2012年12月23日(日)



Wall Street Journal
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サイト一番上の帽子をかぶって髭をはやした明治時代風の人は誰なのでしょうか。
まさか天皇陛下をイメージしたのでしょうか。
ウォール・ストリート・ジャーナル紙はもう少し日本について勉強してもらいたいものです。

 

 


トップページにコンテナを輸送しているトラックの写真が載っていまして気になりました。


On Afghan Odyssey, Gifts to Troops Brave Ambushes, Bombs
(WallStreetJournal December 21, 2012, 10:31 p.m. ET)
ttp://online.wsj.com/article/SB10001424127887324296604578179740347483934.html


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アメリカがアフガニスタンに展開している兵士達に対して家族がクリスマスプレゼントを送っているそうなのですが、
それをコンテナで輸送している写真のようです。

>The contractors who truck mail and gifts across Afghanistan, braving Taliban ambushes and roadside bombs,
>call themselves the Pony Express.

クリスマスカードやプレゼントをアフガニスタン中にトラック配送する請負業者達は、
タリバンの待ち伏せや道路わきの爆弾にものともせず、自分達のことを”ポニー・エキスプレス”と呼んでいる。

 

この記事が本当かどうかは知りませんが、今日は「海運業」について見てみましょう。

 

 


上場を深センから香港へ切り替え 中国国際海運集装箱集団

 中国コンテナ大手の中国国際海運集装箱集団は、19日に香港取引所で株式を上場すると発表した。
同社は中国本土の深セン証券取引所での「B株」と呼ぶ外貨建て株式の上場を取りやめ、香港上場の株式に切り替える第1号となる。
取引が低迷するB株から、商いが活発な香港株へ転換する前例ができたことで、今後同様の動きが続く可能性がある。
 香港で記者会見した同社の麦伯良総裁は「香港は世界で最も国際的な資本市場。会社の国際化や将来の発展に向けよりよい基礎ができる」
と述べた。深セン上場のB株は11月29日を最後に取引を停止しているが、14日に正式に上場廃止となる。
その一方で19日から香港の上場株式として取引される。深セン上場の同社の人民元建て「A株」はそのまま。
香港上場に伴う新たな株式の発行はしない。
 B株は中国が外貨不足に悩んでいた時代の産物。1992年に中国本土の企業に、上海では米ドル建て、
深センでは香港ドル建ての株式の発行を認め、外国人に自由に取引できる仕組みをつくった。
しかし、中国の外貨事情が一変したほか、香港や米国など域外市場に上場できるようになったことなどを受け、
B株への投資家の関心が低下していた。
(日本経済新聞 2012/12/14 10:24)
ttp://www.nikkei.com/article/DGXNASGM13076_U2A211C1EB2000/

 

 

 



【コメント】
見出しだけ読むと間違えそうです。
中国国際海運集装箱集団は、深セン証券取引所では引き続き人民元建て株価で上場を続けます(A株と呼ぶようです)。
ただ、深セン証券取引所に加え、香港取引所でも香港ドル建て株価による上場を新たに行う、というだけです。
話が複雑なのですが、中国国際海運集装箱集団は実は従来から深セン証券取引所では香港ドル建て株価でも上場を行っていました。
深セン証券取引所で香港ドル建て株価で売買されている株式のことを「B株式」といいます(通常の人民元建て株価の株式のことは「A株式」)。
最近では、このB株式の売買は活発ではなく、海外の投資家は主に香港取引所で売買をするようになっています。
そこで中国国際海運集装箱集団はこの自社B株式は上場廃止にして、新たに香港取引所で香港ドル建てにて上場することにしたようです。
記事によりますと、深セン証券取引所B株式を上場廃止にしてそのまま香港取引所に上場させる、というケースは今回が初めてとのことです。
記事中には、”香港株へ転換する前例”と書かれていますが、これは転換というより、ただ単に上場市場の鞍替え、と言うべきでしょうか。
中国国際海運集装箱集団としては、「中国国内の投資家は引き続き深セン証券取引所で人民元建て株価で自社株式を売買してして下さい、
外国の投資家の方は今後は香港取引所で香港ドル建て株価で自社株式を売買して下さい、
両者は完全に同じものです、ただ単に売買時の通貨単位が異なるだけです」、と言いたいのだと思います。

