2013年4月28日(日)



大分FC株主総会 100%減資を承認

経営再建に取り組む大分フットボールクラブは26日の株主総会で「100%減資」が承認されました。
Jリーグが導入したクラブライセンス制度では2015年1月までに債務超過を解消しなければリーグ退会を強いられます。
5億8700万円の債務超過を抱える大分フットボールクラブは26日の株主総会で債務超過解消策として株式の100%減資を提案しました。
100%減資の承認には株式の割合で3分の2以上の賛成が必要です。
株主によりますと賛成は69・5%、反対は30・5%でかろうじて3分の2以上をクリアし承認されたということです。
株主が保有していた株式は実質資産価値が「ゼロ」となるだけに株主からは反対意見も出されたということです。
クラブは今後2年間でおよそ3億円を目標に新たな出資を募る方針です。
青野社長は債務超過の解消策について年内には明確にする考えを示しています。
(OBS大分放送ニュース 2013年4月26日 20:00)
ttp://www.e-obs.com/news/detail.php?id=04260023037&day=20130426

 

 


大分の債務超過は6億近く、黒字は3期連続

 経営再建中のJ1大分が26日、株主総会を開き第15期(2012年2月〜13年1月)の決算を承認し、
当期純利益は一般市民らから寄付された「J1昇格支援金」の一部を含め3億3千万円で3期連続の黒字、
ただし実質債務超過額は5億8700万円となった。クラブライセンス制度では14年度決算までの債務超過解消を求められている。
 総会では累積赤字と債務超過解消のために資本金と資本準備金計約5億3700万円の100%減資が承認された。
減資は6月下旬に正式に行われ、当面は青野浩志社長らクラブ側の3人が株式を保有する。
 今後は債務超過解消のために3億円ほどの増資を募る。青野社長は「年内をめどに債務超過解消の道筋を示せるようにしたい」と述べた。
(スポーツニッポン 2013年4月26日 19:07)
ttp://www.sponichi.co.jp/soccer/news/2013/04/26/kiji/K20130426005687770.html


 


株式会社大分フットボールクラブ 第15期定時株主総会について
(J's GOAL 2013年4月26日)
ttp://www.jsgoal.jp/official/00154000/00154499.html


株式会社大分フットボールクラブ 第15期決算状況・役員名簿
ttp://www.oita-trinita.co.jp/userfiles/files/
%E7%AC%AC15%E6%9C%9F%E6%B1%BA%E7%AE%97%E7%8A%B6%E6%B3%81%E3%81%A8%E6%96%B0%E5%BD%B9%E5%93%A1%EF%BC%92.pdf

>本日定時株主総会の承認決議事項
>
>・第15期決算に関する計算書等の承認
>・取締役及び監査役の選任
>・いわゆる100%減資及び第三者割当増資に関する決議
>※全ての決議事項は承認されました。

 


>椛蝠ェフットボールクラブ取締役名簿
>(新任)取締役(非常勤) 佐藤耕三 大分市役所 企画部長

公務員は兼業は禁止されているはずですが。
無報酬だったらいいのでしょうか。


 


【コメント】
Jリーグの株式会社大分フットボールクラブは2013年4月26日開催の定時株主総会で100%減資を決議した、
と書かれていますが、これは完全に間違いです。
株式会社大分フットボールクラブがこのたび決議したのは「資本金及び資本準備金の額の減少」の実施です。
「資本金及び資本準備金の額を全額減少させること」を決議しただけです。
「資本金及び資本準備金の額の減少」は、たとえ全額を減少させるのだとしても、それは100%減資ではありません。
100%減資とは、株式を100%減少させることを言います。
株式を100%減少させるということは、その会社の株式がこの世から1株もなくなる状態にすることですから、
その会社を清算させることと同じです。
100%減資とは、その会社が消滅することを言うのです。
このたび株式会社大分フットボールクラブが決議したのは(たとえ全額だとしても)「資本金及び資本準備金の額の減少」ですから、
株主の持分には何ら影響を与えません。
「資本金及び資本準備金の額の減少」後も、株主の持株数が減少するということは一切なく、今まで通り会社は存在し続けます。
奇妙な話ですが、この場合、貸借対照表上資本金や資本準備金は1円もないのに、株式だけは存在する、という状態になるのです。
現会社法がいかにデタラメかこの例からも分かろうものかと思います。
参考までに申し上げますと、「資本金及び資本準備金の額の減少」には株主総会の特別決議が必要ですから、
議決権の3分の2以上の賛成が必要です。
一方、100%減資には株主総会の特殊決議が必要ですから、4分の3以上が必要です。
100%減資を実施すると株主が保有していた株式は実質資産価値が「ゼロ」となります。
しかし、「資本金及び資本準備金の額の減少」を実施しても、株主が保有している株式の実質資産価値には何の影響もありません。
この2つは本質的に異なることには注意が必要です。


