2011年8月5日(金)



4日の円売り介入規模、過去最大の4.5兆円=市場推計

 [東京 5日 ロイター] 政府・日銀が4日に実施した為替介入について、金額が4兆5000億円規模だった
可能性のあることが、日銀が営業日ごとに公表している「当座預金増減と金融調節」からの推計で分かった。
1日の円売り介入額としては、2010年9月15日の2兆1249億円を抜き、過去最大となる。
 介入後のドル/円相場は3円以上上昇し、昨年9月に介入した際の上昇幅3円弱を上回った。
「やはりそんなに大きな規模だったかという印象だ」と、外為どっとコム総合研究所の植野大作社長は言う。
「(当局は)短時間でかなりの効果を出そうと設計図を書いたのだろう」。
 しかし翌5日のドル/円相場は78円半ばまで下落し、市場には介入効果の持続性を疑問視する声もある。
「介入は一時的にせよ効果があった。ただ、中長期的な為替需給に影響するような(ドルの)買い方をしていないので、
どこまで腰が入っているのか不確かだ」と岡三証券外国債券グループのグループ長、相馬勉氏は言う。
「米国債市場はQE3(量的緩和第3弾)催促相場になっている。(ドル安/円高の進行を抑制するには)日銀も
マネーを増やす政策にコミットする必要があるのではないか」。
 為替介入の取引実効日は2営業日後のため、4日のドル買い/円売り介入は8日の「財政等要因」の項目に払い超として
反映される。日銀によると、8日の財政等要因は4兆4600億円の払い超過(余剰)となる見通し。
東京短資など日本の短資会社3社が当初予想していた8日の財政等要因は、0―2000億円の不足となっており、
計算上は今回の為替介入額が4兆4600億円─4兆6600億円程度だった公算が大きい。財政等要因には一般財政や国債、
政府短期証券の発行・償還に生じた資金の受け払いも含まれており、実際の介入額は今回の推計からブレる可能性がある。
 財政等要因の見通しは、8日午後に発表される速報値、9日午前に発表される確報値で改定される。
(ロイター 2011年 08月 5日 19:16 JST)
ttp://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-22566320110805

 

 

 


【コメント】
為替介入は長期的にはあまり意味がないというのが一般的な見方かとは思います。
ただ、極端な円高ドル安の場合ですと、為替介入を行うこと自体はドル通貨を非常に安い価格で購入することと同じなので
通貨の運用上必ずしも悪いことばかりでもないのかなという思いはあります。
ドル通貨を非常に安い価格で購入すること以外に為替介入に意味を見出すならば、
輸出企業の為替に関する損失を減らすことになるのだとは思いますが、
それならば今この時期にというのはおかしいでしょう。
営業外費用の「為替差損」を減少させることが目的なら、仮に通期であれば、3月30日から3月31日にかけて
為替介入を行う必要があるでしょう。
つまり、「期末日のレート」を円安に持っていくことに意味があると思います。
企業はドル建てで売上高を計上し、ドル建ての売掛債権を手にし、決済日(もちろん期末日とは限りませんが)にドル通貨を手にします。
仮にある一時期だけでよいから円安になれば決算上有利だということがあるとすれば、それは期末日になると思います。

 

 



ただ、「期末日のレート」を円安に持っていったとしても、営業活動自体は一年中行っているわけです。
一連の営業活動は月末であるとか期末日であるとかは関係なく通年で行われるわけです。
そうしますと、一年のある時期のみ円安になってもはっきり言ってしまうと意味がないのです。
期中に為替レートの変動がなければ為替差損は出ません。
しかし、期中に為替レートの変動がないとしても、そもそも1ドル=100円と1ドル=80円とでは企業の売上高や利益額は
大きく変わってしまいます。
海外で1000ドル売上高を計上し、10ドル利益を得ました。
1ドル=100円なら、100,000円の売上高、1,000円の利益です。
しかし、1ドル=80円なら、80,000円の売上高、800円の利益にしかなりません。
期中に為替レートの変動がないとしても、根本的に円高基調が円安基調かで売上高や利益額は大きく変わるのです。
しかもこの場合の売上高や利益額の変動額は損益計算書(貸借対照表にもですが)の中では為替関連損失としては一切出てきません。
この売上高や利益額の変動額に比べれば、営業外費用の為替差損の影響は実は微々たるものなのです。

要するに何が言いたいかと言えば、一年もしくは数年以上を通じて、そもそも根本的に円高基調か円安基調かが企業にとっては
問題なのであって、今円安に振れたのか円高に振れたのかはほとんど影響がないということです。
期末日のレートが円安に振れたのなら、為替差損がない分確かに企業にとって決算上有利でしょう。
しかしそれはそもそも一年を通じて円安基調であった場合に比べればはるかに小さな利益に過ぎません。

もし為替レートの面で企業を下支えしたいのなら、一年もしくは数年以上を通じて継続的に円安基調を
維持し続ける必要があります。
しかしそんなことは不可能です。
為替介入の効果はもって数日から1週間程度ではないでしょうか。
1ヶ月も持ちません。
為替介入を止めたとたんに円高に逆戻りです。
為替介入には為替レートに関する大きなトレンドを変える力はないのです。


結論を簡単に書きますと、企業を下支えしたいと思っても為替介入はあまり意味がないのが実際のところです。
それでもわずかでもいいから企業の決算上有利にしたいと思うのなら、為替介入は期末日の直前に行うべきでしょう。
わずかな額ですが営業外費用の「為替差損」だけは小さくなるでしょう。