 

 



中国国際海運集装箱集団は言うまでもなく中国企業です。
ですから、中国国際海運集装箱集団の財務諸表は人民元建てで作成されていますし、当然資本金も人民元です。
つまり、株主が資本を払い込む時に中国国際海運集装箱集団が受け取ったお金は人民元なわけです。
当たり前じゃないか、と思われるかもしれません。
しかし、その株式は香港ドルで売買されているわけです。
額面株式か無額面株式かに関わらず、本来であるならば株式の価値と言うのは(簿価しかないということも含めて)一意に決まるはずなのに、
企業の価値とは無関係に変動する為替レートの影響を受ける形で香港ドル建ての株価が決まってしまうことになっているわけです。
最も古典的な話をすれば、中国国際海運集装箱集団の株式の価値は簿価(当然人民元建て)で一意に決まるのです。
今までに何回か言いましたが、「株式には簿価しかなかった」、「簿価とは別に時価という株価とやらがあるのは矛盾ではないのか」、
というのが一番古典的な株式の価値の考え方です。
ただ単に現代では、どういうわけか、株価や上場というのが当たり前になってしまっている、というだけなのです。
中国国際海運集装箱集団の株価の場合はどうでしょうか。
株式の価値が簿価から離れているのみならず、為替レートの変動の影響を受ける形で株式の価値の通貨単位すら変わってしまっています。
中国国際海運集装箱集団の株価は本来の価値とは二重に離れてしまっているのです。
企業の資本金や資本準備金や利益剰余金が人民元なら、その株式の価値も人民元で一意に決まるのです。
外国通貨と自国通貨との交換に不都合がないなら(事実上通貨に関する規制がないなら)、
どんなに自社事業や株主がグローバル化しようとも上場する証券取引所は国内一箇所のみで全く問題がなくむしろ一番効率的です。
中国国際海運集装箱集団は二箇所の証券取引所に上場しているというだけでも経営的な視点から見るとおかしなことをしているわけですが、
「企業の簿価と株式の価値」という観点から見ても、「株価の種類が二種類ある(通貨単位が異なる)」というのは、
何と言いますか、株式の価値とは何かという根底からなる疑問を抱かざるを得ないように感じます。
これはその時その時の為替レートによる換算により人民元建て株価と香港ドル建て株価とは等価になるから問題がない、
ということとは異なります。
むしろ為替レートによる換算により株価の方が変動していまうことが問題なのです。
簿価とは別に株価という時価がある時点で実態とは離れたマネーゲームの要素は十分にあるのですが、
そこに為替レートの変動まで加わるとなると、いよいよババ抜きか何かのトランプゲームのごとく、株式と名の付いている
実態のよくわからない証券だけが、任意に株価が付いた状態で株主間で売買されているだけの状態になってしまっているように思えます。
この議論は一部の日本企業が発行しているADR(American Depositary Receipt;米国預託証書)にも当てはまります。
簿価とは別に株価という時価があるというのは個人的には一種の矛盾のようなものを感じますが、
簿価とは異なる通貨建ての株価があるというのは完全に矛盾だな、と思いました。

 

 


深セン証券取引所サイトより

 

B-Share 
 
>B-shares are foreign capital shares denominated in RMB, subscribed to and traded in HK dollars.
>In October and November 1991, CSG Holding and Shenzhen Properties & Resources issued B-shares
>to foreign investors respectively. Up to date, 54 B-share companies are listed on SZSE.
ttp://www.szse.cn/main/en/Products/Equity/Bshare/

 


【参謀訳】


B株
 
B株式は人民元建ての外国資本用株式のことであり、香港ドル通貨にて申し込み及び売買がなされています。
1991年の10月及び11月に、それぞれCSGホールディングス社及び深セン・プロパティーズ・アンド・リソーシズ社が
海外の投資家に対しB株式を発行しました。今日では、54の会社のB株式が深セン証券取引所に上場されています。

 

 


海運を売却し造船に絞る、STXグループ[製造]

韓国  STXグループは12日、事業構造の改編と安定した財務構造の拡充……
(NewsNetAsia 2012年12月14日(金曜日))
ttp://news.nna.jp/free/news/20121214krw013A_lead.html

 

 


