2012年2月28日(火)
[東京/大阪 28日 ロイター] パナソニックは28日、津賀一宏専務(55)が社長に昇格する人事を発表した。
大坪文雄社長(66)は会長に就任する。中村邦夫会長(72)は退任し、相談役に就任する。いずれも6月27日付。
津賀氏は、初代社長の松下幸之助氏と2代目の松下正治氏の創業家以外では最年少の社長就任となる。
津賀氏は現在、薄型テレビ事業を担当するAV機器部門の責任者を務めているが、2001年に
マルチメディア開発センター所長を務めるなど研究所畑が長い。04年に47歳で役員に就任してデジタルネットワークと
ソフトウエア技術を担当。08年からカーエレクトロニクス部門の責任者を務め、昨年6月からテレビ事業の立て直しを始めた。
社長・会長人事のほか6月27日付で、吸収合併したパナソニック電工の社長だった長栄周作専務役員(62)が
副社長に昇格することも発表した。桂靖雄副社長(64)は留任し、津賀氏を支える体制とする。
06年に就任した大坪社長は今年で任期が6年。前社長の中村会長も00年から06年まで6年間の社長就任だった。
同社では、創業者の松下幸之助氏が社長を退任した66歳を超えて続投した例はなく、今年の社長交代の可能性が高まっていた。
次期社長候補とみられていたのは、津賀氏とともに、海外担当の宮田賀生専務取締役(58)、デバイス担当の山田喜彦専務取締役(60)の
3人がいたが、宮田氏と山田氏は留任。中村会長、大坪社長ともにAV機器部門の責任者から社長に昇格しており、
津賀氏は本命視されていた。
<売り上げはもっと成長できる>
大阪市内の会見で大坪社長は、津賀次期社長について「経営課題に面したとき、その奥にある課題をつかもうというマインドがあった」と述べ、
複雑な時代のトップにふさわしい人材と評した。巨額の最終赤字を計上する見通しの中でトップ交代を決断した理由については、
「将来の成長の布石を明確にし得た」ためとした上で、「社長の責任は果たせた」と述べた。
津賀次期社長は今後のパナソニックの目指すべき方向性について「(パナソニックの)ポテンシャルからして
現在の売上規模は非常に少ない。もっと成長できる」とした上で、テレビ事業については、「数を追わずに収益優先で、正常化するには
どうしたらいいのかという見方で進めたい」と、収益改善を目指す考えを示した。そのうえで、エコ・アンド・スマート分野が
全社共通の成長分野と強調した。社長交代の打診があった時期については「2月の上旬」と述べるにとどめた。
(ロイター 2012年
02月 28日 20:05
JST)
ttp://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE81R03Q20120228
2012年2月28日
パナソニック株式会社
取締役・役員および監査役の人事等について
ttp://panasonic.co.jp/corp/news/official.data/data.dir/jn120228-5/jn120228-5-1.pdf
【コメント】
パナソニックの社長が交代するとのことです。
パナソニックと言えば、テレビ事業での巨額の赤字が課題です。
パナソニックのテレビ事業に関して面白い記事を見つけましたので紹介します。2004年1月の記事です↓。
PCベンダのテレビ参入は「脅威でない」、松下社長
米大手ハードベンダのテレビ市場参入が続いている。PC市場で圧倒的な存在感を持つデルが液晶テレビを発売。
ゲートウェイも参入した。また、モトローラが約30年ぶりに米国のテレビ市場に再参入、インテルがテレビ向けのチップを開発するなど
新規プレーヤーも増えている。もちろん韓国、中国のベンダも低価格製品を中心に米国や日本市場への攻勢を強めている。
だが、松下電器産業の代表取締役社長
中村邦夫氏は「競争は激化するだろう」としたものの、
「日本のテレビ開発は50年の歴史がある。他社や他国にはまねができないブラックボックス技術がある」と述べ、
自社製品への自信を見せた。
松下電器は2006年度に売上高8兆2000億円、連結営業利益率5%以上を目指す新しい中期経営計画「躍進21計画」を発表。
中村氏は発表会見の中で、PCベンダのテレビ市場参入について「ネット販売が今後10年伸びるのは間違いない。
新しいビジネスモデルは研究していきたい」としながらも、「だからといってパソコンからテレビを手掛けてもお客さまが満足できるか」
と指摘。「脅威とは受け取っていない」と述べ、新規参入メーカーが松下電器を脅かすことはないとの認識を示した。
中村氏の自信の源はこれまで培ってきたテレビの独自技術だ。特に中核部品となるシステムLSIを自社開発、生産している点が
他社との差別化ポイントと考えている。中村氏はデバイス部品の自社開発で「短期間で製造から販売まで移ることができる」と
デバイス事業のメリットを強調した。松下電器は富山県魚津市にシステムLSI工場の新棟を2005年末に建設する計画を発表した。
約1300億円を投じる新棟で、他社との差別化の源泉となるシステムLSIへの注力を印象付けた。松下電器は、600億円を投資した
プラズマディスプレイパネルの茨木第2工場(大阪)を2004年4月に稼働させる予定。
