2012年8月22日(水)
[北京 21日 ロイター] 欧州連合商工会議所は21日発表した調査リポートで、中国が進める特許取得に向けた野心的な取り組みが、
向こう数年で「イノベーション」の質低下につながる危険があると警告した。
中国は国としての特許件数の目標を設定することで、「世界の工場」から「世界のパイオニア」に転身を図ることを模索している。
この目標により、中国は昨年に特許出願件数で米国を上回った。
欧州連合商工会議所によると、中国は2011年に160万件超の特許出願を行ったが、特許の質として「新しい発明」といった
最高位に分類されるものは32%にとどまる。欧州連合商工会議所の調査は、中国の技術革新の潜在力は「目覚ましい」としながらも、
実際の案件については「過剰に宣伝されている」と指摘した。
ディルク・モーネンス事務局長は「(特許出願の)急拡大は、特許の質や種類を犠牲にしており、正しい方向性ではない」と述べた。
中国は2015年までに年間200万件の特許割り当てを目指しており、この目標を達成するために国営企業や当局、学術関係者に
金銭的なインセンティブや実績評価が与えられるため、質の低い特許出願に駆り立てる面もある。
発明に加えて、中国はデザインや「実用新案」と呼ばれる、既存製品を改良するものの技術的な革新には滅多につながらない発明についても
特許を付与している。米国では実用新案の制度はないが、ドイツなどの一部の先進国ではこの制度が導入されている。
調査によると、ここ数年で出願された中規模もしくは大規模な中国の国営企業による特許のうち、
より低い部類に分類されるデザインか実用新案が65%を占める。調査は「創造性は駆り立てたり、『強制』したりすることはできない。
ただ育むことだけだ」と指摘した。少なくとも20カ国がイノベーションについて、中国よりも大きな潜在力を持っているとしている。
(ロイター 2012年
08月 22日 18:57
JST)
ttp://jp.reuters.com/article/worldNews/idJPTYE87L04V20120822
【コメント】
特許は英語で patent ですが、手元の辞書を見ますと実用新案権は utility model rights
と載っています。
他には、patent for a new practical device[design]、 a new design for
practical use、
という訳が載っています。
記事には米国には実用新案の制度はないとのことですが、これら訳は一対一に対応した訳ではなく説明的な訳ということでしょう。
特許制度や実用新案制度は国によって異なりますから、同じ発明でも、
ある国では特許に分類され別の国では実用新案に分類されることがあるわけです。
そうしますと、この国では特許が何百万件出願されているといっても他の国ではそれはそもそも特許ではない、ということになりますから、
単純な比較が全くできないわけです。
会計基準でも同じですが、比較するのなら基準を完全に同一にしないと正確な比較になりません。
また、特許の数を増やす目的があると言っても、基準を変えて特許の数を増やすのなら程度の低い”特許”が増えるだけですので
それには何の意味もないわけです。
これも会計基準と同じですが、目的達成のために基準の方を変更するのは間違いです。
目的達成のためにそのたび毎に基準を変更するのであればはじめから基準はいりません。