2012年12月10日(月)



わが「心の師匠」の一人に元会計士の方がいらっしゃって、今、50代半ばの彼が20代のばりばり会計士だったころの話。

お客様との打ち合わせで、「こういう仕訳切りたいんだけど」と言われると、つい「あ、それ、無理です」と反応し、
「こんな会計処理はできるのかな?」と言われれば、「ああ、ダメですねぇ」と答えてしまったのだそうです。

しばらくは辛抱強く相手をしてくださっていたお客様が、とうとうキレて、

「私たちは、会計に関しては素人だ。だから、仕訳的にできるかどうかなんかわからない。でも、”したい”ことはある。
あなたたち会計士は、私たちが”したい”ことをどう実現するかを考えるのが仕事ではないのか。
”こうすればできる”とか”こういう風に条件を変更できませんか?”とか言ってくれれば、こちらも考える。
どういう風に問題解決をするか、共に考えてほしいと思って、こうやって話をしているのだ。

だから、二度と”できない”と言うなっ!」

こんな風に怒鳴られたのだそうです。

20代若手会計士の彼は、これで「はっ」と目が覚めて、以来、
「無理です、ダメです、できません」という言葉を口にしないように気を付けたと言います。

お客様に教えられた、と。

そして経営コンサルタントになろう、と。

 

 



なぜ「無理です、ダメです、できません」と言ってしまったか、というと、「会計士視点で物事を見てしまったこと」に加え、
「面倒なことが自分に降りかからないように、という防衛本能が勝手に動いてしまうこと」が原因だった、と話してくれた記憶があります。
(この話を聞いたのがすでに20年くらい前の話なので、記憶は断片的なのですが)

会計士に限らず、相手に何か言われた時、「ああ、無理」「駄目」「できません」と反応してしまうことはあると思います。
上司に何か言われた時とか。

「こうならできます」と提案するより、まず拒絶してしまう・・・(本能的に)。

でも、相手の立場になれば、「無理、ダメ、できない」と言われたら、困惑するわけですね。自分が言われたら、やはり、嫌だもの。

これ以外に、「無限定適正意見出せません」。これも案外言ってしまうかも。

「それは無限定適正意見出せません」。
「そんなこと聴いているんじゃないんだけどー」と。

「無限定適正意見出せないなのはわかるんだけど、なぜ出せないことになっているのか」とか
「どうすれば無限定適正意見を得られるのか」とか「変更するとどうなるのか」とか、はたまた、「金融庁は何と言ってるんですか」とか
「なぜ、その部分が気になったのか」といったことをもう少し聴いてくれればいいのに、と思うのですね。

監査法人の会計士の方が大勢集まる講演や研修で、「監査先企業の方が嫌がることは、”無理です、ダメです、できません”と
”無限定適正意見出せません”なんですよ」とお話すると、会場からどよめきのような笑い声が上がります。

皆さん、心当たりがあるようです。

 

 

 

 



元ネタ

 

「無理です、ダメです、できません」+「仕様です」で済ませないように・・・(追記あり)
田中淳子の”大人の学び”支援隊!  人材育成の現場で見聞きしたあれやこれやを徒然なるままに。
(ITMedia オルタナティブ ブログ 2012/01/25)
ttp://blogs.itmedia.co.jp/tanakalajunko/2012/01/post-cfed.html

 

 

 


【コメント】
面白かったですか?
とても改変したとは思えない出来になりました。


文学部教育学科卒の元システムエンジニアのコラムです。
大学での専攻と職務内容(システムエンジニア)とが大きく異なる(さらには女性です)のでこのコラムが目に止まりました。
公認会計士を目指す人はやはり経済学部と商学部(経営学部)が非常に多いわけですが、
次に多いのは文学部だと思います。
法学部で公認会計士を目指す人は非常に少ないように思います。
理系では、理学系で公認会計士になる人は一定数いますが、工学系で公認会計士になる人は非常に少ないように思います。

 

 



社員や従業員のことを、「人材」といったり、はたまた「人財」といったりします。
いつから一般にそういうようになったのかは知りませんが、20年くらい前であればあまりそうった表現はしていなかったのかもしれません。
単なる労務管理から「ヒューマン・リソース・マネジメント」へ、
そして、上司と部下の飲みュニケーションから全社的な若手育成制度である「OJT支援」へと
企業の人材育成のあり方というのはここ20年間で大きく変わってきたのかもしれません。
企業の業績の頭打ちが長年続くにつれ、人事制度に問題があるのではないか、という意見が社内から出てくることもあるでしょう。
年功序列でいいのか、我が社の人事体系はこれでいいのかと、悩み始める企業もたくさんあったでしょう。
アメリカの人事制度であればいいのかと米国企業やMBAに範を求める企業もあったでしょう。

時代は混乱し続け その代償を探す
企業はつじつまを合わす様に 人事制度の変更にはまってく
他社の真似はすんな 御社は御社でいい
経営の為のレシピなんてない ないさ

というのはMr.Childrenの「終わりなき旅」の改変ですが。


企業において、人材育成というのは今後とも永遠に終わりのない課題だとは思います。
仕事はしてみないと分からない部分もありますし、現場で毎日仕事をすること自体が一番の研修ということもあるでしょう。
また、座学といいますか、机に向かって会社や業績管理上の勉強をする社員研修も大切です。
現場での仕事と机に向かう勉強の両方が人材育成においては大切だと思います。

ただ、ありとあらゆる種類の人材育成において、究極的に一番大きくその効果を左右するものは、結局、

「本人の自覚や向上心」

なのだと思います。
「本人次第」、それを言っちゃあ終しめえよ、かもしれませんが、でもやっぱりそんな気がします。
まあ後は、自分自身や周りを振り返ってもそうですが、
中学高校時代の受験勉強と大学入学以降の各種の勉強がその人の成長を左右すると思います。
「サラリーマンは気楽な稼業」と言われた時代もかつては現にあった(一部は今でもそうかもしれません)のだとは思いますが、
「気楽=自分が日々納得のいく人生」かと言うとそれはまた別かもしれないなと思います(これは人生論ですが)。