2011年8月2日(火)
8月2日(ブルームバーグ):キリンホールディングス(HD)は2日、ブラジル2位のビール事業会社スキンカリオールを
買収すると発表した。買収総額は39億5000万レアル(約1988億円)。国内市場の縮小が懸念される中、長期構想で重点地域と
位置付けてきたアジア・オセアニア地域に加えて南米に足掛かりを築くことで海外展開を急ぐ。
開示資料によると、スキンカリオールの発行済み株式の50.45%を保有するアレアドリ社(サンパウロ州)の
発行済み全株式を取得した。スキンカリオールの2010年12月期の売上高は56億6500万レアル(約2800億円)。
今後、キリングループのマーケティング力などを生かすことで年率10%成長を見込む。
記者会見でキリンHDの三宅占二社長は、「激烈なグローバル競争で各社が再編を模索する中、
これだけの有望案件が出るのはまれだ」と話し、キリンがライオンネイサンなどの買収を通じて現地パートナーと共に
成長を志向する企業であることがスキンカリオール社に共感を呼んだことを買収成功の要因に挙げた。
三宅社長は会見後、一部記者団に対し株主の理解が得られればさらなる株式取得も検討していく方針を示した。
ブラジルのビール市場規模は販売量で世界3位、06年から10年にかけて売上規模は年率平均12.1%で成長を続けている。
ビール・清涼飲料市場はそれぞれ3兆円近くあり、スキンカリオールは、ビールのシェア2位、清涼飲料事業は同3位。
キリンHDは、10年2月のサントリーとの統合交渉決裂以降、積極的に海外でのM&Aや資本提携を実現してきた。
10年7月にはシンガポールのフレイザー・アンド・ニーブに出資、11年1月には中国の華潤創業と合弁会社設立、3月には
ベトナムのインターフード買収を発表した。キリンHDは中期計画で12年末までに海外売上高比率を29%まで高めたいとしている。
格付け会社は格下げ
発表資料によれば株式取得に伴う資金は、現金ならびに外部借入等により賄われる予定で、買収実施後もキリンの
負債資本倍率(DEレシオ)は1倍以内に収まる見込みとしている。キリンは中期計画で12年末までにDEレシオを0.5まで
下げる努力目標を掲げている。三宅社長は「DEレシオの目標は変えない」としながらも良い物件があれば今後も企業の
買収・合併(M&A)を考えていく方針を示した。
買収を受けて格付け会社ムーディーズは、キリンHDの発行体格付けなどを引き下げ方向で見直すと発表した。
ムーディーズは見直しの理由について、一部負債調達によるためキリンの信用力が弱まる点やブラジルでの事業経験が
限定的であることを挙げている。
キリンHDの米村良一経営戦略部部長は会見後、ブルームバーグ・ニュースに対し買収に伴う資金の一部について
メーンバンクの三菱東京UFJ銀行とファイナンシャル・アドバイザーを務めるシティグループから
ブリッジ・ローン(つなぎ融資)で調達したと話した。
米村氏は、ブリッジローンからの借り換えについて「条件のいいタイミングを狙いたい」と述べたが、
金額や具体案については明言しなかった。キリンHDは5日に1−6月期の決算発表を予定している。
(ブルームバーグ 2011/08/02 13:59
JST)
ttp://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90920000&sid=aWNYOgaTNTg0
2011年8月2日
キリンホールディングス株式会社
スキンカリオール・グループの株式の取得(子会社化)に関するお知らせ
ttp://www.kirinholdings.co.jp/news/2011/0802_01.html
2011年8月2日(火)日本経済新聞
けいざいじん 住生活グループ社長 藤森 義明氏(60)
GE仕込み、世界企業へ意欲
住生活
セコム 海外事業の連携視野 リフォーム・警備、提携発表
(記事)
社長メッセージ
株主の皆様へ
ttp://www.jsgc.co.jp/ir/message.htm
【コメント】
藤森義明氏は海外事業拡大を担って社長に就任するとのことです。
今後住生活グループが海外売上高を拡大するには、まさにGEのように現地企業の買収を行っていくしか道はないのかもしれません。
住宅というのはその国の文化や天候や生活習慣に密着しているものです。
住宅はその国の人々が毎日の生活を営んでいく場所です。
住宅関連事業を行う際にはその国の人々が持つ住宅に関するニーズを的確に掴んでいかねばなりませんが、
それはやはりその国の企業や社員の方が圧倒的に上手いでしょう。現地の人の方が”住宅勘”があるといいましょうか。
単に何らかの新商品を海外で販売するということ以上に、住宅関連事業は文化や天候や生活習慣に対する深い理解が必要とされます。
しかも住宅は一生に一度の人にとって一番大きな買い物です。
海外支店を開設してゼロから住宅関連事業を開拓していくのは非常に難しいというのが実際のところでしょう。
【コメント】
はっきり言ってしまうと、国債に対しては格付けは必要ないと思います。
敢えて言うなら国債の格付けは常にAAAということなのでしょうが、それなら始めから格付けはいらないわけです。
国債は格付けの対象外とすべきだと思います。
民間企業が発行する債券と政府が発行する債券は性質が完全に異なるという主張がありますが、
格付けに関してだけはその主張が妙に当てはまっているように思います。
(民間企業が発行する債券だろうが政府が発行する債券だろうが将来償還しなければならないことには全く変わりはありません。