増産投資を続け、2005年度に150万体制を確立することを目指す。
中村氏が営業利益率の向上に不可欠と指摘したのは生産性のアップだ。工場など直接部門の生産性向上だけでなく、
サプライチェーンや社員1人1人の仕事の仕方など間接部門に対しても生産効率を上げる必要があると指摘。
中村氏は「ITによる生産性向上を目指し、1200億円を投入してきた。今後も投資を続けたい」と述べた。
(@IT 2004/1/10)
ttp://www.atmarkit.co.jp/news/200401/10/panasonic.html
>中村氏は発表会見の中で、PCベンダのテレビ市場参入について「ネット販売が今後10年伸びるのは間違いない。
>新しいビジネスモデルは研究していきたい」としながらも、「だからといってパソコンからテレビを手掛けても
>お客さまが満足できるか」と指摘。「脅威とは受け取っていない」と述べ、
>新規参入メーカーが松下電器を脅かすことはないとの認識を示した。
パナソニックには他社や他国にはまねができないブラックボックス技術がある、
・・・はずだった。
パソコンメーカーや半導体メーカーのテレビ事業参入はパナソニックにとって脅威ではない、
・・・はずだった。
といったところでしょうか。
この記事にはアップルのアの字も出てきませんが、いまやアップルもテレビ事業においてはパナソニックの
大きな脅威であると言ってよいでしょう。
記事には「50年」という数字が出てきていますが、たった8年でここまで事業環境はめまぐるしく変化してしまった
ということでしょうか。
1つ目は、米国市場を始めとする海外市場での販売不振です。
米国市場を始めとする海外市場では、サムスンやLG電子のテレビが売れているのでしょう。
紹介した記事中には、サムスンのサの字、LG電子のLの字も出てきませんが、この後、サムスンやLG電子が急速な成長を遂げたわけです。
50年かけて開発してきたテレビのブラックボックス技術を、サムスンやLG電子がまねできてしまった、ということかもしれません。
サムスンやLG電子が短期間に急速に技術面でキャッチアップしてきた、そして品質面ではパナソニックをはじめとする
日本企業のテレビと遜色がなくなってしまった、ということだと思います。
そしてコスト面でやはり韓国は有利であった、ということができると思います。
最近は為替レートが極端な円高ウォン安ですが、為替レートは別にして、総じて韓国は日本よりもコストが安い、
ということが言えると思います。
仮にドルに対して為替レートが円とウォンで同じであるとしても、韓国企業の方がコスト面で有利なのは否めないと思います。
技術面・品質面は互角、価格はサムスンやLG電子の製品が安い、となりますと、やはりどうしても
海外の消費者は日本企業のテレビよりもサムスンやLG電子のテレビを買うでしょう。
米国市場を始めとする海外市場では、日本企業のテレビはサムスンやLG電子にシェアを食われていると思います。
2つ目は、日本国内市場での販売不振です。
日本市場でも日本のテレビは販売不振なのですが、これに関してはサムスンやLG電子は全く関係ありません。
なぜなら、日本国内ではサムスンやLG電子のテレビは全く売れていないからです。
ではなぜ日本ではテレビが売れなくなったのかと言えば、一言で言えば、「テレビを買い替えなくなった」ということだと思います。
従来であれば、もっと大型のテレビが欲しいとかもっと薄型のテレビに買い替えよう、といった需要があったのですが、
今持っているテレビの大きさや薄さや品質に消費者が満足してしている、ということでしょうか。
大きな傾向としては(デモグラフィック基準、人口統計学的には)、人口が減少しており少子高齢化が進んでいます。
新しくテレビを買う子供の数は減り、お年寄りであれば、もうこのテレビのままでいいや、という思いもあるでしょう。
そして去年2011年、エコポイントとデジタル放送完全移行という人工的な大きな駆け込み需要の後、
いよいよテレビを買い替える人が誰もいなくなったということだと思います。
まさにフルスピードからの急ブレーキ、そう表現できるかもしれません。
会計で言えば、棚卸資産(テレビ商品在庫)の評価減及び有形固定資産(テレビ生産工場)の大きな減損処理を強いられるということです。
エコポイントとデジタル放送完全移行という人工的に作り出された販売はただの「需要の先食い」に過ぎないものであったにも関わらず、
それを本来の需要量だと勘違いし、過剰設備投資と過剰生産を行ってしまった、ということだと思います。
2004年1月、パナソニックの中村前社長が、
「消費者の視聴傾向はどう変わるか分からない。これからはパソコンでテレビを見るというスタイルも普及するかもしれない。
また、韓国企業が技術面でキャッチアップしてくることも考えられる。
技術開発を怠ることなく、ライバル企業の動向もしっかりと研究していくつもりだ。
販売見通しを誤ることなく設備投資を行っていきたい。」
と語っていればここまでの大きな損失は避けられたはずだ、
というのは結果論や精神論でしょうか。
ビジネスでも人生でも同じでしょうが、大切なのは、
「自信」と「謙虚」だと思いました。