2012年9月27日(木)



サーベラスから保有株式売却の検討始めると連絡=あおぞら銀新社長

 [東京 27日 ロイター] あおぞら銀行の新社長に就任した馬場信輔氏は27日、就任会見で、
大株主の米投資ファンド、サーベラスから同日朝、保有する同行株式の売却の検討を始めるとの連絡を受けたと語った。
あおぞらが実施する自社株買いに応じるが、その他の具体的な売却に向けたスケジュールや手法など「それ以上の内容は聞いてない」とした。
あおぞら銀行は、同日開いた臨時株主総会で、すでに公表している公的資金の分割返済計画が承認されたと発表。
ブライアン・プリンス社長は、公的資金の返済にメドを付けたとして代表権のある会長に退き、馬場副社長が社長に昇格することになった。
馬場社長は、あおぞら銀の前身の旧日本債券信用銀行入行で、公的資金注入後、初の生え抜き社長となる。
あおぞらは8月、公的返済に向けて政府保有の優先株1794億円を最長10年で分割返済すると公表。
合わせて発行済み株式総数の20%(3.3億株)の自社株買いや配当性向の引き上げも発表している。
サーベラスはまず、あおぞらが10月に行う3.3億株の自社株買いに応募する。
現在、現在8億2100万株、議決権ベースで約55%の株式を保有している。
馬場社長は会見で、顧客基盤の拡充を強調。M&A戦略については「まずは公的資金の返済計画をしっかり実行する。
将来のオプションとしてはあり得るが、現時点で具体的なものはない」と語った。
(ロイター 2012年 09月 27日 18:38 JST)
ttp://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPTYE88Q04S20120927

 

 

 

あおぞら銀行(JP:8304)

232  -23(-9.02%)
始値: 240 高値: 241 安値: 222
前日終値: 255 出来高: 21,917,000

「再上場来の値動き」

 


 


(チャート図の書き込みやコメントを書くに当たり参考にした記事等)

 

 

米サーベラス、あおぞら銀へのTOBが完了

 あおぞら銀行は4月8日、筆頭株主のアメリカの投資ファンド、サーベラス・キャピタル・マネジメントが3月4日から実施していた
同行株式に対するTOB(株式公開買い付け)が成立したと発表した。
 3月4日から4月7日までに、発行済み株式の8%にあたる1億3200万株の買い付け予定株数を上回る3億8871万2716株の応募があり、
普通株式1株あたり325円で11日付で買い付ける。これにより、サーベラスの議決権ベースの保有比率は37.49%から45.49%に高まることになった。
 あおぞら銀行は元日本債券信用銀行。1998年12月に経営破綻し一時国有化され、2000年にソフトバンクなどから成る投資グループに売却され、
2001年、あおぞら銀行に行名変更した。その後2003年に筆頭株主だったソフトバンクが、保有する同行の全株式をサーベラスグループに売却、
2008年3月3日に普通株式の約8%を上限にTOBすると発表していた。今回のTOBはこの発表に基づいたもの。
(MONEYzine 2008年04月08日 19:18)
ttp://moneyzine.jp/article/detail/46047

 

 

個人のサイトのようですが、記事を参考にさせていただきました↓。

ttp://www.knak.jp/FYI/kinyuu.htm

 


 


【コメント】
>あおぞらは8月、公的返済に向けて政府保有の優先株1794億円を最長10年で分割返済すると公表。

>サーベラスはまず、あおぞらが10月に行う3.3億株の自社株買いに応募する。

 

優先株1794億円を最長10年で分割返済するとのことですので、この一年間で返済するのは約179億円としましょう。
また、3.3億株というのは金額に直すと、今日の終値で計算しますと、766億円になります。
普通株式と優先株式の二種類の株式の買い戻しということになりますが、どちらも会計上は「自己株式の取得」ということになりますので、
株主資本を減少させる順番は、その他資本剰余金→利益剰余金となります。
簡単に言いますと、その他資本剰余金と利益剰余金がなければ自己株式の取得はできないわけです。
あおぞら銀行の個別貸借対照表(増資や自己株式の取得は「単体」ベース)を見ますと、2012年3月期の時点で利益剰余金が1639億円あります。
優先株式を179億円分、普通株式を768億円分買い戻すとしますと、合計945億円のその他資本剰余金及び利益剰余金が必要になりますが、
一応2012年3月期の時点だけで言えば株式の買い戻しは可能とは言えます。

 

2011年度(平成24年3月期) 有価証券報告書
ttp://www.aozorabank.co.jp/ir/library/2011/pdf/79_yuka_01.pdf


個別財務諸表 個別貸借対照表 純資産の部
(157/181ページ)

 


 



ただ、長い視点で見ますと、普通株式の自社株買いよりも公的資金である優先株式を返済することをまずは優先させるのは筋だと思います。
あおぞら銀行への公的資金注入の際の投資契約書の内容は存じ上げませんが、一般的にはこのような優先株式の場合、例えば、
「配当の支払いは優先株式が優先であり、優先株式に十分な配当が支払われていない場合は普通株式へは一切配当を行ってはならない」
といった条項が付いていたりします。
優先株式は配当を受け取る権利が非常に強いわけです。
また、このような考え方を押し進めますと、
「自社株買いをする際は、優先株式をまずは全額返済してからでないと普通株式は一切買い戻しを行ってはならない」
という条項にも発展していくわけです。
この理由は、優先株式というのは普通株式に転換するまでは議決権がありませんので、このような形で自分の権利を守っているわけです。