【コメント】
There is the company which selects vertical integration and there is the company which selects vertical separation.
(垂直統合を選択する企業もあれば垂直分離を選択する企業もある。)

 

 


ヴァーレの海運戦略は輸送手段にあり、保有にはない

【ロンドン】ブラジル鉱業大手ヴァーレ(NYSE:VALE)(VALE5.BR)は6日、同社の海運戦略は船舶群の保有でなく、
船舶利用を通じて中国市場の機会を有効に活用することにあると明らかにした。 ...
(ウォール・ストリート・ジャーナル  December 7, 2012)
ttp://jp.wsj.com/article/TPWSJJAP0020121213e8c7001ff.html

 

 


【コメント】
There is the marine transportation company which holds ships and there is the one which does not.
(船舶群の保有を行う海運会社もあればそうしない会社もある。)

 

 


【補足】
韓国のSTXグループは、造船会社でありなおかつ海運業も手がけている会社です。
このたび、海運業を手がけるグループ会社を売却し造船業に集中する方針のようです。
韓国のSTXグループはかつては造船業と海運業が強力に垂直統合した企業でしたが、
このたびグループ戦略として垂直分離を行うことにしたようです。

 

一方、ブラジルのヴァーレは、そもそも鉱業を手がける会社です。
基本的には鉱業専業と言ってよいと思います。
ただ、鉱業には海運はつきものです。
鉱業会社にとっては、各国への海運業務も自社で手がけるか、海運は海運専門会社に任せるかは戦略的に判断が分かれるのでしょう。
自社で海運業務も手がけるのなら、それは鉱業会社にとって垂直統合を意味します。
また、海運は海運専門会社に任せるのなら、鉱業と海運業務とは垂直的に分離したままです。
ブラジル鉱業大手ヴァーレは、船舶群の保有を行うことなく、海運専門会社の船舶を利用して各国への輸出を行っていく、
という海運戦略を選択したようです。

 


 


(参考記事)


【社説】大企業までリストラする韓国の非常経営時代
(中央日報 2012年12月14日16時54分)
ttp://japanese.joins.com/article/991/164991.html


>財界13位のSTXグループも同日、主力会社STXパンオーシャンの売却方針を発表した。
>海運と造船が主力のSTXでパンオーシャンは海運の中枢会社だ。
>以前から資金難に苦しんできたSTXはすでにSTXエネルギーや重工業など主力会社の株式売却計画を発表していた。

>STXと東洋は資金繰り危機を克服するために核心事業まで売却するという点に問題の深刻性がある。

 



【コメント】
自分の力で事業再生に取り組む企業は強い。
政府保証におんぶに抱っこのどこかの国の企業達とは大違い。
私は日本人として日本企業の経営に貢献していければとは思っておりますが、
悔しい限りですが韓国企業は今後とも力強い成長が続くものと思います。

なお、記事中には「法定管理(企業再生手続き)」について書かれています。
日本でも韓国でも同じような法手続きになると思いますが、
日本では会社更生手続きに入って会社清算を行わなかった事例は一例ないことを申し添えます。
会社清算を行わなければ債権者への弁済に充てることができないと理解してもよいかと思いますし、
また、会社清算を行わなくても債権者へ弁済を行うことができるのであればはじめから会社更生手続きに入る必要はない、
という言い方もできるかと思います。
会社更生手続きと会社清算は必ず(”必ず”というより”当たり前過ぎる”というべきでしょうか)セットです。
言うまでもありませんが、会社清算とは100%減資のことです。

 

 

 


基本的には本業に集中、これが企業の一つのあるべき姿だと思います。
まあそこまで自信があるというのなら、垂直統合その他の大きな戦略的意思決定もよいとは思いますが。
ビジネスというのは一定のリスクが存在するものであり、100%の成功を分かった上で行っていくものではありません。
失敗するという一定のリスクを背負った上でビジネスというのは行っていくものです。
しかし、一つだけ忘れてはならないことがあります。
それは、ビジネスはギャンブルをする場ではない、ということです。

 

 

まとめますとこうなるかと思います。

 

There is the side business the company cannot afford to take, and there is the side business the company cannot afford not to take.
(手を出すわけにはいかない本業外もあれば手を出さないわけにはいかない本業外もある。)


There is no substitute for concentrating on its principal business.
(本業集中に勝る戦略はない。)