2011年7月9日(土)
【コメント】
メーカーが小売店の株式を取得するといった具合に、川上企業が川下企業の株式を保有するといったことが増えているようです。
具体的には、
パナソニックがケーズデンキグループの株式を保有、
シャープがベスト電器株式を保有、
資生堂がJフロントリテイリング株式を保有、
NTTドコモがビックカメラ株式を保有、
花王がセブンアンドアイやイオンの株式を保有、
JTがキーコーヒー株式を保有、
エーザイがマツモトキヨシグループの株式を保有、
といった具合です。
川上企業が川下企業の株式を保有するといったことはそれほど珍しいことではなく、
昔からあったことなのかなあ、という印象ではありますが。
また、川下企業の方が川上企業の株式を保有するということもあるでしょうし、
同じ流れの途中に存在する企業(同業他社)同士で保有することもあるでしょうし、
日々の業務の取引先の株式を保有するということもあるでしょう。
では、有価証券報告書からNECの状況を見てみましょう。
2011/06/22提出
日本電気株式会社
2010年度(2011年3月期)「有価証券報告書(日本会計基準)」
ttp://www.nec.co.jp/ir/ja/pdf/securities/2010/2010173_04.pdf
6. コーポレートガバナンスの状況等
D 株式の保有状況
「保有目的が純投資目的以外の目的である投資株式」
前事業年度の特定投資株式
88/225ページ
89/225ページ
90/225ページ
それと大手銀行が2つ、三菱UFJ株式と三井住友株式が載っています。
これはお金を借りている関係で株式を取得しているのでしょう。
個別財務諸表 負債の部の明細 「長期借入金」
214/225ページ
それから、「みなし保有株式」と呼ばれる株式があるそうです。
これは何を意味するのかよく分かりません。
「みなし保有株式」という言葉はあまり一般的ではありませんし、有価証券報告書内にも説明もありませんし、
どのような株式をこのように呼んでいるのか分かりません。「みなし保有株式」とはNEC内部の独自用語なのでしょうか。
”みなし”という表現から推測すると、見かけ上は保有していない(現在は手元にはない)が、証券会社等が実は持っていて、
実際には保有していることと同じ、といった意味なのかな、という気がしますが、
この場合、「みなし保有株式」は貸借対照表に載っているのです。
貸借対照表には載っていないが実は保有している、といった株式を「みなし保有株式」と呼んでいるのかと思ったら
そうではないようです。
さらに、「三井住友フィナンシャルグループ」株式は、特定投資株式と「みなし保有株式」の両方に載っています。
同じ会社の株式なのに、一部は特定投資株式に分類され、一部は「みなし保有株式」に分類されるそうです。
ますます意味が分かりません。
ついでというわけではありませんが、こちらでNECの定款が読めます↓。
日本電気株式会社定款
ttp://www.nec.co.jp/profile/articles.html
最初に驚いたのは一番上に記載してある定款の制定日です。
明治32年(1899年)です。
NECもまた、100年以上の歴史があります。
>制 定 明治32年7月17日
制定とありますが、会社法(旧商法というべきでしょうが)的に言うと、
公証人役場において本定款が認証された日、となるのでしょう。
>第1章 総則(商号)
>第1条
>本会社は、日本電気株式会社と称し、英文では、NEC
Corporationと表示する。
「日本電気」は何と読むのでしょうか。
一般的には「ニホンデンキ」と読むかと思うのですが。
金融庁(EDINET)上は「ニッポンデンキ」でしたが。
記事に戻ります。
パナソニックについて、前年度には三菱UFJやKDDIが載っていたが、今年度はこれらの株式の保有の記載がなくなった、
と書かれています。
記事を読みますと、保有株式の開示方法が変わったからこれらの株式の記載がなくなったかのように読めますが、
多分はそれは違いでしょう。
これらの株式の記載がなくなったのは、保有株式の開示方法が変わったからではなく、
おそらく、パナソニックはこれらの株式を当事業年度中に市場その他で売却したからでしょう。
保有株式の記載がないのは、開示基準や開示方法が原因なのではなく、まさに保有していないことが原因だと思います。
それから、記事の最後に、包括利益について書かれています。
以前も書きましたが、包括利益は本当の意味での利益ではありません。
包括利益にはただの評価換算差額が出てきているだけなのです。
貸借の計算上そうなるというだけであり、包括利益がマイナスだからといって損失が出ているというわけではありませんし、
将来損失が出ることを表しているわけでもありません。
包括利益は本当の意味での利益ではありません。
株式を取得する企業を慎重に考慮するのは当然だとしても、包括利益がどうなるかについては全く考えなくてよいのです。
はっきり言ってしまうと、企業の側も投資家の側も、包括利益は全く気にしなくて構いません。