2012年4月20日(金)
楽天は20日、中国で展開するネット通販モール「楽酷天」を5月末で終了すると発表した。
楽酷天は、中国最大の検索サービス、バイドゥ(百度)との合弁事業で、2010年10月にスタート。
楽天海外進出の大きな期待を担って鳴り物入り開始していた。
楽天は、中国ネット通販市場の競争激化によって思うような成果が上がらず、
抜本的な改善も困難として、バイドゥと協議のうえ、事業撤退を決めたとしている。
中国ネット通販市場への進出では、先にヤフーが、ヤフーチャイナモールを5月17日で閉鎖すると発表している。
ヤフーチャイナモールは、ヤフーのネット通販と中国のネット通販のタオバオとを相互接続し、
日中の消費者が、互いに買い物ができるとして、こちらも2010年6月に、大々的にスタートさせていた。
これにより、日本のネットビジネスの双璧である楽天とヤフーが、ともに中国進出でそろって討ち死にしたことになる。
巨大な中国市場での成長をもくろみ、進出当時、日本での成功モデルを中国に移植すると自満々だった両者だが、
中国の壁は想像以上に高かったようだ。
(東洋経済オンライン 12/04/20 |
23:21)
ttp://www.toyokeizai.net/business/strategy/detail/AC/12fc72bab6eb37e1a3811ded463da8c0/
>2.『楽酷天』サービスの終了時期
>本年5月末(予定)
>
>3.今後の見通し
>本件サービス終了に伴い、当社の平成24年12月期第1四半期において子会社株式および固定資産等の
減損処理などを行う予定ですが、
>決算への影響は軽微と見込んでおります。(当社からの出資額:累計約8.6億円
【コメント】
残念ながら、楽天の中国におけるインターネット・ショッピングモール『楽酷天(Lekutian)』のサービスを終了することに
なったようです。
中国であればアリババが強い、ということでしょうか。
おそらく、中国子会社である『楽酷天(Lekutian)』は清算されるのだと思います。
今年5月末まではサービスを続けるとのことですので、清算するのは今年5月末日(以降)になるでしょう。
しかし、子会社株式の減損処理は平成24年12月期第1四半期において行う予定とのことです。
平成24年12月期第1四半期とは、平成24年1〜3月期のことですのでもう終了しています。
一方、会社清算の取締役会決議は今日4月20日です。
会社清算の取締役会決議は今日4月20日であり会社清算日は5月31日(以降)ということですと、
理屈の上では、子会社清算の影響を織り込むのは「平成24年12月期第2四半期(4〜6月期)」になると思います。
3月末の時点では(仮に頭の中では清算がちらついていたのだとしても)子会社清算は正式に決定していたことではありませんので、
第1四半期に織り込むのは理屈の上では間違いという気がします。
今日4月20日付けの取締役会決議は「重要な後発事象」という位置付けに過ぎないと思います。
ただ、子会社を清算する意思決定とか取締役会決議という以前に、そもそも子会社である『楽酷天(Lekutian)』が
債務超過であるとか債務超過でないにしても大きな赤字続きで黒字転換の見込みは今後も全くない、といった状態であって、
『楽酷天(Lekutian)』株式の価値は3月末時点でゼロであると判断できるということであれば、
3月末に『楽酷天(Lekutian)』株式を価額がゼロになるまで減損処理することは認められると思います。
『楽酷天(Lekutian)』株式が貸借対照表に載っていないと『楽酷天(Lekutian)』サービスを行ってはならない、
ということはありませんし貸借対照表に載っていないことが子会社がなくなったことを意味しているわけでもありませんので。
3月末時点で『楽酷天(Lekutian)』株式の価値はゼロと判断できるということであれば平成24年12月期第1四半期において
『楽酷天(Lekutian)』株式を全額減損処理することは問題ないと思います。
(つまり、本日の取締役会決議が理由で子会社株式を減損処理するのではなく、
それ以前に『楽酷天(Lekutian)』株式の価値は3月末時点でそもそもゼロであるということが理由で減損処理する、という理屈です。)
『楽酷天(Lekutian)』株式の価値は3月末時点でそもそもゼロであるのだとすると、
第1四半期の財務諸表には、「子会社株式減損損失」が単体で載ってきますし、それがそのまま連結でも載ってきます。
ただ、子会社株式を全額減損処理しても、『楽酷天(Lekutian)』という会社自体はまだありますので、
連結ベースでは『楽酷天(Lekutian)』の資産・負債は依然として載ってきます。
仮に3月末に『楽酷天(Lekutian)』の固定資産の減損処理も行う場合は、
「子会社固定資産減損損失」も連結で載ってきます(こちらは単体では載ってきません)。
子会社がまだ存在している状態では子会社株式を全額減損処理しても子会社固定資産減損損失が連結ベースではさらに載ってくるのに対し、
子会社を清算してしまえば子会社固定資産減損損失は(単体はもちろん)もはや連結では載ってこず、
単体上(及び連結上)の子会社株式減損損失だけで済む、
という点は、子会社清算の連結財務諸表(特に連結損益計算書)への影響を考える上で大切なことだと思います。
このことを考えますと、このたび楽天は、平成24年12月期第1四半期(1〜3月期)の決算では何もせず、
平成24年12月期第2四半期(4〜6月期)の決算でのみ『楽酷天(Lekutian)』の清算の影響を計上すればよいのではないだろうか、
という気がします。
そうすれば、連結ベースでは『楽酷天(Lekutian)』の資産・負債が載ってこないというだけで、
後は単体上(及び連結上で)子会社株式減損損失が載ってくるだけで済むからです。
これは連結損益計算書に計上される損失額が少なくて済むという効果があります。
逆に言えば、連結損益計算書の利益額を(もちろん不正な会計操作などということではなく)大きく見せることができます。
つまり、第2四半期でいきなり清算(及びその会計処理を)してしまえば、例えば第1四半期で子会社固定資産減損損失を計上する必要はない、
といったことになるわけです。
要するに、楽天は第1四半期(1〜3月期)決算ではこの件に関しては何もしなくてよいのでは、と個人的に思うわけです。
第1四半期末(3月末)時点で子会社株式の価値がゼロかどうかはひょっとしたら判断が分かれるかもしれませんが、
取締役会決議日及び子会社清算日が第2四半期であることは判断の分かれようがない事実であるということを踏まえれば、
子会社清算の影響は第2四半期決算にのみ織り込むことは何ら間違った会計処理ではないと思います。