2011年10月11日(月)
株式会社伊藤園 普通株式
出来高・・・124,000株
売買代金・・・175,807千円
(キャプチャー)
株式会社伊藤園 優先株式
出来高・・・11,600株
売買代金・・・12,330千円
(キャプチャー)
優先株式の出来高は、普通株式の出来高の11分の1未満(9.4パーセント)。
優先株式の売買代金は、普通株式の売買代金の15分の1未満(7.0パーセント)。
上場していても、やはり優先株式の流動性は普通株式よりも小さいと言えます。
株式会社伊藤園 優先株式について
ttp://www.itoen.co.jp/finance_ir/preferred_stocks/
さてここからがメインです。
今日初めて気付いたのですが、優先株式には「値幅制限」がないようです。
普通株式の方は、1,105〜1,705円の値幅制限がついていますが、
優先株式の方は、「---〜---」となっています。
株式の受発注や売買の仕組み自体は普通株式と同じでしょうから、システム上の問題とは思えません。
東証側が敢えて値幅制限を設けていないのだと思います。
優先株式にはなぜ値幅制限がないのでしょうか。
ひょっとしたら単純な事務的なことが理由かもしれないので正確なところは東証に聞くしかないのかもしれませんが。
優先株式に値幅制限がない理由を、理屈の上ではこう考えられる、という推測をいろいろと行ってみました。
普通株式と優先株式の違いは、次の二つです。
一、優先して配当が支払われる(普通株式の25%増し)こと
一、残余財産分配権が強い(伊藤園の場合は同じ順位のようですが)こと
まず、優先株式は配当が普通株式よりも多い、という点から考えてみましょう。
理論上は株価は将来に渡って支払われる配当の現在価値の合計として計算されます。
これは普通株式の場合であり、優先株式の場合は議決がない分をどう減算すればよいかは確立した理論はありません。
しかし、優先株式の場合は普通株式の場合よりもより純粋に配当の受け取りが目的で投資家は購入するわけですから、
基本的な考え方は普通株式の場合と同じと考えてよいでしょう。
優先株式の配当は普通株式の配当に連動しており、通常は普通株式の配当額の25%増しですが、
業績悪化の場合は優先株式にのみ配当が支払われることもあるそうです。
そうしますと、配当が普通株式よりも優先して受け取れる分、株価が普通株式よりも下がりにくい、とは言えるかもしれません。
だとすると、これが下限がない理由の一つだと考えられます。
では上限がない理由はと言いますと、これは分かりません。
配当を普通株式よりも優先して受け取れるなら、株価が普通株式よりも上がりやすい、と言えるかと思いますので、
上限は必要になるような気がします。
優先株式の配当は普通株式の配当の25%増しということなので、「普通株式の配当」がボトルネックになって株価が上昇しにくい、
とは考えられないでしょう。
配当が優先して支払われることは、株価が下落しにくい理由にはなっても、上昇しにくい理由にはならないでしょう。
次に、残余財産分配権が強い、という点を考えてみましょう。
一応伊藤園の場合は同じ順位のようですが、まずは話の簡単のためにそれは一旦無視して一般的に考えてみましょう。
(伊藤園の場合は普通株式と同等ですから残余財産分配権が優先株式株価に影響を与えることはないと言ってよいでしょう。)
残余財産分配権が強いとどうなるかと言いますと、
株価に与える影響という点では、煎じ詰めれば配当を優先して受け取れるということと考え方は同じだと思います。
残余財産分配権が強い分、株価が普通株式よりも下がりにくい、とは言えるかもしれません。
これが下限がない理由の一つだと考えられます。
では上限の方はと言いますと、これも配当を優先して受け取れるということと同じで、やはり上限は必要だと思います。
残余財産分配権が強いということは、株価が下落しにくい理由にはなっても、上昇しにくい理由にはならないでしょう。
仮に優先株式に上限がいらないとすると、
株価上昇局面では、普通株式の方が株価が上昇しやすい、ということを意味していると思います。
普通株式の方が高い価値を持つということは議決権が強い価値を持つということ同じです。
株価上昇局面にあるということを業績がよい状態である、と考えますと、
業績がよい状態にある時、議決権が高い価値を持つ、ということになると思います。
さてこれはどうなのでしょうか。
議決権が高い価値を持つのは、業績がよい状態の時なのか悪い状態の時なのか、というと、簡単には答えは出ないかもしれませんが。
どちらかというと、株主が意見を言うのは、業績が悪い時ではないでしょうか。
業績がいい時は株主はあまり物を言わない気がします。
だとすると、議決権が高い価値を持つのは、株価上昇局面よりも株価下落局面なのかな、という気がします。
株価上昇局面では議決権は相対的に高い価値を持つわけではない、やはりここでも配当の方が高い価値を持つ、
それはつまり、株価上昇局面では、株価が上昇しやすいのは、普通株式ではなく優先株式の方である、ということではないでしょうか。
だとすると、やはり優先株式には上限が必要だと思います。
値幅制限は上限と下限がセットです。
優先株式には下限はいらないかもしれませんが上限は必要だ、となりますと、
それは必然的に優先株式にも普通株式同様値幅制限が必要だ、ということになるでしょう。
なぜ優先株式には値幅制限がないのかは東証に聞いてください。
「参謀さんが優先株式にも値幅制限がいると言っていましたよ」とは伝えなくて結構ですが。
確かに、優先株式は普通株式に比べて残余財産分配権が強く残余財産を受け取る順位が高いわけですが、
いざ会社が清算ということになりますと、実際には優先株式への残余財産分配は1円もありません。
もちろん普通株式へも残余財産分配は1円もありません。
一応会社法上、株式は「残余財産分配権」と呼ばれるものを持っている(ことになっている)わけですが、
それはあくまで法律上の話であって、
いざ会社を清算する時は、実際には株式には残余財産はありません。
清算時に株式に残余財産があるほど財務状況に余裕がある状態なら会社は清算は行いません。
清算という最終手段は取らずに、もっと他の企業再生の道を探ります。
優先株式には普通株式よりも強い残余財産分配権があると言いますが、
実際にはそのような権利はありません。
会社清算時には、優先株式にも普通株式にも残余財産は1円もないのです。