2013年5月28日(火)



ルネサス、革新機構が社外取締役など3人派遣へ

[東京 28日 ロイター] - 経営再建中の半導体大手ルネサスエレクトロニクスは28日、
同社に出資を予定している政府系ファンドの産業革新機構から社外取締役2人と社外監査役1人を迎える人事を内定したと発表した。
就任は、6月26日に開催する定時株主総会までに同機構主導の出資が完了した場合に同日付とする。
革新機構からは朝倉陽保専務と投資事業グループの柴田英利執行役員の2人が社外取締役に就任する予定。
一方、ルネサスの赤尾泰前社長ら取締役8人が退任する。これにより取締役の数は10人から5人に半減する。
同機構経営管理グループの関根武執行役員が社外監査役に就く。
ルネサスはすでに、オムロンの作田久男会長が会長兼最高経営責任者(CEO)に就き、鶴丸哲哉社長が留任して
最高執行責任者(COO)を兼任することも公表しており、同機構とトヨタ自動車など主要取引先8社による
総額1500億円の出資を機に経営陣を一新し、同機構主導で再建を加速させる。
ルネサスは併せて、定時株主総会の前日までに同機構主導の出資が完了すれば同総会での議決権を付与することを決めた。
通常は3月末時点の株式保有に基づくのが一般的だが、総会にもっとも近い時点での株主の意思を反映させるべきと判断したため。
同機構の議決権比率は69.16%となる。
(ロイター 2013年 05月 28日 21:25 JST)
ttp://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTJE94R00720130528

 

 


2013年5月28日
ルネサス エレクトロニクス株式会社
役員の異動ならびに組織の変更に関するお知らせ
ttp://japan.renesas.com/press/news/2013/news20130528a.jsp

 

 

2013年5月28日
ルネサス エレクトロニクス株式会社
基準日後株主の議決権付与に関するお知らせ 
ttp://japan.renesas.com/press/news/2013/news20130528b.jsp

 

 

2012年12月10日
ルネサス エレクトロニクス株式会社
第三者割当により発行される株式の募集並びに主要株主、主要株主である筆頭株主、親会社及びその他の関係会社の異動に関するお知らせ
ttp://japan.renesas.com/media/press/news/2012/news20121210a.pdf

 

 



2013年1月28日
ルネサス エレクトロニクス株式会社
臨時株主総会招集ご通知
ttp://japan.renesas.com/media/ir/event/pdf/20130222.pdf

 

 

2013年2月22日
ルネサス エレクトロニクス株式会社
臨時株主総会決議ご通知
ttp://japan.renesas.com/media/ir/event/pdf/20130222_resolution.pdf

 

 

2013年2月25日
ルネサス エレクトロニクス株式会社
議決権行使結果に関するお知らせ
ttp://japan.renesas.com/media/ir/event/pdf/130226.pdf

 

 



【コメント】
記事には、社外取締役と社外監査役の就任の日付について、

>就任は、6月26日に開催する定時株主総会までに同機構主導の出資が完了した場合に同日付とする。

と書かれています。
また、この就任日時に関連して、

>ルネサスは併せて、定時株主総会の前日までに同機構主導の出資が完了すれば同総会での議決権を付与することを決めた。
>通常は3月末時点の株式保有に基づくのが一般的だが、総会にもっとも近い時点での株主の意思を反映させるべきと判断したため。
>同機構の議決権比率は69.16%となる。

と書いてあります。

 

まず、株主総会の基準日について書きます。
定時株主総会の前日に出資を完了すれば次の日の株主総会で議決権を行使できるなんてことはないはずだ、と思いました。

「基準日後株主の議決権付与に関するお知らせ」には、

>2.議決権を付与する理由
>当社は、会社法第124条第4項に鑑み、当該定時株主総会予定時に最も近い時点での株主の意思を株主総会に反映させることができる
>株主総会を開催したいとの判断に基づき、基準日後の株主に議決権の付与を認めることを決議しました。

と書いてあります。


 


では会社法第124条第4項には何と書いてあるかと言いますと、

(基準日)
>基準日株主が行使することができる権利が株主総会又は種類株主総会における議決権である場合には、
>株式会社は、当該基準日後に株式を取得した者の全部又は一部を当該権利を行使することができる者と定めることができる。
>ただし、当該株式の基準日株主の権利を害することができない。

と書いてあるわけです。
ここだけ読むと、確かに、株主総会の前日に出資を完了すれば次の日の株主総会で議決権を行使できる、と読めます。
また、株式会社産業革新機構側が第三者割当増資を引き受けることは2013年2月22日開催の臨時株主総会で承認決議を経ていることです。
そうすると、既存株主は第三者割当増資が実施されることは分かった上で株式を保有していると考えられるわけですから、
株式会社産業革新機構側に議決権を付与しても株式の基準日株主の権利を害することにもならないとは思います。
第三者割当増資の株主総会決議も取っていることですから、基本的には問題ない議決権付与だとは思います。

ただ、敢えて言うなら、「議決権を付与するのは誰か」という点が条文解釈上分かりづらい気がします。
一応条文上、主語として「株式会社は、」とあるわけですが、この場合の株式会社とは誰でしょうか。
根源的に議決権を保有し議決権を行使するのは株主であるわけです。
そのことを考えますと、取締役会決議によって株主総会の前日に出資を完了した者に議決権を付与してよいかは判断が難しい気がします。
究極的には、株主総会の前日に出資を完了した者に議決権を付与するのは株主だ、という言い方もできるかもしれません。
確かに株式会社産業革新機構側は出資は昨日完了している、しかし、今日議決権を行使できるのは基準日の株主だ、
だから、今日の株主総会で株式会社産業革新機構側も議決権を行使できるか否かは今日議決権を行使できる株主で決める、
という言い方もできるようにも思えます。

