2012年8月21日(火)



バフェット氏、地方債のCDS契約を5年前倒しで解除=WSJ
     
 [20日 ロイター] ウォールストリート・ジャーナル紙によると、米著名投資家ウォーレン・バフェット氏が率いる
投資会社バークシャー・ハザウェイは、地方債のデフォルト時に損失を保証する
クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)契約を5年前倒しで解除した。
 取引に詳しい関係者の話として報じた。
 バークシャーは今月規制当局に提出した申請書類で、地方債82億5000万ドルを保証するCDS契約を解除したと表明。
 同紙によると、契約の早期解除を受け、一部の投資家の間で地方債のリスクを懸念する声が強まっている。
 同紙によると、バークシャーが契約を解除したのは米国の十数州の地方債を保証するCDS。
経営破綻前のリーマン・ブラザーズと2007年に契約したものという。
 バフェット氏はリーマン側との契約解除の詳細にはコメントを控えており、最終的に契約で利益が出たか損失が出たかは不明という。
 バークシャーのコメントはとれていない。
(ロイター 2012年 08月 21日 13:05 JST )
ttp://jp.reuters.com/article/domesticFunds/idJPTK818310420120821

 

 

 

 

バフェット氏が米地方債CDSを清算、自治体の財務に不安か

 米国の著名投資家ウォーレン・バフェット氏率いる保険・投資会社バークシャー・ハザウェイが最近、
以前発行した82億5000万ドル(約6520億円)に上る地方債のクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)を清算したことが分かった。
(ウォール・ストリート・ジャーナル 2012年 8月 21日  13:24 JST)
ttp://jp.wsj.com/Finance-Markets/node_498008

 

 

 


【コメント】
記事のどの部分がネタでどの部分が本当か分かりませんが、
バークシャー・ハザウェイがこのクレジット・デフォルト・スワップを結んだ相手が
経営破綻前のリーマン・ブラザーズだったのだとすればもう契約解除も何もないと思います。
そのクレジット・デフォルト・スワップ契約はリーマンブラザーズの清算と同時に自動的に破棄される形になります。
記事を読みますと、リーマン・ブラザーズが購入した地方債に対してバークシャー・ハザウェイが保証を行ったということのようですが、
リーマン・ブラザースが清算されたのであれば保証料を支払う人もいないわけですから、
その時点で自動的にクレジット・デフォルト・スワップ契約はなくなると思います。
有料会員サイトなどで期限までに更新の手続きをして会費を払わないと自動的に退会になる、といったことがあるかと思いますが、
それと考え方は同じかと思います。
保証を行う代金を支払う人がいなくなったわけですから、自動的に契約そのものがなくなる形だと思います。
バークシャー・ハザウェイがこのクレジット・デフォルト・スワップ契約により利益が出たのか損失が出たのかですが、
保証していた分に関しては地方債は一つもデフォルトを起こしてはいないと思いますので、
単純に受取保証料の分だけ利益は出ている計算かと思います。

 

 

 



地方債に対するクレジット・デフォルト・スワップについてですが、
アメリカでは州や市といった地方自治体が裁判所にチャプター・イレブンを適用申請するということがあるようですので、
理屈では地方債もデフォルトを起こすことはあるということになると思います。
地方債が仮に地方政府保証付きの場合でも、その地方政府自身がチャプター・イレブンを適用申請するということになりますと、
保証すると言っていた人が保証できなくなったわけですから、地方債保有者には一定額貸倒損失が発生することになるでしょう。
債券の発行者=債券の保証者というケースですが、これもカウンター・パーティー・リスクと言っていいでしょう。
また、このたびのバークシャー・ハザウェイの件についてですが、保証をしている側ではなく保証を受けている側が清算されましたが、
これも広い意味ではカウンター・パーティー・リスクと呼んでもいいと思います。
本来の意味とは異なりますが、予定していた保証料を受け取れなくなるリスク、と言えばよいでしょうか。
日本の場合、地方債を発行していた地方自治体が財政再建団体入りした場合はその地方債は一応理屈の上ではデフォルト、
ということになろうかと思います。
財政再建団体入りしても、アメリカのように民間企業で行うような何らかの法的整理の手続きに入るわけではないのでしょうが、
その地方自治体が国の管理下に直接入る形かと思いますので理屈では債務のカットのようなことが行われるイメージかと思います。
ただ実際には地方債には有形無形の政府保証が付いているようなものだと考えてよいのでしょう。
ちなみに地方交付税交付金がなければ東京都以外の全都道府県が今すぐに財政再建団体入りする地方財政状況なわけですから、
形だけの地方自治はやめるべきではないか、地方税はなくして国税に一本化すべきではないか、という思いはあります。

最後に、このたびの記事を根底から否定してしまうことになりますが、
バークシャー・ハザウェイがクレジット・デフォルト・スワップを引き受けていたということ自体が嘘ではないかと思っています。
バークシャー・ハザウェイが自社が保有している債券について他者とクレジット・デフォルト・スワップ契約を結ぶ
ということはあるかと思いますが、
バークシャー・ハザウェイが他者が保有している債券の保証を行うことはないと思います。
確かにバークシャー・ハザウェイは証券投資の他に保険業も行っているのですが、それはいわゆる通常の保険業のことであり、
ここで話題になっている債券の保証とは根本的に異なるものです。
バークシャー・ハザウェイがクレジット・デフォルト・スワップを引き受けることはしないのではないだろうかと思います。