2011年6月5日(日)
【コメント】
自分で紹介しておいて言うのも何ですが、これは一体何の記事なのでしょうか。
学生さんのレポートですか。
全く意味が分からないのですが。
何とコメントすればいいか全然分からないくらい無茶苦茶な内容です。
販売や仕入れ生産を行っている国が海外である限り、必ず為替の影響を受けます。
委託生産を行おうが部品を現地調達しようが、為替の影響は必ず受けます。
為替の影響を受けないなどということは絶対ありえません。
期中の為替変動の影響への対応という意味では、できる限り為替予約を行っていくということは可能です。
しかし、為替予約で対応できるのはあくまで「期中の為替変動」です。
期中に為替変動が仮にない場合は、極端な言い方をすれば為替予約の効果はありません。
これは固定相場制を想像すれば理解しやすいでしょう。
今記事で書かれている「1円の為替変動が営業利益に与える影響額」というのは、
期中に変動するというよりも、もっと大きな視点で見た場合の長期の為替レートと考えるとよいでしょう。
もちろん、通期の利益額そのものへの影響度という点では「期末日」時点のレートが円高か円安で大きく影響してくるわけですが、
ここで考えなければならないのは、期中の為替レートの変動であるとか、期末日時点での為替レートというよりも、
マクロで見た場合はそもそも円高である時点でドルを円に換算する時点で円の手取りは小さくなってしまうということです。
当然円ベースの営業利益額は必然的に小さくなります。
これは為替予約ではどうしようもないことです。
もう少し考えてみましょう。
現実には海外との決済はほとんど全てドルベースで行われます。
しかし、ここで本質的に問題なのは、決済がドルで行われるか否かとか、ドルが基軸通貨であるか否か、ではなく、
とにかく「円以外の通貨で」原材料の仕入れも給与支払いも経費の支払いも売上代金の受け取りも行われる、
という点なのです。
「円以外の通貨」という点が重要な点です。
円以外の通貨で取引を行う限り、円ベースに換算する時点で為替の影響を受けるのです。
円以外の通貨がドルかユーロか元かジンバブエドルかは関係がないのです。
円以外の通貨を円に換算する時点で為替の影響を必ず受けるのです。
今ここでは主に基軸通貨ドルの話が出てくるというだけなのです。
ソニーは日本国内でよりも主に海外で事業展開を行っています。
もちろん取引はドルやユーロや元その他です。
これで為替レートの影響を受けないなどということは絶対ありえません。
従って、記事のドルの営業利益へ影響額がゼロというのは完全な間違いです。
利益額へ影響を与える為替レートに関しては、「為替差損」(損益計算書項目)という名称をよく耳にするかもしれません。
しかし、為替差損は為替リスクの一部しか表していません。 (←少しパクリ)
為替差損は為替予約でカバーできます。
しかし、マクロな円高基調(及びそれに伴う利益額の減少)は(少なくとも短期的には)どのような手段を用いても
避けることができない外部環境です。
もう一つ、為替レートの影響に関係する勘定科目といえば「為替換算調整勘定」です。
これは貸借対照表項目です。
最近では包括利益計算書とやらにも出てくるようです。
書き出すと長くなりますのでここで私が言いたいの二つです。
一つ、包括利益計算書は気にしなくて結構です。あれはただの貸借対照表の資本の部を改めて書き出しただけです。
包括利益とは言っていますが、あれは全然利益ではありません。包括利益は本当の意味での利益ではありません。
二つ、為替換算調整勘定が仮にマイナスになっても気にしなくて構いません。
為替換算調整勘定はただの貸借の差額に過ぎません。計算上そうなるというだけです。
仮に為替換算調整勘定がマイナスになったとしても損失が出ているとか将来大きな損失が出るといったことではありません。
以前、「連結調整勘定は連結調整勘定だ」と書きました。
連結調整勘定は連結調整勘定です。のれんではありません。
為替換算調整勘定も同じだと思います。
為替換算調整勘定は為替換算調整勘定です。
連結調整勘定をのれんだなどと呼ぶのなら、
為替換算調整勘定もさも価値がありそうな別の名称にしたらどうでしょうか。
例えば、「グローバル・エクスチェンジ」とか。
グローバル・エクスチェンジと言っても意味が分かりませんよね。
ええそうなんですよ、それと同様に連結調整勘定をのれんと言っても意味が分かりません。