 



なお、企業再生の場面では、100%減資と同時に新株主となるスポンサーへの第三者割当増資が実施され(ると一般に言われ)ますが、
それは経営破綻企業の会社清算と同時に事業の受け皿となる会社を新しく設立して事業譲渡を行う、という意味です。
清算と設立新会社は法律的には完全に別ですから、清算会社における取締役及び監査役の選任の株主総会決議には何の意味もありません。
法律的には、これから新株主となるスポンサーが改めて事業の受け皿となる新会社を
発起設立(企業再生の場面では通常株主は一人のみですから募集設立ではない)を行い、定款を作成することから始まり、
株主総会を開催し取締役及び監査役の選任し、受け皿会社が完成し、そこでやっと事業を譲り受ける、という流れになります。
そういう意味では、厳密には、経営破綻企業が「第三者割当増資」を実施するという言い方は間違いなのです。
専門書にも第三者割当増資を実施するという文言が書いてありますが、敢えて言うならこれは「発起人の全部株式引受け」でしょうか。

会計面の話をすれば、「資本金及び資本準備金の額の減少」を行っても債務超過額は1円も減少しません(累積赤字額は減少する)が、
100%減資を行えば債務超過は完全に解消します。
このたびの株式会社大分フットボールクラブは「資本金及び資本準備金の額の減少」を行うだけですので、債務超過額は1円も減少しません。
債務超過を解消するためには、少なくとも5億8700万円の以上の増資が必要になります。
会計上は、「資本金及び資本準備金の額の減少」を行っても何の意味もありません。
旧商法下では、企業再生(株主責任を取る)の一手段として、
資本金及び資本準備金を一定額減少すること=その減少割合に応じて既存株主保有の株式数を減らすこと(これが本当の意味での減資)
が行われていたのですが、
現会社法下では旧商法下における減資は行えなくなりました。
株主責任を取らせようとすれば、100%減資しかなくなりました(減資が"All or nothing"になってしまったのです)。
このたびの株式会社大分フットボールクラブは債務超過ですから、どちらにせよ(本当の)100%減資を実施するしかないわけですが。
様々なことを考えますと、現会社法における「資本金及び資本準備金の額の減少」を行う場面と言うのは、
「利益剰余金がないから資本金及び資本準備金を取り崩して配当の原資を無理やり捻出する」という異常な場面しか思い浮かびません。
「利益剰余金がないなら配当は行わない」、これが企業経営の正常な姿のはずではないでしょうか。


まあそういうわけで、このたび株式会社大分フットボールクラブは「資本金及び資本準備金の額を全額減少させること」を決議したわけですが、
一切、株式数や株主構成に変化があるわけではありません(株式価値にも変化なし)。
今までの株主が今まで通り株主でいるだけです。
記事には、”当面は青野浩志社長らクラブ側の3人が株式を保有する。”と書いてありますがそのようなことはないかと思います。
まあ敢えて言うなら、株式会社大分フットボールクラブの株主は大分県一人のみであり、
売上高の大半を占める”一般市民らから寄付された「J1昇格支援金」”というのも大分県の税金、というだけではないかと思います。