2012年12月18日(火)
【コメント】
テレビ販売の急激かつ極端な落ち込みにはどの家電量販店も苦しんでいると思います。
しかし、その悪影響はテレビメーカーよりは小さいのは間違いないでしょう。
その理由は生産設備と棚卸資産の有無です。
家電量販店は小売業です。
仕入れて販売することが基本になりますから、少なくとも生産設備は一切保有していないわけです。
また、仕入れの際一定の将来に対する販売台数見込みは行うとはいえ、「完成品のみ」の仕入れですから
店頭での売れ行きが思わしくないなと思ったらすぐに仕入れをやめることができますし、
少なめに仕入れておいて在庫がなくなればメーカーからの取り寄せという手段も取れます。
テレビ販売が落ち込んでも、売上高の減少という悪影響のみですむわけです。
それに対してメーカー側は何と言っても生産設備を保有しています。
生産設備の減価償却費は生産台数・販売台数に関わらず毎期一定額必ずかかります。
また、テレビ製造に必要な数多くの部品類も将来予測を行ったうえで仕入れなければなりません。
テレビ販売の将来予測が外れると、完成品のテレビ在庫のみならず、仕掛品や部品類の在庫も抱えることになりますし、
生産設備の減価償却費も同じだけ負担しなければなりません。
以前、棚卸資産を削減する方法は売り上げしかない、と書きましたが、
テレビメーカーの場合は卸から小売りまでの家電流通網が完全に確立していますから、独自の販売網を構築できないのです。
例えば、テレビメーカーが抱えている大量の完成品在庫をネット通販で格安で販売しようと思っても絶対にできないのです。
なぜなら、既存の卸から小売りまでの家電流通網と直接的に競合することになるからです。
今までもそしてこれからもずっと取引を行っていく取引先と競争する形になってしまいますからネット販売は絶対にできないことなのです。
そういうことを考えていきますと、現在のテレビ販売の落ち込みは、
メーカーにとっては単なる売上高の低迷のみではすまない状況になっているのです。
2012年12月18日(火)日本経済新聞
東芝、個人向け社債 3年ぶり 数百億円規模に 来年1月
(記事)
【コメント】
見出しは普通社債についてですのでそれは何の問題もないのですが、
記事中にはコマーシャル・ペーパーについて書いてありましてそちらが気になりました。
コマーシャル・ペーパーというのは純粋に日々の資金繰りのためだけに発行するものです。
長期か短期かで言えば、まさに「超短期」なわけです。
発行から償還まで最大でも数ヶ月未満でしょう。
逆に言えば、ほんの1〜2ヵ月間に必要となるだけの最低限のつなぎの資金を調達するためにコマーシャル・ペーパーを発行するわけです。
東芝ほどの大企業の規模になっても短期のつなぎだけに必要となる短期資金は1000億円にも満たないわけです。
つなぎのためだけに資金を調達して数ヶ月もしないうちにすぐに返す、とだけ聞くと
日々の運転資金のためにほんの数ヶ月間短期借入金を銀行から借り入れるのと何が違うのかと思われるかもしれませんが、
実はコマーシャル・ペーパーと銀行からの短期借入金と全く同じです。
直接金融か間接金融かの違いしかありません。
支払金利にも事実上差はありません。
敢えて言うなら、銀行からの短期借入金だけで事足りる話であって、コマーシャル・ペーパーなどわざわざ発行する話ではないのです。
東芝はメーカーです。
ですから設備のための長期資金が必要なのは分かりますが、短期資金の調達手段を多様化するというのはよく分かりません。
それに、短期資金の調達手段をわざわざ考えなければならないというのは、そもそも短期の資金計画に問題があることを示しているわけです。
我が社はコマーシャル・ペーパーも発行できるぞ短期社債も発行できるぞこんな有価証券も発行できるぞ、
というのはただ単に資金計画のお粗末さを宣伝しているようなものです。
私は今までに数え切れないくらい会計が大切だ簿記が大切だと言ってきましたが、極端な言い方をすると、
資金面に関して言えば、一番の優良企業というのは経理部も財務部も要らない企業だ、とも言えるわけです。
2012年12月18日(火)日本経済新聞
「スイカ」など各地のIC乗車券 来年3月から全国相互利用 電子マネー、最大手に匹敵
銀座線、全駅を改装 東京メトロ、10年で500億円 85年の歴史と先端機能共存
(記事)
公共交通機関事業者達はカードの相互利用に前向きなのに電子マネーを発行している小売業者達はあまり前向きでない理由を敢えて言うなら、
公共交通機関事業者同士はあまり競争をしていないが、小売業者同士は激しい競争をしているから、ということになると思います。
分かりやすく言うと、JR東日本とJR西日本は競争をしていないが、
セブン&アイホールディングスとイオンとは激しい競争をしている、ということです。
公共交通機関事業者発行のカードが相互利用可能になるのだったら小売業者発行のカードも簡単に相互利用可能になるだろう、
とは経営上はならないのだと思います。