2011年6月7日(火)
2011年6月7日(火)日本経済新聞
東芝・ソニー液晶統合 有機EL量産も視野 サムスンに対抗 次世代技術に集中投資
(記事)
[東京 7日 ロイター] 7日明らかになった東芝とソニーの中小型液晶ディスプレー事業統合交渉は、
政府系ファンドの産業革新機構が統合会社に出資、経営の主導権を握る方向で調整が続いている。
東芝とソニーはこの分野の将来を日本政府に預ける形となり、「官主導」の業界再編という色彩が濃い。
統合会社がグローバル市場で生き残るには、優れた手腕を持つ経営トップの人選と、民間主導に復帰する
早期の株式上場がカギになりそうだ。
<中小型に望み託す電機業界>
産業革新機構は政府と民間の出資による「官民ファンド」と説明されることが多いが、投資可能資金9000億円の内訳は、
民間出資100億円、政府出資920億円、政府保証8000億円で構成され、
実態は政府の影響を強く受ける「官主導」のファンドだ。東芝とソニーの液晶統合では、同機構が、
新会社による1000億円規模の第三者割当増資を引き受け、経営の主導権を握る方向。
みずほインベスターズ証券アナリストの石田雄一氏は「報道で知るかぎり官主導だ。大型液晶は厳しいが、
中小型はまだ日本に強みがあるからだろう」と今回の統合構想を分析する。
米調査会社ディスプレイサーチによると、テレビ用大型液晶パネル市場では日本勢が苦戦しており、
世界シェア上位5社(金額ベース、2010年実績)のうち、4位を韓国と台湾勢が占め、
5位にようやくシャープ(9.7%)が顔を出す。一方、携帯電話やデジタルカメラなどに搭載される中小型液晶は、
シャープが首位(14.8%)、東芝傘下の東芝モバイルディスプレイが4位(9.2%)に食い込み、
日立製作所傘下の日立ディスプレイズが6位(6.3%)、ソニー傘下のソニーモバイルディスプレイが7位(6.0%)で続くなど、
数字上は日本勢が存在感を示している。
シャープは今月3日の経営方針説明会で、テレビ用パネル生産拠点、亀山第2工場(三重県亀山市)の設備を改造し、
年内に中小型液晶の生産を開始するなどの構造改革を発表した。片山幹雄社長は、
「通常のテレビ用から成長市場の中小型にシフトする」と、戦略転換を強調した。
中小型液晶分野では、従来型携帯電話に比べて画面サイズが大きいスマートフォンとタブレット端末の普及に伴い、
従来より大きなサイズの需要が増える見通しだ。ある関係者は、需要増に対応するため、
「(液晶パネルの元となる)ガラス基板の大型化に対応した工場を作る必要があるが、その資金が東芝とソニーにはない」と指摘する。
東芝は電力など社会インフラ事業と半導体メモリー事業が中核事業で液晶はその対象ではなく、
ソニーには製造設備の軽量化という経営戦略がある。両社の経営陣は、中小型液晶で今後も国際競争力を維持するには
産業革新機構という外部資金の導入が必要と判断したようだ。
民間が非中核分野を切り離し、その後の事業展開を官が支援する構図は、日本唯一のDRAM専業メーカーとして残った
エルピーダメモリが歩んだ道のりを彷彿とさせる。みずほインベスターズの石田氏は、産業革新機構が関与する今回の液晶統合について、
「エルピーダを残したのと同じシナリオで、日本には中小型液晶が必要という判断になったのでは」と話す。
エルピーダはNECと日立のDRAM事業を統合して1999年12月に発足した。これと前後する時期に
富士通や東芝がDRAMから撤退し、一時は世界を席巻した国産DRAMが消滅しかねないとの懸念が同社誕生の背景にあった。
エルピーダは、02年11月に坂本幸雄社長が就任して以降、東証一部上場(04年11月)や台湾での大規模投資を実現し、
「日の丸半導体」復活のシンボルとなる。ただ、リーマンショック後の経営難に直面した2009年には政府から公的支援を受けるなど、
浮沈を繰り返しながら現在に至っている。
市場重視の姿勢で知られる坂本社長でもエルピーダ経営に政府支援を求めざるを得なかったように、DRAMなど
電子デバイス産業のグローバル競争は熾烈だ。中小型液晶も例外ではない。日立は、台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業と
中小型液晶分野で提携交渉を進めるなど、業界全体でサバイバル戦略を模索中だ。今後は中小型液晶分野で業界最大の影響力を持つ
米アップルの動向がメーカー各社の消長を左右するとみられるほか、液晶の次とされる有機EL(エレクトロ・ルミネッセンス)で
先行する韓国サムスン電子を各社が追撃することができるかどうかも注目点となる。
東芝・ソニーがめざす統合会社を率いるトップには、アップルをはじめ世界の有力メーカーと緊密な関係を築きつつ、
投資リスクを抱えながら液晶から有機ELに至る事業展開のロードマップを描く、というグローバル水準の経営手腕が必須条件だ。
「経営トップの人選も進んでいる」(関係者)が、業界や市場関係者が一目置く人物が求められる。
産業革新機構にとっては、統合会社への投資が1000億円規模になった場合、2009年の発足以来の最大案件となる。
統合会社を株式上場させる出口戦略をいかに迅速に進めるかは、官主導による業界再編の是非が問われる試金石になりそうだ。
(ロイター 2011年 06月 7日 19:45
JST)
ttp://jp.reuters.com/article/technologyNews/idJPJAPAN-21573820110607
【コメント】
感想を率直に言ってしまえば、「胡散臭い」の一言です。
東芝とソニーの中小型液晶ディスプレー事業を統合するというだけならまだ分かるのですが、
なぜそこに産業革新機構が出資する必要があるのかが全く分かりません。
記事には東芝やソニーには設備投資のための現金がないなどと書かれていますが、全く意味不明です。
わざわざ産業革新機構が出資して早期上場を目指すだなどと書かれていますが何のことなのか全く分かりません。理解不能です。
この場合は上場を目指す必要もありませんし、そんなに有望な事業なら東芝やソニー自身が追加出資するに決まっています。
それに、統合対象となっている東芝・ソニーのそれぞれのディスプレイ子会社の規模を考えれば、
第三者割当増資の額が1000億円というのは異常でしょう。
なぜそんなに必要なのでしょうか。
具体的な金額の話をすれば、そもそも両社とも増資は必要ないと思います。
産業革新機構が出資する必要性は根本的にないのです。
日本経済新聞もロイターも長文の随分気合の入った記事を書いていますが、はっきり言えば意味が分かりません。
はっきり言ってしまえば、よからぬことをしようとしているな、というのが記事を読んだ第一印象です。
それと記事の紹介はしませんが、生命保険の販売について、銀行窓口での販売額が従来の生保社員による販売額を超えた、
などという内容の記事が今日の日本経済新聞に載っていました。
そんなことはありえないでしょう。
銀行窓口での生命保険の販売額は、生命保険の販売額全体の3%も占めないと思います。
銀行で生命保険に加入したいという顧客ははっきり言えばいません。
銀行と保険会社が提携して銀行窓口で生命保険を販売するというのは、
例えて言えば、銀行窓口で航空券を販売するようなものです。
一体誰が買うというのでしょうか。