2011年11月13日(日)
【コメント】
ちょうど参考になる言葉が日経ビジネスオンラインに載っていました。
これからは「アセットライト(資産の軽量化)」戦略に転換します。
生産量の拡大による収益 の追求はもうやめます。
大坪
文雄・パナソニック社長
(キャプチャー)
パナソニックは工場などの生産設備を持たない方向に向かうようです。
研究開発や設計のみを手がけ、生産は他者にまかせることを「ファブレス」といったりします。
ファブレスのファブは「fabricate」の略です。fabricate
とは、規格製品を組み立てる、という意味です。
fabricate
の設備を自社では持っていない、だからファブレスといいます。
アップルがどの程度生産を社外の専門企業にまかせているのは分かりませんが、
大部分を自社では生産していないとすると、アップルもファブレス企業と言ってよいでしょう。
パナソニックもファブレス化へ方針転換するようですが、
アップルとは異なり、パナソニックはそもそも非常に多くの工場を現時点で抱えています。
工場は建設した時点でサンクコストになります。操業を停止するにしても除却損が出てしまいます。
パナソニックがファブレス企業になるには非常に長い時間(優に10年以上)がかかると思います。
ただ、生産設備などの有形固定資産とは異なり、例えば自社で発掘したアーティストの著作権は貸借対照表には載ってきません。
貸借対照表には対価を支払って取得した著作権のみが載ってきます。
この辺りの減価償却の違いがどのような影響を及ぼしてくるのかは私には分かりませんが。
それと、ソニーが音楽の著作権を保有している場合は、
例えばそれらの音楽をアップルには配信させないといった手段が取れます。
著作権の囲い込みが可能になるわけです。
ソニーが著作権を保有している音楽はソニーのみが独占配信するということもできます。
アップルにも配信を許可しその利用料を受け取る方が金額面や戦略面で有利なのか、それとも、
アップルには配信を許可せず(その分利用料は受け取れない)ソニーのみで独占配信する方が金額面や戦略面で有利なのか、
十分に検討する必要があるでしょう。
最後に、ソニーは全く考えていないでしょうが、音楽の著作権は工場に比べて売却が容易であるとは言えるでしょう。
工場の場合は設備の他用途への転用が効きませんし、
工場跡地に関しても、購入予定者の地理的な物流網の関係などからその場所が適切な場所かどうかが企業によって大きく異なります。
また敷地面積も購入予定者が活用しようと計画している面積と一致するとは限りません。
工場や工場跡地の売却は簡単ではありません。
それに比べると、音楽著作権は無形固定資産です。物理的な物があるわけではありません。
それらの音楽が有望でありさえすれば売却先は比較的見つかりやすいと言えるでしょう。
経営管理学の用語を使って言えば、工場は撤退障壁が高い、音楽の著作権は撤退障壁が低い、
と言えるでしょう。
管理とは、自らを方向づけることを意味する。しかし、人を支配することも意味しうる。
P.F.ドラッカー『現代の経営』より
(キャプチャー)
管理という時には、やはり”他者を管理する”という意味が主ではないでしょうか。
自らを方向づけるような時には「自己管理」というような気がします。
自己管理とは言いますが、わざわざ”他者管理”とは言わない気がします。
ドラッカーがどのような意味合いでこのように言ったのかは前後も見てみないと分かりませんが。