政府が発行する債券は償還しなくて良いのではなく、デフォルトは起きないというだけです。)
トヨタ:営業赤字1079億円 4〜6月期
トヨタ自動車が2日発表した11年4〜6月期連結決算は、1079億円の営業赤字(前年同期は2116億円の黒字)に陥った。
東日本大震災でサプライチェーン(部品供給網)が被害を受け、生産が大幅に落ち込んだことが響いた。
四半期決算での営業赤字は、リーマン・ショック後の09年4〜6月期(1948億円の赤字)以来2年ぶり。
売上高は前年同期比29.4%減の3兆4410億円、最終(当期)利益は同99.4%減の11億円だった。
ただし、部品不足が予想より早く解消に向かっているため、12年3月期の連結業績予想は上方修正した。
販売台数は760万台(従来予想比36万台増)、売上高は19兆円(従来予想比4000億円増)、
営業利益は4500億円(同1500億円増)に引き上げた。最終利益も同1100億円増の3900億円を見込む。
同社は今年上半期の想定為替レートを1ドル=82円に設定していたが、4〜6月期の相場水準が想定を上回る円高になり、
500億円の減益(営業損益ベース)要因になった。通期の想定レートを1ドル=80円に見直したが、
為替の影響額は通期で1600億円(同)に上ると予想している。東京都内で会見した伊地知隆彦専務は、現状の円高水準について
「(国内事業が)成り立つ水準ではない」と危機感を示した。
震災の影響額(同)は3200億円。ただ、一時は150品目以上に及んだ部品不足は7月以降急速に回復しているため、
本格増産を予定より1カ月早い9月に前倒しする。9月以降は非正規従業員3000〜4000人を新規採用し、
一部工場で休日操業も始める。【高橋昌紀】
(毎日新聞 2011年8月2日 21時04分(最終更新 8月2日 21時06分))
ttp://mainichi.jp/select/biz/news/20110803k0000m020107000c.html
【コメント】
あまり書かない方がいいかもしれませんが、一応会計を学んだ人間として少しだけコメントします。
はっきり言ってしまえば、今日発表されたトヨタの第1四半期の決算は逆粉飾です。
第1四半期は販売台数が前年同期比30パーセント以上落ち込んだというのも嘘と言っていいでしょうし、
売上高も30パーセント近く減少したというのも嘘と言っていいでしょう。
営業赤字1079億円も嘘と言っていいでしょう。
私の見立てでは、販売台数も売上高も前年同期比でほぼ横ばいのはずです。
そして本当は1000億円以上の営業黒字のはずです。
ではなぜこのような決算になっているのかと言えば、売上高の繰延を行っているからです。
本当は4〜6月に販売した自動車を7月以降に販売したものとして会計処理を行っているわけです。
本当は4〜6月に販売した売上の一部がそっくりそのまま来期以降に持ち越されているわけです。
日本基準ではこのような会計処理は認められませんが、トヨタが適用している米国会計基準では売上の繰延が認められます。
(ですから、今回のトヨタの決算も会計監査上は厳密には粉飾ではないのです。)
費用はそのまま正しく計上しているのに収益だけを繰り延べて今期には計上していません。
これでは企業会計原則の「費用・収益対応の原則」が守られていません。
このことは煎じ詰めれば米国会計基準は「一般に公正妥当と認められる会計基準」とは認められないことを意味しないでしょうか。
(売掛金) XXX / (売上) XXX
という仕訳を切らねばなりませんが、トヨタはこの仕訳を販売日に切らずに7月以降に切ろうとしています。
より正確に言うと、実際には販売日にこの仕訳を切っているのですが、
第1四半期の貸借対照表と損益計算書を作成する際に、この仕訳を反映させていないのです。
第1四半期の財務諸表の作成段階で、これらの仕訳を除外しているのです。
除外した仕訳は7月以降に財務諸表を作成する段階で適宜任意に反映させていきます。
売上に関する仕訳を切らずに今期には売上高を正確に計上しない、費用はそのまま計上する、
となりますと、当然大赤字になるでしょう。
販売台数30パーセント減というのは、本当に4月1日〜6月30日の間にトヨタが販売した台数が30パーセント減なのではなく、
連結決算上売上高に計上した分の販売台数が30パーセント減ということです。
さらに言えば、第1四半期は逆粉飾(厳密には違いますが)を行ったのですが、
第1四半期に除外した売上高を第2四半期〜第4四半期に計上しなければなりません。
つまり、本当は4〜6月に販売した売上高を第2四半期〜第4四半期に計上しなければならないということです。
つまり、第2四半期〜第4四半期は第1四半期とは逆に”粉飾”を行うということです。
もちろんこれも米国会計基準では認められた会計処理ですから、会計監査上は粉飾ではないのですが。
第1四半期に逆粉飾(厳密には違いますが)を行ったばっかりに第2四半期〜第4四半期にも粉飾(厳密には違いますが)を
行わなければならないのです。
米国会計基準上は認められた会計処理とは言え、トヨタは2011年度に発表する4つの決算全てが正確ではないと言えます。
確かに会計監査上は粉飾ではないとはいえ、はっきり言ってしまうとあまり褒められた会計処理ではないと思います。
「ああこの決算は正確ではないのか」、そう思いながらトヨタの決算短信を見る日が来るとは思いませんでしたが。
改めて思いました。米国会計基準やIFRSは経理操作の余地があり過ぎると。
企業の本当の姿を正確に報告するという点においてはやはり日本基準が一番であると改めて確信しました。