このたびのあおぞら銀行への公的資金注入の際の投資契約がどうだったかは知りません。
しかし仮に投資契約書に配当や自社株買いは優先株式が優先という内容が書かれていなかったのだとしても、
既存株主の利益を守ること(希薄化や議決権割合の大幅な異動等)を考えれば、やはり優先株式の全額返済を優先すべきではないでしょうか。
まずは公的資金(優先株式)を全額返済、普通株式の自社株買いはその後にすべきだと思います。
普通株式を買い戻すということは、それだけ優先株式を返済するための原資が減るということです。
経営の観点からではなく、公的資金という観点から見ても、優先株式の返済を優先すべきだと思います。

 


 



いくつか補足します。

 


2008年3月の公開買付は経ていますが、それでもサーベラスはあおぞら銀行株式を1株平均70円程度で取得している計算になると思います。
仮に普通株式の自社株買いも行われるとして、今日の終値232円で売却するとしても十分な売却益は得られるかと思います。
まあ、優先株式の返済が優先されるべきだとは思いますが。

 

それから、あおぞら銀行が自社株買いを行う時には、株式公開買付を行うことになると思います。
これは普通株式の話ですが。
株式公開買付にサーベラスのみが応募できるのではなく、全株主が自由に応募してよいわけです。
すると、サーベラスが保有株式を売却する目的であおぞら銀行が株式公開買付を行っても、
サーベラスは当初予定していた十分な株式数を売却できないかもしれない恐れが出てくる点には注意が必要です。
それから、優先株式の返済についてですが、優先株式を政府に返済する際は恐らく株式公開買付は行わない、と思います。
今までの銀行への公的資金(優先株式)の返済の際に政府は株式公開買付を行った、という話は一切聞きませんよね。
優先株式の売買(自社株買いや他者への売却)の際には株式公開買付は必要か不要かは金融商品取引法に何と書いてあるかは知りませんが、
仮に必要だとすると(記憶によく残っているのはパナソニックの三洋電機の優先株式への公開買付)、
政府が公的資金の返済を受ける際にも株式公開買付を行わなければならなかったはずです。
政府は銀行から公的資金の返済を受ける際に株式公開買付を行っていませんから、
今までの全ての公的資金返済が金融商品取引法違反になります。
誰か金融商品取引法違反のかどで政府を訴えて下さい。
証券取引等監視委員会何をしている。金融商品取引法違反行為の勧告は?
金融庁は財務省に対し課徴金納付命令を出しなさい。
金融商品取引法違反の責任の所在は歴代財務大臣にあります。
証券取引等監視委員会は当時の財務大臣に対し聴聞を行って頂きたいと思います。
まあ、直前の上記5行↑は冗談ですが。

 

 



自社株買いの際の会計処理の話をします。
自己株式の取得の会計処理方法は簡単に上で書いた通りですが、これは一つの提案になりますが、
「政府保有の優先株式を返済する場合は直接的に資本金及び資本準備金を減少させる」会計処理方法にすべきだと思います。
その理由はいくつかあります。
優先株式というのは確かに資本ではありますが、負債の特徴も持っていまして、資本と負債の中間の性質があります。
優先株式の権利内容は投資契約により様々ではありますが、配当の支払いが負債の利払いと同じ様に義務に近い場合があります。
また、政府が優先株式で出資する場合というのは議決権や配当・売却等の利益目的というわけではなく(結果として配当は受け取りますが)、
資本基盤の強化、という側面が強いのです。
あくまで「一時的に」資本金及び資本準備金を増強する手助けをするだけ、というのが本来の目的のはずです。
企業は永続することを前提にしたゴーイング・コンサーン(継続企業)ですが、
政府からの公的資金は決して長期間を前提にはしていないのです。
そのことを考えますと、企業が政府に公的資金(優先株式)を返済した暁には、
「公的資金(優先株式)を受け入れる前の状態に貸借対照表を戻す」ということが大切になってくるわけです。
優先株式で増資した時は資本金と資本準備金を増加させたが、返済の時は利益剰余金で返済する、というのは
あくまで「一時的な」株主資本に過ぎない優先株式の性質を考えると非対称な資本の払戻しではないでしょうか。
普通株式に払戻し期間はありません。しかし、政府からの優先株式には払戻し期間があるのです。
この違いは大きいと思います。
普通株式と特殊ともいえる政府からの優先株式とで払戻しの際の会計処理方法が同じなのはおかしいという考え方はあろうかと思います。
まあ、増資の際は資本金及び資本準備金、払戻しの際は利益剰余金というのは「資本充実の原則」からすると望ましいかもしれませんが。

 


最後に、今までの議論では貸方の話ばかりをしましたが、普通株式であろうが優先株式であろうが自社株買いの際はもちろん現金がいります。
しかし銀行の場合は借方のことは何の心配もいりません。貸し出し先がなく、国債等の形で現金は山のように眠っていますから。
考えようによっては、貸し出し先がなくて現金が寝ているのに優先株式の形で公的資金を受けている状態というのは何か矛盾のようにも思えますが。
まあ、現金が大量に寝ていることと自己資本が厚いはイコールではないのですが(特に銀行の場合は)。