2013年6月9日(日)
昨日、物権と債権は根底から異なる、と書きました。
それはそうなのですが、物権にもいくつか分類があるのですが、その物権の中でも、
「使用収益部分に着目した用益物権」(処分権の側面が制限されている)については、
私個人としては債権っぽい感じがするな、というイメージを持っています。
用益物権には4つ規定があるわけですが、4つともどこか債権である「賃借権」に非常に近いイメージがあるように私には感じます。
手元にあります法律の資格試験のテキストには、地上権(物権)と賃借権(債権)は異なる、とはっきりと注意書きまで書いてありますが、
「その土地を所有者以外が使用して何らかの便益(自らの居住も含む)や収益を上げていく権利(権利取得の対価を所有者に支払う)」
というふうにとらえるならば、これら用益物権は賃借権(債権)と非常に似通った側面があるように思います。
昨日は、「借地借家法は物権よりも債権を強い権利と定めていると言える」と書きましたが、
それは用益物権は他の物権に比べ相対的にそもそもその性質が債権に近いから可能なことなのかもしれないな、と思いました。
これが担保物権であれば、法律で物権よりも債権を強い権利と定めるのは難しいということかもしれないな、と思いました。
物権にも、まさに物権といえる物権もあれば、債権っぽい物権もある、というようなことが言えるのかもしれないな、と思いました。
明治期の民法立案(120年以上前)当時のことを推測して書きますが、
その当時の人々の各種慣習を分類・明文化して「用益物権」をいうのを当時の立法者は考え付いただけなのだと思います。
用益物権4つは当時の人々の慣習に照らして特に重要な権利として位置付けようという意図があって
法律上物権であると定義・分類しただけのことであって、
賃借権とのその類似性を踏まえれば、現代であれば用益物権4つは全て何らかの債権として分類されても何らおかしくないように思えます。
担保物権と金銭債権とは根底から異なりますが、用益物権と賃借権は私には非常に似通ったものに思えます。
地上権、永小作権、地役権、入会権は当時民法上物権であると定義・分類しただけのことであり、
その権利の実態は何らかの債権の一つと分類・定義されてもおかしくないのではないだろうか、という気がします。
例えば、これら4つは全て貸借型の契約(利用権の設定)という典型契約の一類型に過ぎない、という見方もできると思います。
こういったちぐはぐさがありますので、悪く言えば、実は民法は立法以来120年以上整理されていない部分があると言えるのかもしれません
(ただ、だからと言って、今までの判例や学術上の蓄積が無駄になってしまいますので、今になって民法を改正する必要はないと思いますが)。
そういったことを考えていきますと、条文上・解釈上、物権と債権とは完全に異なるものとされていますが、
特に用益物権に関しては、物権と債権との区別は相対的な部分もあるのだと思います。
最後に、テキストをスキャンしましたので物権の理解の助けにして下さい↓。
「物権の種類」
物権と債権は根底から異なります。
しかし、
用益物権の性質が強ければ強いほど債権っぽい感じがし、
担保物権の性質が強ければ強いほどまさに物権だ、
という感じが私にはします。
注:所有権はまさに物権中の物権です。
所有権については議論の余地はありません。
まあ法律論というより、概念論になりますが。