2012年11月17日(土)
11月15日(ブルームバーグ):米ナイキは株式1株を2株に分割するとともに、四半期配当金を17%引き上げると発表した。
(ブルームバーグ 更新日時: 2012/11/16 07:00
JST)
ttp://www.bloomberg.co.jp/news/123-MDJUH56K50YI01.html
【コメント】
ブルームバーグ(日本語)の記事はこれだけでした。
元の英文の記事やプレスリリースを読めば配当がいくらからいくらへ増えたのかはっきりすると思いますが、
敢えてまずはこの一行からのみ考えてみましょう。
前期の四半期配当を100円だったとしましょう。
株式分割前からナイキ株式をずっと保有し続けている株主は当四半期合計いくら配当を受け取ることになるでしょうか。
この一行から考えられるのは2通りあります。
ケース1:100×2×1.17=234円
ケース2:100×1.17(×2÷2)=117円
かけ算の順番や()のあるなしに関しては自信がないのでかける順番等は間違っているかもしれませんが、最終的な答えはあっています。
ケース2の場合はどういう意味かと言うと、
「1株を2株に株式分割するのですが、株式分割前の1株当たりの配当金額を前四半期の1株当たりの配当金額の17%増とします。」
という意味です。
株主が受け取る配当金額は合計、株式分割前の株式数を基に計算しますので、株式分割はなかったものと考えて
単純に17%増しですから、前四半期1.17倍で117円です。
上の計算式の
(×2÷2) の部分はなくてもよいかもしれません。
株式分割はしたがそれは当四半期の配当金額の計算上キャンセルされる、という意味で書いたのですが。
ところで、株式分割の是非についてですが、もちろん最後はケースバイケースの話になりますが、
私個人としては株式分割はあまり行うべきではないと思います。
株式分割は会社の財務体質には何の影響も及ぼさず株主の手元の株式数のみを増加させる意味しかないからです。
今後も株式分割前と同じ金額だけ1株当たりの配当を支払うとなると、ただ単に配当金の支払い負担が大きくなるだけだからです。
それなら、株式分割は行わずその期のみ増配した方がよいと私は思います。
ナイキの場合はどうでしょうか。
ナイキは5月決算ですので、この11月が第2四半期の末日です。
ナイキのプレスリリースを見てみましょう。
該当部分を抜き出します。
November 15, 2012
NIKE, Inc.
NIKE, Inc. announces 17 percent increase
in quarterly dividend and two-for-one stock
split
ttp://www.nikeinc.com/news/nike-inc-announces-17-percent-increase-in-quarterly-dividend-and-two-for-one-stock-split
>In addition, the Board of Directors declared a quarterly cash
dividend
>on the company’s outstanding Class A and Class B Common Stock of
$0.21 per share, on a post-split basis,
>payable on December 26, 2012 to
shareholders of record at the close of business on December 10, 2012.
>The
dividend represents a 17 percent increase over the previous split-adjusted
quarterly rate of $0.18 per share.
【参謀訳】
株式分割に加えて、取締役会は発行済みA種普通株式及びB種普通株式の四半期配当の増配を発表いたします。
株式分割後を基準にして1株当たり0.21ドルを弊社四半期末日である2012年12月10日時点の株主様に対しお支払いいたします。
配当開始日は2012年12月26日です。
この配当額は、株式分割修正後である1株当たりの前四半期配当額0.18ドルから17%の増加であることを意味しています。
プレスリリースを読みますと、まず株式分割を行い、そしてその後四半期配当を行う、という流れは確かなようです。
配当額は1株当たり0.21ドルとのことです。
これが前四半期に比較して17%増だ、とプレスリリースでは言っています。
ここから問題なのですが、前四半期は1株当たり0.18ドルの配当だった、と書かれています。
そしてこの1株当たり0.18ドルという数値は
split-adjusted
(株式分割修正後)の数値であると読めます。
1株を2株に株式分割したと考えたら前四半期の配当は1株当たり0.18ドルだったと言っているのだから、
株式分割をしていない実際の前四半期の配当額はこの数値の2倍の1株当たり0.36ドルだったのではないでしょうか。
確かめてみましょう。
確認しようと思ってナイキのサイトのプレスリリースを上から順番に見ていきますと、そのままのタイトルのプレスリリースがありました。
August 13, 2012
NIKE, Inc.
Nike declares $0.36 quarterly
dividend
ttp://nikeinc.com/press-release/news/nike-declares-036-quarterly-dividend--3
>NIKE, Inc. (NYSE: NKE) announced today that its Board of Directors
has declared a quarterly cash dividend of $0.36
per share on the company’s
outstanding Class A and Class B Common Stock payable on October 1, 2012,
to
shareholders of record at the close of business on September 4, 2012.
【参謀訳】
弊社は本日、取締役会が発行済みA種普通株式及びB種普通株式に対し1株当たり0.36ドルの四半期配当を行うことを宣言したことを
お知らせいたします。配当開始日は2012年10月1日であり、弊社四半期末日である2012年9月4日時点の株主様に対しお支払いいたします。
結論を言いますと、一番最初の書きました想定で言えば、株主が当四半期に受け取る配当の計算式は「ケース2」ということになります。
会計や経営の世界では、高校や大学で習う難解な数式や高度な数学的手法は出てきません。
せいぜい、中学校までに習う加減乗除と簡単な方程式くらいでしょうか。
しかし、その基礎的なお金の計算ができない人が大勢いるような気がします。
本当に基本が大切だな、初等教育に本当に力を入れないといけないな、と改めて思いました。