであれば、普通株式へも配当を行ってよい、となるでしょう。
その理由は、単純にはもちろん「優先株式自体がなくなったからだ」、と言っていいわけですが、
法律よりの別の言い方をすれば、「優先株式の株主にも議決権が発生したからだ」、とも表現できるでしょう。
「今までは優先株式の株主には議決権がなかったから配当や償還に関して優先した取扱いをする必要があったが、
このたび優先株式の株主にも議決権が発生したから配当や償還に関して優先した取扱いをする必要はなくなった、
優先株式の株主も議決権を行使して株主皆で配当その他を平等に決めていけばよい」、
と言えば分かりやすいでしょうか。


 



それにしても、今日のこの三菱自動車の記事を読んで、「優先株式の償還の原資は何であるべきなのだろうか?」、と思いました。
これは自社株買いの一種ですから、債権者保護の観点から、第一義的には繰越利益剰余金のみであるべきなのは言うまでもありません。
ただ、(そもそも優先株式には大きな問題があると言う点はここでは置いておくとして)
優先株式には一時的な資本増強という意味合いや一定の期日に償還するという前提があるわけです。
そうすると、優先株式を償還した後は、優先株式を発行する前と資本金や資本準備金は同じでないといけない、
という考え方もあるようにも思います。
資本金と資本準備金は基本的には株式による払い込み資本を表すわけです。
優先株式を償還したあとも資本金と資本準備金が大きいままでは逆におかしい(例えば1株当たりの払い込み資本額が大きく変化してしまう)、
という考え方もあるようにも思います。
優先株式は払い込んだ分を償還したわけですから、資本金や資本準備金は優先株式発行前に戻らないといけないわけです。
そうしますと、優先株式の償還の原資は、発行時に増加させた資本金及び資本準備金のみ、という考え方が出てくると思います。

この考え方は、実は普通株式の通常の自社株買いにも通じるところがありまして、
普通株式の通常の自社株買いの原資を繰越利益剰余金とする場合も、1株当たりの払い込み資本額は変化してしまいます。
資本金及び資本準備金の額は同じなままなのに、株式数だけが減少するからです。
また、優先株式は基本的には簿価での償還になりますから払い込んだ時と償還時で価額は同じになるわけですが、
普通株式の場合は1株当たりの公正な価額が払い込んだ時と自社株買い時で価額が異なっているわけです。
1株当たりの払い込み資本額を正しく表示させようと思うと、
普通株式の自社株買いの原資は資本金及び資本準備金及び繰越利益剰余金の3つ全てを適宜使う必要があるわけです。
資本金及び資本準備金の2つは払い込んだ時に増加させた分だけ減少させ、
繰越利益剰余金は「自社株買い時の価額−払い込んだ時の価額」だけ減少させる、
という形で株主資本の各勘定科目を減少させる必要があると思います。
「自社株買い時の価額−払い込んだ時の価額」が保有株式を会社側に売却する株主にとっての株式売却益に相当するでしょう。


 



ただ、さらに話は複雑になるのですが、増資を会社設立後複数回行っている場合は、
増資を引き受けた株主毎に「1株当たりの払い込み資本額」は結局異なるわけです。
その理由は、「1株当たりの株主資本額」はその時々で異なるからです。
そうすると、増資を行うだけでどちらにせよ「1株当たりの払い込み資本額」は変化することになるわけです。
1株100円で引き受けた株主もいればその後1株150円で引き受けた株主もいる、
でもそれは「1株当たりの株主資本額」に基づき平等であり公平であるわけです。
そして増資を引き受けた株主は別の投資家へ保有している株式を売却するかもしれないわけですが、
株式をその既存株主から買った投資家はその既存株主がいくらでその株式を買ったのかは分からないわけです。
その時の既存株主と投資家との株式の売買価額は「1株当たりの株主資本額」に基づいていた、というだけでしょう。
この時、株式を買った投資家がすぐに会社に株式を売却する(会社は自社株買いを行う)ことを考えてみましょう。
会社はこの自社株買いに際し、株主資本の各勘定科目をどの金額ずつ減少させる必要があるでしょうか。
1株当たりの払い込み資本額は、一番最初に増資を引き受けた株主しか知りません。
また、株式と言うのは発行してしまえば株式としては全て平等であるため、
発行した時の「1株当たりの株主資本額」=「1株当たりの払い込み資本額」というのは全く意味を成さないのです。
かつてこの株式を発行した時、株主は1株当たりいくら払い込んだ、そして、会社は資本金をいくら増加させ資本準備金をいくら増加させた、
ということは少なくとも会社にとっては関係がないことなのです。
株主にとってはいくらで引き受けいくらで売却できたかは株式の運用上大切かもしれませんが。
さらに、1株100円で株式を取得した株主は、例えば「取得価額100円のうち、80円分が払込資本分、20円分が繰越利益剰余金分」
などということは考えないわけです。
ただ単に1株100円で株式を取得したというだけですし、会計理論上も概念上も1株100円で取得した株式についてそのように分けることもできません。
こういったことを考えていきますと、普通株式の自社株買いに際し、株式毎に発行時にまでさかのぼって、
資本金をいくら減少させ、資本準備金をいくら減少させ、そして繰越利益剰余金をいくら減少させる、
ということは現実的には煩雑過ぎて極めて困難でもありますし、
なにより、会計理論上は発行後は株式は取得価額に関わらず皆平等であるという点から言ってもそうすることは全く理に適っていないわけです。
「かつて、誰がいくらでその株式の増資を引き受けたのかは知りません。その時の価額は弊社にはもう関係のないことです。
ただ、今の株主はあなたであり、今現在の1株当たりの株主資本額はこの価額です。ですから、あなたからも現在のこの価額で買い取ります。」
というのが簿価に基づく自社株買いであるわけです。
今の買い取り価格で十分売却益を得ることができる株主もいれば、今の買い取り価格では売却損が出る株主もいるでしょう。
それは株主毎に株式の取得価額が異なるのですから仕方のないことでしょう。
そして株主毎の株式の取得価額は会社には関係のないことです。
なぜなら、株式は皆平等であり、そして株式の簿価(貸借対照表の株主資本額)を大きくすることは他ならぬ株主の責任であり役割なのですから。