>ただし、当該株式の基準日株主の権利を害することができない。

の「基準日株主の権利を害しない」というのは、「基準日株主から議決権付与に対し異議が出ない」という意味だと思います。
すると、端的に言えばこの場合、株式会社産業革新機構側に議決権を付与するための株主総会決議が必要なのではないか、という気もします。
そういったことを考えていきますと、「ただし、当該株式の基準日株主の権利を害することができない。」の但し書きがある時点で、
基準日後に株式を取得した者に議決権が与えられることは実際にはあり得ない、ということになるように思いました。
なお、年1回開催される定時株主総会における基準日とは決算日のことです。
なぜなら、決算日における株主資本額に基づき配当可能な限度額が計算され、当期の配当額を吟味し、実際の配当支払いが決議されるからです。


 


次に、株式会社産業革新機構側が推薦している新役員の選任・就任についてです。


「役員の異動ならびに組織の変更に関するお知らせ」には、

>なお、新任の社外取締役および新任の社外監査役の就任につきましては、平成25年6月26日開催予定の定時株主総会(以下、「本総会」)にて、
>第三者割当増資による株式会社産業革新機構および事業会社8社からの出資完了を条件とした承認決議を経て、
>本総会の開催日の前日までに当該条件が成就した場合には本総会終結の時をもって、また、
>本総会の開催日以降に当該条件が成就した場合には当該条件が成就した日の翌日をもって効力が生じることとなります。

と書いてあります。
議論が複雑になりますので、ここでは基準日後に株式を取得した者に議決権が与えられることには何の問題もないとします。

すると、株主総会開催の前日までに株式会社産業革新機構側が出資を完了した場合には、
株式会社産業革新機構側が株主総会で議決権を行使し選任の決議に参加するだけですので、
本総会終結の時をもって、新役員が就任することには何ら問題はありません。

問題は、株式会社産業革新機構側による出資の完了が株主総会開催日以降の場合だと思います。

 


「役員の異動ならびに組織の変更に関するお知らせ」には、次のように書いてあります。


>本総会の開催日以降に当該条件が成就した場合には当該条件が成就した日の翌日をもって効力が生じることとなります。


定時株主総会は平成25年6月26日ですが、例えば、
第三者割当増資による株式会社産業革新機構および事業会社8社からの出資完了が平成25年6月27日になるとしますと、
翌日である平成25年6月28日付けで、社外取締役と社外監査役が自動的に就任する、と言っているのだと思います。
社外取締役と社外監査役就任のための株主総会決議は平成25年6月26日開催の定時株主総会で取っているので問題ないようにも思えますが、
このたび第三者割当増資を引き受けた新株主は、その株主総会決議に参加していないので、
第三者による出資完了後改めて株主総会を開催し、改めてその社外取締役と社外監査役の選任の決議を取る必要があるように思えます。
会社に新たな役員が就任するためには、その時の株主による選任(決議)が必要、ということだと思います。
過去の株主ではだめなはずです。
第三者割当増資によって、発行済株式総数や株主構成が著しく変わっていますから、
新しい役員の就任には新しい株主による選任決議が必要、ということではないでしょうか。
もちろん、このたび就任する予定となっている社外取締役と社外監査役は株式会社産業革新機構側が推薦する人物ですから、
新しく株主となった株式会社産業革新機構側が新役員の就任に反対するわけがありません。
それはそうなのですが、当然賛成ということも含めて既存株主・新株主合わせた全株主で改めて新役員選任決議を取る必要があるように思えます。
例えば、親会社が80%の議決権を保有している親子会社があるとして、子会社の新役員候補者は全員親会社からの派遣だという場合、
その新役員の就任にはやはり株主総会を開催して新役員選任の決議を取らないといけないでしょう。
新役員候補者は全員親会社からの派遣ですから、80%の議決権を保有している親会社が反対するわけがありませんが、
それでも株主総会決議を取らないと法的には正式な選任とはならないわけです。
ルネサスの新役員選任も考え方は同じではないでしょうか。


 


「出資完了を条件とした承認決議」という部分がやはり最後まで気になるわけです。
新日本製鐵株式会社と住友金属工業株式会社の合併の際、2012年10月1日付けで合併に伴い住友金属工業株式会社の取締役5名が
いわば自動的に合併会社新日鉄住金の取締役に就任しましたが、これは法的には正式な就任ではない、と私は書きました。
その理由は、新日本製鐵株式会社の株主では選任の決議を取ったが住友金属工業株式会社の株主では選任の決議を取っていないからだ、
合併後改めて旧住友金属工業株式会社の取締役5名の取締役選任の決議を取る必要がある、と書きました。
このたびのルネサスの新役員選任も考え方は同じであるように思います。
要するに、株主構成(発行済株式総数や議決権割合)が変わる(新株式を発行する増資や合併等)場合は、
「出資完了を条件とした承認決議」や「合併の効力が発生することを条件とした承認決議」というものを、誰が新株主になる場合でも、
前もって取ることができない、ということではないだろうか、と思うわけです。
既存株主はもちろんのこと、新株主も当初からその承認決議に当然賛成の場合でも、
株主構成変更(増資や合併等)後改めて目的とする事柄(新役員選任等)に関して全株主で承認決議を取る必要があるように思います。