2012年3月24日(土)



2012年3月24日(土)日本経済新聞
福岡ドームを取得 ソフトバンク、870億円で 海外公社から
(記事)

 

 

 


「撤退するんじゃなかったの?」――米ウォルマートの慎重すぎる西友再建策

西友を100%子会社化、西友ブランドを続行すると発表した
小売業世界最大手の米ウォルマート・ストアーズに対して、驚きの声が上がっている。
(ビジネスメディア誠 2007年10月25日 08時58分 UPDATE)
ttp://bizmakoto.jp/makoto/articles/0710/25/news025.html

 

 ウォルマートが西友の100%子会社化を目指してのTOBを発表した(10月23日の記事参照)。ウォルマートが株式を
50%以上取得した後も西友の業績不振が続いていたので、撤退論も囁かれていた中での行為に、少なからず驚きの声が上がった。

撤退するんじゃなかったの?

 もともとウォルマートは、西友の株式を段階的に買い増してきた。最初から大半の株式を取得してしまうと、いざ事業を開始して
目論見どおりに行かなくても引き返すに引き返せなくなる。そのリスクを避けるため、ウォルマートは
段階的に買い増す権利を持つというスキームを構築した。これには、買い増さないという選択肢を選ぶことで
西友から撤退しやすくするという狙いもある。
 今考えると、そのような及び腰の姿勢が西友の業績不振の遠因になっていたのではないかと思うが、
撤退論が囁かれていたのには、そういう経緯もあったのだ。

どうやって投資を回収するのか

 追加投資をするからには、ウォルマートが西友から撤退することはしばらくないだろう。
むしろ、より本腰を入れて主体的立場で事業収益の回復を目指すものと思われる。
しかし、店舗の名称の変更はなく、引き続き西友の名で行くという。
 今、西友に求められているのは、新しいイメージによる顧客の奪回であろう。B2C事業※において、日本に店舗を持っていないのに、
日本の消費者にある程度認知されている企業はめったにない。その例外の1つがウォルマートである。
西友の名称をウォルマートに変更し、ウォルマート流の商売を行ったほうが、メリットが大きいのではないか。
海外在住経験者なら「ウォルマート流の店舗で買い物をしたい」と思う人もいるだろうし、
国内で育った人にとっても「海外で大人気のウォルマートで一度は買い物をしてみるか」という気持ちになるだろう。

 

 

 



最大の抵抗勢力は日本の小売業界

 もちろん、名称変更だけで業績が回復できるほど甘いものではないだろう。
しかし「名称すら変更できなくて、日本の小売業という旧態とした業界で他に何を変更できるのだ」とも思う。
名称を変更することで失うものもあるかもしれないが、得るものも必ずあるはずだ。ウォルマートの今までの西友に対する取り組みは、
あまりに慎重すぎはしないだろうか。もっと米国企業らしく、ドライに、そしてドラスティックに変革を巻き起こすことを、
関係者も買い物客を期待しているのではないかと思う。
 海外の小売業の日本進出に当たっては、カルフールのように失敗する企業もあれば、IKEAのように再上陸して成功する企業もある。
成功の方程式は存在しないが、買収の場合は新規出店に比べると必要とされる資金量が圧倒的に大きい。
その分、失敗できない立場にあるゆえに、西友に大きな変革を強いることができないのかもしれない。しかし、それでは本末転倒である。

あっぱれな敵対的買収防衛策

 日本は世界有数の消費市場だが、その半面、日本の小売業は卸を含め、外部者が入ってくるには非常にハードルが高く、
これが海外プレーヤーが簡単に日本市場で成功していない要因になっている。しかしウォルマートが日本の消費市場に迎合するのではなく、
変革させるぐらいのつもりでないと、今回の追加投資も無駄に終わる可能性がある。
 これほどまでに海外からの参入ハードルが高い日本の小売業界は、無意識のうちに敵対的買収防衛策を築き、
撤退促進剤を外資系企業に打ち続けてきたことになる。敵対的買収に怯える他の業界の経営者から見ると、なんともうらやましい限りであろう。


※B2C/BtoC事業……商取引形態の1つで、企業(Business)と一般消費者(Consumer)の取引のこと。
企業間取引ならBtoB、消費者同士の取引ならCtoCとなる

 

 

 



【コメント】
「追加投資」というキーワードで記事を2つ紹介してみました。

 

ウォルマートの記事から「追加投資」の流れに関する部分を引用します。


>もともとウォルマートは、西友の株式を段階的に買い増してきた。最初から大半の株式を取得してしまうと、いざ事業を開始して
>目論見どおりに行かなくても引き返すに引き返せなくなる。そのリスクを避けるため、ウォルマートは
>段階的に買い増す権利を持つというスキームを構築した。これには、買い増さないという選択肢を選ぶことで
>西友から撤退しやすくするという狙いもある。

>追加投資をするからには、ウォルマートが西友から撤退することはしばらくないだろう。
>むしろ、より本腰を入れて主体的立場で事業収益の回復を目指すものと思われる。


これらの記述と同じことがソフトバンクのプロ野球事業についても言えます。
ソフトバンクからすると、この度の福岡ドームへの取得はプロ野球事業への追加投資という見方ができるでしょう。
ソフトバンクがプロ野球事業へ追加投資したということは、ソフトバンクがプロ野球事業から撤退することはしばらくない、と言えます。
キャッシュフローの面から見ますと、福岡ドームの取得額は870億円。
一方球場使用料は年50億円とのことです。
単純計算で870÷50=17.4年で元が取れる計算です。
もちろん中途で球場を他者へ売却するといったことも考えられますが、そういったことはしないとすれば
ソフトバンクは今後17.4年間はプロ野球事業からは撤退しない、という計算になります。

別な見方をしますと、ソフトバンクは福岡ドームを取得することによって、プロ野球事業からは撤退しない、
という意思表示をした、とも言えます。
球場を取得することにより、ソフトバンクはある意味自らプロ野球事業からの撤退障壁を高くしたわけです。
ソフトバンクは現在経営は好調ですのでそもそもプロ野球事業からの撤退は全く考えていないのでしょうが、
本業とプロ野球事業とのシナジーのさらなる追求といった意味も含めて、
ソフトバンクは野球観戦者や潜在顧客に対し自社のプロ野球事業に対する姿勢を明確にする狙いがあるのだと思います。