 


以上のようなことを考えていきますと、自社株買いの原資というのは、債権者保護や利益還元の一つといった意味も含めて、
結局繰越利益剰余金に一本化する以外ないのだと思います。
資本金及び資本準備金を減少させることまではできませんし、資本金及び資本準備金を減少させることは会計理論上もおかしいと思います。

優先株式の場合は、払い込み時と償還時とで簿価が変わりませんから、
償還に際して、払い込み時に増加させた資本金及び資本準備金を減少させるという会計処理方法もあるにはあるとは思います。
優先株式の払い込み前と償還後で資本金及び資本準備金の額は同じにする、
その方が、優先株式の一時的な資本増強という意味合いや一定の期日に償還するという前提にも適うような気がします。
ただ、債権者保護の観点から、優先株式と言えども、償還の原資は繰越利益剰余金のみであるべき、
という考え方にやはり分があるように思います。

一方、普通株式の場合は、払い込み時と自社株買い時とで簿価が異なります。
むしろ、当期純利益計上によって、株式の簿価を大きくしていくことが企業経営上重要であるわけです。
また、業容の拡大に応じて、適宜増資をしていくことも大切でしょう。
ただ、その際の「1株当たりの株主資本額」=「1株当たりの払い込み資本額」というのは全て異なるわけです。
増資を行うたびに1株当たりの発行価額は異なりますし、
また、増資を引き受けた株主が他の投資家へ株式を売却する時の価額もその時々で全て異なります。
なぜなら、その時々で「1株当たりの株主資本額」は全て異なるからです。
株式の取得価額は、同じ会社の普通株式であっても、株主毎に、そしてさらに、その時々で全て異なるのです。
しかし、それでも、1株当たりの株式の取扱いというのは皆平等なのです。
「俺は1株200円で取得した、しかしあいつは1株100円で取得した、だから俺はあいつの2倍の権利がないとおかしい」、
という意見は通らないわけです。
株式の取得価額に関わらず、1株当たりの権利内容は皆同じでないといけないわけです。
ただ、その時の「1株当たりの株主資本額」が100円なら、誰もがその時1株当たり100円でその株式を買えないと平等とは言えないでしょう。
「1株当たりの株主資本額」は100円だが、俺は1株80円で買う、お前は1株120円で買え、と言うのは公平ではないわけです。
今現在の「1株当たりの株主資本額」が100円なら誰もが1株100円で買うことにしようじゃないか、それが平等の意味でしょう。
増資(会社と投資家間の売買)だろうが株式発行後の株主間の売買だろうが、
株式発行後には、貸借対照表に基づく公正な株式の価額があるだけなのです。
確かに株式の取得価額は株主によってそして取得時によって全て異なるかもしれませんが、株式の取得価額に関わらず、株式は皆平等です。
したがって、債権者保護の観点から言っても会計理論上の整合性の観点から言っても、
普通株式の自社株買いの原資は、資本金及び資本準備金ではなく、繰越利益剰余金のみであるべき、という考え方になると思います。