2013年5月16日(木)



日ケンタッキー、2014年4月に持ち株会社体制に移行
 
[東京 16日 ロイター] 日本ケンタッキー・フライド・チキンは16日、
会社分割の方法により、2014年4月1日付で持ち株会社体制に移行すると発表した。
持ち株会社の傘下に、KFC事業、ピザハット事業、その他事業を行う子会社3社を置く。持ち株会社と事業会社の役割と責任を明確化し、
経営のスピードを速めるほか、持ち株会社主導で経営資源を横断的に活用し、グループシナジーを発揮することなどが狙い。
 4月1日付で商号は日本KFCホールディングスに変更する予定。上場は維持する。
(ロイター 2013年 05月 16日 19:43 JST)
ttp://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPTK067874320130516

 

 

平成25年5月16日
日本ケンタッキー・フライド・チキン株式会社
持株会社体制への移行に伴う準備会社の設立と吸収分割契約の締結及び定款変更(商号変更等)に関するお知らせ
ttp://japan.kfc.co.jp/kessan/pdf/ir157.pdf

 

 


【コメント】
3. 会社分割の要旨
(1) 分割日程
(1〜2/9ページ)


>株主総会開催日      平成25年6月12日(水)(予定)
>分割予定日(効力発生日) 平成26年4月1日(火)(予定)

 

随分間が空いていますが。

 

 



これだけ効力発生日までに期間がありますと、株主総会決議後、株主が心変わりして、
「待てよ、持株会社制に移行するのではなく、従来通り通常の事業会社体制で経営を行っていく方がいいような気がしてきた。」
と思い始めるかもしれません。
すると、株主としては、臨時株主総会を招集し、「会社分割契約承認決議の取り消しの決議」を取らねばなりません。
理屈では、会社分割実施前日までであれば、株主総会を開催し「ちょっと待った」と言えるはずです。
まあ、臨時株主総会召集通知は会日から2週間前までに発送しなければなりませんが。

ところで、この時に取らなければならない「取り消しの決議」というのは、普通決議なのでしょうかそれとも特別決議なのでしょうか。
会社法上の定めや解釈や判例は分かりませんので法律の専門家にお任せするとして、ここでは法理を考えてみましょう。
まず、「会社分割契約承認決議」は特別決議ですから、その決議を取り消すためには「同じ重みを持った決議」が必要ということで、
特別決議が必要、というのが自然な考え方かもしれません。
次に、「取り消しの決議」が効力を持つことにより、会社には何らの組織再編も行われないことになるわけですから、すなわち、
株主に帰属する資産や負債や株主資本には何の変動も起こらない状態にするというだけですから、
普通決議だけで事足りる、という考え方もあると思います。
さらに、「会社分割契約承認決議」は特別決議だったわけですが、それは裏を返せば、決議の時3分の1超の株主が反対すれば否決されていた、
ということを意味するわけです。
そうすると、その「会社分割契約承認決議」という特別決議を否決するには、
3分の1超の株主が「取り消しの決議」に賛成すれば「会社分割契約承認決議」の否決には足りる、ということになります。
会社法上、残念ながら「3分の1超」が決議要件という株主総会決議はないわけです。
また、「会社分割契約承認決議」の採決の時点なら3分の1超の反対で否決となりますが、
一旦は「会社分割契約承認決議」は可決しているわけですから、後になっての議案の否決ということですと、
やはり3分の1超の反対というだけでは「会社分割契約承認決議の取り消し」には足りない、ということになると思います。
したがって、この場合、決議要件が最小の普通決議を取れば、「会社分割契約承認決議の取り消しの決議」には事足りる、
という考え方もあると思います。
「会社分割契約承認決議の取り消しの決議」は、特別決議が必要という考え方もあれば普通決議で十分という考え方もあるように思いました。


ちなみに、日本ケンタッキー・フライド・チキン株式は三菱商事株式会社が議決権割合で64.82%保有しています。
現時点で三菱商事株式会社は日本ケンタッキー・フライド・チキン株式会社の親会社であり今後もそのつもりでしょうから、
「会社分割契約承認決議」が取られた後、市場で株式を買い集めて「会社分割契約承認決議」を否決するのは事実上不可能だと思います。

 

 


(3) 吸収分割に係る割当ての内容
(3/9ページ)


>承継会社であるケイ・ダイニング株式会社、レッドルーフ・ピザ株式会社及びレッドルーフ・ナチュラル株式会社は、
>本件分割に際して普通株式をそれぞれ2,480 株、2,480 株及び2,480 株発行し、これを全て分割会社である当社に割当て交付いたします。


承継会社が発行する株式数は3社とも2,480株とのことです。
これは分割される各3事業は3つともほぼ同じような規模(総資産や売上高や利益額やキャッシュフロー金額等)であるから同じ株式数になった、
というわけではありません。
承継会社となる事業子会社3社には規模に非常に大きな差があります。
売上高で言えば3社の間には、約「1:30:120」もの差があります。
ではなぜ発行する株式数は同じ2,480株になるかと言えば、「1株当たりの価額が異なるから」です。
非常に大まかに言えば、株式1株当たりの価値に「120:30:1」もの差がある、と言っていいわけです。
極端なことを言えば、持株会社が100%議決権を保有した状態で3社はずっと経営を行っていくわけですから、
事業の承継時に発行する株式数は2,480株と言わず、3社とも1株でもいいわけです。
本日、事業を承継することになる子会社を設立(設立登記)したとのことですが、
設立に際し本日発行した株式数は3社とも20株だったとのことです。
しかしこれも極端なことを言えば、3社とも実は1株だけでよかったということになります。
3社とも、発行する株式数は、設立時に1株、事業承継(会社分割)時に1株、計2株、ということでも経営上問題はないとは言えます。
ただ、この場合、3社とも、設立時に発行する1株と事業承継(会社分割)時に発行する1株とは、
1株当たりの価額が著しく異なることには注意が必要です。
2株とも結局持株会社が保有するわけですから結局その点は大きな問題とはならないわけですが、
新しく新株式を発行する場合は1株当たりの株主資本額は同じでなければならない、という点に重きを置くなら、
発行価額面に関しては著しく公正性に欠く新株式発行という言い方もできるわけです。
株主は新株式発行後も結局ずっと同一の一人ですからこの場合は問題ないわけですが。

 

 



7. 会社分割後の状況
(6/9ページ)



日本ケンタッキー・フライド・チキン株式会社の現在の代表取締役執行役員社長(つまりケンタッキーの現社長)が
会社分割後も引き続き持株会社の社長を務めますし、さらに、事業子会社3社の社長にも就任する予定とのことです。
ケンタッキーの現社長は今でも現3事業を統括しているわけですから、ある意味スムーズな社長就任となるでしょうし、
引き続きの各事業の業務執行を行っていくことができるでしょう。
昨日も書きましたように、持株会社の場合は事業子会社の取締役は持株会社の取締役にも就任する方が法的責任の観点からも望ましいわけです。
ただ、ここまで会社運営の体制が変わらないとなりますと、逆に「持株会社制移行の意味はあるのか」という話になる気がします。
従来通り、通常の事業会社の体制のままでよいのではないか、という気がします。
持株会社と事業子会社3社の計4社で、社長がみな同じなのであれば、結局それは事業会社と同じ様なことになるのではないかと思いました。

 

 

今日は主に法務面や組織戦略面について書きました。
明日は会計・財務面について書きたいと思います。